2018年、産官学民が手を取り合って発足した「“次世代”主導のスポーツシーン創造プロジェクト『Next Generations』」 。
同事業がプロデュースする『Shibuya Sports Academy [渋谷スポーツアカデミー]』は渋谷・都市発展の担い手である若年層に着目し、スポーツを支える仕事について学び、今後、新しいスポーツシーンを主体的に創生していく人材の育成に携わっています。
今回は9月からの開講に向けた特別対談の様子をお届け。 B-GIRLの先駆者で、現在はプレイヤーの傍ら審査員・コーチングなども務めるBODY CARNIVAL CREWのNARUMIさん、バスケットボールBリーグ所属「サンロッカーズ渋谷」チーム広報の西 祐美子さんをお招きし、モデレーターに渋谷未来デザイン 理事・事務局次長 長田 新子さんを迎え対談いただきました。
メジャースポーツとストリートスポーツそれぞれの視点から、新たな発見が生まれた異色のコラボレーション対談。今回はその様子をたっぷりとお届けします。

好きだったバスケットボール業界へ
長田: ナルミさん、西さん、本日はよろしくお願いいたします。まずはお二人のこれまでについて教えていただけますか?
西: 私は中学生の頃にバスケットボールにのめり込んで、大学までボールに触りつづけてきました。就職活動のときにはスポーツで仕事ができるとは夢にも思わなかったので、最初の3年半は百貨店業界で働いていました。
ただそれは、自分のやりたい企画や広報の仕事と微妙に違っていました。なので転職を考えたのですが、それらの業種はどの業界にもあるので、「それなら好きな業界に飛び込みたい」と考えて千葉のバスケットボールチームの広報に就職。その後「Bリーグ」が出来て、バスケ業界がガラッと変わったタイミングで現在の「サンロッカーズ渋谷」の広報に転職し、現在に至る、という流れです。
長田: 「Bリーグ」になって、業界がガラッと変わったってことですか。
西: Bリーグは日本のバスケ業界を発展させることを目的に発足したものです。バスケットボールは小学生〜大学生までプレーする競技にもかかわらず、「プロ」の認知度が低かったんですよね。Bリーグが新しいエンターテインメントとなるように、また国内スポーツが発展するために新たに組織されたんです。私はそのタイミングで「サンロッカーズ渋谷」に転職しました。
ナルミ: 渋谷って住宅地のイメージがあまりないのですが、チームを根付かせるのって難しいのではないでしょうか?
西: そういうイメージを私も持っていました。それこそまだサンロッカーズに転職する前、「渋谷にチームができるぞ」と発表され、業界も騒然としていたんですよね(笑)。チームによってはBリーグ設立・参入のタイミングでチームをリブランディングさせていたのですが、さすがに突拍子もないなと思いつつ、その思い切りに惹かれてサンロッカーズに転職したんです。 ただ実際は住宅街も意外と多く、しかもチームが出来るとなったら、皆さんが受け入れてくださいました。優しくて驚きました(笑)。チームが発足し5年ほどたちますが、渋谷の方々に温かく見守っていただきながら育ってきました。

ナルミ: チームで教えに行ったり、街の人と交流する企画などは意識されているんですか?
西: そうですね。渋谷の人々に「サンロッカーズがあって良かった」と思っていただくことを目標にしています。ある意味、「サンロッカーズ」を“ツール”にして頂いて、渋谷という場所がもっと活性化してくれたらうれしいです。
長田:以前よりスポーツを支援したい企業は多くなっていると感じますか?
西: 相当多いですね。例えば野球だと「ソフトバンク」や「楽天」などは、オーナーがスポーツを通してコミュニティを形成・発展させたり、チームを持つことで、最新技術をそこに入れ込むことができたりもします。 “スポーツと一緒に自分たちもより成長しよう”という流れが加速しています。
長田: たしかに、私が知っている企業にもスポーツを支援したいという方が増えてきていて、流れが加速しているのを実感しています。特にIT系やスタートアップ企業などは積極的な感じがします!
プレイヤー、そして裏方として
長田: 続いてナルミさん、ご自身について教えていただけますか。
ナルミ: 私はいわゆる“裏方プロ”ではなく、むしろプレイヤーとしてゴリゴリやってきました。20歳からブレイクダンスを始め、これまで何度も海外に渡り修行をしてきました。最初の頃は25歳で辞めようと思っていたのですが、そのタイミングで初めてヨーロッパの大会のゲストバトラーの権利をもらい、日本人が大して注目もされていなかった中で、なんと優勝してしまい(笑)。ここで辞めるのはもったいないと感じ、そのタイミングで今のクルーBody Carnivalを発足しました。次は30歳になったら… と思っていたのですが、その時はチーム、個人として目の前の目標が沢山あって、ずっと続けていて、今に至るという感じです。
長田: 日本ではかなり早い段階からブレイクダンスシーンに携わってこられていて、まさに先駆者ですね!さてプレイヤー以外の活動もされていると伺いましたが、それはどういったことがきっかけだったのでしょうか?
ナルミ: 2018年に大きな怪我をしてしまったんですよね。そこがきっかけになっています。それ以降はプレイヤーとしての活動もしつつ、選手の育成やイベントの運営を行ったり、ナショナルチームのコーチもやっています。色々やっていて、今私は自分で何をやっているのか分からないのですが(笑)。でもプレイヤーから離れることで、より裏方の存在の重要性に気付くようになりましたし、プレイヤーを今も続けていることで出る人の気持ちであったり、必要なことに気づけることがたくさんあります。

スポーツシーンの現況
長田: お二人とも長年スポーツシーンに関わっていらっしゃいますが、 それぞれのシーンの現況はどのようなものなのでしょうか。
西: バスケットボールシーンは”右肩上がり”ですね。日本人選手がナショナルチームや海外シーンに出るととても変わってきます。今ですと八村塁選手や、渡邊雄太選手が活躍しています。こういった選手たちが出てくると、子供たちにとってもプロ選手に大きな憧れが集まりますし、今は特にオリンピックも近くなってシーンが盛り上がっています。そもそも私がバスケ業界に入って初めての現場は、たまたまいつもと違う場所での試合だったという事情もあったのですが、お客さまが200人しかいなかったんです。その後、数年の時間をかけて1000人、2000人と増えてきて、今や5000人を集客するチームもあります。この10年で急速に発展したのですが、やはりBリーグの発足が大きかったですね。
長田: シーンがガラっと変わった、とおっしゃっていましたが、「Bリーグ」で何が一番変化したんですか?
西: バスケットボールの試合をすることはもちろんなのですが、エンターテインメントをかなり意識したものになっています。昔はバスケさえやっていれば、「勝っていればいいでしょ」という雰囲気があったのですが、エンタメの視点から再構築することで、スポーツのことをよく知らなくても娯楽として楽しんでもらえるようになりました。それこそ、Bリーグ開幕戦ではコートをLEDで光らせたり、雰囲気を今までのバスケの試合とガラッと変えたりと、プレーや選手を演出などのサポートで引き立たせています。
長田: まさにスポーツエンターテイメントのあるべき姿ですし業界としても挑戦の連続ですよね!ちなみにいまだに続いているコロナの状況下で「サンロッカーズ渋谷」自体はどうでしょうか。
西: 新型コロナウイルスが猛威を振るう中で、スポーツは「不要不急」のカテゴリーではあります。しかしながら私自身も自問自答を重ねてきました…そんなこともないのでは、と思うようになりました。試合を見にいくことを楽しみに仕事を頑張る人もいたり、ファンの方同士はバスケを通じて人とのコミュニケーションを楽しむ人がいたり。こういうファンの方々の姿を見ていると、決して不要不急ではないな…と感じることがあります。人生を豊かにする、心を元気にする力があるので、だからと言って自粛しないということをいいたいのではなく、スポーツはその重要なファクターではないかと感じています。
オンラインは障壁を感じます。それこそ生で選手と触れ合ってもらい、選手の迫力や雰囲気、体格の大きさなども感じてもらいたいのですが、オンラインですとみんなバストアップなので全く分かりませんね(笑)。
例えば選手の体格の良さを感じた子どもたちが「ご飯をいっぱい食べよう!」となれば、それが食育にも繋がります。今のご時世ですとコミュニケーションの取り方が難しいなと感じます。
ナルミ: 不要不急ということについては私たちも考えましたけど、西さんと同じ意見です。ブレイクダンスは、2024年のパリ五輪の新種目に決定したこともあり、ブレイクダンスの知名度が上がって、多くの方から熱視線を浴びているのを感じます。あと、「ダンス」のイメージが変わってきた気はしますね。
30、40代より下の方はカッコイイと思ってくださる方もかなり増えましたが、まだまだそれより上のご年配の方だと”不良のカルチャー”という感覚を拭えず敬遠されてしまうことは多いです。
そういう背景もあり、さらに色んな方に受け入れていただけるようになるために「今はちゃんとしよう」とダンス業界内でも意識が変わってきています。
あと、私自身はダンスシーン以外にも発信をしていって、どんどんカルチャーを社会に浸透させたいです。ダンスに限りませんが、スポーツから学ぶことは本当に多いですよね。私自身もダンスの経験が想像以上にプレイヤー以外の活動につながっていることに気付かされます。チームとしての活動がチームビルディングにつながるように、身体の動かし方やスキルに留まらず、教育や内面的な良さにもつながる。「見て感じる」という魅力に加えて、そういった「内面の学び」の魅力も広まっていけば良いなと思います。
そして、その魅力を伝えていくためには、やはり「プレイヤーがダンスをする」ということだけだと足りないと思います。プレー以外の部分でも伝えていく必要を感じていますね。

長田: そうですね。私たちはそういったスポーツの価値を伝えていく方を「スポーツプロデューサー」と呼んでいます。文字通り、そのスポーツをプロデュースする存在ですね。西さんはナルミさんのお話を聞かれて、いかがでしょうか。
西: 私もそう思います。立場の違いこそありますが、プレイヤーと裏方の私たちで「サンロッカーズ渋谷」という1つのチームと捉えています。プレーを選手に委ねて、逆に選手たちはマネジメントやPRを私たちに委ねる。相互の関係で1つのチームを作ることで、スキルなどに留まらない競技の魅力が伝わると考えています。それこそ私たちの活動は「スポーツプロデューサー」ですね。
長田: 選手とスポーツプロデューサーで1つのチーム、確かにそうですね。そしてファンも加わって一つのコミュニティが作られますね。
ナルミ: ところで…この間、1つの資料を作るのに半年もかかったんですよ(笑)。最初10ページほどの資料が、2度目の修正で50ページになって、逆に減らさないと… みたいなことを繰り返していたら半年が経っていて。
私は会社で勤めた経験がなく、今の裏方の活動で苦労することも多いのですが(笑)。そういうのって会社などで習うものなんでしょうか?
長田: そうですね。“作らないといけない環境にある”と言う方が正確でしょうか(笑)。もちろんイチから丸投げで「じゃあやって」ということは無いのですが。資料作りでは上司や先輩から鍛えられた経験はありますね。
ナルミ: そうなんですね。あと、そういうものって“個性”とかは出るものなんでしょうか?
長田: 個性は自然と出ることが多いと感じますね。どこに熱量を注ぎたいか、どういう想いでやるのかとか、それをどのような言葉で伝えるのか、ですとか。やはり自分の興味あるところには力が入りますね。
ナルミ: 難しいですね本当に(笑)。今の立場になって、裏方のすごさを実感したり、もっと早く知りたかった!と思うことが多々あります。
西: 私も企画書を作るのはあまり好きではないです(笑)。直接話す方が伝わりやすいときもあるので。ただ、ビジネスでは何か提案をすると、「じゃあ企画書もらえる?」って言われることが多いので…。やっぱりそこは大事ですね(笑)。
ナルミ: じゃあそれこそ、「Shibuya Sports Academy」の活動はめちゃくちゃ将来に活きてくるんですね。
長田: おっしゃる通りです。『Shibuya Sports Academy [渋谷スポーツアカデミー]』では“スポーツプロデューサーの育成”としていますが、もちろんここで培ったノウハウはスポーツ業界に限らず、あらゆる場所で生かせるものです。かつ、学生時代に自分の興味のあるジャンルで様々なことを学ぶ新鮮な経験は、受講生にとってとても力になると思いますね。

ナルミ: 羨ましいですね。こういうのがあったら受けたいですもん、私も(笑)。
これからのシーンへの”願い”
長田: それでは最後に、お二人としては今後それぞれの業界をどうしていきたいか、どうなって欲しいか、あればお聞かせください。
ナルミ: カルチャーの露出を増やし、社会に浸透させたいですね。そしてそのために、プレイヤーもシーンを支えている”スポーツプロデューサー”たちの活動に理解があると良いと思います。先ほども言いましたが、プレイヤーがダンスをするだけでは業界は広がっていかない。そこには必ず裏方の存在がありますからね。どちらかが欠けても業界が成立しないことを、プレイヤーと裏方・育成、どちらもやっているからこそ、余計に身に染みて思います。
後は「プレイヤーを持ち上げ過ぎない」ことが私は大切だと思います。表に出る方も裏を支える方も、両方が大切な存在だということを理解し、感謝し合える関係性を作ればどちらの業界も発展していくと思います。
西: 私も同じように思います。「サンロッカーズ渋谷」というチーム、そこにいる選手、そしてバスケットボールの魅力をさらに伝え、プレーする子供たちに夢を与えることが、地域や社会の活性化につながると考えています。
ナルミ: 逆にスポーツの仕事に関わりたいとか、いわゆる”スポーツプロデューサー”を目指したい人に向けて、西さんからアドバイスなどありますか?
西: 私はバスケットボールの世界に飛び込んだ時には、広報の経験もなければ、リリースを1本も書いたことがない状態でした。ですが、それまでに培ってきた経験が生きていることを実感します。全然関係ないと思うような経験もしっかり生きています。ですので良い意味で固執せず、どんどん好奇心の赴くままに動いてみて欲しいですね。スポーツとは一見関係のないようなことに思えても、その行動が将来スポーツ選手をサポートするかも知れない。「これをやってもスポーツ業界の仕事につながらないのでは」などと思わず、とにかくいろんなことに挑戦して欲しいです。

ナルミ: なるほど。私自身裏方としての取り組みは最近になってからですが、プレーに限らずコーチングやワークショップ、講演など、ダンスをプレーする以外の視点で捉えることで、より面白く感じることが増えました。プレイヤーとして集中することも面白いですが、逆にこの魅力をどう伝えよう?と考えることで、プレイヤーに対する向き合い方も変わってくる。何ならそれがプレーにも活きてくる。関係ないことのようにも思えますが、裏方の活動でブレイキンをより好きになることができましたね。
長田:そうなんですね。私もスポーツのそばにいるひとりとして、うなずける部分がたくさんありました。メジャースポーツとストリートスポーツ、(渋谷区のスローガンでもありますが)それぞれちがいをちからに変えて、魅力にして、シーンが今以上に、未来に向かっていく可能性を感じました。 特にスポーツの原点にあるチャレンジスピリットや、敵味方を問わず良いプレイを称えあえるアスリートお互いのリスペクトなど、ますますフィーチャーされていくように思います。 お二人とも素敵なお話を、ありがとうございました。
プレイヤーがプレーを全うできる環境を作るため、そしてさらなるスポーツの魅力を伝えるために奔走するお三方の対談、いかがでしたでしょうか。バスケットボールなどのメジャースポーツに限らず、ストリートスポーツでも”スポーツプロデューサー”の存在は重要なもの。もしプレイヤーから離れても、あなたの好きなスポーツに関わる機会ができるとしたら? そしてそのために必要なものは何なのか? 興味があるあなたに、『Shibuya Sports Academy [渋谷スポーツアカデミー]』の講座は必ず力になってくれることでしょう。
Shibuya Sports Academy [渋谷スポーツアカデミー]とは
『Shibuya Sports Academy [渋谷スポーツアカデミー]』では、スポーツ業界を裏から支える仕事についてワークショップや机上で学習します。スポーツプロデューサーとして実際に活躍しているプロもゲスト講師として登場。見る人にスポーツの魅力を感じてもらうにはどうすればいいのか、基礎からしっかり学ぶチャンスです。
講座の詳細は、ウェブサイトよりご覧ください。
ゲスト / モデレーター プロフィール
●NARUMIさん(BODY CARNIVAL CREW)

15年以上に渡り世界大会で50回以上優勝するという偉業を成し遂げるBGIRL界のパイオニア的存在である。「夢や目標に向かって挑戦し続ける」をテーマに世界をまたにかけ活動を行っている。
2016年にはNHKのドキュメンタリー番組 「ハートネットTV ブレイクスルー」に出演。 ブレイクダンスシーン発展のために、 高校・中学校の進路授業で講演会を開催、プロアスリートと共にプロジェクト参加するなどダンスシーンの枠を越え様々なシーンに発信する活動も精力的に行っている。
2018年アルゼンチンで開催されたYouth Olympic Gamesではブレイキン種目の初開催が決定し、大会の審査員として数々の世界大会でジャッジも務める。
国内外で活動の幅を広げており、発展途上国へのダンスシーンのサポートや、チャリティーイべント、ワークショップなど、ダンスを通じた社会貢献もチームのメンバーと共に行っている。
現在も海外や日本各地の大会に参加し現役活動を続けながら、審査員、ゲストショー、ワークショップ講師として世界中で活躍中。
●西 祐美子さん(サンロッカーズ渋谷 広報、地域、 MD担当 )

神奈川県横浜市出身。日本大学法学部卒業後、百貨店の運営会社へ就職。2013年よりbjリーグ(日本バスケットボールリーグ)所属のチームへ転職、バスケットボール界へ飛び込む。チケット担当を経て2015年より広報担当に就任。その後2016年、Bリーグの発足に伴い、プロ化を図りフランチャイズを渋谷区へ改め再出発をした『サンロッカーズ渋谷』(株式会社日立サンロッカーズ)へ転職。渋谷区初のプロスポーツチームとして広報、地域、MDを担当している。
●モデレーター:長田新子さん(渋谷未来デザイン 理事・事務局次長)

AT&T、ノキアにて情報通信及び企業システム・サービスの営業、マーケティング及び広報責任者を経て、2007年にレッドブル・ジャパン入社。最初の3年間をコミュニケーション統括、2010年から7年半をマーケティング本部長として、日本におけるエナジードリンクのカテゴリー確立及びレッドブルブランドと製品を日本市場で浸透させるべく従事し、2017年に退社し独立。2018年4月より渋谷の未来を生み出すプロジェクトを構想・推進する「一般社団法人渋谷未来デザイン」にて、ソーシャルデザインをテーマにした都市フェス「 SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 」、渋谷区公認「バーチャル渋谷」 を推進する「渋谷5G エンターテイメント」 、ストリートスポーツ啓蒙プロジェクト「Next Generations」などを手掛ける。
その他、NEW KIDS株式会社代表として、企業ブランド、コミュニティ・アスリート・イベント関連のアドバイザーやマーケター向けキャリア支援活動を行なっている。初の著書「アスリート×ブランド 感動と興奮を分かち合うスポーツシーンのつくり方」(宣伝会議)を2020年5月に出版。趣味はスポーツ観戦・音楽ライブ鑑賞、ゴルフ、海など。
※ マスクは撮影時のみ外しております。
※ 対談取材は7月9日(金)に行われました。
photo by KAZUKI
text by YAMADAI
SPECIAL EDITION

FINEPLAYはアクションスポーツ・ストリートカルチャーに特化した総合ニュースメディアです。2013年9月より運営を開始し、世界中のサーフィン、ダンス、ウェイクボード、スケートボード、スノーボード、クライミング、パルクール、フリースタイルなどストリート・アクションスポーツを中心としたアスリート・プロダクト・イベント・カルチャー情報を提供しています。
アクションスポーツ・ストリートカルチャーの映像コンテンツやニュースを通して、ストリート・アクションスポーツの魅力を沢山の人へ伝えていきます。
●今日 ○イベント開催日
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doubledutchスペシャルキャスト陣が語る、「エンタメ」について。ITADAKI 2023 特別企画2023.09.212023年 9月30日(土)に、神奈川県川崎市・川崎ルフロンで開催される『ITADAKI ダブルダッチ甲子園 2023』。 この大会が他と一線を画すのは、“エンターテイメント”要素を多く含んでいることにある。審査項目の30点分を「エンターテイメント」という項目が占め、またその審査員をダブルダッチプレイヤーではない、各ジャンルで活躍するパフォーマーが務める。またそれに加え「観客投票」も実施され、パフォーマンスを見た観客による投票も順位に関わってくる。 そんなITADAKIには“大会アンバサダー”が設けられ、3年連続で「DA PUMP」のKIMIと、プロダブルダッチチーム「REG☆STYLE」が就任。またエンターテインメントジャッジには、お笑い芸人のツネが登場。今回、KIMI・ツネとREG☆STYLEのリーダー・KO-YAが対談。業界の最前線で活躍する彼らが、「エンターテイメント」について語り合う。訊き手は、REG☆STYLEよりYUIが務める。 左からツネ・KIMI・KO-YA・YUI YUI:本日はよろしくお願いします!ITADAKIに関わるスペシャルメンバーが一同に介したわけですが、最初にオーガナイザーであるKO-YAから一言もらおうかな。 KO-YA:この度はお二人、ありがとうございます!ITADAKIも3年目を迎えまして、お二人がこうして揃って企画に参加していただけること、そして当日を迎えることができるのが嬉しいです。 KIMI:こちらこそ、今年もお呼びいただいて嬉しかったです。ツネさんとも昨年ITADAKIで共演予定だったのですが、残念ながらコロナに感染されてしまい、お会いできなかったので嬉しいです。当時はまだコロナの波があったシーズンでしたし、社会情勢も落ち着いて、いよいよ万全の体制で当日を迎えられそうですね! ツネ:昨年は悔しかったんですが、その分今年が本当に楽しみですね。 KO-YA:実はKIMIさんはITADAKI 当日、グループ(DA PUMP)の活動もあってお越しになるのが難しいかもしれないというお話も出ていたんですよね。代わりの方を探す考えもよぎりましたが、僕含め実行委員会で話し合っても、やっぱりKIMIさん以外がやられているビジョンが湧かなくて。そしたらKIMIさんが頑張って調整してくださって。 KIMI:稀有(けう)でしょ、本当(笑)。 KO-YA:本当に嬉しかったです。そしてツネさんとも今年こそご一緒できて、社会情勢も落ち着いて、いよいよ全てが整った!という気持ちです。 3人のルーツ YUI:今回の座談のテーマが「エンターテイメント」について、ということで。最初に大会について軽く話してもらいたいんですが、ITADAKIは他のストリートやダブルダッチの大会と違ってエンタメ要素が強い大会なんだよね、KO-YA。 KO-YA:それこそショーケースだと、技術を測る審査項目に加えて、ITADAKI独自の「エンターテイメント」という審査項目があるんです。毎年、各ジャンルのトップランカーの方にお越しいただいて、エンタメ性を審査してもらう。今年はコメディアンのツネさんに加えて、ダンサーのKAZANEと、フリースタイルバスケットボーラーのZiNEZ a.k.a KAMIKAZEの3人をお迎えしています。 左から ZiNEZ・KAZANE・ツネ YUI:ダブルダッチ界、なんならストリート界でも珍しい路線の大会で、競技感のある他の催しに比べると、出演する選手のキャラクターにまでスポットが当てられる印象だよね。ということでお三方にエンタメをテーマにお話を訊いていきたいのですが、最初に皆さんがエンタメの道を歩み始めるルーツを伺いたいと思います。 ツネ:人前に出ること自体は小学校くらいから好きで、目立ちたがり屋でずっとふざけていました(笑)。22歳でNSC(※)に入って、そこから本格的にお笑いの道に進みましたね。当時流行していた『めちゃ×2イケてるッ!』という番組が好きで、この番組に出ている人たちみたいになりたいと。 (※)NSC:吉本興行が創立した、タレント・お笑い芸人の養成所。正式名称は「吉本総合芸能学院」。 KIMI:一番最初に人前に立つことが面白いと思ったのは、中学校の文化祭かな。劇の主役でピノキオ役をやったのですが、まあキャーキャー言われちゃって(笑)。当時って演劇にダンスを取り入れるのって少なかったので、劇中に踊ってみたら、結構な手応えを得てしまったわけです(笑)。その後はクラブのショータイムなんかにも出たりしていたのですが、場数を重ねていくうちに「すごいことをすると、それ相応の拍手が返ってくるんだな」ということに気づいて、今に至るという感じですね。 KO-YA:初めてのステージは… 4歳ごろですかね。僕のおばあちゃんの和太鼓に合わせて、ひょっとこの仮面をかぶって、親戚の前で「はい、踊りなさいコーヤ」って言われたのが最初です。ちなみに今は85歳なんですが、バリバリ自転車を立ち漕ぎして移動してます(笑)。おばあちゃんの英才教育ですね。 3人の共通項 YUI:お話を伺っていると、幼少期から“人を楽しませることが好き”な方々なんだなと思ったのですが、それを今お仕事にされているお三方にとっての「エンターテイメント」について色々お話を伺いたいなと。ジャンルは三者三様ですが、共通項を探してみたいですね。…え、KO-YA、ググるの?!(笑) “ググる”KO-YA ツネ:共通項で言うと、リズムやテンポでしょうか。テンポが良ければ気持ちって高揚しますよね。逆も然りで。 YUI:ダブルダッチでも音楽に合わせて技を繰り出したりするんですが、やっぱりリズムやテンポってすごく大切なんです。お笑いなんかでも重要なんですね。 ツネ:お笑いもそれが狂うと悲惨なことになりますね(笑)。一緒にステージに上がる人や、ステージ裏の方々との連携も必要です。ダンスもそうですよね? KIMI:もう乱れたら一貫の終わりですね(笑)。YUIちゃんがさっき言っていたように、僕らも音に合わせてダンスしたり歌ったりするので、少しのズレでも見てくれる方々の気持ちを冷めさせてしまう。特に僕らはグループなので、いかにみんなの動きを合わせていくか。 YUI:なるほど。今のお話を訊いていて、たとえば音楽と合わせることやロープのリズムなど、いわゆる「物理的なテンポ」も合わせることが大事ですが、「人同士の呼吸」を合わせることも大事なのかなと思いました。 YUI 一生懸命になること KO-YA:あとは「一生懸命に向き合う」っていうのもエンタメ――それこそ、“人を楽しませる”とか“感動させる”ものだと思うんです。たとえば高校サッカーや野球の甲子園も、一生懸命な選手たちの姿って本当に感動するし。今年のITADAKIも、開催前の段階から各団体やチームからのパワーが伝わってきて、年々ボルテージが上がっていることを実感していて、早くも心を動かされています。 YUI:そうだね。色々テクニック的なものも皆さんお持ちだとは思うんですが、一番の根本の部分ってそこですよね。いかに「本気」になれるか。 KIMI:エンタメにゴールって無いと思うんです。そこに身を置く人間は、常に一生懸命に、本気になって前進していかなければならない。その先の自分の目標や、ついてきてくれる仲間のこと、携わってくれる方々とどうしたら面白くなるかを考え続けたいです。常に楽しいことを考え続けるために、楽しい自分でありたい。ネガティブと風邪はうつりますからね(笑)。ってことは、ポジティブもうつるわけで。 KIMI YUI:確かにこのメンツといると、ちょっとした病気は治ってしまいそうです(笑)。それこそKIMIさんは昨年末、ワンマンライブもやられていましたよね。改めてKIMIさんのエンタメに対する「本気さ」や「楽しませよう」という気概を強く感じさせてもらいましたし、何より本当に盛り上がっていました。 KIMI:それも“前進”の一つでしたね。とにかくやることに意味があると思っていて、一人で進んでいかないといけない。恥をかいてもいい覚悟で。でも、あの会場で一番楽しんでいたのは自分でしたし、そのつもりでやっていましたね。見にきてくれた先輩が「ムカつくくらい楽しそうだった」って言ってくれて、よっしゃと(笑)。 KO-YA:「一番自分が楽しむ」ということも、エンターテイメントの一つな気がしましたね。 YUI:例えば「ここで笑顔を見せる」みたいなテクニック的要素もありますけど、その笑顔が本当に楽しんでいる人の表情なのかって、伝わりますよね。ツネさんはいかがですか? 最近は海外にも飛び出して色々と挑戦されていますよね。 ツネ:めっちゃくちゃ緊張します(笑)。でも皆さんおっしゃるように、僕が一番に楽しんでいます。もちろん上手くいくことだけではないのですが、振り返るとそれも含めて楽しいんですよね。その瞬間を本気になって臨めば、どうあれ「楽しい」と思える時間になる。でも… やっぱり笑ってくれる瞬間が一番楽しいですよね(笑)。 “ミス”をどう乗り越える? ツネ:海外だと日本と笑いのツボも全然違うので、演目中に「ヤバっ」って思う瞬間も正直あります。ここで反応が欲しいのに、思ったリアクションが得られなかったりすると、感情が高揚しているはずなのに一瞬すごく冷静になって「次どうしていこう」と考えたりする。ステージ上の一瞬一瞬の判断が迫られる緊張感が僕は楽しいですね。 ツネ YUI:なるほど。ツネさん、すごくダブルダッチに向いてらっしゃるなと思いました。私たちダブルダッチプレイヤーも、テンションだけで乗り切ろうとするとロープに引っかかってしまったりするんですよね。テンションと冷静さのバランスが重要だなと思っています。 ツネ:そうなんですね。やっぱり不安だと引っかかってしまったりしますか? YUI:本当にめちゃくちゃありますね、不思議なもので。KIMIさんは以前私たちREG☆STYLEと、一緒にダブルダッチのパフォーマンスをやってくださいましたよね。 KIMI:そうだね。やっぱり気持ちだけ先走ってもダメ。ターナー(ロープの回し手)との呼吸を合わせることって大事だね。さっき言ったテンポもそうだし、「一生懸命さ」「自分が楽しむこと」も大事なんだけど、どこかで冷静な判断ができる脳みそも必要。あと、僕の普段の活動でも「ここでオーディエンスを湧かせたいぞ!」と思って用意していても、ライブ本番で全然盛り上がらないときってあるんですよ。その瞬間「うっわー、全然盛り上がってねえじゃん」って(笑)。 KO-YA:いやー、分かります(笑)。ダブルダッチってミスが分かりやすいスポーツで、動き自体がどれだけ綺麗でも、ロープに引っかかるとミスになりますし、見た目的にもミスが分かりやすいものなので痛感しています。きっと選手たちにも同じ経験があると思うんですよ。お二人に伺いたいんですが、そういう「ヤバっ」って思った瞬間ってどうされていますか? ツネ:もう、開き直るしかないです(笑)。 KIMI:本当にそうですよね(笑)。 ツネ:焦ったら失敗するので、開き直って堂々と振る舞うのが一番だと思います。時間は戻らないので、スベったら「めっちゃスベってるやーん」くらいに(笑)。 KIMI:本当に一緒です(笑)。失敗しても前にいるボーカルのISSAさんはめっちゃ歌っていて、僕も当然一生懸命に振る舞うんだけど、心の中ではかなり冷静です(笑)。それこそITADAKIに出る選手のみんなも、例えば仮に立ち位置が違ったりしても「おれが正解だ」って顔をしちゃって、堂々としていた方がいいんじゃないかな。 YUI:やはり経験を積んできたプロでもこういうことってありますから、そういうときこそ堂々といるべき、ということですね。 いよいよ開催!「ITADAKI 2023」 YUI:最後に、今年もITADAKIが開催されるということで。残りわずかですね!皆さんの意気込みをお伺いできればと思っています。 KIMI:今年もアンバサダー兼MCとしてマイクを握らせていただきます。3年目ですからね。3年もやっていると「去年出ていた子が今年はこうなってるんだ!」と成長を感じることもあります。選手のみんなが、これまでどんな努力をしてステージに立っているのかに思いをめぐらせながらMCをできるのが嬉しく楽しみです。何よりここ最近、ダブルダッチがかなり盛り上がっていることを強く実感しているので、僕自身も盛り上がっていきたいと思います! 昨年のITADAKIの様子。MCを務めるKIMI・YUI(写真提供:ITADAKI 実行委員会) ツネ:皆さんが「どこまで楽しんでやっているか」を見たいです。僕は当日エンタメ項目を審査させていただくので、そこが自分の審査の内容に関わってきそうな気がします。自分が楽しむことで、人を楽しませられる。見ている側の受け止め方もかなり変わってきます。KO-YAさんも先ほど言っていた「本気」を見たいですね。僕らくらいの年齢になると、本気になっている高校生の姿にやられる時があるんですよ。むしろ「そういうのちょうだい!」って思っています(笑)。ダブルダッチ的な技術も当然大事だとは思うのですが、芯の部分は「本気で楽しめるか」ということだと思うので、とにかく楽しんでほしいです。 YUI:ITADAKIって2021年にできたばかりなので、REG☆STYLEのチームメイトで、高校時代からダブルダッチを始めたKAIはよく「今の高校生たちが羨ましい!」って言っているんですが、大学から始めた私でさえもそう思いますね。それに、これだけシーンの外から熱い思いを持って大会に参加してくださる存在がいることが心強いです。こうした環境にいるみんなは、自分を出し切ってダブルダッチを楽しんでほしいですね!それでは最後に、オーガナイザーのKO-YAから一言お願いします! KO-YA:年々 ITADAKIが、高校生たちが本気をぶつけてくれるステージになっていると実感しています。エンタメ要素が強い大会だからこそ、まずは「人を楽しませる」ということについて振り返って考える機会にしてほしいなと思いますね。そして、総じて今日の皆さんとのお話にもありましたが、高校生のみんなの一生懸命な本気の姿を見たいです。大会としては本当にどこが勝つか分からない戦いで、下馬評のある猛者からダークホースまで色々。溢れんばかりの熱量とみんなのダブルダッチを楽しみにしています。でもやっぱり、当日は僕が一番楽しみます! KO-YA 【 取材協力 】「Cafe Habana TOKYO」東京都渋谷区猿楽町2-11 氷川ビル1F 開催概要 「ITADAKI ダブルダッチ甲子園 2023」日時 : 2023年 9月30日(土)時間 : 13:00 開演予定会場 : 川崎ルフロン主催 : ITADAKI 実行委員会主管 : 有限会社OVER THUMPZ協賛 : ポカリスエット / ヘインズブランズ ジャパン株式会社協力 : スキルハック協力メディア : FINEPLAY
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bmx中村輪夢が前人未踏の大会5連覇、内藤寧々は2度目のタイトルを獲得「第7回全日本BMXフリースタイル選手権」フリースタイル・パーク種目2023.09.20「第7回全日本BMXフリースタイル選手権」フリースタイル・パーク種目が岡山県岡山市の岡山市役所前にて2023年9月16日(土)~17日(日)の2日間に渡り開催され、男子エリートでは中村輪夢選手が大会5連覇、女子エリートでは内藤寧々選手が自身2度目の全日本タイトルを獲得した。 今大会には今年の日本一を決める大会ということもあり、子どもから大人まで各カテゴリーのトップライダー合計115名が全国から集まった。出場選手たちは自分たちが日々の練習で磨いてきた、思い思いのベストトリックを入れ込んだライディングを大勢の観客の前で披露しながら、各カテゴリーの全日本タイトルの座を狙い熾烈な戦いを繰り広げた。 今回の大会会場となったのは岡山市役所前。岡山市役所の駐車場に設置された特設パークは大通りに面し十字路の角に位置していることから、一般のお客さんも気軽に立ち寄れ、観戦には好立地の会場での開催となった。実際に会場にはBMX関係者から一般の観客まで大勢の方がコース横へ集まり、大きな拍手と歓声を上げて観戦している様子が見られた。 なお今大会の模様は、昨年に引き続きNTT西日本グループの協賛・技術提供により「双方向ライブ配信」によりリアルタイムで視聴可能となった。本プラットフォーム上ではオンラインでコメントや歓声を送ることができ、その様子は会場の大型モニターとリンクされていて、会場に行けない方でもまるでその場にいるかのように応援ができる。そしてこのライブ配信では実際に選手たちがジャンプ台で魅せる複雑な大技を連続写真のように映像化する技術が導入され、どのようにそのトリックを繰り出していたのかを一連のモーションで確認でき、逆にオンラインだから可能となる新しい観戦体験を提供した。 以下は、今大会最高峰カテゴリーである男女エリートクラス決勝の大会レポートだ。 圧倒的な大差を見せ付け優勝した絶対王者。男子エリートは中村輪夢が、女子エリートは内藤寧々がタイトルを獲得。 男子エリートクラス決勝 photograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF 男子エリートクラス決勝は12名の中から予選を勝ち上がった8名で争われた。ここ最近は高い実力を持つ10代の若手選手が増えている日本のBMXフリースタイル・パークシーン。今回も若手選手が多く勝ち上がったが、一方でベテランや長年トップで活躍選手もいるなど選手たちの個性が分かれた見応えのある決勝となった。 中村輪夢のライディングphotograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF 今回、他の選手たちを圧倒し大差を広げて優勝したのは中村輪夢。中村はラン1本目から超大技「720・テールウィップ」や「フレア・テールウィップ」そして「720・バースピン」をメイクするパーフェクトランディングで早速91.30ptをマークし暫定1位へ。圧倒的なスコアだったからか、その後も中村の1本目のスコアが塗り替えられることはなく、2本目を迎える時点で優勝が確定。 中村輪夢のライディングphotograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF ウィニングランとなった2本目では、プロ野球チームである阪神タイガースの歌「六甲おろし」をバックに更にハイレベルなライディングを魅せる。「バックフリップ・クアッドバースピン」を皮切りにスタートしたランでは、1本目でもメイクした「720・テールウィップ」や「720・バースピン」はもちろんのこと、「アリーウープ・フレアテールウィップ」そして「360・ダウンサイドテールウィップ to バースピン」など数々の超大技組み込んだランで94.60ptを叩き出し完全優勝。なお今回の優勝により中村は全日本選手権5連覇を収めた。 溝垣丈司のライディングphotograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF 準優勝は今年のアジア選手権でチャンピオンの中村に続き2位入賞を果たした溝垣丈司。世界中からそのスタイルが高評価されている彼は、ラン1本目は「トリプルトラックドライバー」、ジャンプ台逆飛びの「360 to クロスアップ」など回転系のコンボトリックで構成し、かつその中で約5mのほどの距離を跳び切る「ビックトランスファー」を交えたランを魅せるも、最後にジャンプ台に飛び乗る形で見せた「バックフリップ・180」で失敗し、スコアを59.80ptとした。 その後1本目を上回るべく挑んだラン2本目では見事に修正。同じルーティンを更なる完成度でこなし、1本目で失敗した最後の「バックフリップ・180」をメイクし、そこに「キックフリップ」を加えて会場を沸かした。このランは80.14ptと評価され、見事順いもジャンプアップ。2位入賞という形で全日本選手権を終えた。 小澤楓のライディング photograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF 3位は今シーズンの世界選手権で並いる強豪選手抑えて、自身初の準決勝進出を果たし着実に実力つけている小澤楓。持ち前のコンビネーションの多さとスピード感のあるランで各セクションで細かく様々なトリックを連発。その中でも2本目で見せた「360・ダブルダウンサイドテールウィップ」や「360・テールウィップ to バースピン」の完成度の高さと、他選手より多くのトリックをメイクしているにも関わらず、終盤でも疲労を感じさせずに大技をメイクする姿には彼のフィジカルの強さを感じられた。今回はトップスコアを80.00ptとして溝垣に僅差で2位の座を譲ることとなったが、小澤はエリートカテゴリー昇格後2年連続で全日本選手権の表彰台を獲得した。 女子エリートクラス決勝 女子エリートクラス決勝は5名で争われ、今回は日本代表選手である内藤寧々に加えて今年からエリートクラスに上がってきたスキルフルな若手ライダーにより今年の全日本タイトルの座が争われた。 photograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF そんな中、今年見事全日本タイトルを獲得したのは内藤寧々。内藤は今回特にハンマートリックは用意せず、綺麗にトリックをメイクすることとスピード感を意識したライディングで安定したランを魅せる。 ラン1本目では逆飛びで加速しながら、「360・クロスアップ」や「タックノーハンド to クロスアップ」そしてクオーターでの「テールウィップ」を綺麗にメイクし、自身の代名詞でもある「ワンフット・クロスアップ to キャンキャン」を入れ込むランで60.40ptというスコアを収める。ラン2本目では1本目ではメイクしていない「バックフリップ」も入れ込んだライディングをするも1本目ほどスコアは伸ばせず60.20ptをマーク。しかしベストスコアである60.40ptを守りきり、エリートカテゴリーにて自身2度目のタイトルを獲得した。 内藤寧々のライディングphotograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF 準優勝は今年からエリートカテゴリーに昇格した山本結花。彼女はラン1本目から攻めのライディングを魅せる。男女ともに新たな歴史が刻まれた一戦「第7回全日本BMXフリースタイル選手権」フラットランド種目クオーターでの「540」をはじめにメイクし、勢いをつけると「キャンキャン・タイヤグラブ」や逆飛びでの「トランスファークロスアップ」を決める。終盤では「360」をメイクするライディングで54.40ptというスコアで暫定2位に位置付けた。 更なるスコアアップをトライした2本目では、女子で未だ誰もトライしたことがない「540・バースピン」に挑戦するも失敗。その後はランのスコアは気にせず、制限時間いっぱいを「540・バースピン」のメイクに費やすもランディングに失敗。ベストスコアは1本目の54.40ptとなったが暫定2位を維持し2位入賞を果たした。 杉尾咲空のライディングphotograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF 3位は山本同様に今年エリートクラスへ昇格し、「マイナビ Japan Cup 名古屋大会」では優勝を収めた杉尾咲空。他の選手に比べてストリート系のトリックも得意とする彼女は、完成度の高い「バースピン」を中心したライディングを魅せる。セクションを大きく使いスパインや様々なセクションでトリックを決めながら、中盤には「360」やストリート系のトリックである「スミスストール」をメイク。しかしスコアは思ったほど伸ばすことができず2本目の48.60ptをベストスコアとし、エリートクラス最初の年の全日本選手権を3位入賞で締め括った。 優勝者コメント 優勝した内藤と中村photograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF 中村 輪夢 選手(男子エリートクラス)「連覇を重ねることでプレッシャーが増し、本大会でも緊張感を持った中で迎えた決勝となりました。決勝1本目では理想とする走りができなかったので悔しさは残りますが、2 本目のランには満足しています。 先日の世界選手権や今大会を経て、まだ完成度に課題が残っているので、現在一番の目標としている来年のパリオリンピックに向けて練習を重ねていき、東京オリンピックのリベンジを果たしたいです。」 内藤 寧々 選手(女子エリートクラス)「優勝できて嬉しい気持ちでいっぱいです。今回の練習走行では確認したい項目をまとめられず、少し焦りと不安が残る中での決勝だったのですが、決勝ではスピード感と大ディングの綺麗さを意識したことで自分の予想を上回る得点を出すことができました。 今後も国際大会でのさらなる経験を積み、海外の大きな大会でも表彰台を獲得したいです。」 大会結果 photograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF <男子エリート>優勝: 中村 輪夢 (ナカムラ・リム) / 所属:ウイングアーク 1st 94.60pt準優勝: 溝垣 丈司 (ミゾガキ・ジョージ) / 所属:湘南工科大学附属高等学校 80.19pt第3位: 小澤 楓 (オザワ・カエデ) / 所属:岐阜第一高等学校 80.00pt photograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF <女子エリート>優勝: 内藤 寧々 (ナイトウ・ネネ) / 所属:第一学院高等学校 60.40pt 準優勝: 山本 結花 (ヤマモト・ユイカ) / 所属:第一学院高等学校 54.40pt第3位: 杉尾 咲空 (スギオ・サクラ) / 所属:細田学園高等学校/AIRWALK 47.00pt <キッズ4アンダー>優勝: コジマ・ハル / 62.50pt準優勝: フカマチ・コウト / 54.75pt <キッズ5-6>優勝: ナガゾノ・ジンロウ / 64.25pt準優勝: ウチヤマ・シキ / 56.88pt第3位: サカノ・エマ / 55.00pt <ボーイズ7-8>優勝: マスイ・チアキ / 80.25pt準優勝: タカハシ・ヒサシ / 71.25pt第3位: タナカ・ケンタロウ / 57.50pt <ボーイズ9-10>優勝: ニワ・コウキ / 76.75pt準優勝: オゴケ・ユウト / 75.63pt第3位: フダモト・ユウマ / 70.13pt <ガールズ7-9>優勝: ウメバヤシ・ユマ / 74.75pt準優勝: ニワ・ココロ / 60.25pt第3位: アダチ・コノハ / 44.75pt <ガールズ10-12>優勝: ホソカワ・イロハ / 76.50pt準優勝: オクザキ・トモカ / 75.75pt第3位: タナカ・アヤノ / 67.63pt <ボーイズ11-12>優勝: シミズ・ハル / 79.25pt準優勝: アカツカ・ヒロキグスティ / 77.38pt第3位: タニモト・リョウガ / 61.50pt <男子13-15>優勝: マツモト・ショア / 77.25pt準優勝: ジンボ・トラノスケ / 69.00pt第3位: マツウラ・アオウ / 60.00pt <男子30オーバー>優勝: コシヤマ・マサヒロ / 66.25pt準優勝: イシイ・コウスケ / 61.50pt第3位: シモノ・マサシ / 59.63pt <女子13-15>優勝: オザワ・ミハル / 87.75pt準優勝: ヨシダ・ミオ / 54.75pt第3位: スギモト・ミク / 38.75pt 大会概要 ⼤会名称 :「第7回 全日本BMXフリースタイル選手権」開催期間:2023年9月16日(土)~17日(日) - 2日間 –※詳細は公式HPをご覧ください。大会会場:パーク会場- 岡山市役所 構内駐車場 (岡山市北区大供1丁目 1-1) 主催:公益財団法人 日本自転車競技連盟 (JCF)主管:一般社団法人 全日本フリースタイル BMX 連盟(JFBF) 後援:岡山市、岡山商工会議所、公益財団法人 JKA、 一般社団法人日本アーバンスポーツ支援協議会、一般社団法人岡山県アーバンスポーツ協会 特別協賛:ライト電業株式会社エントリー数:フリースタイル・パーク種目 115名
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skate絶対王者の圧倒的な強さ止まるところを知らず「World Skateboard Tour :ローザンヌ・ストリート 2023」- パリ五輪予選大会 / 男子ストリート2023.09.192023年9月9日(土)~16日(土)の8日間に渡ってスイスのローザンヌで開催された「WST:ローザンヌ・ストリート2023」。パリオリンピック2024の予選大会を兼ねた本大会には、各国から130名近くのトップ選手たちが出場。決勝ではオリンピック出場枠を手繰り寄せるべく、各選手による超高難度トリックも飛び出す壮絶な戦いが繰り広げられた。そして今回この戦いを見事制したのは前回のローマ大会の覇者ナイジャ・ヒューストン(アメリカ合衆国)。 現在国内で熾烈なパリオリンピック代表枠争いを繰り広げる日本人選手勢からは、今回堀米雄斗、 佐々木音憧、青木勇貴斗、根附海龍の4名が決勝に進出。一方で、現在世界ランキング6位で小野寺吟雲は準決勝敗退。そして現在世界ランキング5位で日本人最高位の白井空良が今大会不参加という現時点で代表枠に該当する2名が不在の中で、いかにこの決勝進出メンバーの4名が良い結果を残して自身のランキングをジャンプアップさせられるかが今回の焦点となった。 そして特に、白井と小野寺に続き代表枠に現在該当している佐々木はここでどう逃げ切るのか。一方でこのパリオリンピック代表争いに一歩出遅れている堀米、青木、根附がどう巻き返していくのが注目された。 本決勝には日本人選手4名に加えて、ジオバンニ・ヴィアンナ(ブラジル)、ナイジャ・ヒューストン(アメリカ合衆国)、 リチャード・ターリー(スロバキア)、オーレリアン・ジロー(フランス)が勝ち上がり計8名により争われた。もちろん今回の決勝出場選手たちはランとベストトリック共に90点台を出せるスキルを持つため、今大会でも高得点のランとトリックが連発し順位が大きく変動。最後まで結果が分からない熾烈な接戦となった。 大会レポート 最初は1本45秒間のランセッション。ベストラン採用方式のフォーマット上、2本のどちらか1本で高得点を残しておくことが、この後のベストトリックを優位に展開するためには重要だ。そのためにはコース全体のセクションを上手く活用し、速いスピード感の中で45秒間にどれだけ幅広いバリエーションの高難度トリックをメイクできるかが肝となってくる。 ランで高得点を取ることで得られる大きなアドバンテージ 今回のランセッションで見事なライディングを披露したのがナイジャ・ヒューストン(アメリカ合衆国)と佐々木音憧の2名。後述することになるがここで高得点を残すことが勝利を掴む上で大きなアドバンテージになった。 佐々木音憧のラン photograph by Hikaru Funyu まずは佐々木が2本目で90点に迫る見事のランを魅せる。ラン1本目では「トレフリップ」と「ビッグスピン・フロントサイドボードスライド」のミスが響き38.66ptという苦しい状況であったが、2本目は全体的にスムーズなフローかつスピード感のあるライディングで「バックサイド・ノーズブラントスライド」を皮切りに、クオーターでの「フロントサイド・キックフリップ」で加速。その後も「ノーリーヒールフリップ」などを組み込みながら、最後は「ビガーフリップ・フロントサイドボードスライド」という高難度トリックでランを締めくくり89.66ptをマーク。ラン終了後には自身も納得したか手を叩いて喜びを示す様子も見られ、ベストトリックに向けて幸先の良いスタートを切った。 ナイジャ・ヒューストンのラン photograph by Hikaru Funyu 一方で、佐々木と同じモンスターエナジーチームで大先輩のヒューストンが文句なしの完璧なランを魅せる。ラン1本目で全体トップの86.88ptをマークした彼は、ギャップ to レールでの「バックサイド・ノーズブラントスライド」、続いて「バックサイド180・ノーズグラインド」、「キックフリップ・フロントサイドボードスライド」などをメイク。そして最後は「ハーフキャブ・バックサイド・スミスグラインド・フェイキー」をハンドレールでメイクし90.00ptにスコアを引きあげた。ラン終了後はベストトリックに向けて体を温めるべくライディングしており、スコアが出た後も冷静な表情であったため戦略通りのランだったのだろう。 今回のランセクションでは佐々木とヒューストンをはじめ、青木、根附、ヴィアンナの5人が80点台の高得点をマークした。そして今大会のトップ4はこのランセクションで80点台を獲得したメンバーであるため、いかにランの得点が重要なのかが改めて明らかになった。 ランで高得点を残したメンバーで争われたベストトリック合戦 ベストトリックではランセクションで80点以上を残した選手たちにとっては、いかに高得点を残し上位に食い込めるか、一方でランで高得点を残せなかった選手たちはできるだけ90点台の高得点を残す必要がある展開に。そのためには今大会でまだメイクをしていない高難度トリックを決め切ることを求められ、ランセクションの得点次第でプレッシャーが生まれ、両者の間には異なるメンタルバトルが展開されていた。 根附海龍のベストトリックphotograph by Hikaru Funyu ベストトリックではランセクションで87.19ptをベストスコアにしていた根附海龍(日本)が、1本目で「ヒールフリップ・バックサイドリップスライド」をギャップ to レールで見事メイクし88.87ptをマーク。自身もガッズポーズを見せて好調なスタートを切ったのだが、そこから2・3・4本目と「ノーリーヒールフリップ・バックサイド・テールスライド・ビックスピンアウト」にトライするもミスが続き得点を残せない状態。ラストトリックとなった5本目ではビックスピンアウトにできなかったものの「ヒールフリップ・バックサイドテールスライド」をメイク。89.67ptをマークして全体4位で今大会を終えた。 ジオバンニ・ヴィアンナのベストトリック photograph by Hikaru Funyu そして今回、オリジナリティ溢れる高難度トリックを見せたのはランセッションを87.19ptで終えたジオバンニ・ヴィアンナ(ブラジル)。東京オリンピックではブラジル代表として出場経験を持つ彼。ここ最近の大会ではなかなか決勝進出できず、悔しい思いをしてきた彼が今大会では見事なトリックを魅せた。2本目では「フェイキーフロントサイド180・バックサイドスミスグラインド」をメイクし91.87ptという高得点をマーク。その後3・4本目でメイクできず、暫定8位で迎えた彼は5本目で「フェイキー・バックサイド270・ノーズブラントスライド・フェイキーアウト」をメイクして89.00ptをマークし大きくジャンプアップし3位入賞を果たした。 東京五輪金メダリスト堀米雄斗は健闘するも、惜しくも表彰台を逃す展開に。 堀米雄斗のベストトリック photograph by Hikaru Funyu 今回望まぬ悔しい結果になったのは堀米雄斗(日本)。今年は「UPRISING TOKYO」、「X GAMES CALIFORNIA 2023」そして「SLS Tokyo」で優勝しているものの、パリオリンピック代表争いに一歩出遅れている彼。 ランセッションではミスが目立ち、得点を伸ばしきれず75.41ptで迎えたベストトリックでは90点代を連発。1本目では「ノーリーフロントサイド180・スイッチフロントサイド・フィーブルグラインド」で92.33ptをマーク。2本目では自身のオリジナルトリック「ユウトルネード」をハンドレールでメイクし、今大会最高得点の96.95ptとした。しかし3・4本目ではトリックに失敗。3本目では失敗直後に悔しさからか叫ぶなど堀米らしからぬ様子を見せ、改めて彼がどれだけ今大会へかけているのかが感じ取れた。自身のそんな中で迎えたラストトリックでは「ノーリーフロントサイド180 to スイッチフロントサイド・スミスグラインド」をメイクするも90.81ptで自身のスコアを塗り替えることはできず、5位で表彰台獲得は叶わなかった。改めていかにランセクションでの得点獲得が重要なのかを見せつけられる結果となった。 青木勇貴斗のベストトリック photograph by Hikaru Funyu 一方で、堀米とは違う形で今回辛酸を舐める結果となったは青木勇貴斗(日本)とオーレリアン・ジロー(フランス)。青木はランセクションを82.11ptという得点でベストトリックに望みを繋げるも、1本目でメイクした「フェイキーキャバレリアル・ボードスライド」にてマークした78.52pt以降は2・3本目とミスが続き、ラストトリックでは「ノーリービッグスピン・ヒールフリップボードスライド」をメイクし88.55ptをマークするも全体で6位で終えた。 オーレリアン・ジローのベストトリック photograph by Hikaru Funyu 現在世界ランキング1位のオーレリアン・ジロー(フランス)はランセッションではミスが多く、得点を伸ばせず50.02ptでベストトリックを迎えた。プレッシャーを引きづっているからか、1本目で69.03ptをマークした「ノーリーフロントサイド180キックフリップ」以降は、ラストトリックとなる5本目まで3本とも「ハードフリップ・バックサイド180・オーバー・ザ・レール」のメイクに失敗。背水の陣で挑んだ5本目では念願の「ハードフリップ・バックサイド180・オーバー・ザ・レール」をメイクし93.00ptをマークするも他のスコアが足を引っ張りは入賞は叶わなかった。 日本の若きルーキーが準優勝という快挙。代表枠獲得に大きく近づく。 佐々木音憧のベストトリック photograph by Hikaru Funyu 各日本人選手が苦戦を強いられた中で見事なライディングを見せたのが佐々木音憧だ。ランセクションでは89.99ptという高得点で余裕を持ってベストトリックを迎えた彼は、1本目で「ノーリーフロントサイド180 to スイッチフロントサイド・スミスグラインド」をメイク、2本目では自分の思ったトリックにならなかったためメイクしたもののキャンセル。その甲斐もあって3本目では「ノーリーフロントサイド180・スイッチスミスグラインド to 180アウト」という高難度トリックをメイクし90.88ptをマーク。2本目でのキャンセル時に手応えを感じていたのか、3本目のトリックメイク直後には軽くガッズポーズを見せるだけであまり感情的な様子は見せなかった。 そして勢いそのままにトライした4本目では「フェイキーバックサイド270・ノーズブラントスライド to フェイキー」をメイクし89.99ptをマーク。暫定2位までジャンプアップした。ラストトリックとなる5本目はミスしたがそのまま逃げ切り、佐々木は準優勝の座を獲得した。この熾烈な日本人選手内の代表枠争いにて一歩リードする形となった。 前回のローマ大会に引き続き、絶対王者が優勝を収める。 ナイジャ・ヒューストンのベストトリック photograph by Hikaru Funyu そして前回のローマ大会同様に、今回の決勝戦を無双したのがナイジャ・ヒューストン。ラン2本目で90.00ptをマークし絶好調で迎えたベストトリックでもその勢いは止まることを知らない。1本目で「ノーリーフロントサイドヒールフリップ180・ボードスライド」を決めスコアを90.11ptとすると、そのままの勢いで2本目では「スイッチヒールフリップ・フロントサイドテールスライド」をメイクし92.11ptと自身のトップスコアを引き上げていく。そして完全に勢いづいた彼は高ぶる様子を抑えて冷静に3本目にアタック。ここでは他の選手がトライしない「ノーリーヒールフリップ・ノーズブラントスライド」を決め切りメイク後にはテンションが上がり銃を打つような仕草で喜びを表した。そんな彼の3本目のトリックには93.96ptがスコアされ更に自身の合計点を引き上げる形となった。 その後の4・5本目ではトリックを失敗したものの2位の佐々木とは5点の差をつけて優勝。昨年までは大怪我に苦しめられていた彼が、ローマ大会に引き続き今回も優勝を勝ち取ったことで絶対王者が完全復活したと言っても良いだろう。 まとめ 今大会はナイジャ・ヒューストンの安定的な強さを感じた一方で、いかにランセクションでの得点獲得が勝敗を大きく左右するのかを改めて感じさせられた大会となった。今回ベストトリックでは見事なライディングを見せた堀米雄斗だったが、やはりランセクションでいま一つ得点を伸ばし切れなかったことが表彰台を逃した大きな原因となった。 そして今回の結果により、日本人選手内でのパリオリンピック代表枠争いが更に激化するのは免れない。現時点での日本人別の世界ランキング上位3名は、白井空良(5位)、小野寺吟雲(6位)、佐々木音憧(13位)である中で、佐々木が今回準優勝したことで大きくランキングをジャンプアップさせてくるだろう。今回決勝に残った堀米雄斗、根附海龍、青木勇貴斗をはじめ、日本人勢トップ3を追う後続の日本人選手たちが出場枠を獲得するには、次回の東京大会が肝になってくる。パリオリンピック予選大会の数が徐々に減ってくる中で、日本人選手たちの間でどんな熾烈な出場枠争いが今後展開されるかにも注目だ。 大会結果 photograph by Hikaru Funyu 優勝 ナイジャ・ヒューストン - アメリカ合衆国 / 275.94pt準優勝 佐々木 音憧 (ササキ・トア) - 日本 / 270.53pt第3位 ジオバンニ・ヴィアンナ - ブラジル / 268.06pt 第4位 根附 海龍 (ネツケ・カイリ) - 日本 / 265.82pt 第5位 堀米 雄斗 (ホリゴメ・ユウト) - 日本 / 264.69pt 第6位 青木 勇貴斗 (アオキ・ユキト) - 日本 / 249.18pt 第7位 リチャード・ターリー - スロバキア / 243.75pt 第8位 オーレリアン・ジロー - フランス / 212.05pt
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skate最後の最後に決め切ったベストトリックで大逆転「World Skateboarding Tour :ローザンヌ・ストリート 2023」- パリ五輪予選大会 / 女子ストリート決勝2023.09.18この度、2023年9月9日(土)~16日(土)に渡ってスイスのローザンヌで開催された「WST:ローザンヌ・ストリート2023」。パリオリンピック2024の予選大会を兼ねた本大会の女子ストリート決勝は最後まで結果が分からない接戦の末、日本の西矢椛が優勝を勝ち取った。 ますますパリオリンピック代表枠争いが激化する女子ストリート。その中でも今回特に準決勝進出者が多かったのが、我らが日本でなんとその数16人中7人。そしてさらに国内からわずか最大3名しか出場枠が獲得できない中、そのオリンピック出場に関わる世界ランキングには現在トップ10の中に6名の日本人選手がいるという状況となっている。 そんな最激戦国であるだけにこの大会での結果を残し、自身の世界ランキングを上位に引き上げ日本人選手の中でのトップ3に勝ち上がることを目標とする彼らの並々ならぬ思いを既に準決勝の時点で感じられた。そしてその準決勝を勝ち上がり日本人選手で決勝に駒を進めたのは西矢椛、吉沢恋、織田夢海、中山楓奈の4名。 そこに加えてブラジルからライッサ・レアウ、パメラ・ローザの2名、アメリカ合衆国からペイジ・ヘイン、オランダのロース・ズウェツロートが決勝に勝ち上がり計8名で優勝争いが行われた。なお今回は現在世界ランキング2位で日本人勢トップの赤間凛音と、ここ最近各大会で優勝し無双し続けるオーストラリアのクロエ・コベルが不在であることから誰が優勝するのかに注目が集まった。 世界大会の一勝ではなくパリオリンピック出場にも大きく関わる今回の決勝戦。選手たちの表情とパフォーマンスから今回の女子ストリート決勝を振り返っていこう。 会場の様子 photograph by Hikaru Funyu 【ラン】 何度も言及することになるが、パリオリンピック選考大会から適用されたのがベストラン採用フォーマット。入賞するためには決勝ランの2本のうち1本は確実に点数を取ることが必要とされる。ここでハイスコアを残すことでその後のベストトリック含め、勝利を大きく手繰り寄せやすくなる大事なセクションだ。 ライッサ・レアウのラン photograph by Hikaru Funyu そんなラン1本目では第一走者となったロース・ズウェツロートのミスがきっかけに、そのミスが伝染したのか、各選手が比較的ミスを多くするようなランの展開に。ただその流れを断ち切り安定感のあるランを見せたのは、ブラジルを代表する選手であるライッサ・レアウ。練習で転倒があり身体を痛めている様子の彼女だったが、ハンドレールでの「バックサイド・リップスライド」や完成度の高いトリックをノーミスでメイクし74.56ptをマーク。ベストトリックへメンタル的にも余裕を持たせるランを見せた。 ラン2本目では、全体的に1本目でミスをした選手たち復調し得点を上げてくる展開。1本目で大きなミスから得点を全く伸ばせていなかったズウェツロートやローザも、ベストトリックに希望を残せるランでなんとか繋いだ。 西矢椛のラン photograph by Hikaru Funyu 一方、このランセクションである程度まとまった得点を稼ぎ、順調にベストトリックへ駒を進めた日本人選手たち。その中で一つ頭抜ける形でリードしたのが東京オリンピック金メダリストの西矢椛。ギャップ to レールでの「フロントサイド・リップスライド」を始め、中盤では「クルックドグラインド to ノーリーヒールフリップアウト」をメイク。その後も「フロントサイドスミス・グラインド」や「バックサイド・リップスライド」などをメ決め、ノーミスでランを終えるとスコアを88.91ptまで引き上げ、群雄割拠の日本人勢の中でも一歩リードしてベストトリックへ進んだ。 【ベストトリック】 今回のベストトリックも前回のローマ大会と同様に最後まで結果が分からない展開に。全体の傾向としては、前半戦でしっかりメイクをして後半にチャレンジングなトリックを残す選手が多いイメージで、彼らが今大会で勝つためには大会中で誰もやっていない高難度の複合トリックをしっかり決めることが求められているのをうかがい知れた。 以下は各トライで印象的だった選手たちのライディング。 前半は日本人選手たちが力を見せる展開 織田夢海のベストトリック photograph by Hikaru Funyu このベストトリックの戦いでまず注目したいのは今回準優勝を果たした織田夢海。彼女は1本目はハンドレールで「バックサイド・オーバークルックドグラインド」をメイクし88.11ptをマーク。その勢いのままに2本目では得意のキックフリップを活かし、中央のハンドレールで「キックフリップ・フロントサイド・フィーブルグラインド」という超高難度トリックをメイクし今回最高得点の95.25ptをマークした。この高難度トリックには観客から大歓声が湧きと選手同士でもハグし合って称えあった。 その後の3本はロングレールで「バックサイドクルックドグラインド to ノーリーキックフリップアウト」の高難度のトリックにトライするもミスが続いた。しかし最初の2本のスコアが決め手となり表彰台の座を勝ち取ることとなった。 中山楓奈のベストトリック photograph by Hikaru Funyu そして一方、1本目でハンドレールで「フロントサイド・クルックドグラインド」をメイクし88,88ptの高得点を残したのが中山楓奈。5月末に転倒し鎖骨を骨折してから徐々に復調し、SLS Tokyoでの復帰後から2戦目となった今大会。1本目では見事なライディングで強さを表現した。 しかしその後迎えた2本目ではトリックを失敗し転倒。その際に左肩から転倒したことで古傷を痛めたのか、3本目をスキップ。完全な状態でトリックにトライできない悔しさと、怪我の痛みが混じった涙を目に浮かべながら4本目ではレールで「バックサイド・ボードスライド」をメイクし22.87ptをマーク。なんとかスコアを0ptにしないで大会を終えるという、彼女の思いの強さとどれだけこの大会が大事かを感じされる瞬間だった。 吉沢恋のベストトリック photograph by Hikaru Funyu そしてもう一人ここで触れておきたいのが今大会決勝進出者の中で最年少13歳の吉沢恋。吉沢も中山同様にシーズン前半では怪我に苦しめられ辛い期間を過ごして来た選手の一人だ。そんな吉沢が復帰戦として迎えた今大会で見事決勝進出した。 吉沢は1本目では「バックサイド・スミスグラインド」をメイクし82.48ptをマーク、続く2本目では同じくハンドレールで「ビッグスピン・フロントサイド・ボードスライド」を簡単にメイクし84.29ptをマークした。その後はハバセクションで「バックサイド・ノーズスライド to ビッグスピンアウト」にトライするもメイクはできず復帰戦を4位で終えた。 全員がミスする一方で、レアウが今大会で見せてこなかった技をメイク。 ライッサ・レアウのベストトリック photograph by Hikaru Funyu ベストトリック2本目を終えた時点でトップ4を日本人が独占する中で、大きな変換点を生んだのが3本目。各選手が攻めのトリックにトライしミスが続く一方で、唯一トリックを成功させたのがレアウ(ブラジル)。今回のベストトリックでレアウはあまり今まで見せてこなかったトリックを選んでトライ。 そしてこの3本目で決めたのが「キックフリップ・フロントサイド・ボードスライド」。このトリックは88.89ptと高得点の評価となった。やはり練習中での怪我の影響もあってか、トリック失敗後は時折足を引きずったりと辛そうな様子を見せる彼女だったが、さらに得点を伸ばして優勝を勝ち取るべく4~5本目で他の選手が今回やっていない「キックフリップ・バックサイド・リップスライド」にトライするも今回は惜しくもメイクとはならず7位で大会を終えた。 photograph by Hikaru Funyu 4本目で展開を変え、上位に食い込んできたのはアメリカのヘイン ペイジ・ヘインのベストトリック photograph by Hikaru Funyu この回で特に印象的だったのはアメリカ人唯一の決勝進出者となったペイジ・ヘイン。最近様々な国際大会へ出場し、頭角を表し始めたルーキーだ。彼女はフリップ系の複合技を見せるタイプではないのだが、その強みと言えるのは難しい体勢の逆スタンスでメイクするスイッチ系のトリックだ。2本目では「スイッチフロントサイド・ボードスライド」をメイクし87.89ptをマークした。 ただ1本目と3本目ではトリックをミスしていたため、暫定6位で迎えたのがこの4本目。彼女はハンドレールに綺麗なストライドで進入し「スイッチフロントサイド・50-50」を完璧にメイクし、着地後には喜びが溢れガッズポーズ。やはり誰もメイクしない高難度トリックだったからか91.15ptをマークした。その後5本目では自分のスコアを塗り替えることはできなかったものの、見事3位となり表彰台の座を獲得した。また今回の彼女のライディングから高得点獲得に必要なのは高難度の複合トリックだけではないことにも気づかされた。 優勝を決定づけたのはラスト1本で決め切ったベストトリック 西矢椛のベストトリック photograph by Hikaru Funyu そして今回の優勝を決めたのは西矢椛のラストトリック。実は今回ベストトリック2本目以外はミスが続いており、ここで決めないと優勝はおろか表彰台も逃すほど追い詰められた状況で迎えたのがこの5本目だった。 暫定6位でこのベストトリックを迎えた彼女は、緊張と集中が入り混じる表情のままハンドレールへ進入。優勝をかけた最後の一本に選んだのは、「ビッグスピン・フロントサイド・ボードスライド」。メイクした瞬間は緊張から解き放たれ、喜びが溢れて天高くガッツポーズ。その後は織田と抱き合い喜び合う様子も見られた。彼女の余裕のある完璧なこのトリックは86.91ptをマークし、トータルスコアを大きく引き上げて見事優勝を勝ち取った。 photograph by Hikaru Funyu 今回優勝に対しては80点代という高得点を揃えるベストトリック2本はもちろんだが、なによりランセクションで周りを大きく突き放す88.91ptが優勝を引き寄せる大きな要因だっただろう。 まとめ photograph by Hikaru Funyu 今回は大会全体を通して、特に日本人選手勢のパリオリンピック代表枠獲得に対する熱意と努力が感じられる一戦だった。今後は徐々にパリオリンピック選考に関わる大会が少なくなっていく中で、いかに毎回しっかり結果を残していけるかがキーになってくる。現時点で代表枠内に該当している西矢と織田はその座をキープするべく得点を重ねる必要があり、一方で今回の決勝メンバーといえば中山や吉沢はそこに食い込むために確実に順位を上げていきたいところだ。そんな両者の異なる思惑の下で、今回さらに戦いが激化しているのを感じられた。 そして次回のWST大会の場になるのは日本の東京。自分たちのホームでの開催となる中で今回結果を残せなかった選手たちがジャッジを驚かせるトリックを見せて順位を上げてくるのか、そして今回不在であった赤間を含め現在代表枠に該当する選手たちがどのように大会を収めて次に繋げてくるのかが楽しみだ。 大会結果 優勝 西矢 椛(ニシヤ・モミジ)- 日本/ 259.81pt準優勝 織田 夢海(オダ・ユメカ)- 日本/ 249.77pt第3位 ペイジ・ヘイン – アメリカ合衆国 / 243.93pt 第4位 吉沢 恋(ヨシザワ・ココ)- 日本 / 224.47pt 第5位 パメラ・ローザ – ブラジル / 213.26pt 第6位 中山 楓奈(ナカヤマ・フウナ)- 日本 / 180.37pt 第7位 ライッサ・レアル – ブラジル / 163.45pt 第8位 ロース・ズウェツロート – オランダ / 140.86pt
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bmx男女ともに新たな歴史が刻まれた一戦「第7回全日本BMXフリースタイル選手権」フラットランド種目「第7回全日本BMXフリースタイル選手権」フラットランド種目が岡山県岡山市のイオンモール岡山 1F 未来スクエアの特設会場にて2022年9月16日(土)~17日(日)の2日間に渡り開催され、男子エリートでは片桐悠選手が、女子エリートでは宮嶋歩菜選手が優勝した。 フラットランド種目に関しては今回5度目の開催となる全日本BMXフリースタイル選手権。会場は昨年と一昨年に引き続き、岡山県岡山市のイオンモール岡山 1F 未来スクエアにて特設ステージが設けられ今大会が開催された。 このフラットランド種目の大会観戦の魅力は、平らなステージを設置できれば基本的に場所を選ばず開催できることだ。今回も商業施設の中心に設けられため、通りすがりの一般のお客さんでも気軽に観戦できたことから終始大盛り上がりの大会となった。 なお今大会の模様はNTT西日本グループの協賛・技術提供により「双方向ライブ配信」により視聴可能となった。本プラットフォームではコメントやバーチャルで歓声を送ることができるため、会場に行けない方でもリアルタイムで視聴でき、会場の熱を一緒に感じながら今年の全日本チャンピオン誕生の瞬間を目の当たりすることができた。 以下は、今大会の男女エリートクラスの決勝レポートである。 今年の日本の頂点には男女共に新たな顔ぶれ。男子エリートは片桐悠が、女子エリートは宮嶋歩菜が初タイトル獲得。 男子エリートクラス決勝 男子エリートクラス決勝は予選11名の中から勝ち上がった上位8名で争われ、現在の世界チャンピオンをはじめ全国から強豪が揃い、世界最高峰の戦いの中で今年の日本一を決めることとなった。 片桐悠のライディングphotograph by Satoshi Saijo/Japan Cycling Federation/JFBF 今回そんなハイレベルな接戦を制し優勝したのは片桐悠。世界中のライダーから投票を行い、その年最も活躍したライダーに贈られる賞「NORA CUP」を今年受賞し、「X GAMES CHIBA 2023」をはじめ出場する大会でほぼ負けなしで、現在世界中で最も高い評価を受ける彼は、自分のお腹側でバイクを横に回す「バイクフリップ」など多種多様なリアトリックを組み合わせたライディングが特徴だ。 彼はバイクを切り返しながら無駄のない高難度のリアトリックのルーティンを繰り出し、その中でもバイクの内側で行うペダル軸の「ルパロニ」や得意とする「バイクフリップ」をいくつも組み合わせてルーティンを構成。また途中では高度なバランス力が求められる「舞空術」や、同じくペダル軸の「ルパロニ」からハンドルを切り返しペグ軸にスイッチするなど様々な高難度トリックで点数を稼ぎ、中盤でミスはあったものの89.50ptをマークし自身初の国内タイトルを勝ち取った。 荘司ゆうのライディングphotograph by Satoshi Saijo/Japan Cycling Federation/JFBF 準優勝は先日のUCI世界選手権で見事優勝し、今年度の世界チャンピオンである荘司ゆう。ルーティンの中でフロントトリックとリアトリックの両方への行き来を可能にする「トランスファー」という高難度トリックが持ち味の彼は、フロントタイヤを軸にシートグラブのツーフットの体勢で加速しトランスファーを多く取り入れたルーティンを見せる。特に最後に見せたリアからフロントへの 「トランスファー」から「エルクグライド」を挟み「ダブルタップ」で締めるルーティンには本人も会場も大盛り上がり。途中で足を着くミスがあったからかスコアを87.00ptとし、片桐のスコアに上回られたものの2位で全日本選手権を終えた。 佐々木元のライディングphotograph by Satoshi Saijo/Japan Cycling Federation/JFBF 3位は世界最高難度のフロントトリックを持ち、今年度のアジアチャンピオンである佐々木元。彼はフロントタイヤを軸にクロスフットとツーフットで組み換えながら、フロントスピンを入れ込むバリエーションの多いルーティンを披露。ラン前半では「クリフハンガーノーハンドスピン」や「カールクルーザースピン」、自身のオリジナルトリックも交えながらルーティンを構成するも、中盤からは攻めのライディングをしたことが裏目に出たかミスを重ねてしまう。惜しくも得点を伸ばしきれず今回は86.75ptとし3位となった。 女子エリートクラス決勝 女子エリートクラス決勝は5名で争われ、今回は今年JFBFシリーズ負けなしの大型ルーキーである宮嶋歩菜が初タイトルを獲得。ハイスピードのライディングの中に完成度の高いフロントトリックをたくさん組み込んでくるのが特徴的な宮嶋だが今大会でもその強さを見せた。 宮嶋歩菜のライディングphotograph by Satoshi Saijo/Japan Cycling Federation/JFBF 序盤から早速「ハングファイブからのスチームローラー→ツーフットでのヒッチハイカー→シックスパッカー→マックサークルのスピン」を決め切る。途中ではミスもあり、苦戦を強いられるもすぐに別のルーティンに切り替え復調。最後には中盤でミスしていた「フロントタイヤのスカッフ→左右にバイクを移動させてのシートグラブでのスカッフ→フロントタイヤのスカッフスピンからブーメラン」のルーティンを見事メイク。今シーズン負けなしで絶好調な彼女がここ全日本選手権の場でも81.75ptの高得点で見事優勝を収め、女子エリート初タイトルを獲得した。 中川きららのライディングphotograph by Satoshi Saijo/Japan Cycling Federation/JFBF 準優勝は先日のUCI世界選手権で3位入賞を果たした中川きらら。フロントトリックを中心に繰り出される安定感のあるロングルーティンを得意とする彼女は、グライドからのフロントタイヤのスカッフをベースに「バックパッカー」や「スクエカー」など加えたロングルーティンを見せる。中盤でミスが続くも、最後は「アンクルデスからラードヤード→ツーフットからのグライド→バリアル」のルーティンを見事メイク。ただ中盤のミスが響き77.25ptというスコアに。惜しくも今回タイトルは逃したが2位入賞を収めた。 伊藤聖真のライディングphotograph by Satoshi Saijo/Japan Cycling Federation/JFBF 3位は「ディケード」というジャンプ系のトリックを得意とし、女子の中では珍しい豪快なライディングが特徴的な伊藤聖真。今回は「アンクルデス」から「スミスディケイド」のルーティンや、「クロスフットのマックサークル」からの「ディケイド」、そして「メガスピン」からの「ディケイド」のルーティンをメイクするなど、完全に「ディケード」を自分のものにしたライディングで73.75ptをマークし見事3位の座を獲得した。 優勝者コメント photograph by Satoshi Saijo/Japan Cycling Federation/JFBF 片桐 悠 選手(男子エリートクラス)「この全日本選手権は初出場でしたが、マイナビ Japan Cupの1戦目から優勝する気でずっと取り組んできたので今回しっかりと優勝できたことが一番良かったです。今回は勝ちに徹して決勝では少し抑えたライディングをしましたが、人と被らないオリジナルのトリックはライダーのスタイルとして追求していく部分だと思うので、今後も練習を続けながら来年の世界選手権では優勝を勝ち取れるように頑張ります。」 宮嶋 歩菜 選手(女子エリートクラス)「今回の優勝にはとてもビックリしています。予選はミスの無い走りができましたが、決勝でも同じ走りを意識したことでプレッシャーとなり、ミスが出てしまったことが悔しかったです。 もう少し攻めればもっといい結果が出たと思いますし、色々課題はありますが優勝できて嬉しかったです。」 大会結果 photograph by Satoshi Saijo/Japan Cycling Federation/JFBF <男子エリート>優勝: 片桐 悠 (カタギリ・ユウ) / 所属: GLOW 89.50pt準優勝: 莊司 ゆう (ショウジ・ユウ) / 所属: なし 87.00pt第3位: 佐々木 元 (ササキ・モト) / 所属: 鎌ケ谷巧業 86.75pt photograph by Satoshi Saijo/Japan Cycling Federation/JFBF <女子エリート>優勝: 宮嶋 歩菜 (ミヤシマ・アユナ) / 所属:大館市立比内中学校 81.75pt 準優勝: 中川 きらら (ナカガワ・キララ) / 所属:なし 77.25pt第3位: 伊藤 聖真 (イトウ・セイマ) / 所属:大和大学 73.75pt <キッズ6アンダー>優勝: オカヤマ・ミオ / 51.67pt準優勝: カイ・ニチカ / 48.67pt第3位: タカギ・ケンセイ / 45.67pt <ボーイズ7-9>優勝: トダカ・ヤマト / 58.33pt準優勝: カドイ・アタル / 56.67pt第3位: オカダ・ヨウタロウ / 54.67pt <ボーイズ10-12>優勝: カジワラ・レンヤ / 67.67pt準優勝: ヒラノ・ショウキ / 67.33pt第3位: ナカヤス・ヨシヒト / 58.00pt <ガールズロー>優勝: マエダ・ユイ / 57.00pt準優勝: ヒラノ・カンナ / 54.33pt第3位: カドイ・ヒマリ / 52.67pt <ガールズハイ>優勝: ナカガワ・キョウカ / 71.67pt準優勝: ヨシムラ・ソナ / 71.00pt第3位: カジワラ・サリヤ / 70.00pt <エキスパート>優勝: ワタナベ・ソウタ / 71.33pt準優勝: アカシ・キョウヤ / 69.00pt第3位: シンデ・リク / 61.67pt <男子13-15>優勝: ヒシカワ・タカトラ / 75.67pt準優勝: オガワ・ソウスケ / 72.33pt第3位: モリモト・アシタ / 67.00pt <男子30オーバー>優勝: マツモト・ヒロヤ / 75.67pt準優勝: カタオカ・エイジ / 75.33pt第3位: ヨシムラ・トモアキ / 70.33pt 大会概要 ⼤会名称 :「第7回 全日本BMXフリースタイル選手権」開催期間:2023年9月16日(土)~17日(日) - 2日間 –※詳細は公式HPをご覧ください。大会会場:イオンモール岡山 1F 未来スクエア(岡山市北区下石井 1-2-1) 主催:公益財団法人 日本自転車競技連盟 (JCF)主管:一般社団法人 全日本フリースタイル BMX 連盟(JFBF) 後援:岡山市、岡山商工会議所、公益財団法人 JKA、 一般社団法人日本アーバンスポーツ支援協議会、一般社団法人岡山県アーバンスポーツ協会 特別協賛:ライト電業株式会社エントリー数:フラットランド種目 93名