最後の最後に決め切ったベストトリックで大逆転「World Skateboarding Tour :ローザンヌ・ストリート 2023」- パリ五輪予選大会 / 女子ストリート決勝

2023.09.18
優勝した西矢椛
記事提供: CURRENT、photograph by Hikaru Funyu

この度、2023年9月9日(土)~16日(土)に渡ってスイスのローザンヌで開催された「WST:ローザンヌ・ストリート2023」。パリオリンピック2024の予選大会を兼ねた本大会の女子ストリート決勝は最後まで結果が分からない接戦の末、日本の西矢椛が優勝を勝ち取った。

ますますパリオリンピック代表枠争いが激化する女子ストリート。その中でも今回特に準決勝進出者が多かったのが、我らが日本でなんとその数16人中7人。そしてさらに国内からわずか最大3名しか出場枠が獲得できない中、そのオリンピック出場に関わる世界ランキングには現在トップ10の中に6名の日本人選手がいるという状況となっている。

そんな最激戦国であるだけにこの大会での結果を残し、自身の世界ランキングを上位に引き上げ日本人選手の中でのトップ3に勝ち上がることを目標とする彼らの並々ならぬ思いを既に準決勝の時点で感じられた。そしてその準決勝を勝ち上がり日本人選手で決勝に駒を進めたのは西矢椛、吉沢恋、織田夢海、中山楓奈の4名。

そこに加えてブラジルからライッサ・レアウ、パメラ・ローザの2名、アメリカ合衆国からペイジ・ヘイン、オランダのロース・ズウェツロートが決勝に勝ち上がり計8名で優勝争いが行われた。なお今回は現在世界ランキング2位で日本人勢トップの赤間凛音と、ここ最近各大会で優勝し無双し続けるオーストラリアのクロエ・コベルが不在であることから誰が優勝するのかに注目が集まった。

世界大会の一勝ではなくパリオリンピック出場にも大きく関わる今回の決勝戦。選手たちの表情とパフォーマンスから今回の女子ストリート決勝を振り返っていこう。

会場の様子 photograph by Hikaru Funyu

【ラン】

何度も言及することになるが、パリオリンピック選考大会から適用されたのがベストラン採用フォーマット。入賞するためには決勝ランの2本のうち1本は確実に点数を取ることが必要とされる。ここでハイスコアを残すことでその後のベストトリック含め、勝利を大きく手繰り寄せやすくなる大事なセクションだ。

ライッサ・レアウのラン photograph by Hikaru Funyu

そんなラン1本目では第一走者となったロース・ズウェツロートのミスがきっかけに、そのミスが伝染したのか、各選手が比較的ミスを多くするようなランの展開に。
ただその流れを断ち切り安定感のあるランを見せたのは、ブラジルを代表する選手であるライッサ・レアウ。練習で転倒があり身体を痛めている様子の彼女だったが、ハンドレールでの「バックサイド・リップスライド」や完成度の高いトリックをノーミスでメイクし74.56ptをマーク。ベストトリックへメンタル的にも余裕を持たせるランを見せた。

ラン2本目では、全体的に1本目でミスをした選手たち復調し得点を上げてくる展開。1本目で大きなミスから得点を全く伸ばせていなかったズウェツロートやローザも、ベストトリックに希望を残せるランでなんとか繋いだ。

西矢椛のラン photograph by Hikaru Funyu

一方、このランセクションである程度まとまった得点を稼ぎ、順調にベストトリックへ駒を進めた日本人選手たち。その中で一つ頭抜ける形でリードしたのが東京オリンピック金メダリストの西矢椛。ギャップ to レールでの「フロントサイド・リップスライド」を始め、中盤では「クルックドグラインド to ノーリーヒールフリップアウト」をメイク。その後も「フロントサイドスミス・グラインド」や「バックサイド・リップスライド」などをメ決め、ノーミスでランを終えるとスコアを88.91ptまで引き上げ、群雄割拠の日本人勢の中でも一歩リードしてベストトリックへ進んだ。

【ベストトリック】

今回のベストトリックも前回のローマ大会と同様に最後まで結果が分からない展開に。全体の傾向としては、前半戦でしっかりメイクをして後半にチャレンジングなトリックを残す選手が多いイメージで、彼らが今大会で勝つためには大会中で誰もやっていない高難度の複合トリックをしっかり決めることが求められているのをうかがい知れた。

以下は各トライで印象的だった選手たちのライディング。

前半は日本人選手たちが力を見せる展開

織田夢海のベストトリック photograph by Hikaru Funyu

このベストトリックの戦いでまず注目したいのは今回準優勝を果たした織田夢海。彼女は1本目はハンドレールで「バックサイド・オーバークルックドグラインド」をメイクし88.11ptをマーク。その勢いのままに2本目では得意のキックフリップを活かし、中央のハンドレールで「キックフリップ・フロントサイド・フィーブルグラインド」という超高難度トリックをメイクし今回最高得点の95.25ptをマークした。この高難度トリックには観客から大歓声が湧きと選手同士でもハグし合って称えあった。

その後の3本はロングレールで「バックサイドクルックドグラインド to ノーリーキックフリップアウト」の高難度のトリックにトライするもミスが続いた。しかし最初の2本のスコアが決め手となり表彰台の座を勝ち取ることとなった。

中山楓奈のベストトリック photograph by Hikaru Funyu

そして一方、1本目でハンドレールで「フロントサイド・クルックドグラインド」をメイクし88,88ptの高得点を残したのが中山楓奈。5月末に転倒し鎖骨を骨折してから徐々に復調し、SLS Tokyoでの復帰後から2戦目となった今大会。1本目では見事なライディングで強さを表現した。

しかしその後迎えた2本目ではトリックを失敗し転倒。その際に左肩から転倒したことで古傷を痛めたのか、3本目をスキップ。完全な状態でトリックにトライできない悔しさと、怪我の痛みが混じった涙を目に浮かべながら4本目ではレールで「バックサイド・ボードスライド」をメイクし22.87ptをマーク。なんとかスコアを0ptにしないで大会を終えるという、彼女の思いの強さとどれだけこの大会が大事かを感じされる瞬間だった。

吉沢恋のベストトリック photograph by Hikaru Funyu

そしてもう一人ここで触れておきたいのが今大会決勝進出者の中で最年少13歳の吉沢恋。吉沢も中山同様にシーズン前半では怪我に苦しめられ辛い期間を過ごして来た選手の一人だ。そんな吉沢が復帰戦として迎えた今大会で見事決勝進出した。

吉沢は1本目では「バックサイド・スミスグラインド」をメイクし82.48ptをマーク、続く2本目では同じくハンドレールで「ビッグスピン・フロントサイド・ボードスライド」を簡単にメイクし84.29ptをマークした。その後はハバセクションで「バックサイド・ノーズスライド to ビッグスピンアウト」にトライするもメイクはできず復帰戦を4位で終えた。

全員がミスする一方で、レアウが今大会で見せてこなかった技をメイク。

ライッサ・レアウのベストトリック photograph by Hikaru Funyu

ベストトリック2本目を終えた時点でトップ4を日本人が独占する中で、大きな変換点を生んだのが3本目。各選手が攻めのトリックにトライしミスが続く一方で、唯一トリックを成功させたのがレアウ(ブラジル)。今回のベストトリックでレアウはあまり今まで見せてこなかったトリックを選んでトライ。

そしてこの3本目で決めたのが「キックフリップ・フロントサイド・ボードスライド」。このトリックは88.89ptと高得点の評価となった。やはり練習中での怪我の影響もあってか、トリック失敗後は時折足を引きずったりと辛そうな様子を見せる彼女だったが、さらに得点を伸ばして優勝を勝ち取るべく4~5本目で他の選手が今回やっていない「キックフリップ・バックサイド・リップスライド」にトライするも今回は惜しくもメイクとはならず7位で大会を終えた。

photograph by Hikaru Funyu

4本目で展開を変え、上位に食い込んできたのはアメリカのヘイン

ペイジ・ヘインのベストトリック photograph by Hikaru Funyu

この回で特に印象的だったのはアメリカ人唯一の決勝進出者となったペイジ・ヘイン。最近様々な国際大会へ出場し、頭角を表し始めたルーキーだ。彼女はフリップ系の複合技を見せるタイプではないのだが、その強みと言えるのは難しい体勢の逆スタンスでメイクするスイッチ系のトリックだ。2本目では「スイッチフロントサイド・ボードスライド」をメイクし87.89ptをマークした。

ただ1本目と3本目ではトリックをミスしていたため、暫定6位で迎えたのがこの4本目。彼女はハンドレールに綺麗なストライドで進入し「スイッチフロントサイド・50-50」を完璧にメイクし、着地後には喜びが溢れガッズポーズ。やはり誰もメイクしない高難度トリックだったからか91.15ptをマークした。その後5本目では自分のスコアを塗り替えることはできなかったものの、見事3位となり表彰台の座を獲得した。また今回の彼女のライディングから高得点獲得に必要なのは高難度の複合トリックだけではないことにも気づかされた。

優勝を決定づけたのはラスト1本で決め切ったベストトリック

西矢椛のベストトリック photograph by Hikaru Funyu

そして今回の優勝を決めたのは西矢椛のラストトリック。実は今回ベストトリック2本目以外はミスが続いており、ここで決めないと優勝はおろか表彰台も逃すほど追い詰められた状況で迎えたのがこの5本目だった。

暫定6位でこのベストトリックを迎えた彼女は、緊張と集中が入り混じる表情のままハンドレールへ進入。優勝をかけた最後の一本に選んだのは、「ビッグスピン・フロントサイド・ボードスライド」。メイクした瞬間は緊張から解き放たれ、喜びが溢れて天高くガッツポーズ。その後は織田と抱き合い喜び合う様子も見られた。彼女の余裕のある完璧なこのトリックは86.91ptをマークし、トータルスコアを大きく引き上げて見事優勝を勝ち取った。

photograph by Hikaru Funyu

今回優勝に対しては80点代という高得点を揃えるベストトリック2本はもちろんだが、なによりランセクションで周りを大きく突き放す88.91ptが優勝を引き寄せる大きな要因だっただろう。

まとめ

photograph by Hikaru Funyu

今回は大会全体を通して、特に日本人選手勢のパリオリンピック代表枠獲得に対する熱意と努力が感じられる一戦だった。今後は徐々にパリオリンピック選考に関わる大会が少なくなっていく中で、いかに毎回しっかり結果を残していけるかがキーになってくる。現時点で代表枠内に該当している西矢と織田はその座をキープするべく得点を重ねる必要があり、一方で今回の決勝メンバーといえば中山や吉沢はそこに食い込むために確実に順位を上げていきたいところだ。そんな両者の異なる思惑の下で、今回さらに戦いが激化しているのを感じられた。

そして次回のWST大会の場になるのは日本の東京。自分たちのホームでの開催となる中で今回結果を残せなかった選手たちがジャッジを驚かせるトリックを見せて順位を上げてくるのか、そして今回不在であった赤間を含め現在代表枠に該当する選手たちがどのように大会を収めて次に繋げてくるのかが楽しみだ。

大会結果

優勝 西矢 椛(ニシヤ・モミジ)- 日本/ 259.81pt
準優勝 織田 夢海(オダ・ユメカ)- 日本/ 249.77pt
第3位 ペイジ・ヘイン – アメリカ合衆国 / 243.93pt 
第4位 吉沢 恋(ヨシザワ・ココ)- 日本 / 224.47pt 
第5位 パメラ・ローザ – ブラジル / 213.26pt 
第6位 中山 楓奈(ナカヤマ・フウナ)- 日本 / 180.37pt 
第7位 ライッサ・レアル – ブラジル / 163.45pt 
第8位 ロース・ズウェツロート – オランダ / 140.86pt

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