THE ISSUE OF URBAN SPORTS 「アーバンスポーツの課題」

2020.12.03
FINEPLAY編集部

一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構会長・早稲田大学教授である原田宗彦氏が見出す「アーバンスポーツの課題」。
本記事では「アーバンスポーツ」の「定義」から、その予測される「将来」までを原田氏が丁寧に解説する。
アーバンスポーツに携わる方や、アーバンスポーツに興味がある方はぜひチェックして欲しい。

アーバンスポーツの定義

アーバンスポーツには、BMX、スケートボード、パルクール、インラインスケート、ブレイキンといったスポーツが含まれるが、それを構成する種目についての明確な定義はない。よってアーバンスポーツは、緩い境界線を持つ「概念的な入れ物」と考えるのが妥当だが、「エクストリームスポーツ(extreme sports)」を起源とするという視点から、これを「危険や体力の限界に挑み、技の見栄えによって人を魅了する自己表現に重きを置くスポーツである」と定義づけることも可能である。

アーバンスポーツには、他の伝統的なスポーツにはない二つの特徴がある。ひとつは、上述の定義でも述べた、人に見せることを意識した<自己表現>が重要な要素になっている点である。もうひとつは、する人と見る人の間に物理的な境界がなく、両者が同じ目線で技を楽しむという「近接性」という特徴である。近接性とは、物理的に距離が近いことであるが、近くにいる人に親しみを感じやすくなることで、会場の一体感が醸成されやすくなる。これに音楽とスポーツを融合させるDJ(ディスクジョッキー)と、進行役のMC(進行役)が加わることで、イベント会場は祝祭空間化し、大いに盛り上がることになる。

技を競うという点において、アーバンスポーツは「体操競技」と似ているが、大きく異なるのは、そこに音楽やファッションなどの若者文化(もしくはストリート系の下位文化)が色濃く反映している点にある。自己表現が重要な要素であるため、選手の服装は自由(ユニフォームやゼッケンなどは着用しない)で、審判員もカジュアルな服装で参加する。さらにブレイキンに至っては、競技前に、審判員が選手の前でダンスを披露し、ジャッジする(に値する)力量を見せるなど、伝統的なスポーツの常識にとらわれない自由な雰囲気がある。

アーバンスポーツの将来

アーバンスポーツの人気が高いのが、83-95年生まれの「ミレニアル世代」と、95-05年生まれの「Z世代」である。前者は、企業広告よりもインフルエンサーの影響を強く受け、インターネットよりもSNSを情報ソースとする「デジタルパイオニア」である。さらに、企業に永久就職するよりも、起業やフリーランスを好むとされている。また上昇志向と仲間意識が強く、モノよりコトに興味を抱く。すなわち、モノに執着せず、「ソーシャルグッド」(社会や環境を良くするための働きかけ)やボランティアへの意識が高いという特徴を備えている。

その一方、現在15歳から25歳前後のZ世代は、多様な価値観を持ち、半数以上がSnapchatやInstagram、Facebookを1日に複数回利用しており、動画コンテンツを週に20時間以上視聴する傾向にある。よってこの世代は、コネクティビティ(つながり)を最大限に活かしながら常に新しい情報を吸収する「ソーシャルネイティブ」と呼ばれ、エクストリームスポーツやアーバンスポーツ、そしてeSportsやフィットネスに興味を持っている。さらに今後は、ミレニアル世代の子供である「α(アルファ)世代」の台頭が、今後のアーバンスポーツの発展を予感させる材料にもなっている。

アーバンスポーツの発展:道路から専用施設へ

アーバンスポーツの普及を考えた場合、一番の問題が施設と場所である。例えば、法律によって「交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること」(道路交通法第七十六条第4の三)は禁じられており、スケートボードもこの行為に含まれる。ただし、「1時間あたり、原付30台、自転車30台、歩行者20名程度の場合は、交通のひんぱんな場所とはいえない」という名古屋高等裁判所の判決(昭和34年4月16日)もあり、普段は住人や宅配便くらいしか通行の無い住宅地の道や、田舎の道路など、交通量が非常に少ない道でスケボーの練習をすることが禁じられているわけではない。しかし騒音の問題もあり、公道や市街地での練習は、住民から拒否される傾向が強い。

その一方で、スケートボードの人気が高まるにつれて、専用の施設としてのスケートパークの数は増え続けている。例えば茨城県には、すでに公共スケートパークが7箇所、民間スケートパークが8箇所あるが、笠間市においても、現在クラブハウスを備えた最先端のスケートパークを建設中で、新たに設置される「かさまスポーツコミッション」(仮称)とともにイベントや大会の誘致に力を入れる計画が進んでいる。

今後、アーバンスポーツの発展には、専用施設の増加とともに、イベントや大会を通じた啓蒙活動が重要となる。またハードルはやや高いが、学校の授業や運動部活動としての採用や、地域スポーツクラブでの実践など、「制度化」と「組織化」が次のステップであると思われる。しかしながら、それらを追求することが、自由と自己表現を肝とするアーバンスポーツの良さを棄損する危険性を孕んでいることも充分に理解しておく必要がある。

AUTHOR:原田宗彦(一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構会長・早稲田大学教授)

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