【EP.2】金メダル獲得だけではない。BREAKING TEAM JAPANが残した功績。 〜 選手からみるBREAKING JAPAN 〜

2025.02.01
text,interview by Takako Ito

FINEPLAYが全日本ダンススポーツ連盟(以下:JDSF)に独占取材を行い、パリオリンピック2024を振り返る企画の第二弾として、今回は“選手からみるBREAKING JAPAN”についてBEAKING日本代表として出場をしたAYUMI、AMI、Shigekix、HIRO10の4選手に話を訊いた。未知なる領域である五輪競技において、BREAKING JAPANはどのようにして闘ってきたのか。その強さを支えたチーム力に迫る。

選手が感じるBEAKING JAPANについて

AYUMI
「日本のチームはみんな仲が良かったですね。その点が凄く救われました。五輪関係なく、これまでずっと同じシーンにいたメンバーだし、その延長線上にRoad to Parisがあったという事が大きな理由だと思います。シゲちゃんなんて9歳位から知っているわけですし、他の選手やスタッフたちも、付き合いが長いです。パリ五輪に向けた練習も、私たちがやりたいようにできる環境を整えてくれて、食事面も専任のスタッフさんがいてくださって、とても頼りになりました。私たちの環境面を常に完璧にしてくれようと努力していただいているなと感じました。スタッフも選手もみんな「One Teamで頑張ろう!」という雰囲気があり、お互いに信用しているからこそ、選手は自分に集中することができたんだなと感じます。」

Ⓒ公益社団法⼈⽇本ダンススポーツ連盟

AYUMI
「例えば、アドバイスも私たちの性格やスタイルを理解した上で、必要な言葉をかけてくれるんです。「この技を出しているときは負け率が高いから、次は違う技を出してみると良いかも。」など分析も的確です。そのアドバイスが必要な人もいれば、プレッシャーになる人もいるわけで。そういう選手のタイミングも含めて、スタッフ陣は常にケアをしてくれました。体のメンテナンスについても、普段お世話になっている先生に加えて、連盟として付いてくださっている先生にも違う視点でアドバイスをいただき、それも勉強になりました。おかげでパリ五輪は最高のコンディションで挑むことができました。」

Ⓒ公益社団法⼈⽇本ダンススポーツ連盟

AMI
「BREAKING JAPANは仲良かったですね。選手たちも含めて。なので、私は凄く行動がしやすかったです。みんな協調性があったのも良かったですね。自分のペースを保ちつつも、集団行動ができるメンバーだったのが居心地良かったです。コーチとギスギスすることも無いというか(笑)。パリでの合宿については、タイミングも私にはちょうど良かったです。場所も最高でした!程よく市街地から離れているのも良かったし、その場にいる人たちもみんな良い人だった。合宿所もAJINOMOTOさんが食事提供をしてくれていましたし、練習スペースも大部屋と小部屋があって、一人で練習したい時に籠ることができるので良かったです。日本にいるんじゃないかと錯覚するくらい、安心感がある中で練習をすることができました。こういった施設ひとつとっても、常に選手のことを考えて選んでくれているんだなと感じました。」

Ⓒ公益社団法⼈⽇本ダンススポーツ連盟

AMI
「BREAKING JAPANのみんなは、選手それぞれにアドバイスをしてくれることも助かりました。私は結構緩いので、その感じを知ってくれて言葉をかけてくれます。シゲちゃんは逆に、戦略を練っていたと思うんですよね。それに対して的確にアドバイスをしていたという印象です。それと、自分がケガをした時のストレスも軽減しました。今までだったら、ケガをしてどうしようという不安な気持ちになりましたが、専門の方がいてくれるおかげで、どうしたら良いか聞けば大丈夫という感じで不安になることは無くなりました。また、国内だけじゃなく、国際的にもKATSUさんが連盟と連携をとってくれていたおかげで、情報が降りてくるスピードも他国に比べて早かったと思いますし、それも良かったです。五輪に向けて、事前に韓国やアメリカと対抗戦を行ったことも良い経験になり、良いコンディションで挑むことができました。変にプレッシャーをかけられることも無く(笑)、本当に良いチームに恵まれたなと思います。」

Ⓒ公益社団法⼈⽇本ダンススポーツ連盟

Shigekix
「情報戦略的なアドバイスをもらったり、良い環境を与えてもらいました。音楽もKENTARAWさんにみてもらい、かなり役に立ちました。そうした中での、合宿中の実践練習はとても意味がありました。DJやMCを本番環境さながらに立て、ステージサイズも一緒で、実際の尺数でラウンドを回す練習をしたんです。それを行うことで、心身ともにみんな追い込まれて、センシティブになっていた時期もあったと感じましたけどね(笑)。ラウンド数も勝てば勝つほど当然増えるわけで、延長戦があると自分のルーティンや技を出すタイミングなども変わってくるので結構心身ともにすり減ったりします。僕からするとそれも含めて本人の力量なんですが、センシティブな時って、ほっといて欲しいというわけでもないんですよね(笑)。だからと言って、抽象的なことばかり言葉をかけてもらうときは、具体的な言葉も欲しくなるし、具体的な言葉をもらうと、もう少し気を遣ってもらいたかったなと思う時もあるしで、結局無いものねだりなんです。だから接し方が難しくなるんですよね。」

Ⓒ公益社団法⼈⽇本ダンススポーツ連盟

Shigekix
「そんな時でも、BERAKING JAPANの皆さんは、本当に選手に対してケースバイケースで接してくれた印象です。欲しい時に欲しい言葉をくれて、そうじゃない時はそっとしておいてくれるというか。情報提供もしっかりとしてくれました。コーチからの指導はとても有り難かったです。五輪に繋がる全日本選手権や国際試合は同じ審査基準で評価を受けるので、その分、情報収集に繋がり、様々な相手と戦う中で“いつもここを落としてる”逆に“獲ってる”という意味でスコアを照合して教えてくれたので、自分のストロングポイントとウィークネスポイントを見直すきっかけにもなりました。パリで行った直前合宿では日本にいる時と変わらない生活環境を整えていただけたので、メンタル面も安定していましたし、ベストコンディションで本番も闘うことができました。帯同してくれた仲間たちの存在も心強かったです。」

Ⓒ公益社団法⼈⽇本ダンススポーツ連盟

HIRO10
「パリでの合宿や五輪本番の選手村での生活は、特にストレスなく過ごすことができました。特に合宿所はパリ郊外にあって、広い庭があり洗濯したり瞑想したり良い時間を過ごすことができる場所でした。食事面では、日本の選手村ではAJINOMOTOさんがフード提供をしてくれていたので、炊き立てのご飯や豚汁、ふりかけや納豆などの日本食を食べることができて助かりました。日本食が大事なので。生野菜やフルーツを食べたい時だけ、主催側が用意してくれている大きなダイニングに行って補いました。ダイニングだけの食生活だったら、同じようなパフォーマンスは出なかったと思いますね。」

Ⓒ公益社団法⼈⽇本ダンススポーツ連盟

HIRO10
「メンタル面については特にKATSUさんがサポートをしてくれました。朝、太陽の下で瞑想したり。日本の神社に行って昇り龍の置物を買ってくれたんですが、それをパリの部屋に飾ってました。そのほかにも、サポート面ではスポンサーのありがたさというか、五輪がなかったら付いてくれることもなかったと思うので、その点もBREAKINGが五輪競技になって良かった点だなと思いますし、連盟側のサポートがあってのことだと感じています。」

Ⓒ公益社団法⼈⽇本ダンススポーツ連盟

連盟の役割とは

この4選手を例に挙げても、経験値や能力、個性が様々であり、世界の猛者を相手に何試合も重ねて勝ち上がっていく1on1スタイルはメンタル面の管理も非常に重要である。ある意味、表現スポーツと捉えることもできるダンスだが、対峙するのは常に目の前の相手であり自分でもある。そして、他の表現スポーツと比べ勝負結果が出るのが早い。

カルチャーシーンのバトルは必ずしもメダルを獲ることが全てではない。誰に勝つのか、誰に評価をされるのかも重要である一方で、メダルを獲る戦略に徹する必要があるのが五輪大会なのだと改めて感じた。そして、裏で支えるスタッフ陣は、選手たちが納得できるベストコンディションで挑める環境作りが最大のミッションとも言える。フィジカル面とメンタル面、どちらのサポートも問われる中、これまでのシーンで培ってきたカルチャーが基盤となり、活かされたことによって、必然的にこの役割分担やOne Teamが生まれたのではと感じた。まさにHIPHOPの4要素を体現していたチームだったように思う。

Ⓒ公益社団法⼈⽇本ダンススポーツ連盟

普段から、相手のことを考え、リスペクトをしあうこの文化が、チームビルディングにも大きな役割を果たしたのではないだろうか。大概のことは、初めてのことはうまくいかないことも多い。特にこの大舞台で、選手の力を最大限に引き出し、本人たちが納得のいくように全力を出し切る闘いをさせてあげるという一点に向かってOne Teamとして動けたことは、外側に居る私たちから見ても伝わるものがあった。

さいごに

パリでの生活において、選手それぞれが「ノンストレス」だったと言っていた。メディアの報道では選手村の食事や宿泊環境の劣悪さなど、それによって眠れずパフォーマンスが出せないと嘆く選手も散見されてたので、環境面のサポートも非常に気になるポイントだった。

BREAKING JAPANは、国内外のBREAKINGシーンから絶大なる信頼と実績を誇るBBOY・BGIRLのメンバーを中心に組織が形成され、プレイヤー視点のサポートはもちろんのこと、マーケティング戦略やフィジカルサポートもそれぞれのプロフェッショナルたちが行っている。また、その様子を記録することにも重きを置き、常に海外にも撮影班が帯同をし分析面においても大きな役割を果たした。こうしたメンバーたちが、日本代表選手やその候補選手たちの強さを後押ししている。

選手に必要な食事面や物品などのサポート面においても、パートナー各社から手厚い支援を受けることができており、一つひとつの物理的なサポートの積み重ねも、選手において最大限のパフォーマンスを発揮することに効いてくる。さらには、選手自身のブランド価値を上げることにも大きく影響し、マーケットが未熟なシーンにおいて、それらを組織としてサポートすることが非常に重要であり、忘れてはいけない側面のひとつである。約8年前、これらの活動を彼らは手探りで始め、並ならぬ努力の上にパリ五輪の結果が結びついたのだと感じた。それはあくまでも「普段通り」に。

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執筆者について
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