ブレイキンの未来と可能性を感じた一戦。ジュニア世代のための国内最高峰クルーバトル「東急不動産ホールディングス BREAKINʼ SUMMIT 2024」

2024.09.10
Text by Daiki Hatakeyama / Photo: ©公益社団法人日本ダンススポーツ連盟

2024年9月7日(土)に東京都渋谷区の国立代々木競技場第二体育館にて「東急不動産ホールディングス BREAKIN’ SUMMIT 2024」が公益社団法人日本ダンススポーツ連盟主催の下で開催された。

本イベントはパリ2024オリンピックの影響もあり、近年盛り上がりを見せるブレイキンシーンにおいて、ジュニア世代が中心となる大規模な大会が国内外問わず開催されていない背景から、ブレイキン大国である「日本」から、世界に発信できる世界最大のジュニア大会となることを目指して今回初開催となった。

そんなオリンピックの熱も冷めぬ中で行われた今大会では過去に様々なブレイキンの公式大会が開催されてきた東京は渋谷にある国立代々木競技場第二体育館にて大型ステージが組まれ、たくさんの観客が来場した。

なお大会MCにはプロダンサーのFISHBOYBBOY NICOLAS、プロダブルダッチャーのYUI(REG☆STYLE)の3名、DJはTEETOSHIの2名、そしてジャッジにはトップBBOYとBGIRLの計13名と豪華メンバーが集結し、まさに世界最大のジュニア大会を目指すにふさわしい環境の中で行われた。

また今大会には、年齢も人数も様々なU15のメンバーで構成された各都道府県をレペゼンする全48チームが全国から集まり初代チャンピオンの座を競いあった。決勝まで勝ち上がると5回もバトルをすることになりスキルだけでは無く、スタミナも必要となる熾烈な戦いとなった。

以下は注目シーンをまとめた大会レポートだ。

大会レポート

注目を集めるチームがリーグ戦で敗退するなど波乱の展開。予選から大人顔負けのハイレベルバトルが勃発。

今大会にはMORTAL COMBAT九州男児新鮮組など国内外で活躍する強豪チームのジュニアクルーも多く出場し優勝候補と期待されていたが、多くのチームがリーグ戦で敗退するなどジュニア世代の各チームのレベルの高さが垣間見られる展開となった。そんな悔しい思いをする場面でもバトル後にはお互いが駆け寄り握手を交わし、ジャッジや相手チームのディレクターへ頭を下げるなどリスペクトを表す様子も印象的だった。

ブレイキンカルチャーの魅力を感じさせたリーグ戦やバトルトーナメントのTOP16を勝ち上がり、TOP8には北は秋田、南は沖縄まで各国をレペゼンする各バトルを制してきた8チームが名を連ねた。そのTOP8の4戦から特に特徴的だったのは、まさに南北の争いでお互いの地域の個性がぶつかり合った、スタイルズ(秋田) vs 沖縄LAFヤンキース(沖縄)のバトル。

スタイルズ ©JDSF

スタイルズは全8名の構成でBBOY5名とBGIRL3名(HaLuTo、Mitsuki、YUZUKI、洸羽、RINO、SHIMOHAN、凌久、SORA)のチーム。ミュージカリティやパワームーブなど総合的なスキルの高さが光る。対する沖縄LAFヤンキースは、沖縄ならではの個性を活かしたルーティンで会場を愉しませ、また音ハメとシンクロの精度で圧倒する。結果はその後のソロバトルで持ち返し、勢いを取り戻すべく様々なフリーズのバリエーションや息のあったルーティンを繰り出し9票を獲得したスタイルズの勝利。準決勝に進出した。

沖縄LAFヤンキース ©JDSF

BBOY6名とBGIRL1名(ryusei、richiya、kimiya、kenshi、yuzuki、towa、sakura)の合計7名で戦った沖縄LAFヤンキースは惜しくも負けてしまったものの、見ている人たちにインパクトを残したクルーであることは間違いないだろう。全体的な印象としてソロやルーティンに関わらず全員で士気を上げながら自分たちの持つ独創的なムーブを随所に取り入れてくるチーム。その中でも2ラウンド目には、今回特別ジャッジとして参加したDA-PUMPのKENZOにアピールするようなDA-PUMPの人気曲「U.S.A」内で披露されるアイコニックな動きを見せた。その後も見事な音ハメとルーティンのシンクロで会場を沸かせた。

準決勝では決勝への1枠を争うレペゼン石川クルー同士が火花を散らす。

TOP4となった準決勝ではパリオリンピックで日本代表となったBBOY HIRO10を輩出した石川県をレペゼンするクルー同士であるkicks orchestra jr. vs Rock Stream crewの戦いに。今大会には48組中4チームが石川レペゼンクルーとして出場したが、そのうちの2チームがTOP4に残るといった石川県のブレイキンシーンの厚みとレベルの高さを感じるバトルだった。

kicks orchestra jr. ©JDSF

kicks orchestra jr.はBBOY5名とBGIRL1名(hajime、asahi、Kaito、7G、ko-ren、raiji)の全6名で構成されたチーム14歳が4名いるという、今大会では比較的年齢層が高いチームであったがやはりその利点を活かした大きな身体を使うパワームーブは会場を沸かせた。またルーティンでのシンクロ率も高くメリハリのある力強く豪快なムーブで相手を圧倒すると、その完成度の高さが高評価を受けてRock Stream crewに対して13:0のストレート勝ちを果たし決勝へ駒を進めた。

Rock Stream crew ©JDSF

今回の石川対決では惜しくも敗退となったRock Stream crewはBBOY6名とBGIRL2名(KANON、FUUA、HAL、メガリック、JIN、RI-SKY、RUKITA、KO-JI)の合計8名で構成されたチーム。このチームもオールラウンドで男女のバランスも良く、ルーティンでのアクロバットや様々なムーブの一体感などレベルが高く、総じて石川出身クルーのレベルの高さを感じられた。今回は決勝に駒を進めることはできなかったが準決勝まで勝ち上がった実力をいかんなく見せ付けたバトルだった。

一方、トーナメント表の反対の山では秋田のスタイルズと、このトーナメントで無双し続けている大阪のGSB SQUADのマッチアップに。ここでも圧倒的な力を見せて決勝に駒を進めたのはGSB SQUAD。国内のジュニア世代最強のクルーを決める戦いでもある「BREAKIN’ SUMMIT」の初代チャンピオンの座はkicks orchestra jr.(石川) vs GSB SQUAD(大阪)のどちらかに渡ることとなった。

大会アンバサダーのShigekix率いる若手実力派クルーがショーケースを初披露!会場の熱をさらに上げ決勝の舞台を整える

決勝戦を目前にスペシャルゲストショーケースとして、大会アンバサダーのShigekixを筆頭に世界で活躍する同年代の若手ダンサーにより結成されたX11 After Ours(Shigekix,AYANE,Ra1on,Tsukki,Y-HI,Ram,Nanoha)が、クルー結成後初のパフォーマンスを披露し、会場のボルテージは最高潮に。彼らに憧れるジュニア世代の新たな歴史が刻まれる瞬間を盛り上げようと、心の籠った力強い後押しにより舞台は完全に整った。

X11 After Ours©JDSF

初代チャンピオンに輝いたのは圧倒的な実力と個性で快進撃をみせたGSB SQUAD(大阪)

世界最大ジュニアクルーバトル大会の初代王者に輝いたのは、初戦からみるものを圧倒し快進撃を続けた大阪のGSB SQUADが手にした。今大会では最少人数である5名のBBOY(Tomoki、Renrën、Ko-taro、Orion、Riou)で構成されたこのチームは豪快でハイレベルなパワームーブやフリーズなど大人顔負けなスキルはもちろんのこと、会場の空気や音楽をもまるで操るかのように掴み取り、独創的なムーブの数々や、アクロバティックかつストーリー性を感じさせるルーティンで強さを魅せた。そんなクルーとしてもソロとしても個性とスキルを兼ね備えたGSB SQUADが勝利し誰もが認める「BREAKIN’ SUMMIT」の初代チャンピオンとなった。

GSB SQUAD©JDSF

優勝クルーコメント(一部抜粋)

GSB SQUAD (メンバー:Tomoki、Renrën、Ko-taro、Orion、Riou)

GSB SQUAD (左からRiou、Renrën、Orion、Tomoki、Ko-taro)
©JDSF

BREAKIN’ SUMMITの初代チャンピオンになった今の率直な感想を聞かせてください。

Renrën:kicks orchestra jr.という自分たちより強いと思っていたクルーに決勝で当たることができ、勝てたことが嬉しかったです。またコーチのYosh is stoic.さんがサポートしてくれたおかげでここまで来れたのでコーチにも感謝したいです。
Riou:ここまで頑張ってきて優勝できたことが本当に嬉しいです。

初開催となった「BREAKIN’ SUMMIT」に出てみてどうでしたか?

Renrën:ジャッジもすごく豪華で、会場も広くて、観客も多くてすごい暖かい雰囲気の大会だったので踊りやすくて楽しかったです。
Orion:すごく大きいこの大会に関西を代表して出られたことも嬉しかったし、色んなチームのダンサーにも会って楽しくて最高な大会でした。
Riou:全国からダンサーが集まっていて、色々な県のクルーのダンスも見られて楽しかったです。

GSB SQUAD ©JDSF

クルーバトルの魅力について聞かせてください。

Orion:僕はソロよりクルーの方が好きで、練習している時は仲間がいるという安心感がありますし、それで優勝できた時に普通よりも5倍くらい嬉しくなるのでそこがクルーの魅力だと思います。
Riou:ルーティンを成功させた時とか一緒にやれることが楽しくて、技が成功した時にめっちゃ盛り上がってくれるので楽しいです。

BBOYとして目標としている大会について教えてください。

Tomoki、Renrën、Ko-taro、Riou:Red Bull BC Oneで勝つことです。
Orion:海外の大会で100回くらい優勝したいです。

将来どんなBBOYになりたいですか?

Tomoki:無敵なBBOYになりたいです。
Renrën:クルーだけじゃなくてソロでも活躍できる最強なBBOYになりたいです
Ko-taro:無双できるBBOYになりたいです。
Orion:めちゃくちゃスピンをかまして、会場を全部乗っ取れるくらいのすごいダンサーになりたいです。
Riou:トップロックなどもっと色々な技術を磨いてすごいダンサーになりたいです。

イベントアンバサダーShigekix(半井重幸)のコメント

Shigekix ©JDSF

今回初開催となった「BREAKIN’ SUMMIT」を終えて感想を聞かせてください。

次世代のダンサーたちが持っているエネルギーをこの会場にいる全ての人たちが感じることのできた時間だったと思いますし、自分が今回この場を作る立場に携わりましたがここで生まれたドラマや空間は僕たち作り手だけではなく、出場した次世代の子たちみんなが主人公として彩ってくれたもので僕自身も素晴らしい景色を見させてもらえたことに感動しています。

今回アンバサダーとして関わる中でどういう風に大会を見ていましたか?

僕自身が7歳の時、ブレイキンに出会った瞬間に稲妻が身体に走り自分の人生が変わったという風に思っていて、これだけ今の自分の生活が楽しいと思えるのはブレイキンあってこそなので、そういう風に思える子を1人でも多く世界中に作りたいというビジョンを発言しながら日々活動させていただいています。

本当に実現するために自分が何ができるのかを考えた中の一つに、ジュニア世代当時の僕が欲しかったものが目標となる大会でした。目標と仲間さえいればどれだけでも頑張れるというモチベーションと環境が作れると思うので、その現場作りを僕が旗を振って皆さんと一緒に作れたら次世代の子たちにとってかけがえのない時間になるんじゃないかなって思い関わらせていただきました。

X11 After Ours – Shigekix ©JDSF

今回ゲストショーケースにチームで参加されましたが、普段ソロで活動されているShigekixさんがチームとして改めて活動し始めたのはなぜでしょうか?

ソロのプレイヤーとして大会に出場することがメインであることに変わりはないですが、 ブレイキンはカルチャーとして元々チーム色が強くて、その地域やチームを代表して主将同士が戦うのがソロバトルのような形なんです。

既にソロのトーナメントの魅力は伝わってきている中で、これからはチーム戦にもこんなに面白いということも見せていきたいですし、その可能性を見せる新たなステップに入っています。また実際に踊っている瞬間以外でも、仲間も一緒に過ごす時間が自分を成長させてくれたり、先輩後輩含めて本当に関わる全ての人から学ぶこともたくさんあります。

だからこそ今回は、次世代の子たちにもライバルであり戦友である、そんな仲間たちと一緒に結束してこの場に挑むっていう経験をしてもらいたいと思ったのもクルーバトル形式にした理由でもあります。

今後はどういう風にブレイキンの未来に向けて発信していきたいですか?

パリオリンピックでブレイキンに対してたくさんポジティブなリアクションを世の中の皆さんから頂けてとても嬉しいのですが、その嬉しいだけで終わらせたくないですし、ここからが僕たちの腕の見せどころだと思います。

今後はブレイキンっておもしろそうって興味を持ってくれた方や、ファンやサポーターの皆さまにこれからのブレイキンにもっとワクワクしてもらうために、かっこいい姿を見せて楽しんでもらいたいです。今大会のような次世代に貢献できる場所を作るのはもちろんですが、今のシーンを作っているような日本を代表して世界でも活躍するメンバーたちの熱い戦いを日本国内で見せることでブレイキンの可能性を切り開いていきたいです。

そういう意味では今大会に携われたことがその第一歩目だったので、こういう形で1日を終えることができ嬉しい気持ちです。

最後に

今大会は、全国から自分たちの出身地をレペゼンしたU15のジュニアダンサーたちがクルーという本来のブレイキンのカルチャーに乗っ取った形で、大人顔負けのパフォーマンスを魅せるハイレベルな戦いが繰り広げられシーンの成長や活性を非常に感じる大会となった。その中でもちろん勝ち負けも存在するため悔しい思いをしたチームもあったが、ダンサーたちはバトルを楽しみ最終的にはお互いを称え合う姿も見られ、改めてカルチャーの素晴らしさを感じることができた。

味の素 勝ち飯トークショーの様子 ©JDSF

また大会プログラムの途中で開催された、Shigekixと味の素株式会社による「勝ち飯トークショー」には親子連れや出場ダンサーなど大勢の来場者が集まり、世界最高峰の舞台で結果を残し続けるShigekixのパフォーマンスを引き出す身体の作り方や、バトル時の食事のとり方やテクニックなど、育ち盛りのジュニア世代が自らのパフォーマンスを100%発揮するために必要な耳寄りな情報を得られる機会にもなった。

バトルトーナメントの様子 ©JDSF

アンバサダーのShigekixも大会後には「今大会に出場した次世代の子たちは世界的に見てもレベルが高いです。そんな日本が誇る次世代ということで、今回は国内頂上決戦でありながら世界戦でも通用するようなレベルの、この次世代の日本のジュニアダンサーたちのバトルを見させてもらい僕も嬉しい気持ちでいっぱいです。」と日本の明るいブレイキンの未来を肌で感じる1日となった。

大会概要

大会名:東急不動産ホールディングスBREAKIN’ SUMMIT
会場:国立代々木競技場 第二体育館(東京都渋谷区神南2-1-1)
日時:2024年9月7日(土)9:00-19:30
主催:
公益社団法人日本ダンススポーツ連盟(JDSF)
MC:FISHBOY / BBOY NICOLAS / YUI
DJ:TEE / TOSHI 
JUDGE:JACK / KAZUHIRO / KENZO / WINGZERO / YURIE / KATSUYA / Matt Action / SHOWSKI / AYANE / ISSEI / YASMIN / YOUTEE / RAM 
GUEST SHOWCASE:XII AFTER OURS

スポンサー:
東急不動産ホールディングス株式会社 / ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社 / 株式会社みずほフィナンシャルグループ /
株式会社コーセー / 第一生命保険株式会社 / AlphaTheta株式会社 / バリュエンスジャパン株式会社 / 味の素株式会社

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