2024年国内シーズン初戦は小澤楓・美晴兄妹がダブルで勝ち取る「マイナビ Japan Cup 名古屋大会」BMXフリースタイル・パーク種目

2024.05.01
写真提供:©︎Naoki Gaman / Japan Cycling Federation / JFBF

「マイナビ Japan Cup 名古屋大会」BMXフリースタイル・パーク種目がオアシス21銀河の広場(愛知県名古屋市)にて、2024年4月26日(金)~29日(月)の4日間に渡り開催され、男子エリートは小澤楓選手が、女子エリートは小澤美晴選手が優勝を収めた。

JFBF(全日本フリースタイルBMX連盟)が開催するシリーズ戦である「マイナビ Japan Cup」。2024年シーズン初戦となる今大会には全国から年齢問わずトップクラスのBMXライダーたちが集まり、エリート・アマチュア含め全13カテゴリーにて昨年を上回るハイレベルなトリックが繰り出される熾烈な大会が見られた。

そして今大会の会場は2023年シーズン開幕戦と同じ舞台である愛知県名古屋市の「オアシス21 銀河の広場」。名古屋市では有名な観光地で都会のど真ん中に位置し、商業施設も周りに多くあるため人通りも多いのがこの複合施設だ。普段は地元の人から観光客まで色んな人が訪れるこの地に大会用のパークセクションが大々的に設置され、非日常感に包まれる中で今大会が開催された。

会場には多くの観客が押し寄せた。

当日はゴールデンウィーク期間に被ったこともあり、子どもから大人まで本施設に訪れた家族連れやカップル、通りすがりの観光客まで老若男女たくさんの人々が集まった。そんな大勢の観客に見守られたことで会場のボルテージも最高潮となり、国内トップライダーたちも高難度トリックを数々メイク。会場から歓声も飛び交い相乗効果で大盛り上がりの大会となった。

以下は、今大会注目のエリートクラス決勝の大会リポート。

エリートクラスで兄妹同時優勝は史上初か?男子は小澤楓が優勝。女子では小澤美晴がエリートクラス初出場初優勝。

女子エリートクラス決勝進出者たち

まず先に行われたのは女子エリートクラス決勝。今回は怪我で休養していた東京オリンピック出場選手の大池水杜が復帰そして現全日本チャンピオンである内藤寧々と、先日フランスで行われたC1国際大会で優勝し鮮烈なエリートクラスデビューを果たした小澤美晴など世界を舞台に参戦する選手を中心に合計4名で今シーズン初戦の優勝者の座が争われた。

小澤美晴のライディング

今回、圧倒的な強さを見せて優勝したのは女子エリートクラス初出場の小澤美晴。男子顔負けの様々な高難度トリックを持つ彼女は、エアー自体の安定性や精密さが際立つ面ピタのジャンプの中に日本人女子初のトリックをメイクするライディングで他選手を圧倒した。

ラン1本目では「X-Upトランスファー」などの細かいトリックを入れながらセクションで加速すると、中央のボックスジャンプでは「バックフリップ・バースピン」や「360・テールウィップ」など世界的にも女子では数名しかメイクできないトリックを完璧に決める。そしてラン終盤には「トラックドライバー」なども丁寧に決めるパーフェクトランでまとめると78.00ptをマークし他選手を大きく引き離した。

ラン2本目を迎える時点で、小澤の1本目のスコアを超える選手がいなかったためウィニングランに。優勝が決まり気持ちに余裕ができた彼女は「バックフリップ・テールウィップ 」というこれもまた日本人女子初メイクのハイレベルトリックを決める。その後には日本人女子では大会で誰も決めていない 「フレア」にトライするも転倒。まだ残り時間があったため再度トライするも今大会で決まるには至らなかった。

しかし今回圧倒的な強さを見せ、見事女子エリートクラス初出場初優勝という快挙を残した彼女は今後の日本女子BMXフリースタイル界をネクストレベルに引き上げる選手であることは明白だ。彼女の今後の世界での活躍に注目したい。

大池水杜のライディング

準優勝は怪我から復帰後初の公式大会出場となった大池水杜。久しぶりの大会出場となった彼女だが、ラン1本目では「バックフリップ」や「タックノーハンドtoターンダウン」などのハイレベルトリックに加えて、クオーターでの「テールタップ」からのドロップインなど玄人好みのトリックを混じえたライディングを見せたが、小さなミスから完成度を上げることができず惜しくも得点を44.12ptとする。

さらにスコアを上げたいラン2本目では、全体的にスピードも上がり各ジャンプでのエアーの対空時間を伸ばした中で「バックフリップ」や「360」を綺麗に決め切り、1本目を超える完成度でランを終えた。結果としては見事ノーミスのライディングで47.50ptとポイントを引き上げて国内復帰戦を準優勝で締め括った。

内藤寧々のライディング

3位は現在の全日本チャンピオンで、6月の「X Games Ventura」の招待選手にも選ばれ、BMX界でさらに注目が集まっている内藤寧々。ラン1本目は「ターンダウン・トランスファー」や「360・ターンダウン」、そして彼女の代名詞でもある「X-up・ワンフット to キャンキャン」などを組み込んだルーティンをまとめていくも、全体の完成度が足を引っ張りスコアを伸ばせず47.25ptに。

優勝を勝ち取るために大幅なスコアアップが求められるラン2本目では、各トリックの完成度を高めることに注力する様子が見られた一方で、ここで勝ちに行くために新技である「フレア」にトライ。残念ながら決めることはできず転倒し、結果としては1本目の47.25ptとし3位となった。ライディング後には涙を浮かべ悔しさを露わにしていたことから、きっとこのトリックは近いうちにしっかり習得してくることだろう。

日に日にレベルが向上している日本女子BMXフリースタイルシーン。既に小澤がC1国際大会で優勝したり、内藤がワールドカップシリーズで上位に食い込み始めていることから彼女たちが世界最高峰の舞台の表彰台で国旗を掲げるのも時間の問題かもしれない。

男子エリートクラス決勝進出者たち

その後行われた男子エリートクラス決勝は、参加選手13名の中から前日の予選を勝ち上がった上位8名にてよって争われた。今回は絶対王者の中村輪夢が不在の中で、来月オリンピック予選大会(OQS)にも出場が決まっており世界の舞台でスタイルと共に成長を見せている溝垣丈司、そして溝垣と同じく世界の舞台に戦っている小澤楓を筆頭に10代の若手が大多数を占める決勝戦となった。

小澤楓のライディング

本決勝にてプレッシャーに打ち勝って優勝を果たしたのは小澤楓。直前に女子エリートで実妹の小澤美晴が優勝を果たしたこともあり、緊張感と集中力が伺える表情で大会に挑んだ彼はラン1本目で「バックフリップ・トリプルバースピン」を始め良い流れでトリックを繋いでいくが、「360・テールウィップ ・トランスファー」で転倒し胸付近を強打。惜しくもライディング続行できずスコアも31.75ptとした。

そんな展開の中、背水の陣で迎えたラン2本目ではプレッシャーを押し退けるライディングを魅せる。1本目で決めた「バックフリップ・トリプルバースピン」はもちろんのこと「フレア」も新たなに追加するライディングで流れを掴むと、1本目で転倒した「360・テールウィップ ・トランスファー」もしっかり決め切り、そこに加えて「360・ダブルダウンサイドテールウィップ 」や「フレア・バースピン」などの大技も見事にメイクして見せた。

小澤の大逆転を称える選手たち

パーフェクトランで終えた直後は出し切った様子でしばらくそのままセクションにもたれかかるような状態であったが、そんな小澤のランに付いたスコアは78.25pt。見事大逆転優勝を果たし、妹と一緒に兄妹でダブル優勝を収めた。

溝垣丈司のライディング

準優勝はそのライディングスタイルが世界的に評価されており、現在世界でトップ20に入るレベルの溝垣丈司。本決勝でも彼のスタイルがふんだんに活かされたライディングを見せる。ラン1本目では、横一回転の「360」に別のトリックを加えたコンボが光るライディングとなった。「360・テールウィップ・タイヤグラブ to トボガン」をはじめ「360・クアッドバースピン」「360・ダブルテールウィップ 」などバラエティに富んだ高難易度トリックをメイクし76.50ptをマーク。

ラン2本目では1本目と同様に完成度の高い「360」のコンボトリックである「360・テールウィップ・タイヤグラブ」や「トリプルトラックドライバー」をメイクしていくと、その後は彼のスタイルを魅せるトリックチョイスにスイッチ。4mのビッククオーターでの「50-50」、3mのクオーターでの「フットジャム to フェイキー」、そして最後は「180・バースピン to フェイキー」をメイクした。ただスコアは1本目を上回ることができなかったため76.50ptをベストスコアとして準優勝で国内大会初戦を終えた。

寺林昌輝のライディング

3位は豪快な回転系のトリックを強みとする寺林昌輝。ラン1本目では「バックフリップ・バースピン」や「360・ダブルテールウィップ」をメイクするも「720・トランスファー」で転倒し29.75ptというスコアになったが、ラン2本目ではしっかりミスを修正してパーフェクトなライディングを見せる。1本目ではミスした「720・トランスファー」を決め切ると、クオーターのポケットで「540・トランスファー」そしてクオーターでの「フレア」をメイクし、フルメイクのランで72.00ptをマーク。大きく順位をジャンプアップし3位入賞を果たした。

今回は中村輪夢が不在の大会だったものの、上位3名に関わらず見事なライディングを見せて、さらなる競技レベルの向上を感じさせた今回の男子エリートクラス。今後もどんな選手が現在世界を舞台に戦う日本代表選手との表彰台争いに食い込んでくるのかも注目していきたいと思う。

優勝者コメント

兄妹で優勝した小澤美晴(左)と小澤楓(右)

小澤 楓 選手(男子エリートクラス)
「1本目で転倒してしまって後がない中、2本目でしっかり決め切って勝つことができてよかったです。いつも応援してくれている方々や自分の周りにいてくれる方が今回はたくさん会場に来てくれたので嬉しかったですし感謝しています。これからも自分のできる技を最大限活かしたルーティンを各大会で決めていきたいと思っています。」

小澤 美晴 選手(女子エリートクラス)
「優勝することができてすごく嬉しいです。国内では初めてのエリートクラスの大会だったので自分のできることをしっかりできたら良いなと思っていました。家族や応援している人たちに感謝したいです。今後はみんなに憧れられるようなライダーになれるように頑張ります。」

大会結果

<男子エリート>
優勝: 小澤 楓 (オザワ・カエデ) / 78.25pt
準優勝: 溝垣 丈司 (ミゾガキ・ジョージ) / 76.50pt
第3位: 寺林 昌輝 (テラバヤシ・マサキ) / 72.00pt

<女子エリート>
優勝: 小澤 美晴 (オザワ・ミハル) / 78.00pt
準優勝: 大池 水杜 (オオイケ・ミナト) / 47.50pt
第3位: 内藤 寧々 (ナイトウ・ネネ) / 47.25pt

<キッズ4アンダー>
優勝: ナカジマ・ソウシ / 48.67pt
準優勝: オオイシ・ウイ / 41.33pt

<キッズ5-6>
優勝: サカキバラ・カナタ / 61.33pt
準優勝: ウチヤマ・ナル / 51.33pt
第3位: ニシハラ・リンタロウ / 46.50pt

<ガールズ7-9>
優勝: ウメバヤシ・ユマ / 71.00pt
準優勝: ハシモト・コトハ / 63.67pt
第3位: ニワ・ココロ / 59.67pt

<ボーイズ7-8>
優勝: マスイ・チアキ / 78.00pt
準優勝: オノエ・ヒカル / 56.00pt
第3位: コバヤシ・アラタ / 51.00pt

<ガールズ10-12>
優勝: ホソカワ・イロハ / 68.00pt
準優勝: ハマダ・ルル / 55.00pt
第3位: ハシモト・クレハ / 46.33pt

<ボーイズ9-10>
優勝: サイキ・タスク / 73.83pt
準優勝: タカハシ・ヒサシ / 62.67pt
第3位: シモノ・ユウマ / 60.83pt

<ボーイズ11-12>
優勝: ニワ・コウキ / 77.33pt
準優勝: オゴケ・ユウト / 75.67pt
第3位: タニモト・リョウガ/ 74.33pt

<女子13-15>
優勝: シライ・レエナ / 71.66pt
準優勝: ヨシダ・ミオ / 59.33pt
第3位: オクザキ・トモカ / 53.00pt

<男子13-15>
優勝: マツウラ・アオウ / 77.66pt
準優勝: ハヤシ・ショウゴ / 70.00pt
第3位: マセ・コタロウ/ 65.33pt

<エキスパート>
優勝: エンドウ・リクト / 48.33pt
準優勝: ナガヤ・カズマ / 42.67pt
第3位: カトウ・ユウタ / 28.33pt

<30オーバー>
優勝: オオニシ・カンヤ / 68.00pt
準優勝: コシヤマ・マサヒロ / 56.67pt
第3位: イシイ・コウスケ/ 50.00pt

大会概要

⼤会名称 : 「マイナビ JapanCup 名古屋大会」(パーク第1戦) 
開催期間 : 2024年4月26日(金)~29日(月)- 4日間 –
※詳細は公式HPをご覧ください。
大会会場:オアシス 21 銀河の広場(愛知県名古屋市東区東桜1丁目11-1) 
主催: 一般社団法人 全日本フリースタイルBMX連盟(JFBF)
後援:愛知県、名古屋市
特別協賛:株式会社 マイナビ
協賛:鎌ケ谷巧業株式会社
出場カテゴリー:全13クラス(アマチュア含め)
男⼦エリート 13名・⼥⼦エリート 8名

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