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スノーボーダー佐藤亜耶 × RIGHTUPが明かす バックカントリー撮影に必要な“対話”と“多角視点”

2022.04.07

無人の雪山をキャンバスに、一本の線を描いていくバックカントリー。プロスノーボーダーの佐藤亜耶は、大自然を舞台にどこまでも自由で、パワフルな滑りを見せてくれる。そんな彼女がスノーにルーツを持つ映像制作会社RIGHTUPとタッグを組み、サンディスクとのコラボ映像をリリース。これを記念しFINEPLAYでは、撮影直前にインタビューを敢行した。バックカントリー、ひいてはスノーボードのフィルミングに必要な“対話”と“多角的な視点”とは——? RIGHTUP所属フィルマーの斎藤正隆氏、そして加藤久範氏の両名をゲストに迎え、雪山でのバックカントリー撮影について存分に語ってもらった。

危険と隣り合わせのバックカントリーだからこそ、準備は怠らない

佐藤さんは、RIGHTUPの方々と撮影するのは今回が初めてですか?

佐藤亜耶(以下A):斎藤さんとは初めてですが、加藤さんとは以前、アウトドア用品ブランドのプロモーション動画の撮影でご一緒しました。あの日はたくさん撮りましたよね! 雪山の稜線を歩いて、滑り降りて、登って、滑って……。ずっと繰り返していたような。

加藤久範(以下K):日が昇る前に山小屋を出発して、一日中撮影していましたからね。コンディションの整った斜面を探して、日の光が当たった場所に片っ端からドロップしてもらいました。

斎藤正隆(以下S):それは大変だったね。でもその分、できあがったものは素晴らしかった。本当に一日で撮ったの? というくらいバリエーション豊かなライディング映像でしたよ。さすがです、亜耶さん。

RIGHTUP 斎藤正隆

RIGHTUP 加藤久範

奥深い雪山での撮影は、ゲレンデとは異なる過酷さがあると思います。ライダーとフィルマーそれぞれの視点からそれを教えてください。

A:どこの山でも共通しているのはハイクアップですね。例えばふかふかの新雪のなかを麓から6時間かけて登ったのに、滑れた時間はたったの2分、なんてことがよくあります。

K:そんな環境下なので「撮影できるランは数本」というのが通常なのですが、雪の状態がいいときは、ハイクを何度もお願いすることがあって。繰り返し急斜面を登っていくライダーを見ていると、心苦しくなることも……。

S:僕たちフィルマーは、ライダーほど斜面を登り降りすることはないもんね。「陽がよくなってきたから、もう一回あの尾根登ろうか?」なんて軽々しく言えない(笑)。

A:でも私からすると、重たい機材を背負うフィルマーのほうが大変そうに見えますが。

K:もう慣れてますけどね。撮影機材と、テントなどの装備を合わせて体感で15kgほど。体力をつけるために、日々のトレーニングは欠かせません。

S:フィルマーとライダーはどちらも、一本のランにかける労力を知っています。だからこそ、人的要因からくる撮影ミスというのは極力、避けたいものなんです。

プロスノーボーダー佐藤亜耶

厳しい自然のなかで撮影するために、バックカントリーで配慮していることは何ですか?

A:常にリスクマネジメントをしておくことです。雪崩に遭ったときに対処する力も必要ですが、そもそも雪崩に遭わないためにはどうすればいいか。その知識を持っておくことが大事だと思います。

K:僕が気をつけているのは、撮影位置です。バックカントリーでは、滑落も大きなリスクのひとつなので、凍った雪の上や足場が悪い場所には立たないようにしています。安全かつ、よい画角で撮影できることが一番ですね。

S:携帯する装備のことも考えなくてはなりません。お互いに連絡を取り合うためのトランシーバーはもちろん、「雪山三種の神器」と言われるビーコン、スノーショベル、プローブ(ゾンデ)は必須です。

K:映像では優雅に滑っているように見えますが、実際のところ、バックカントリーは常に危険と隣り合わせなんです。だからこそ、雪崩や滑落、天候の急変による遭難などのリスクを多面的に考える必要があります。

(右から)プロスノーボーダー佐藤亜耶、RIGHTUP 斎藤正隆、加藤久範

雪山撮影に必要な“対話”と“多角的な視点”

チームで撮影するメリットについてはどう考えていますか?

S:限られたスケジュールで確実にフッテージ映像を残すなら、効率のよいチーム撮影がベストです。

K:例えば「撮影可能なランが一本だけ」という日があったとします。撮影者が一人の場合、どうしても安全圏を狙った撮影になりがちです。しかし複数人なら、ドローン(俯瞰)やハンディカメラ(並走)で、積極的なマルチアングル撮影ができます。

A:ライダーとしても、色々な角度からの映像が残っているのはうれしいです! バックカントリー撮影で難しいのは「一度滑ったライン(コース)では二度と滑れない」という一発勝負なところですから。

S:本当にそうですよね。すでに通ったラインを滑ることはスノーボーダーにとって極力避けたいこと。この世界では「初めての場所でリスキーな技を成功させた」というエクストリーム性が重要視されるから、とりわけファーストトラックは撮り逃せないものなんです。

バックカントリーの撮影でこだわっていることは何ですか?

K:日の光の角度です。太陽の位置が高すぎると、ターンでスプレーが上がっても陰影がつかず、ベタッとした印象になってしまいます。コントラストのついた綺麗な映像を撮るには、日の位置が低い朝夕がベストタイミングです。

S:と言いつつ、毎回恵まれた状況で撮影できるわけではありません。限られた時間のなか、天候・地形・雪質・人員などの要素を踏まえて、どのような撮影方法がベストで安全なのか、その都度判断しています。自然と対話しながら臨機応変に対応する力が必要です。

A:地形はこだわるポイントかもしれません。雪山の斜面って上からと下からとでは見え方が全く違うんです。下の撮影位置からではわからない斜面の様子があれば、その逆もあったりして……。なので、気になることはどんなに小さなことでも情報共有していきます。

K:亜耶さんはそこをうまく伝えてくれますね。「上に着きましたが、斜面の様子がよくありません。ここだとスピードがつきにくそうなので、ドロップする位置を変えませんか?」などと、トランシーバー越しに密にコミュニケーションを図ってくれます。

S:そうだね。「こうしたらどうか」とライダーが伝えてきてくれたら、僕らはその意図を汲みとります。一緒にいい作品を生み出すためには、自然に対してだけでなく、ライダーとの対話も重要。それによって撮影や編集の方法が変わってきますから。

バックカントリーでは、ライダーとの対話も重要

亜耶さん一人をチームで撮影するのは、今回が初ですよね。お互いの印象はいかがですか?

A:加藤さんはいつもトレーニングをしているイメージですね(笑)。他のフィルマーより動ける範囲が広いので、ベストなアングルから撮影してくれるという絶対の信頼があります。だから「もう一本」と言われても苦にならないというか。

K:そこまで言っていただけるなんて、ありがたいですね。確かに何事にも妥協しない性格ではあるかもしれません。

S:逆に、加藤のほうは亜耶さんにどんな印象を持っているの?

K:そうですね。力強い滑りを見せてくれる一方で、ライン選びは慎重という印象です。少しでも気になることがあればこちらに伝えてくれますし。安全第一のバックカントリーでは、大事なことだと思います。

S:さっきも言ったとおり、コミュニケーションを欠かさず取ってくれる印象だよね。フィルマーからの意見は取り入れつつ、流されることもない。その意味では、慎重というより、自分の軸がある人と言える。

A:周りのライダーを見ると時々「私って慎重なのかな」と感じるんですが、加藤さんと斎藤さんにそう言っていただけるとうれしいです。

S:経験上、いい作品というのは“対話”を重ねることで生まれてくると感じています。特にプロモーション動画は、人にイメージを伝えてナンボの世界。そこを理解してくれるライダーだと、セッションしがいがありますね。

その道のプロフェッショナルが選ぶのは、サンディスク

今回使用されるサンディスク製品についての印象を聞かせてください。

K:サンディスクのメモリーカードは、雪山の厳しい環境下でも適切に動作してくれるので信頼しています。言うまでもないことですが、フィルマーにとって一番大事なのは映像データ。それを確実に保存するために、サンディスク製品は欠かせません。

S:案件にもよりますが、二台のカメラで4Kスロー撮影を一日すると、約600GBのデータ容量になります。苦労して撮った映像を安全に保管するなら、信頼できるメーカーのメモリーカードを選びたいよね。

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K:そうですね。それと、メモリーカードの種類にもよりますが、耐衝撃性・温度耐性・防水性に優れているのも魅力のひとつです。耐久性を気にせず撮影に専念できます。

S:また、データのバックアップにおいては、ポータブルSSDも重宝しています。雪山の非現実的な世界観を表現するため、スローモーション撮影(120コマ/秒)を行うことがあって。そうするとデータ量が膨大になってしまうんですが、それをものともしないポータブルSSDの転送速度には舌を巻いてしまいますね。

ハードディスクだとバックアップに2時間以上かかるデータ量でも、ポータブルSSDなら15分弱で済みます。その分、余った時間を翌日の機材準備やライダーとのミーティングに回せるので、非常に助かっていますよ。

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サンディスクのメモリーカードは、いつも何枚ほど携帯されていますか?

K:ドローン撮影のときは木にぶつかったり、突風にあおられたりして墜落・紛失することがあるので、いい映像が撮れたなと感じたら、万が一に備えてすぐ回収するようにしています。なので、使い勝手のいい64GB容量のmicro SDカードを常に4枚ほど持ち歩いていますね。

A:撮影側の話を聞くことが今までなかったので新鮮です。ドローンをそんなにこまめに回収していたなんて知りませんでした!

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いつもと同じスノーボードで、今までと違うコトをする

今後、佐藤さんがスノーボードで表現していきたいことは何ですか。

A:「スノーボードはもっと自由に楽しんでいいモノだ」ということを伝え続けていきたいですね。私は3歳でスノーボードを始めてから今まで、ハーフパイプ→スロープスタイル→バックカントリーと、色々なジャンルを経験してきました。ひとつを極めるのも素敵なことですが、同じ世界を違う角度から見つめることで、味わえる楽しさもあると思っています。

S:亜耶さんのスノーボードには、その考え方がスタイルとなって表れていますよね。競技とバックカントリー、両方を経験してきたからこそ、表現できることがあるのではないかと感じます。 

A:ありがとうございます。バックカントリーは危険がともなうものではありますが、正しい知識を持ちリスクを回避した上で、その美しさや非日常感にひたってもらいたいと思っています。それこそ多角的にスノーボードのことを見て知ってほしいですね。

K:何だかワクワクしてきました。亜耶さんのスタイリッシュな滑りを、こちらも楽しみながら撮れる気がします。

A:私もです。これからよろしくお願いします。

S:では、撮影の準備をしましょうか!

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佐藤亜耶

さとう・あや 1995年4月9日生まれ。新潟県津南町育ち。3歳からスノーボードを始める。13歳でハーフパイプのプロ資格を取得し、ハーフパイプやスロープスタイルのコンテストで活躍。近年はフリーライディングに没頭。先日、新潟県で行われた「2022 TOYO TIRES FREERIDE ARAI FWQ3*」および、群馬県で行われた「Tenjin banked Slalom」で優勝を果たした。

RIGHTUP

株式会社ライトアップ 2015年1月創立以来、神奈川県川崎市に拠点を置く映像制作会社。撮影スタッフはアクションスポーツ経験者で構成されている。カメラやドローンを複数稼働するマルチアングル型の撮影を得意とし、ダイナミックかつ臨場感あふれるプロモーション映像が多くのスポーツメーカーから高く評価されている。

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