2023年4月22日(土)、東京都八王子市のエスフォルタアリーナ八王子にて「IFSC ボルダーワールドカップ 八王子 2023」の女子決勝が開催され、アメリカのブルック・ラバトゥが優勝に輝いた。日本人では唯一決勝に進んだ松藤藍夢が3位に食い込んだ。
女子決勝には準決勝を勝ち抜いた、ハンナ・ミュール(ドイツ)、 ラク・チリョ (中国)、ブルック・ラバトゥ(アメリカ)、松藤 藍夢(日本)、 アヤラ・ケレム(イスラエル) 、ミア・クランプル(スロべニア)の6名が名を連ねた。
決勝では第1課題から難関な課題に対して多くの選手が苦しむ様子がうかがえた。そんな中でも準決勝1位通過のハンナ・ミュール(ドイツ) が一撃で課題をクリア、3位で通過したブルック・ラバトゥも完登し、2名が幸先の良いスタートを切った。
第2課題は完登者が出なかったものの、ブルック・ラバトゥはダイナミックな登りでトップホールドまで手をかけ、完登まであと一歩に迫るなどポテンシャルの高さを見せつけた。第3課題も同様に多くの選手が課題をクリアできず苦しんでいたが、ブルック・ラバトゥが唯一の完登。2位のハンナ・ミュールを上回り、優勝を大きく手繰り寄せた。
順位が決まる第4課題でも、難関な課題に対してブルック・ラバトゥは高い身体能力と発想力を見せて完登。その瞬間に3完登で優勝が決定、満面の笑みと同時に目には涙を浮かべて喜びをあらわにした。
松藤藍夢の完登はなかったが、ゾーン獲得数とアテンプト数の差で見事3位で銅メダルを獲得。初のW杯表彰台に登り、今シーズンW杯開幕戦で大きな弾みをつけた。また、日本人選手の 野中生萌、森秋彩、伊藤ふたば、久米乃ノ華、関川愛音、仲川瑠、葛生真白の7名は準決勝にて敗退となった。 世界ランキング1位のナタリア・グロスマン(アメリカ)も準決勝で敗退する波瀾の結果となった。
八王子の地で、シーズン開幕戦として始まったボルダーW杯。
来年のパリ五輪に向けて今シーズンの結果が直結していくことは間違いない。世界の舞台で躍動する日本人選手と共に、各国の選手の活躍も楽しみにしながら引き続き注目していきたい。
大会結果
女子決勝
1位:ブルック・ラバトゥ(アメリカ)
2位:ハンナ・ミュール(ドイツ)
3位:松藤藍夢(日本)
4位:アヤラ・ケレム(イスラエル)
5位:ラク・チリョ(中国)
6位:ミア・クランプル(スロべニア)
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skate歴代全日本チャンピオンを下した志治群青が初優勝!「第3回マイナビスケートボード日本OPEN supported by Murasaki Sports」パーク男子決勝2025.04.112025年4月5日(土)〜4月6日(日)に「第3回マイナビスケートボード日本OPEN supported by Murasaki Sports」 が鵠沼海浜公園スケートパークにて開催された。女子同様に昨年パリオリンピックを含む世界的に大きな注目を集めたシーズンが終わり、次は3年後に開催されるロサンゼルスオリンピックを見据える中、新たなスタートが切られた2025年シーズンの公式開幕戦が今大会。 今大会には国際大会派遣選手の選出や2025年強化指定選手の選考に関わる重要な大会ということもあり全国から実力者たちが集まったが、大会当日は雨天が見込まれていたため、本来予定されていた準決勝を取り止め、予選の結果から上位8名が決勝に出場する展開に。その中で迎えた決勝日は女子決勝後に雨天に見舞われ大会は中断。雨雲が去りパーク内の状況が元に戻るまでに4時間を要し、選手たちはコンディションを整えるのに苦戦を強いられたが決勝では見事なライディングを見せていた。 そんな本決勝は全38名の出場者の中、予選を勝ち上がった合計8名で競われ、スタートリストは溝手唱太、永原悠路、岡田光瑠、西川有生、徳田凱、櫻井壱世、志治群青、猪又湊哉の順となった。 大会レポート 【ラン1本目】 櫻井壱世のライディング©︎WSJ 女子カテゴリーと同様に今大会の決勝は、45秒のラン3本目のうち1本のベストスコアが採用され、一度ボードからを落ちた時点でランを続行できなくなるフォーマット。一発目から攻めのライディングで後続にプレッシャーをかけるか、後半で攻めのトリックにトライするかなど戦略が分かれる中で、いずれも1本目は走り切ってフルメイクすることでしっかりスコアを残しておきたい。 永原悠路のライディング©︎WSJ まず決勝1本目から好調なライディングを見せたのはパリオリンピック日本代表の永原悠路。過去に日本OPENでは2大会で優勝している永原はハイエアーと回転技そしてグラインドトリックを入れ込んだハイレベルなランを見せる。トランスファーでの長い「フロントサイドノーズスライド」や「キックフリップインディグラブ」、ディープエンドでの「バックサイド540」、そして最後はエクステンションでの「キャバレリアルディザスター」をタイムギリギリで決め切りフルメイクすると68.55ptをマークし幸先の良いランを見せる。 櫻井壱世のライディング©︎WSJ その永原を超える攻めのライディングを見せたのは世界大会のSimple Sessionで2年連続準優勝に輝いた櫻井壱世。櫻井は多くのトリックバリエーションを豪快なライディング落とし込んだランを見せる。ディープエンドでの「バックサイド540」や、トランスファーでの「バックサイドテールスライド」。コーピングでの長い「フロントサイドフィーブルグラインド」やエクステンションでの「キャバレリアル540」を決め切りフルメイクすると70.02ptをマークし暫定1位に躍り出た。 そして今回は上位には食い込めなかったものの今後の活躍に注目が集まっているのは今大会最年少ファイナリストとなった西川有生。バーチカル仕込みの見事なグラインドトリックとエアーが特徴的な彼は、ディープエンドでの豪快な「キャバレリアル720」をはじめ、トランスファーでの「キックフリップインディグラブ」、エクステンションでの「バックサイド540」、そして最後には「キックフリップ540」をトライするも惜しくも転倒。そんな彼のスコアは転倒したにも関わらず51.47ptをマーク。決めきっていれば上位に食い込むライディングだっただろう。その後は残念ながらスコアアップができなかったが今後が注目のライダーだ。 【ラン2本目】 永原悠路のライディング©︎WSJ 2本目では、櫻井や永原が残したスコアがプレッシャーとなってか、大半のライダーたちがスコアアップに苦戦する展開となり、ラスト1本で確実に高得点を残さないと表彰台争いは難しい状況となった。 そんな中でしっかり1本のミスを修正して、スコアを伸ばしてきたのは溝手唱太。ラン1本目では63.99ptと順調な滑り出しを見せた溝手は、2本目でトランスファーでの「バリアルフリップインディグラブ」、コーナーでの丁寧な「フロントサイドフィーブルグラインド」、そしてトランスファーではギャビン・ボドガーさながらの「アラウンドザワールド」などをメイクし、1本目をアップデートしたライディングでスコアを67.46ptまで引き上げた。 永原悠路のライディング©︎WSJ そしてその溝手の後にライディングし更なるスコアアップを目指したのが永原。1本目をアップデートし、トンネル上のコーナーで飛び切り「キックフリップインディグラブ」や、エクステンションでのハイエアーの「アリーウープ」、そしてディープエンドでは1本目と同様のクリーンな「バックサイド540」、最後は「キックフリップ」からのワントリックにトライするも惜しくも失敗し転倒。それでも65.38ptをマークしラストランに望みを繋いだ。 そしてここで触れておきたいのが徳田凱。独自のスタイルで観客を魅了する彼はコーナーでの「フロントサイドノーズグラインド」、そしてディープエンドでの「バックサイドノーズスライド」などで今回も会場を沸かせた。惜しくも2本目で転倒があり3本目はDNSとなったが、怪我から復帰した若きスタイラー大会再参戦は感慨深いものがあった。今大会は良い結果で終われなかった彼だが今後の活躍に期待したい。なお2本目を終えた時点では暫定1位が櫻井、2位が永原、3位が溝手の順となったが、予選を1位で通過している猪又湊哉と同じく2位通過の志治群青がラスト1本でどのようなライディングを見せてくるかで大きく順位が変わることが想定されたため最後まで分からない試合展開となった。 【ラン3本目】 志治群青のライディング©︎WSJ 最終ランとなった3本目は多くのライダーがミスをしてスコアアップができない状態になる中、表彰台争いには大きな変化が見られた。まずは3本目のランでベストスコアを残したのは岡田光瑠。1本目や2本目でなかなかスコアが伸び悩む中、最終ランではスムーズで完成度高いライディングで繋ぐ。トランスファーでの「ステイルフィッシュグラブ」やディープエンドでは「バックサイド540」「バックサイドテールスライド」、そして永原同様にトンネル上のコーナーで飛び切り「キックフリップインディグラブ」などを綺麗に決めるもラストトリックで失敗。52.36ptとスコアを伸ばしたが惜しくも6位で大会を終えた。 そして3本目で一番で気になるのは猪又と志治がどう表彰台争いに食い込んでくるのかだ。惜しくも暫定トップ3の櫻井、永原、溝手がスコアアップできない中で、順番が回ってきたのは志治群青。 志治群青のライディング©︎WSJ 志治はまずエクステンションの「バリアルフリップディザスター」でライディングを始めると、コーナーで「フロントサイド540」、トランスファーでの「フロントサイド360」と「バックサイドスミスグラインド」。そして彼の特徴的なトリックでもある豪快な「ジュードーエアー」。さらにはギャップ越えの 「バックサイド360」を決め切りフルメイクでランを終えた。自身のパーフェクトランには志治本人も両手を挙げて喜んだ。そんな彼の見事なランには76.26ptがスコアされ、一気に暫定1位に躍り出た。 そして最後に逆転が必要とされたプレッシャーのかかる状況でのランを迎えたのは猪又湊哉。予選では唯一の90点台を叩き出した彼だが、決勝では1本目の66.20ptをトップスコアとして最終ランに挑んだ。自分の持つトリックを出し切ることができれば優勝の可能性もあったが、ランの前半にディープエンドでの「バリアルフリップバックサイド540」に失敗。この瞬間に志治群青の優勝が決まった。昨年の全日本選手権では3位となった彼だが、今大会での優勝は初めて。永原や猪又など歴代全日本チャンピオンがいる中で見事表彰台の頂点の座を獲得した。 大会結果 左から櫻井、志治、永原の順©︎WSJ 1位 志治 群青 / 76.26pt2位 櫻井 壱世 / 70.02pt3位 永原 悠路 / 68.55pt4位 溝手 唱太 / 67.46pt5位 猪又 湊哉 / 66.20pt6位 岡田 光瑠 / 52.36pt7位 西川 有生 / 51.27pt8位 徳田 凱 / 14.55pt 最後に ©︎WSJ 今大会を通して感じられたのは男子パーク種目の急激な成長だ。パリオリンピックには永原悠路だけの出場となったが次回のロサンゼルスオリンピックでは3人出場している未来が想像できるくらい各ライダーのレベルアップが感じられる大会であった。 一方で、今後これらのライダーたちを差別化するのは高難度のトリック習得はもちろんのこと、いかに高い精度で常に披露できるのかなのだと、今までも言及してきたことが再認識させられた大会でもあった。今後彼らが切磋琢磨し合い、自分たちが持つベストトリックを世界最高峰の場で決め切ることで、海外のトップライダーたちの牙城を崩す未来も期待したい。 2025年も早速勢力図に新たな変化も見られたスケートボードの大会シーズン。ここからロサンゼルスオリンピックに向けて歩む3年が、日本の男子パーク種目シーンの新たな進化を生むことを期待しながら今シーズンも彼らの活躍を追っていきたい。
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skate怪我を乗り越えて強さを見せた草木ひなのが優勝!「第3回マイナビスケートボード日本OPEN supported by Murasaki Sports」パーク女子決勝2025.04.092025年4月5日(土)〜4月6日(日)に「第3回マイナビスケートボード日本OPEN supported by Murasaki Sports」 が鵠沼海浜公園スケートパークにて開催された。昨年パリオリンピックを含む世界的に大きな注目を集めたシーズンが終わり、次は3年後に開催されるロサンゼルスオリンピックを見据える中、新たなスタートが切られた2025年シーズンの公式開幕戦が今大会。 今大会にはオリンピックメダリストである四十住さくらや開心那が欠場した一方で、国際大会派遣選手の選出や2025年強化指定選手の選考に関わる重要な大会ということもあり全国から実力者たちが集まった。大会当日は決勝日に雨天が予想されたことから、本来予定されていた準決勝を取り止め、予選の結果から上位8名が決勝に出場する展開に。 そんな本決勝は全17名の出場者の中、予選を勝ち上がった合計8名で競われ、スタートリストは福田碧、加藤渚都夏、小川希花、貝原あさひ、鷹野芙由佳、藤井雪凛、能勢想、草木ひなのの順となった。 大会レポート 【ラン1本目】 貝原あさひのライディング ©︎WSJ オリンピックや国際大会と同様に今大会の決勝は45秒のラン3本目のうち1本のベストスコアが採用されるフォーマットで行われた。このフォーマットは一度ボードからを落ちた時点でランを続行できなくなるため、後半で攻めのトリックにトライするためにも1本目は走り切ってフルメイクすることでまずベースとなるスコアを残しておきたいところ。 決勝1本目最初の滑走者となったのは福田碧。福田は様々なグラインドトリックをベースに取り入れた全体的に流れるようなライディングを見せる。エクステンションでの「ブラントtoフェイキー」やコーピングでの「フロントサイドリップスライド」を決め切りフルメイクすると62.85ptをマークし幸先の良いランを見せた。 そんな福田の後に滑走しフルメイクしたのは加藤渚都夏。彼女はトランスファーでの「アリウープ」をメイクすると、エクステンションでの「リーンエアーtoテール」やコーピングでの「バックサイドボードスライド」などスタイルのあるライディングで59.19ptをマークした。 貝原あさひのライディング ©︎WSJ 他のライダーたちがなかなかスコアを伸ばせずにいる中で、彼女たちを上回るスコアをマークしてきたのは貝原あさひ。まずはディープエンドでの豪快な「マドンナ」をはじめ、エクステンションでの「ノーリーバックサイドディザスター」、そして最後には「フェイキーオーリーtoバリアルフリップ」をメイクして66.47ptをマークし次のランへ繋いだ。 草木ひなののライディング ©︎WSJ 今大会予選1位通過で決勝に挑む草木ひなのは、1本目から暫定1位のスコアをマークするライディングを見せる。全体的に余裕を感じさせるスタイルで一つ一つ丁寧にトリックをこなしていく彼女はトランスファーでの「アリーウープサランラップ」や、コーピングでの「バックサイドスミスグラインド」、そして最後はディープエンドで「フロントサイドロックンロールスライド」をメイクしてランを終えると67.88ptをマーク。2本目以降でのライディングでのアップデートを予感させるライディングで1本目を終えた。 【ラン2本目】 藤井雪凛のライディング ©︎WSJ 2本目では、1本目でのスコアが伸び悩んだライダーたちが大きく順位を上げる展開に。やはり1本目では少し体が温まっておらず思ったようなライディングをできていないような様子も見受けられたが、この2本目のランではラスト1本の前に高得点を叩き出したいという強い気持ちも感じられた。 まずは1本のミスを修正して、スコアを伸ばしてきたのは小川希花。ラン1本目では終始見事なライディングを見せるもタイムアウトギリギリの最後で転倒し、57.27ptと惜しくもスコアを伸ばしきれなかった。2本目ではミスを修正し、ディープエンドの「バックサイドスミスグラインド」、コーピングでの「フロントサイドスミスグラインド」や「バックサイドフィーブルグラインド」そして「バックサイドブラントスライド」など1本目で見せたハイレベルなトリックをクリーンに決めて最後までフルメイクし、スコアを63.87ptまで引き上げた。 そして小川と同様に1本目のランをアップデートしてきたのは鷹野芙由佳。1本目では惜しくも途中で転倒してしまいスコアを伸ばせなかった彼女だが、2本目ではトランスファーの「フロントサイドリップスライド」を皮切りにディープエンドでの「バックサイドスミスグラインド」、そして「フロントサイドボーンレス」など最後までトリックを決め切りフルメイクで終えるとスコアを64.61ptまで引き上げた。 藤井雪凛のライディング ©︎WSJ さらにその鷹野よりも大きくスコアをアップデートして見せたのが、ここ鵠沼スケートパークをローカルとしている藤井雪凛。1本目では中盤にトランスファーでの「アリーウープノーズグラブ」で転倒してしまったものの2本目では見事に修正。トランスファーでの「キックフリップインディグラブ」をはじめ、「アリーウープノーズグラブ」、そして決勝では彼女だけが見せた中央のスパインからサイドのボウル面へのトランスファーをメイク。トリックだけではなく終始高いエアーとスムーズなライディングでランをまとめて66.93ptまでジャンプアップした。2本目を終えてラスト1本を前に暫定では1位が草木、2位が藤井、3位が貝原の順となり、この時点では上位3名が4点以内でひしめき合っていたことから、ラスト1本でどのようななトリックを見せるかに注目が集まった。 【ラン3本目】 草木ひなののライディング ©︎WSJ 最終ランとなった3本目はほとんどのライダーがベストランにトライするもミスが続きスコアアップができない状態に。そんな3本目のランでベストスコアを残したのは能勢想。予選では70.52ptをマークし草木に続き2位で決勝へ駒を進めた彼女。1本目でのミスから1本ずつスコアアップして見せた中、最終ランでは様々なセクションを見事に使いライディング。特にディープエンドでは「バックサイドテールスライド」「フェイキーキャバレリアル」そして「バックサイドバリアルフリップ」などを綺麗に決めて64.06ptとスコアを伸ばしたが惜しくも5位で大会を終えた。 そして気になるのは貝原、藤井、そして草木によるトップ3争い。まず貝原がさらにスコアを伸ばすべく終盤で「フェイキーバリアルフリップインディグラブ」にトライするも転倒し惜しくもスコアアップならず。続いて藤井は前半で「キックフリップインディグラブ」に失敗し残念ながら草木に迫ることはできなかったが、その後藤井は時間外で本来メイクしたかったディープエンドでの「マックツイスト」をギャラリーに向けてメイクし会場を盛り上げた。 草木ひなののライディング ©︎WSJ そして暫定1位の座を死守しウィニングランとなった草木ひなの。1本目と2本目ではメイクしていなかったディープエンドでの「バックサイド540」をセカンドトリックで綺麗に決め切ると、その後はコーピングでの「バックサイドスミスグラインド」や、ディープエンドの長い「フロントサイドロックンロールスライド」などをメイクしフルメイクでランを終えた。そのスコアはなんと80.11ptと後続を大きく引き離し、見事完全優勝を成し遂げた。 草木はその後自身の決勝ランを振り返り、「(藤井)雪凛ちゃんがマックツイストを決めていたからバックサイド540を決めたいと思った。」と話していたが、草木は現在肩を痛めており今大会には痛み止めを飲みながら挑むほど状態だったという。この背景から改めてライバルたちの存在の大きさや、お互いに高め合うことができるスケートボードの持つカルチャーの素晴らしさを再認識させられた大会だった。 大会結果 左から藤井、草木、貝原の順 ©︎WSJ 1位 草木 ひなの / 80.11pt2位 藤井 雪凛 / 66.93pt3位 貝原 あさひ / 66.47pt4位 鷹野 芙由佳 / 64.51pt5位 能勢 想 / 64.06pt6位 小川 希花 / 63.83pt7位 福田 碧 / 62.85pt8位 加藤 渚都夏 / 59.19pt 最後に ©︎WSJ 今大会を通して感じたのは国内女子カテゴリー全体の競技力の底上げだった。それはトリックレベルのことに限って差しているのではなく、ルーティンの構成からライディング中でのトリック遂行力など包括的に見てライダーたち全体のレベルが上がっていると感じとれた。 その背景を考察すると、このスケートボード・パーク種目が持つお互いを称え合い高め合う点がこの競技レベルの底上げに影響していると筆者は考える。オリンピアンを含め多くのライダーが日本を飛び出し、世界で活躍することで年々レベルアップしていくこの日本のスケートボードシーンだが、そういった世界で活躍するライダーが日本国内で練習したり、大会に出場したりと国内のライダーとの接点が増え、お互いに切磋琢磨していることが日本全体のレベル向上に繋がっているのではないだろうか。 さあ今年も始まったスケートボードの大会シーズン。3年後に控えるロサンゼルスオリンピックに向けてはもちろんのこと、競技レベルが上がっているこの日本でオリンピアンを含めたシーンを牽引するライダーに対して国内のライダーたちがどのように台頭してくるのかにも注目していきたい。
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others世界11カ国・80名の世界トップアスリート出場決定! 世界最高峰のアクションスポーツの国際競技会、関西初上陸「X Games Osaka 2025」2025.04.08アクションスポーツ界で最も注目される国際競技大会「X Games」が、関⻄初上陸。2025年6月20日(金)、21日(土)、22日(日)の3日間、スケートボード、BMX、Moto X(フリースタイルモトクロス競技のモトエックス)の世界トップアスリートたちが「京セラドーム大阪」に集結する。 そして本日「大阪・関⻄万博」会場内で行われた記者発表会では、今大会に出場する世界11カ国・80名のアスリートも発表された。なお本記事ではアスリート一覧と各日の実施競技についてもお知らせする。 そしてなんと今大会では大阪府在住の小中学生を無料招待!大人1名につき、最大3名まで無料で入場が可能となっている。詳しくはオフィシャルサイトをご覧あれ。 世界トップクラスのアスリートたちによる圧巻のパフォーマンスを、間近で体感できる貴重なチャンス。ぜひ会場で、その熱気と興奮を肌で感じて欲しい!「大阪・関⻄万博」で世界が大阪に注目する2025年、アクションスポーツの熱狂が大阪をさらに盛り上げること間違いない! スケートボード、BMX、Moto X 世界の頂点が大阪に集結。 男子 スケートボード ストリート 男子 スケートボード ストリート 白井空良 ©Brett Wilhelm/X Games 「X Games Chiba 2024」で初の金メダルを獲得した白井空良、同じく2024年に銀メダルを獲得し た根附海龍、「X Games Chiba 2023」で初出場にして優勝を果たした小野寺吟雲、「X Games Chiba 2022」で銀メダルの池田大暉、スピード感あふれるランで注目を浴びる佐々木音憧。そし てパリ五輪で銀メダルの二刀流スケーターのジャガー・イートン、ブラジルが誇るスケートボードの王者ケルビン・ホフラー、フランスのオーレリアン・ジローなどが出場。世界のストリートを魅了するライディングに注目。 女子 スケートボード ストリート 女子 スケートボード ストリート ⻄矢椛 ©Trevor Brown, Jr./X Games パリ五輪で金メダルを獲得し一躍注目を集めた吉沢恋、同じくパリで銀メダルを獲得した赤間凛音、東京五輪でスケートボード界に新たな歴史を刻んだ⻄矢椛、「X Games California 2024」で 金メダル獲得の伊藤美優、東京五輪で銅メダルの中山楓奈、2023年のスケートボードストリート世界選手権で優勝を飾った織田夢海、「X Games Chiba 2024」で金メダルのクロエ・コベルなどが出場。日本人選手たちが活躍する女子ストリート、白熱の戦いをお見逃しなく。 男子 スケートボード パーク 男子 スケートボード パーク 永原悠路 ©Brett Wilhelm/X Games パリ五輪で日本人初の「キックフリップボディーバリアル540」の大技を成功させた永原悠路、「 X Games Chiba 2024」で金メダルのトム・シャー、同じく2024年に銀メダルのキーラン・ウリーなどが出場。高さ・スピード・テクニックのすべてを兼ね備えたパークに注目だ。 女子 スケートボード パーク 女子 スケートボード パーク 四十住さくら ©Brett Wilhelm/X Games 力強いエアトリックで「X Games Chiba 2023」金メダルの開心那、「X Games Chiba 2022」で金 メダルの四十住さくら、パリ五輪代表の草木ひなの、イギリスと日本の二重国籍を持ち「X Games Chiba 2024」で銀メダルのスカイ‧ブラウン、日本人の母を持ち「X Games Chiba 2024」とパリ五輪で金メダルのアリサ‧トルーが出場。圧巻のエアパフォーマンスに注目。 男子 スケートボード バート 男子 スケートボード バート 芝田モト ©Dave Camara/X Games 2024年の「トニー・ホーク・バート・アラート」で「900(2回転半)」を連続3回成功させた河上恵蒔をはじめ、「X Games Chiba 2024」で銀メダルの猪又湊哉、同じく2024年のベストトリッ クで銀メダルの芝田モト、「X Games Ventura 2024」で金メダルのトム・シャー、「X Games Chiba 2024」で金メダルのギー・クーリなどがラインナップ。超人的なエアトリックに圧倒されること間違いなし。 女子 スケートボード バート 女子 スケートボード バート 長谷川瑞穂 ©Trevor Brown, Jr./X Games 「Xゲームズ」日本大会では初開催となる女子バートには、「X Games Ventura 2024」でバートとベストトリックの2種目で銀メダルの⻑谷川瑞穂、同大会で銅メダルの貝原あさひ、今大会のパークにも出場するスカイ・ブラウン、アリサ・トルーらがエントリー。世界トップの女子スケーターが見せる迫力の空中戦をお楽しみに。 BMX ストリート BMX ストリート ギャレット・レイノルズ ©Brett Wilhelm/X Games 「X Games Chiba 2024」で金メダルのギャレット・レイノルズ、銀メダルのデボン・スマイリー、銅メダルのカレッジ・アダムスが揃って出場決定。そのほか「X Games Ventura 2024」で 金メダルのケビン・ペラザなどが登場。テクニックとスタイルがぶつかるBMXストリートの最前線に注目だ。 BMX パーク BMX パーク 中村輪夢 ©Brett Wilhelm/X Games 日本のBMX界をリードする中村輪夢(X Games Chiba 2024 銀メダル)を筆頭に、「X Games Chiba 2024」金メダルのローガン・ーティン、銅メダルのマーカス・クリストファー、パリ五 輪で銀メダルのキーラン・ライリー、銅メダルのアンソニー・ジャンジャンらが出場。スピードと迫力が交差する、世界最高峰の空中戦は必見。 BMX パーク ベストトリック BMX パーク ベストトリック ダニエル・サンドバル ©Brett Wilhelm/X Games 「X Games Chiba 2024」で金メダルのダニエル・サンドバル、銀メダルのジェレミー・マロットらが出場。アイデアとテクニックが勝負のベストトリックは驚きの連続。 BMX フラットランド BMX フラットランド 内野洋平 ©Brett Wilhelm/X Games Ucchie (ウッチー)の愛称で親しまれている日本のレジェンド内野洋平をはじめ、「X Games Chiba 2023」で金メダルの片桐悠、同大会で銀メダルのジーン・ウィリアム・プレボスト、銅メダルのマティアス・ダンドワ、「X Games Chiba 2022」で銅メダルの佐々木元ら世界屈指のテクニシャンが集結。地上で繰り広げられるアートのようなトリックを体感あれ。 Moto X ベストトリック Moto X ベストトリック 東野貴行 ©Brett Wilhelm/X Games 数々の世界大会で優勝を果たしてきた日本のレジェンド東野貴行、同じく日本を代表するフリースタイルモトクロスライダー渡辺元樹、「X Games Chiba 2024」金メダルのロブ・アデルバーグ をはじめ、世界を代表するライダーたちが参戦。会場の熱気は最高潮に達すること間違いない。 X Games Osaka 2025 出場アスリート一覧 男子 スケートボード バート 河上恵蒔 ©Brett Wilhelm/X Games *主要選手のみ掲載。その他出場予定選手はオフィシャルサイトから確認可能 スケートボード・ストリート種目 白井 空良 / 日本 (男子)根附 海龍 / 日本 (男子)小野寺 吟雲 / 日本 (男子)池田 大暉 / 日本 (男子)佐々木音憧 / 日本 (男子)ジャガー‧イートン / アメリカ合衆国 (男子) -東京オリンピック銅メダリストケルビン‧ホフラー / ブラジル (男子) -東京オリンピック銀メダリストクリス‧ジョスリン / アメリカ合衆国 (男子)吉沢 恋 / 日本 (女子)- パリオリンピック金メダリスト西矢 椛 / 日本 (女子)- 東京オリンピック金メダリスト赤間 凛音 / 日本 (女子)- パリオリンピック銀メダリスト中山 楓奈 / 日本 (女子)- 東京オリンピック銅メダリスト伊藤 美優 / 日本 (女子)織田 夢海 / 日本 (女子)クロエ・コベル / オーストラリア (女子) スケートボード・パーク種目 キーガン・パルマー / オーストラリア (男子)- 東京・パリオリンピック金メダリスト開 心那 / 日本 (女子)- 東京・パリオリンピック銀メダリストアリサ・トルー / オーストラリア (女子)- パリオリンピック金メダリスト四十住 さくら / 日本 (女子)- 東京オリンピック金メダリストスカイ・ブラウン / イギリス (女子)- 東京・パリオリンピック銅メダリストトム・シャー / アメリカ合衆国 (男子)- パリオリンピック銀メダリスト永原 悠路 / 日本 (男子)草木ひなの / 日本 (女子) スケートボード・バート種目 トム・シャー / アメリカ合衆国 (男子)ジミー・ウィルキンス / アメリカ合衆国 (男子)ギー・クーリー / ブラジル (男子)エリオット‧スローン / アメリカ合衆国 (男子)芝田 モト / 日本 (男子)河上 恵蒔 / 日本 (男子)猪又 湊哉 / 日本 (男子)⻑谷川 瑞穂 / 日本 (女子)貝原 あさひ / 日本 (女子)ミア‧クレッツァー / オーストラリア (女子)スカイ・ブラウン / イギリス (女子) BMXストリート種目 ジョーダン‧ゴドウィン / イギリスボイド・ヒルダー / オーストラリアデボン・スマイリー / アメリカ合衆国ギャレット・レイノルズ / アメリカ合衆国フェリックス・フランゲンバーグ / ドイツ BMXパーク種目ローガン・マーティン / オーストラリア- 東京オリンピック金メダリストキーラン・ライリー / イギリス- パリオリンピック銀メダリストアンソニー‧ジャンジャン / フランス- パリオリンピック銅メダリストケビン・ペラザ / メキシコ中村 輪夢 / 日本ダニエル‧サンドバル / アメリカライアン・ウィリアムズ / オーストラリア (ベストトリックのみ) BMXフラットランド種目 内野 洋平 / 日本片桐 悠 / 日本佐々木 元 / 日本ジーン‧ウィリアム‧プレボスト / カナダビッキー‧ゴメス / スペインマティアス‧ダンドワ / フランスケビン・ペラザ / メキシコ MOTO X (フリースタイルモトクロス種目) ジャクソン・ストロング / オーストラリアロブ‧アデルバーグ / オーストラリア ジュリアン・ヴァンスティッペン / ベルギー東野 貴行 / 日本渡辺 元樹 / 日本 開催概要 名 称(英 語):X Games Osaka 2025名 称(日本語):Xゲームズ大阪2025名 称(読み方):エックスゲームズ オオサカ ニセンニジュウゴ 日程: 6月20日(金)【公式練習】 6月21日(土)【決勝】開場9:30 / 開演9:45 / 終演20:00 予定 女子 スケートボード ストリート男子 スケートボード バート女子 スケートボード バートBMX パークBMX パーク ベストトリック Moto X ベストトリック 6月22日(日)【決勝】開場9:30 / 開演9:45 / 終演19:15 予定 男子 スケートボード ストリート男子 スケートボード パーク女子 スケートボード パーク男子 スケートボード バート ベストトリック BMX ストリートBMX フラットランドMoto X デモンストレーション※金曜は公式練習日のため関係者‧招待客‧取材媒体のみ。一般入場は土曜と日曜の2日間です。 ※時間は変更となる場合があります。会場: 京セラドーム大阪(KYOCERA DOME OSAKA)主催: X Games Osaka 2025 組織委員会主管: 大阪府、大阪市協賛: ムラサキスポーツ、モスフードサービス、ミツカン NEW酢SHOT 観戦チケットについて VIP 100,000円※優先入場 ※大会特典グッズ付き(スケートデッキ+Tシャツ+キャップ) ※競技コースツアー付き※アスリートハイタッチエリア入場可 ※VIP専用アリーナ立ち見観戦エリア入場可 ※VIP専用スタンド着席エリア入場可 プレミアム 35,000円※優先入場 ※大会特典グッズ付き(Tシャツ+キャップ) ※アスリートハイタッチエリア入場可 ※プレミアム専用アリーナ立ち見観戦エリア入場可 ※プレミアム/SS専用スタンド着席エリア入場可 SS 12,000円※優先入場※大会特典グッズ付き(Tシャツ) ※フードチケット(1,000円分)付き ※ステージ前専用立ち見観覧エリア ※アリーナ一般立ち見観戦 ※プレミアム/SS専用スタンド着席エリア入場可 アリーナ一般 5,800円 ※アリーナ一般立ち見観戦、スタンド一般着席可 アリーナグループ(4名1組) 20,000円 ※アリーナ一般立ち見観戦、スタンド一般着席可 ※2,000円分お得な料金設定 アリーナ高校生 3,000円 ※アリーナ一般立ち見観戦、スタンド一般着席可 ※高校生料金、大学生以上は一般料金 アリーナ小中学生 2,000円 ※アリーナ一般立ち見観戦、スタンド一般着席可 ※小中学生料金 スタンド一般 4,800円 ※スタンド席のみ入場可 ※高校生以上は一般料金 【大阪府⺠限定】スタンド一般+小中学生1名〜3名まで同伴可 4,800円 ※スタンド席のみ入場可 ※一般1名につき、子ども(小中学生)1名〜3名まで同伴いただけます。 ※大阪府⺠限定です。購入時に人数を選択いただき、氏名‧学校名を記入いただきます。 注意事項:いずれのチケットも1日券です。チケット購入時に来場日を選択ください。大阪府⺠限定チケット はスタンド席のみです。アリーナ(グラウンド)をご希望の方は該当チケットをお買い求めください。小学生未満の未就学児は、保護者1名につき1名まで膝上観戦無料です。
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dance子どもたちに与えたかったのは夢や目標へ挑戦するきっかけ「MIZUHO BLUE DREAM BREAKING LIMITS Workshop Tour 2024」最終回2025.03.19公益社団法人日本ダンススポーツ連盟(JDSF)が、ブレイキンの魅力とそのスポーツとしての価値を広めるため、株式会社みずほフィナンシャルグループと共に国内の小中学校で開催しているブレイキンワークショップツアー「MIZUHO BLUE DREAM BREAKING LIMITS Workshop Tour 2024」。このワークショップツアーでは特別講師として、みずほフィナンシャルグループのサポートアスリートでもあるBBOY Shigekix(半井重幸)を迎え、彼の持つ「ブレイキンを通じて子どもたちが夢や目標に向かって挑戦する姿勢を応援したい」という思いを伝えていきながら、子どもたちにブレイキンを通じて身体を動かす楽しさと創造性を体験してもらい、またトップアスリートとの交流を通じて夢や目標に向かって努力することの大切さを学ぶ機会を提供する取り組みである。なお本ツアーはShigekixの母校である大阪狭山市立第七小学校からスタート。全国の計6ヶ所の小学校をめぐり、Shigekix自身が子どもたちの夢や目標に向かって挑戦する背中の後押しをしていった。本記事ではツアーの締めくくりとなった第6校目の川崎市立夢見ヶ崎小学校のワークショップの様子と、本ツアーを終えたShigekixの今の気持ちについても特集する。 講演会の様子 講演会の様子 本ワークショップツアーの最終回として選ばれたのは、現在Shigekixが拠点を置く神奈川県川崎市にある川崎市立夢見ヶ崎小学校。当日は先生の誘導で体育館に連れられた生徒たちは、自分たちの列の間に不自然に設けられたスペースに不思議がっていたが、BBOY KENTARAWのMCの下でオープニングが進行していく。 そしてオープニングが終わり、満を持してMCの合図でShigekixが子どもたちに呼び込まれると、会場に現れた彼は手始めに生徒の間のスペースでワンムーブを披露。子どもたちは突然目の前でトップダンサーのパフォーマンスを見られたことに驚きと喜びが混じる中、大きな拍手と歓声でShigekixを迎えた。そのアツくウェルカムな歓迎にShigekixも「こんなに温かく迎えてうれしい」と笑顔で応えて、最初から盛り上がった良い雰囲気の中でプログラムはスタートした。 講演前のShigekixのワンムーブ 1限目では夢と挑戦をメイントピックに「今までに挑んできたこと」、「夢や目標を達成するためにやってきたこと」、「これからの挑戦、夢や目標」という大きく3つのトークテーマで講演が行われた。Shigekixは小学生である生徒たちに向けて、自身の小学生時代のエピソードにも触れながらどのように勉強とブレイキンの両立してきたのかや、夢や目標を達成するためにShigekixが小学生の生徒たちにオススメしたい方法をシェア。その方法として「なりたい姿をイメージする→理想の自分になるために逆算し計画→計画したプランを周りの人に話す」という流れを伝えると、その後生徒からもとても良い学びとなったと感想を伝える様子も見受けられた。 Shigekixに質問したい生徒たちの手が多く上がった 講義内で設けられた質問コーナーでは、ブレイキン関連の質問はもちろん、パリオリンピックなどの大きな大会で一番辛かったことなどトップアスリートに聞いてみたい質問が生徒たちから投げかけられた。Shigekixは大会では不安やプレッシャーから来るメンタル面のマネジメントが一番辛かったと話し、そういう時だからこそ自分はブレイキンが好きだからやっているという気持ちを思い出して、メンタルをポジティブに保つようにしていたとスポーツを好きでやり続けることがトップアスリートにとって大事ということも伝えた。 中学校入学に向けた悩みにShigekixが答えた またツアー最終回となった今回は3月ということもあり卒業シーズン。2日後に卒業式を控えた小学6年生からは中学校入学に向けてShigekixにお悩み相談の時間が設けられた。先輩との接し方の相談に対しては挨拶などの礼儀の大切さを伝え、中学校で新しい部活動に挑戦することに関しては「新しいことに挑戦すると決めた時点で既に素晴らしい!ワクワクした気持ちで楽しんで取り組むことが大切。」とエールを送った。 BBOY Shigekix そして今回の講演会の中で、Shigekixが特に伝えたいことは「僕がパリオリンピックをはじめ大きな挑戦ができているのは自分の周りのサポートや環境があってのこと。今度は僕が挑戦し続けることでみんなの挑戦を応援するみんなの元気玉になりたい。」という子どもたちの挑戦や夢をサポートする熱い思いだった。 今年は「Red Bull BC One World Final」への出場も決まっているShigekix。この世界最高峰の大会への挑戦を通して、みんなが夢や目標に向かって突き進むためエネルギーを与えられるように2025年も努力していきたいと強く思いを語った。 ブレイキン体験会の様子 体験会の様子 講演会の後に高学年の4年生から6年生向けにブレイキン体験会が行われた。体験会の前には全校生徒を集めて、Shigekixと同じくトッププレイヤーでShigekixの実姉であり今回サポート講師として参加したBGIRL AYANE(半井彩弥)によるパフォーマンスが披露された。それを見た生徒たちは手拍子に合わせて歓声をあげて、まるでブレイキンの大会ような盛り上がりを見せると、生徒の中には早く自分たちも踊りたいというような衝動を隠せない様子の子もいるなど、会場内が完璧に温まった中で体験会に移った。 デモショーケースの様子 体験会の様子 体験会では実際にブレイキンを構成する4つの動き「トップロック」「フットワーク」「パワームーブ」「フリーズ」についてデモを見ながら学び、その中で「トップロック」「フットワーク」「フリーズ」の3つをShigekixとAYANEの指導の下、ステップバイステップで挑戦。生徒たちは自信なさげではありながらも恥ずかしがらずに楽しみながら体験し、時にはShigekixがわざとスピードを早めたりしたことで動きが追い付かず笑い声が上がったりと終始ワイワイと賑やかな時間となった。 サイファーも体験 その後は生徒たちみんなでサークルを作るとサイファーにも挑戦。周りの同級生たちに見られながら踊る環境に、さすがに恥ずかしがる様子を見せたが有志の生徒が前に出てきてこの体験会で学んだことをベースにした自分たちのムーブを披露。終盤には2人で向き合いバトル形式でムーブを見せ合うなど子どもたちがBBOY・BGIRLデビューを果たした。パフォーマンス後には講師陣とはもちろんのこと生徒同士でハイタッチするなど、ブレイキンのカルチャーの素敵な部分が存分に現れた体験会となった。 生徒代表との写真撮影 最後には生徒代表と校長先生から花束と感謝の言葉が贈られ、みんなで集合写真を撮り全行程を締め括った。Shigekixも最後に今回真剣に話を聞いてくれた生徒たちへの感謝の気持ちと、夢や目標を持つことの素晴らしさを伝え、今回話した3つのステップを実践してこれからも挑戦し続けてほしいとエールを送った。 なお下記は今回のワークショップツアーを終えたShigekixとAYANEのコメントだ。 Shigekixと姉弟で一緒にワークショップを行った姉のBGIRL AYANEのコメント BGIRL AYANE ― 今回のMIZUHO BLUE DREAM BREAKING LIMITS Workshop Tour 2024を終えた今の率直な気持ちを聞かせてください。 ブレイキンを通して色々な小学校に行って、夢授業のようなことができたのがすごいありがたいので感謝しています。またオリンピックや色々な出来事を通して、少しずつブレイキンの認知が上がっているのをすごい感じていて、「Shigekixが出てくるよ!」となった時のみんなの反応だったり、パフォーマンスしている時のみんなの盛り上がり方を見ていると本当にブレイキンを見てくれている子が増えてきたなと思いますし、それを肌で感じることができたので嬉しかったです。 ― 実弟であるShigekixと一緒にこのような活動ができることに関してどう感じていますか? 素直にとても嬉しいですね。Shigekixが新しい可能性を広げてくれていて、それに一緒に賛同できることが私としてもありがたいですし、ブレイキンを始めて良かったなって思っています。また私をきっかけに彼がブレイキンを始めてくれたことで、今は彼にすごい色々な景色を見させてもらっているので、何がきっかけになるか分からないですし、感謝の気持ちもあります。本当にありがとうございますって思っています。 ― 今後、どのようなブレイキンシーンになって欲しいですか? ブレイキンはみんながそれぞれ違うスタイルを持っていて、各々がそのスタイルで一生懸命やっていることがかっこいいですし、人と違うこと自体が素敵なことなのでブレイキンシーンのこの風潮を日本国内はもちろん、世界に伝えていきたいと思っています。その先にShigekixも掲げているような誰かの夢の背中を押したりとか、自分に自信を持つきっかけになったり、あとは今起こってる争い事の解決策として、人と違うことを理解し合ってリスペクトしあえる世界に繋げていけたらいいなと思っています。そのためにもブレイキンがもっと広がってほしいと思っているので、このような学校訪問もそうですし、今後も色々な人の目に触れるような場所でブレイキンを知ってもらう機会をいただけたら嬉しいです。 全6回のワークショップツアーを終えたBBOY Shigekixのコメント BBOY Shigekix ― 全6回のMIZUHO BLUE DREAM BREAKING LIMITS Workshop Tour 2024を終えた今の率直な気持ちを聞かせてください。このワークショップツアーは、「自分が子どもたちのためにできることは何か?」というところがスタートではあったのですが、逆に自分がこの経験を通して子どもたちからたくさんエネルギーをもらいました。パリオリンピックという大舞台への挑戦を終えて、まさに新たな挑戦を始めるタイミングで全国を周るこのワークショップツアーがスタートして、自分の中で明確に次の目標に対して前を向いて進んできた中ではありましたが、改めて母校へ帰って自分の原点をこの目で見たり、子どもたちの素直に挑戦する姿に感銘を受けたり、また今拠点にしているここ川崎の小学校に訪問してこのシーズンを締めくくったところで、人に何かを与えることだけに限らず、自分が与えてもらったこともすごく多くあって、自分自身もこれからの挑戦に向けて良いターニングポイントになったなと感じています。 BBOY Shigekix ― 今回のワークショップツアーを終えて、今後の自身の活動に活かしたいことやみずほフィナンシャルグループとやっていきたい取り組みはありますか?僕の活動の中でずっと大事にしていることをそのまま体現できたのが、この今回のワークショップツアーだと思っているので、今後も僕の思いとしては何も変わらず今回のツアーを通して子どもたちに伝えられた夢や目標に挑戦する大切さを、引き続き色々な形で伝えていきたいと思っています。そして、僕もみずほさんとは「ともに挑む。ともに実る。」というパーパスで活動しているので、これからもまた新たな挑戦を共にして、色々な景色を見たいと思っています。また先ほどみずほさんと話していたのですが、このツアーを始めてからイベント会場にこの学校訪問でブレイキンに出会った子どもたちが見に来てくれていたり、その中にはブレイキンを始めちゃった子もいたりするんです。その子たちがもしかしたら、10年以上経ってみずほさんの会社に入社してるかもしれないですし、今回のワークショップツアーが彼らにとってどんなきっかけになるか分からないなってすごく思っていて、今から既にワクワクしているのでこのような僕が少年の時に感じたような稲妻のきっかけ作りは引き続き続けていきたいと思っています。 集合写真の様子 ― 最後に改めて自身の活動を通して、子どもたちに伝えていきたいことを聞かせてください。 とにかく挑戦することの美しさだったり、その楽しさ、またそこから学ぶことの喜びを伝えたいですし、それが僕がこれからも大事にして伝えたいと思っていることです。僕自身もやっぱり挑戦している時の自分が一番生き生きしていると思いますし、これまでの自分も成功ばかりしてきたわけではなくて、よく覚えていることも悔しい経験が多かったりもする中で、それでも挑戦したことにすごく意味があるなって毎度思わされるので、自分が一番生き生きして挑戦する姿を通して、みんなにも挑戦することはかっこいいし楽しいんだと思ってもらいたいです。別に成功することがかっこいいとか、失敗することがかっこ悪いとかでは全くなくて、ただ挑戦していることがかっこいいということをみんなに感じ取ってもらえるように僕も挑戦し続けたいと思います。 開催概要 名称:MIZUHO BLUE DREAM BREAKING LIMITS Workshop Tour 2024開催期間:2024年10月下旬~2025年3月の期間で計6校(応募での実施校は5校)主催:公益社団法人日本ダンススポーツ連盟ブレイクダンス本部(JDSF)特別協賛:株式会社みずほフィナンシャルグループ協力:有限会社 OVER THUMPZ対象:全国の小学校・中学校授業内容:合計2コマ分の時間を使用し実施いたします。・1コマ目〜講演〜ブレイキン選手のキャリア、夢への挑戦についてのトークや生徒の皆様とからの質問時間・2コマ目〜体験会〜実際にブレイキン選手のパフォーマンスを見て、そしてブレイキンを体験する。(50名程度の人数制限有り)
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freestyle「シーンを代表する顔になりたい」世界に挑み続けるフリースタイルフットボーラーYu-ri2025.03.12昨年11月に開催されたアジア選手権(公式アジア大会)で優勝に輝いたフリースタイルフットボーラー、Yu-ri(伊豆 優李)。昨年アジアチャンピオンとなった彼は、Red Bull Athleteとしてのキャリアもスタートした。 今最も勢いのあるフリースタイルフットボーラーである彼に、FINEPLAYはインタビューを実施。同じくフリースタイルフットボーラーである筆者に対して、自身のスタイル、練習やバトルにおける考え方、今後の展望などを存分に語ってくれた。 「フリースタイルフットボール」との出会い ―フリースタイルフットボールを始めたきっかけを教えてください 。 きっかけの出来事っていうのははっきりあるわけではなかったんです。もともとサッカーをやっていて 、リフティングが好きだったんですよ。とにかくリフティングを練習していて。最初は回数を増やそうと頑張っていて、そこからやべっちFCなんかをみて技を練習し始めて、できるまで練習を繰り返してました。だけど全部すんなりできてしまって(笑)。最初から「あ 、俺これ得意なんだな」って思ってやってたら、いつの間にか基礎の技はほとんど習得していました。アラウンド・ザ・ワールド(atw)だったり、クリッパーだったり。そういう技が全部揃ってる状態で「これは何なんだろう」ってずっと思っていました。 そしたら中学2年生の頃に、アッパー(主に体の上半身を使ってボールを扱う技のジャンル)を街のめちゃくちゃ人通りのあるところでやってる人がいて、「なんだこいつは!?」みたいな感じで話題になっていたんです。それでお母さんが「これあんたがやってるやつじゃないの?ちゃんとやってる人いるんだから、1回見に行きなさい」っていう感じで教えてくれて、車出してもらって見に行かせてもらいました。めちゃくちゃその時緊張したんですけど、その時話しかけに行って初めてフリースタイルフットボールという競技に出会いました。 ―最初にフリースタイルフットボールを知って始めたわけではなかったんですね。 最初はフリースタイルフットボールっていうのを知って始めたわけじゃなくて、自分がやっててこれが何なんだろうっていう答えを探す感じでしたね。それから初めて出会ったそのフリースタイラーのことを「師匠」と呼ぶことにして、2、3年付き合って一緒に練習とかしてもらっていました。 師匠はもうやめてしまったんですが、当時いろいろ学ばせてもらいました。技ももちろん教えてくれたんですけど、知識とか考え方、魅力だったり何か概念的なものも教えてくれました。そこで師匠に教えてもらって知ったのがKamalio(南アフリカ共和国のレジェンドフリースタイラー)だったみたいな。 ―自身のインスタグラムのユーザー名にも入っていますよね? そうです。インスタのユーザー名にも入るくらい僕にとっては大きい存在ですね。Kamalioからこの名前を貰ってずっと使い続けています。 最近の若手は特にこの名前の由来を知らない人も増えてきていて、その中で自分がこの名前を使い続けてKamalioっていう名前が残ってることに関してはすごい意味があると思っていますね。自分にとって神様みたいな存在であるフリースタイラーの名前が、自分のキャリアとともに残り続けるので。子供の時に名乗ってしまって、後悔した時もありましたけど(笑)。 ―現在所属するチーム「Air Technician」へ加入した経緯を教えてください。 もともとフリースタイラーとして1番最初に自分が憧れたのがKazane君なんです。自分は彼のファンになって、そんなKazane君が作ったチームがあるっていうところから「Air Technician」を知りました。日本のとんでもないスーパーキッズ達を集めて活動するみたいなことを耳にして、「このチームかっこいいな」っていうイメージをずっと持っていました。 それから高校生の頃はエアテクの動画を見てそれをモチベーションにして練習しました。Kazane君とも連絡を取って一緒に蹴ったりしていました。「エアテクかっけえだろ」「お前もがんばれよ」みたいなやり取りがあって。そして高校3年生の時に高校生日本一決定戦で優勝したときに声をかけてもらって、エアテクに正式に加入しました。 Air Technician 「バトルへの熱が冷めたことはない」Yu-riが語ったバトルへのこだわり Jason Halayko / Red Bull Content Pool ―フリースタイルフットボールのバトルにはいつ頃から興味を持ち始めたのですか? バトルは始めた頃から興味を持っていて、KamalioやKazane君の映像を見て「すげえ」「かっこいい」と思って見ていました。とにかく早くバトルに出たかったので、初めて半年くらいですぐにバトルにチャレンジしました。 その時は、勝ちに行こうというよりかは、Yu-ri atw(Yu-riのオリジナルトリック)だけ決めてやるって意気込んで出ていました。その時何回もトライして1発メイクできて、会場もめちゃくちゃ沸いてくれて。その負け方をしてからもうバトルの虜になりました。どんな負け方にも意味があるし、言葉では表せないくらいバトルには面白味があるんだと気づいてからずっと出ています。14歳の頃からなので、もう12年くらい経ちます(笑)。 バトル初出場時の様子 ―相当長い期間バトルに出続けていますね。 ぶっ飛んだフリースタイラーですよね(笑)。バトル歴でいったらめちゃくちゃベテランです。 ―そんな中で近年は徐々に結果を残し始めてきていますが、バトルにおける自分の強みというのはどの部分だと感じていますか? みんなが期待するのはやっぱり後ろ系のエアームーブですね。Yu-ri atwとか4回転とか。だけどここ数年自分が意識しているのは、その技に至るまでの過程の部分なんです。その技だけ持っていてもバトルは勝てないので、火力の高い技とのバランスの取り方が今では自分の強みになってきているのかなと感じています。 この投稿をInstagramで見る Yu-ri(@yuri_kamalio)がシェアした投稿 ―具体的にその強みを生かすために取り組んでいることはありますか? 自分のカルチャー以外のバトルを見て、その人の戦い方を見ることです。特に自分と戦い方が似ているような人を見ます。フィギュアスケートとかも見るんですけど、それこそ4回転やる人ってそれ以外の動きはどうなんだろうっていう視点で見たりしますね。「この過程があるから4回転がすごく魅力的に映るんだ」とか。そういったものから取り入れられるものを勉強して、自分のムーブに活かせるようにしています。 ―そういった過程を大事にする戦い方をバトルで実際にするために、普段の練習で意識していることはありますか? 過程を大事にするためにはやっぱりその火力のある技の精度が高くないと話にならないので、まずは自分のシグネチャーの精度上げをひたすらやっています。自分は技の精度に関してはやり方とかコツも大事ですけど、経験値が1番大事だと思っています。自分は練習でありえないくらいやり込むんです。技ができるようになったなと感じたら、その技を連続で30回くらいやって、やり方があってるかどうか確認するみたいな(笑)。 SUPERBALL 2024(世界大会) そういった練習を通して技が確実に決まるものになったら、その間の過程をメモとかに書き起こします。物語のように自分のムーブが繋がるようにして構成を練っています。あとはそのムーブが、今のバトルのジャッジ基準に対してしっかり評価されるかどうかも考えています。 ―一緒に練習させてもらうと、Yu-riさんは技の習得が速いと感じます。技の習得にもやはり経験値が影響していますか? そうですね。技を習得するスキルが上がっていけば、フリースタイルも上手くなっていくと思います。技が成長するのはもちろん、練習の仕方が上手くなっていくことにも繋がっていくので。経験と常に考えながら練習しているのが、技の習得が速いポイントだと思います。 あとはやっぱり基礎力ですね。自分は、子供のころからとにかく基礎をやって全部のスタイルを上手くなろうと思ってやっていたので、今はその時代から積み上げてきたものが活きている感じです。 SUPERBALL 2024(世界大会) ―Yu-riさんといえば誰も見たことのないような新しいムーブを生み出すのも魅力の1つだと思います。その発想を生み出すために工夫していることはありますか? 最近は勝手に生まれてくるような状態です。昔は技を足し算するように考えてやっていました。ここ数年は考える力が強くなって、フロアの技とかは突発的に生まれることが多いです。ただそのアイデアが全部良いとは限らないですけどね。今は結構打率いいです。それもまた経験値の部分で、良い技が生まれやすくなっているのかもしれないです。 ―練習のモチベーションや練習するときのルーティンはありますか? モチベーションという言葉はあんまり自分には当てはまらなくて。フリースタイルフットボールが、自分が生きてくうえで勝手にやっちゃってるものになっています。多分トッププレイヤーの人達はみんなそうだと思うんですけど、やりたくてしょうがないものだからモチベーションというのがそもそもよく分かっていないような感じです。 だからフリースタイルに対する熱量だったり練習量は減ったことがなかったですね。自分の場合は、その中でたまに練習に対する熱量がものすごく上がるときがあります。どうしてもやりたくなってしまって、学校を抜け出して公園で練習したこともありました(笑)。 ―練習に行き詰った時や疲れているときはどのようにリフレッシュしていますか? そういう時は練習の仕方を変えています。最近は特に1つ1つのバトルに対する責任が増えてきて、好き勝手練習できていなかったりするんです。勝つための練習にこだわらなければいけなくて、それに悩まされることもあります。 自分が1番理想とするフリースタイルと勝つためにやるフリースタイルとでは被ってるところは多いんですけど、やっぱり少し違っていて。その少し外れたフリースタイルをやる時間をとることが、自分にとってリフレッシュになったりしています。 ―具体的にはどんなフリースタイルなんですか? 昔はよく自分の好きな場所で、好きな音楽をかけて振付を作って動画を撮ったりしてました。SIRUPとかBIMとかでよくやっていました。最近は動画を撮るまでいけないこともあるんですが、定期的にそういうフリースタイルをして自分のストレスを解消してます。逆にそれがバトルの場面で活きる時もあるので自分にとってすごく大事な時間だと思っています。 この投稿をInstagramで見る Yu-ri(@yuri_kamalio)がシェアした投稿 ―Yu-riさんのフリースタイルする際の服装のこだわりがあれば教えてください。 できるだけ自分の好きなファッションでやろうとしています。フリースタイルは特に服によって技に制限がかかってしまう競技なので、その中で自分が探して見つけたフリースタイルができて好きなファッションができる限界の服でやっています。 これからもっとフリースタイル界が発展していって、専用のブランドが出てきたりしたらもっと服の選択肢が広がるなと思っています。それこそ自分で作れたりしたら理想ですね。 数々の世界大会を経験して ―アジア大会優勝おめでとうございます。そのアジア大会を通して感じたことはありますか? ありがとうございます。これはアジアに限らず、日本人が少し海外勢に押されているなと感じました。昔は日本ってすごい強い国だって言われていて。それが近年は日本が世界に圧倒されているように感じています。 そしてそれは今回のアジア大会でも実感しました。明らかにアジアの日本以外の国のレベルが上がっていて、日本も調子に乗っていられないなと。だから今回僕が優勝できて本当に良かったです。 PULSE JAKARTA(アジア選手権) ―バトルにおいて意識している相手はいますか? 国内だとYo君、海外だとJayとJesseですね。 Yo君は国内ではずっとトップで誰も勝てないみたいな存在だったんです。でも最近はチームの活動にシフトしてバトルシーンでは見なくなってしまって。ずっと目標にしていつか超えてやろうと思っていた人だったので、今でもすごく意識しています。 Jayは、自分があこがれていた舞台である、23年の冬に開かれたRed Bull Street Styleで優勝した時に衝撃を受けました。正直あのトッププレイヤーたちの中で勝ち上がるとは思っていなくて。その時からJayは倒さないといけないと思って意識している相手です。Jesseに関しては自分と同い年でもあって、ずっと自分の格上にいる存在です。前回当たった時に悪い負け方をしてしまったので次は絶対勝たなきゃいけない相手だと思っています。 フリースタイラーとしての生き方 Red Bull Street Jam ―SNSでの活動もYu-riさんの特徴の1つだと思います。何か意識していることはありますか? 唯一無二の映像を作ることです。自分には映像の編集技術はないので、技でやるしかないと思って新しいものをとにかく意識していました。最近はもうそれも限界に近い気がしているので、また新しいアプローチも探しつつやっていきたいと思っています。それでも人と被ったものをやっても面白くないので、クリエイティブであることが1番大事ですね。 ―最近は他のカルチャーとの絡みも増えてきています。そういった活動を通して実現していきたいことはありますか? アーバンスポーツってたくさんある中でフリースタイルフットボールの規模はまだまだ小さいほうだと思っていて。カルチャー全体を押し上げていくためにまずは自分が先頭に立って他カルチャーとの関係性を築いていこうと思っています。 カルチャーをどうこうするのって1人じゃ絶対できないことなので、みんなが何かしらトライできるきっかけを作るために、影響力を持つ自分がフリースタイルフットボールをいろんな場所でアピールできたらなと思っています。 ―Red Bull Athleteにもなられました。率直な感想は? 子供の時に短冊に書いた夢が1つ叶って、最初は全然実感がなかったです。「ほんとに帽子被れんのかな?」みたいな。でも実際に活動していくうちにその感覚が後付けで付いてきて、今はその感覚が全部新鮮で楽しいです。 それこそ優勝したアジア大会でも、正直レベルの高さに驚いたんですけど、ホテルに戻って当日の衣装を着て鏡を見たときに、「これで負けるわけねえだろ」っていう気持ちになれて。自分を鼓舞してくれるような感覚も新鮮でした。ほんとに翼授けてもらっています(笑)。 Jason Halayko / Red Bull Content Pool ―フリースタイル以外の趣味はありますか? 車を運転することと、キャンプですね。車は子供のころから好きで、キャンプは最近できた趣味です。アニメの影響を受けてハマりました。この2つは相性が良くて、よく道具を車に乗せてキャンプしに行っています。でもキャンプしに行っていても、景色のいいところでボール蹴って動画撮ったりしちゃって。何やるにしてもボール持って行っちゃうので、結局フリースタイルから離れられてないですね(笑)。 この投稿をInstagramで見る Yu-ri(@yuri_kamalio)がシェアした投稿 「シーンを代表する顔になりたい」 Jason Halayko / Red Bull Content Pool ―現在のフリースタイルフットボールシーンについて思うことはありますか? 先ほどはバトルにおいて日本が押されていると話しましたが、逆にそれ以外では日本は世界で断トツでいい位置にいると思っています。カルチャーとしても、プレイヤー1人1人の質としても日本はすごくいいと思えています。その意識がちゃんと海外にも伝われば、大会の軸が少し変わったり、考え方が理解されてまた別の軸での世界大会ができたり、何かしら変化を与えられると思っています。 だから世界基準っていうのを意識しすぎることはしないで、各々好きなことをやって発信し続けることが大事だと感じています。だからこそ、日本の良さを残していくためにも自分が勝ち続けなきゃいけないなと思っています。 イベントなんかも日本が世界をリードしていると思います。ショーケース等のカルチャー寄りなイベントも増えていますし。日本がそういった部分における世界の軸になって、海外から人を集めるとかできたら面白いんじゃないですかね。日本のいい文化をうまく海外にも伝播させていきたいですね。 ―Yu-riさんのキャリアの中で今後のビジョンがあれば教えてください シーンのためにやることとしては、専用のスタジオを作ることです。みんな昔から練習場所に悩んできたので。下の世代のためにも、みんなが安心して練習できる場所を作るっていう目標が1つあります。それができたらさらにレッスンもできて、全国にも展開していけたらいいなと思っています。 個人としてはまず世界大会を取ります。そしてフリースタイルを代表する顔になりたいです。もっとSNSにも力を入れて有名になって、テレビにも出れるようになっていきたいですね。ずっと貪欲でいたいです。 Profile Jason Halayko / Red Bull Content Pool Freestyle Footballer Yu-ri (伊豆 優李)リフティングを披露する事が好きだったサッカー少年時代、TVにて「Red Bull Street Style 2012」で優勝したTokuraに憧れ、「将来Red Bull Athlete になる」と宣言し、フリースタイルフットボールのキャリアをスタートした。とにかく練習が好きだったYu-ri は高校進学のタイミングでサッカーを引退し、フリースタイルに専念。その後、高校生日本一決定戦(High School No.1)で優勝を果たした。高校卒業後は、最も権威のある世界大会Super Ballに出場し、Best32にランクインし頭角を現すと翌年Tokura が主催する全国大会(Wing crush of freestyle)で優勝を果たす。その後、12大会で優勝・準優勝を果たし、2024年7月には、Red Bull JapanとAthlete契約を結んだ。昨年11月に開催されたアジア選手権(公式アジア大会)は、世界初となる4回転トリックを決勝で決め、日本人では5年ぶりのアジアチャンピオンという快挙を成し遂げた。またSNSでは、総フォロワー30万人を達成し、多くの人にフリースタイルフットボールの魅力を発信している。