日本のFMXの歴史が動いた『GO BIG 2017』レポート

2017.11.13

歴史を動かした男“HTC”高橋仁

日本のFMXの歴史が動いた

埼玉県川越市オフロードビレッジで行われた全日本FMX選手権『GO BIG 2017』。
日本のFMX界のパイオニアでありレジェンド、佐藤英吾が「コンペティションが日本には無く、それは進化を助長する為にも必要だ」と考えショーではなくコンペティションとしてのFMXイベントを立ち上げた。
そこから今年で10年目を迎えたGO BIG、過去9年を振り返っても3強と呼ばれた佐藤英吾鈴木大助釘村孝太しかチャンピオンになっていない。
そんな中迎えたGO BIG 2017、ついに歴史が動いた。
ついに!歴史を動かした男、それは“HTC”高橋仁。

GO BIG 2017
前日予選日に少し話をした時に「明日は楽しみにしておいてください」と言っていた彼。
静かに闘志を燃やすタイプの彼が自信を持ってそう語った訳はとっておきのこの技ダブルグラブバックフリップを持っていたからだった。

現状維持は退化と同じ

日本のFMXをゼロから創り上げてきたライダー達がよく言っていた言葉「現状維持は退化と同じ」。
この9年、ライダーの進化もさることながらイベント自体も変化し、進化し続けている。
今大会は今までに無かった形での方法、コンテンツが用意されていた。

その一つが5人1チームでの対抗戦、チームバトルだ。
グラブトリック、バートリック、ウィップ、グーンライド、フリップトリックと5つのお題(トリック)をそれぞれ担当を決めて1対1で競い合うもの。
オーディエンスの反応、声の大きさで勝者が決まることもあってか予想以上に盛り上がりを見せていた。ちなみにグーントリックとはいわゆるヘタノリのこと。
容姿を含めいかにヘタクソっぽくダサく乗るかというものである。

GO BIG 2017
グーンライドにやる気満々のX GAMESゴールドメダリスト東野TAKA

そしてWHIPコンテストの復活。

GO BIG 2017

FMXの原点とも言うべきこの技、空中でバイクをヒネるという至ってシンプルながら各ライダーのスタイルが出やすいものである。
見る側は細かいことは気にせず誰のどのヒネリがカッコいいか見ながらフォー!と叫びまくりただただ楽しむのがおすすめ。

”TATSUYA”小林達哉
本戦にはエントリーしなかったがWHIPコンテストで観客を沸かせた“TATSUYA”小林達哉。

”BUPPER”加賀真一
今大会はジャッジとして参加の元祖WHIPキング“BUPPER”加賀真一もヒネリまくり。

GENKI
優勝は“GENKI”渡辺元樹。世界中のショーで飛び回るGENKIはやはり魅せることに長けている。異次元のヒネリを連発。

GO BIG
ちなみにこちらもジャッジは観客の投票制。子供たちも結果が出るまでドキドキだろう。

さらに限定特別観覧席購入者のみの特典、MCワダポリスとビッグウェーブさんことBUTCHの案内によるピットクルージングツアー。

GO BIG
普段なかなか見られないピットエリアでのライダーの顔が見られたり、豆知識や裏話もたくさんあり、参加者は喜びと驚きの連続だったようだ。

そして本戦はこれまでになかった方法、トーナメント方式で行われた。前日に行われた予選を勝ち上がった10名はこちら。

釘村孝太
予選1位(86.5pt)“KOTA”釘村孝太
コンペティションでもショーでも風でも雨でもいつも全開で攻め続けているKOTA。大技シャオリンフリップやKODフリップの完成度もますます上がっていた。

”GENKI”渡辺元樹
予選2位(86.3pt)“GENKI”渡辺元樹
WHIPキングはフリップ系の技ももちろんスゴい。コンボ系のフリップトリックも入れてきて予選2位。

”DAICE”鈴木大助
予選3位(83.4pt)“DAICE”鈴木大助
GO BIG 5Timesチャンピオン。クォーターパイプの無い今回、フレアがなくてもさすがの3位通過。

”GI3”片桐弘貴
予選4位(82.2pt)“GI3”片桐弘貴
単身FMX留学中のオーストラリアから緊急帰国。キン肉マンのテーマに乗ってある意味一番勢いのあるライダー。勢いだけでなく技もデカい。

”HTC”高橋仁
予選5位(81.8pt)“HTC”高橋仁
予選では新技ダブルグラブフリップを出さずに5位。この時点でHTCの優勝を予想していた人は何人いただろう。

”DAICHI”江原大地
予選6位(80.8pt)“DAICHI”江原大地
5月に行われた若手主体の大会で優勝のダイチ。見た目もライディングもワイルド。

”GONTA”鈴木耕太
予選7位(79.3pt)“GONTA”鈴木耕太
独特の感性をライディングでも表現するGONTA。BMXなどの自転車の技、タックノーハンドを取り入れたフリップトリックがスタイリッシュ。

”SOLA”江原大空
予選8位(76.6pt)“SOLA”江原大空
弱冠19歳若手のホープSOLA。技のピークの時間が長く、今回はワンハンドバックフリップもメイクしてしっかり攻めていた。

”KENNY”上野祐己
予選9位(74.4pt)“KENNY”上野祐己
元祖ランプキッズもまだまだ攻め続ける。NACNACフリップもメイクして9位。

”FUMA”目黒風馬
予選10位(69.1pt)“FUMA”目黒風馬
フリップトリックこそ無いものの大きくスタイリッシュなレギュラートリックで初のGO BIG予選通過。決勝トーナメント1回戦で憧れのDAICEとの対決を楽しんでいたようだ。

この日この場所でしか感じられないドラマの連続

決勝トーナメントは1回戦から熱い戦いの連続だった。
全てのライダーが自分の限界ギリギリまで攻めているからこそ生まれる空気やドラマチックな感動が観るもの全ての心に焼き付いただろう。

GO BIG
1回戦DAICHI VS GONTA。見事なロウドバフリップを決めたかに思えたが着地で転倒してしまったGONTA。
担架で運ばれるも心配する観客へ向けてOKサイン。
この後DAICHIのRUN後なんとか戻ってきてオーディエンスに感謝の気持ちを現す姿にGONTAの人間性を垣間見ることができ感動を覚えた人が多くいただろう。

エクストリーム系SPORTSにはどうしてもつきもののクラッシュ。出来るだけそのダメージを軽減させる為にもGO BIGは必ず土のランディングで行われる。

GO BIG
準決勝DAICE VS HTC。
HTCにとってGO BIGを制する為に超えなければならなかった強くて大きな壁DAICE。
師匠であり同じ場所に拠点を置くメイトでもあるDAICEとHTC。この日ついに師匠を超えた瞬間、その二人の姿。

決勝戦KOTA VS HTC

決勝戦KOTA VS HTC

決勝戦KOTA VS HTC

前日の予選からここまで風雨に悩まされることなくほぼベストコンディションの中行われてきたGO BIG 2017。
決勝戦を前に風が強くなってきた。全てのライダー達の本気の攻めによる手に汗握るバトルの連続にFMXの神様も少しクールダウンさせようとしたのかもしれない。
その為、決勝は3本づつのRUNで勝負を決めることとなった。
二人がどのトリックをチョイスして出してくるのか、誰もが息をのむ中先攻のHTCはまずWHIPを出してきた。続いてKODインディフリップ、そして最後はやはり勝つ為には出さなければならないダブルグラブフリップを見事にメイク。
それに対しKOTAはどんな技を出すのか?誰もが見守る中1本目に出したトリックはHTCと同じWHIPだった。
考えすぎかもしれないがこういったところにKOTAのFMXライダーとしての心意気のようなものを感じた。
そして2本目、3本目とこの日誰よりも大きく完璧なコルドバフリップとKODフリップをメイクした。

10 YEARS FROM NOW

10YEARS FROM NOW

結果は3対2の僅差でHTCが勝者になったが本当に互角の戦いだった。
ジャッジする人間が変われば違う結果が出ていてもおかしくないくらいだったが今回はGO BIG特有のジャッジポイント「いかに自分の限界まで攻めているか」という点で、世界でも東野TAKA他数人しかメイクしていないダブルグラブフリップという新技を強風の中トライして決めたHTCに軍配が上がったのかもしれない。

GO BIG
10年目を終え、新たなスタートラインに立ったGO BIG。
言葉で伝えなければいけないが、どんな言葉を使っても足りないほどの数々のドラマがこの日もあった。
今回行けなかった、行かなかった方々も次回は是非ともブーツやヒールを長靴やスニーカーに履き替え会場に足を運んでもらいたい。
本気の人達が生み出す素晴らしい場面に出会える大会に。

今から10年後のGO BIGもまた見てみたい。
そう思える10年目のGO BIGであった。

photo & text:Akihiro Oshio
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京都市出身 19歳の時、初めて乗ったオフロードバイクでダートを走る楽しさを知る。 当時のスーパークロスなどでのアクションジャンプに惹かれつつFMXを知り佐藤英吾に出会い、この人の力になりたいと思う。 現在地道にFMX普及の為カメラ片手に活動中。
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GO BIG 2017 開催概要

名称:GO BIG 2017【全日本フリースタイルモトクロス(FMX)選手権】
主催:GO BIG 実行委員会
開催日時:2016年 11月 4日(土) 10:00 開場 10:30 開演 ウエストポイント・オフロードヴィレッジ [埼玉県川越市中老袋 150-1]
後援:バンザイマガジン

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