福岡のストリートカルチャーを繋ぐ架け橋【DECADE FUKUOKA店長 和田裕司インタビュー】

2025.04.28
text and interview by 薮田悠翔

福岡のストリートカルチャーシーンにおいて、長年にわたり重要な役割を果たしてきた「DECADE FUKUOKA」。単なるストリートアパレルショップという枠を超え、ローカルコミュニティと多様なカルチャーを繋ぐ架け橋として、多くの人々にとってかけがえのない場所となっている。

今回、その舵取りを担う店長、和田裕司氏にインタビューを実施。お店の誕生から、目まぐるしく変化してきた福岡のストリートシーンの変遷、そして未来への熱い想いを語っていただいた。

立ち上げ当初からDECADE FUKUOKAを見つめ、その成長に深く関わってきた和田氏の言葉を通して、福岡のストリートカルチャーの過去・現在・未来を紐解く。

DECADE FUKUOKAのルーツと情熱

DECADE FUKUOKA

DECADE FUKUOKAを立ち上げた経緯を教えてください。

今年で14年目を迎える DECADE FUKUOKAですが、実は僕は立ち上げメンバーではなかったんです。当時、近所の別の洋服店に勤務しており、そこでストリートアパレルブランド「430」を取り扱っていました。 その縁もあり、DECADE FUKUOKAがオープンした当初から近い距離で見てきました。

自分がDECADE FUKUOKAに加入したのはオープンから3年後で、6年前に現在の店舗に移転しました。立ち上げに携わったわけではないですが、この店をどう育てていくかをずっと考えてきて、移転の際には主導的な役割を担いました。単なる服屋というよりはいろんなシーンが自然に繋がれる場所になればという思いがずっとありました。

立ち上げ当初の福岡のストリートシーンはどのような雰囲気でしたか?

それぞれの分野で強い個性を持つ人々がおり、先輩世代が多い時代でした。その濃い人たち同士で仲はいいんですけど、当初はがっつり手を組んでいる印象ではなかったです。

自分もシーンの中心にいるわけではないですが、近くで見させてもらう中で現在ではBMX、ダンス、スケボー、音楽をやっている若い子たちが多く出てきたりと変化を感じています。

DECADE FUKUOKAで販売している430の商品

ストリートアパレルブランド「430」に対する想いを聞かせてください。

僕は430と出会ってもう20年近くになります。単なるブランドというより、「生き様」や「姿勢」を表しているようなブランドのイメージを持っています。

僕自身はBMXライダーだったわけではないものの、ブランドに関わる先輩たちの動きに憧れてきて自分も背筋がピンとするという430はそんな存在です。 福岡としてもそのような芯のある空気感を伝えていけたらと思います。

シーンとの関わり・カルチャーへ向けて

これまで10年以上、福岡のストリートシーンを見てきてどのような変化を感じていますか?

DECADE FUKUOKAができて10年以上が経ち、本当に大きく変わったなと思います。以前はストリートにリアルに生きているような雰囲気が重視されていた印象があったのに対し、現在ではもっとオープンで多くの人が気軽に飛び込める環境になっていると感じています。

ライダーやダンサーなど、どのようなジャンルの人たちがDECADE FUKUOKAに集まってきますか?また彼らにとってDECADE FUKUOKAがどのような場所になっていると感じますか?

DECADE FUKUOKAに来店される方は、BMXライダーやスケーター、ダンサーだけでなく、絵を描かれているアーティストの方や飲食店をされている方など本当にさまざまですね。

近年では、洋服だけでなくコーヒーやアルコールも提供しているため、服を買いに来るだけじゃなくて、ちょっと話したくて寄ってくれるとか。みんなにとっていろんなジャンルの人が気楽に入ってこれる場所になっていれば嬉しいです。

お店を通して、ストリートカルチャーと地域がどのように交差してきていると感じますか?

この形を作った6年前からするとDECADE FUKUOKA自体が公民館のような一つの交差点になっていると感じるようになってきました。

特に、移転の際に併設したコーヒースタンド「ARCH」を通じて、これまで繋がりのなかった人々が服やコーヒーだけでなくそれが入り口になってつながる大切な場所になってきました。

カルチャー醸成の後押しとコミュニティ形成

DECADE FUKUOKAに併設されているARCH

DECADE FUKUOKAとしてイベントやコラボなど、これまでに行ってきたカルチャー支援があれば教えてください。

ARCHというコーヒースタンドを併設していて、店の外にちょっとした休憩スペースのようなのも用意しています。そこで飲食の出店をやったり地元や県外のアーティストとのコラボアイテムの作成、展示会をさせてもらったりしています。

そういったことでつながった方から声をかけてもらって、外部のイベントに僕たちがコーヒーを入れに行ったり洋服を売りに行ったりできるようになってきました。

店舗を続ける中で生まれる「人とのつながり」で大切にしていることはありますか?またどのような「コミュニティ」づくりを目指していますか?

プライドは大事なんですけど、余計なプライドは持たないようにしています。僕自身がそのBMXもスケボーも触れてはいるけど、しっかりとプレーヤーとしてやってきているわけではないので、僕自身上から目線で語れるような立場じゃないと思っています。

だからこそ、どんな人とでもどんなカルチャーやシーンに携わってきた方でも対等でいたいと思っています。親しき中にも礼儀ありじゃないですけど、礼儀礼節などをちゃんと持った関係からコミュニティは生まれていくのかなと思っているので、そこはすごく大事にしています。

お店に通われている若手世代のライダー・ダンサーたちに対して、どんな想いを持って日々接していますか?

僕自身も子供を持つ親なので子供たちがこういうカルチャーに自然と触れられるのがいい時代だなと実感しつつも、カルチャーにいた人間の価値観で、子供たちの選択肢を狭めたくはないなという思いも同時に持っています。

僕たちがかっこいいと思ってきたものや憧れてきたものをちゃんと伝えつつ、新しい世代のやり方にも耳を傾けていきたいです。

今後の展望

和田 裕司

DECADE FUKUOKAの今後の展望や挑戦したいことがあれば教えてください。

地域貢献だったりと地元にもっと根付く動きって何だろう?とすごく考えています。保育園や小学校とつながって、福岡のストリートカルチャーの若手になっていくであろう子供たちがもっと早い段階でこのシーンに触れることができる架け橋的な存在になっていきたいです。ARCHとDECADEはニコイチの店なのでもっと人が交わる空間としての幅は広げていきたいと思っています。

福岡のストリートシーンがこれからさらに盛り上がっていくためにはどのようなことが必要だと思いますか?

福岡はこだわりを持っている方が多く、ローカル同士の横のつながりが広いようで狭い街なのでプライドがぶつかることが多く、ちょっとしたピリ付き合いとかが多いんですよね。そのバランスをとりながらジャンルを飛び越えて気軽にコラボしたり面白いイベントなどを気軽にできる雰囲気は必要だと思います。

かっこつけすぎずに、それでもちゃんとこだわりがあるというのを見せられるのが福岡かな思っています。

430の商品

最後に、430やストリートカルチャーを愛する人たちへ一言お願いします!

誰かに認めてもらうとかではなくて、自分がこれかっこいいなって思えたらそれが正解かなと思っているのでそのためには続けること、ブレないことが大事だと思います。それは結構難しいことなんですけど、430はブラさずに続けてきたブランドだからこそ30年って続いてきたんだろうなと思っています。

430の福岡という大切な街のブランドを背負っているのでお店として、これからも皆さんとシーンを作っていきたいです。

インタビューを終えて

インタビューを通して、和田氏のDECADE FUKUOKAと福岡のストリートカルチャーへの深い愛情と、開かれた場所であり続けたいという強い想いが伝わってきた。 多様な人々が集い、新しいカルチャーが生まれるDECADE FUKUOKAは、これからも福岡のストリートシーンにとって重要な存在であり続けるだろう。

和田裕司プロフィール

和田 裕司

和田 裕司(ワダ ユウジ)

430FLAGSHIP SHOP「DECADE FUKUOKA」店長。
株式会社BEN(ベン)代表取締役。

11年前にDECADE FUKUOKAに加入。現在の福岡市の今泉の店舗には6年前に移転し、同時に「ARCH」を併設。コーヒー、アパレル、アート等、その企画・運営を通じて、ストリートカルチャーとローカルコミュニティの橋渡し役として日々奮闘中。福岡のBMXやスケート、ダンスなどのカルチャーを近くで見つめ続けながらも、自身は「好きな人たちを応援する立場」としてシーンに関わっている。

DECADE FUKUOKA
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-7-6
092-716-2430

執筆者について
FINEPLAY編集部
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