強さの秘訣は“人と被らない”新技のメイク。中村輪夢が今シーズン初準優勝「2023年UCI BMXフリースタイル ワールドカップ第3戦」

2023.07.11
photograph ©︎UCI, FISE, JCF

「2023年UCI BMXフリースタイル ワールドカップ第3戦(通称:Urban Sessions Brussel)」がベルギーのブリュッセルにて、2023年7月6日(木)~9日(日)の4日間に渡り開催され、男子はアントニー・ジャンジャン(フランス)、女子は周惠敏(中国)が優勝
なお日本人選手は男子から中村輪夢、溝垣丈司、小澤楓の3名、女子からは内藤寧々が出場し、日本人選手最高位は中村輪夢選手の準優勝となった。

今回出場した日本代表選手陣 (左から小澤、溝垣、内藤、中村の順) ©︎JCF

今年のワールドカップシリーズ第3戦の会場はベルギー・ブリュッセル。昨年に続き2度目の開催となった本会場には、世界中から男子80名、女子32名のトップ選手たちが集まり熾烈な戦いが繰り広げられた。

また今大会の出場者数は、今シーズン第2戦としても開催され毎年大勢の選手が出場する「FISE Montpellier」に匹敵するほどとなり、2024年パリオリンピック予選大会の一つでもあることも相まって、非常にレベルが高く勝ち上がることが難しい大会となった。

今回はそのようなハイレベルな戦いの中で、世界の強豪選手を相手に大健闘した日本人選手を含め、注目選手の決勝ランをピックアップ。

予選では苦戦を強いられるも、見事に新技を決めて今シーズン初のワールドカップ準優勝を果たした中村輪夢

男子カテゴリー

今回、男子カテゴリーで出場したのは前大会と同様に中村、溝垣、小澤の3名。翌週にはフィリピンで開催されるアジア選手権への出場を控える彼らが、第3戦となった今大会で更にパリオリンピック出場枠を手繰り寄せるべく世界のトップ選手80名を相手に争った。

今回は惜しくも準決勝敗退となった小澤楓 ©︎UCI

日本代表チームは溝垣丈司(所属:湘南工科大学附属高等学校)がバイクトラブルにより予選敗退、小澤楓(所属:本巣市立糸貫中学校)が準決勝敗退と悔しい結果で大会を終えた中、世界王者の証であるレインボージャージを着用して出場した中村輪夢(所属:ウイングアーク 1st)が予選21位、準決勝5位という結果で勝ち上がるごとに順位を引き上げて決勝進出を決めた。

中村は決勝ラン1本目で、他の選手がメイクしない「バックフリップ・ノーハンド トゥ ダブルバースピン」 や「720 ・キャンキャン・タイヤグラブ」をはじめ、自身の強みであるハイエアーが可能にする長い対空時間の中で2~3コンボのトリックをコンスタントにメイクしていく。
またトリックのバラエティとパーク上のセクションの使い方もとても豊富で、終始スピードの落ちない綺麗なライディングで91.56ptをマーク。暫定2位で優勝への望みを2本目につなげた。

優勝を目指して挑んだ2本目は「720 ・バースピン トゥ ルックバック」を皮切りにランをスタートするも、トランジションと想定していたトリックがうまく噛み合わなかったのか、1分間のランの中盤で手を上げてランを途中で終了。
その姿からは、1本目のスコアを超えるランができないと見切った瞬間と、2本目で優勝するために必要なライディングが自分の中で明確に想像できていたような様子がうかがい知れた。結果的には1本目のスコアを守り切り準優勝で大会を終えることとなった。

中村輪夢のライディング ©︎UCI

大会後のインタビューでは、「世界選手権とパリオリンピック用でメイクしたい新技が準備できている」と答えた。そんな彼が今後どのような「人と被らない」トリックを魅せて優勝を勝ち取るのかを期待していきたい。

今大会の優勝者となったのはフランスのアントニー・ジャンジャン。彼のランで特徴的だったのは「ダブルバックフリップ」や「フレア・テールウィップ」など大型の回転技はもちろんのこと、本来飛び面として活用されるリップに向かって反対側からジャンプする「逆飛び」でコンボトリックをメイクしたことだ。

「逆飛び」は通常のジャンプとは異なり、急な角度がついている飛び面に合わせて着地するため綺麗にトリックをメイクすることが難しい。そういった高難度なセクションの使い方も相まって評価されたことが中村に1.00pt差をつけて勝ち越した要因の一つとも考えられる。

3位東京オリンピック金メダリストのローガン・マーティン。多くの高難度トリックを持つ彼が、最近特に強みにしているのが回転技の際に自身の正回転とは反対向きに回す「オポジット」のトリックだ。伝わりやすい表現として、よく「利き手とは反対の手で箸を扱うこと」と言われたりもするが、それくらい高度な技術を要求されるのがこの動きだ。

今回ローガンは「オポジット・トリプルテールウィップ」や「オポジット・フレア+オポジット・テールウィップ 」など複数のオポジットトリックをメイク。結果としては、他の細かなミスをジャッジされたのか89.41ptをベストスコアとし、3位で大会を終えたがミスがなければ優勝できるレベルのランであったことは間違いない。

女子カテゴリー

決勝進出を果たした内藤寧々 ©︎UCI

今回、女子カテゴリーに日本代表として出場したのは内藤寧々(所属:第一学院高等学校)。男子カテゴリーの3名と同じく、翌週に開催されるアジア選手権への出場を控える内藤が同大会で強敵となる中国人選手たちとの前哨戦も兼ねて今大会で世界のトップ選手たちと競い合った。

内藤寧々は32人中10位で準決勝進出。しかし現地時間8日に予定されていた準決勝は雨天によりキャンセルとなり、準決勝出場者24名全員が決勝に駒を進めることとなった。
決勝では、東京五輪銀メダリストであるベネズエラのダニエル・デアーズをコーチとして有する中国人選手たちや、各国の世界チャンピオン経験者が男子並みのトリックを見せて強さを示した。

内藤寧々のライディング ©︎FISE

内藤も1本目では「360」「タイヤグラブ」「ターンダウン」などバラエティに富んだトリックの数々と、クオーターでは難しい角度で「テールウィップ」をメイクし79.40ptをマーク。
2本目ではさらに高得点を狙っていたが、トランジションでうまくスピードを乗せることができず、1本目で決めていた「テールウィップ」で転倒。ラン1本目の得点が採用されて決勝11位で大会を終えた。

今週末に開催されるアジア選手権ではこの悔しさを晴らすライディングを魅せてくれることだろう。

日本人選手コメント

準優勝した中村輪夢

中村輪夢 選手 (所属:ウイングアーク 1st)
「今回に向けて「バックフリップ・ノーハンド トゥ ダブルバースピン」や「720 ・キャンキャン・タイヤグラブ」という誰もやってない技を練習してきたので、大会で決めてこの結果を残せたのは良かったです。

予選ではまあまあ納得した走りができたものの、21位という評価だったりと難しい大会でしたが、それも含めて次に繋がる大会になったと思っています。

来月の世界選手権やパリオリンピックでやりたい技はもう準備しているので、まず世界選手権ではしっかり決めて前人未到の2連覇を成し遂げたいと思っています。これからも皆さんに期待してもらえるような走りができるように頑張っていきます。」

大会結果

一番左が準優勝した中村輪夢 ©︎FISE

<男⼦>
優勝  アントニー・ジャンジャン / フランス
準優勝 中村 輪夢 (なかむら・りむ) / 日本
3位    ローガン・マーティン / オーストラリア
19位     小澤 楓 (おざわ・かえで) / 日本 – 準決勝敗退
37位     溝垣 丈司 (みぞがき・じょうじ) / 日本 – 予選敗退

<⼥⼦>
優勝   周 惠敏 / 中国
準優勝  ハンナ・ロバーツ / アメリカ合衆国
3位     夏 琳 / 中国
11位     内藤 寧々 (ないとう・ねね) / 日本

大会概要

⼤会名称 : 「2023年UCI BMXフリースタイル ワールドカップ Round 3」開催期間 : 2023年7月6日(木)~9日(日)- 4日間 –
※詳細は公式HPをご覧ください。
大会会場:ベルギー・ブリュッセル

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FINEPLAY編集部
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