歴史に残る一戦を見事に制したのは、世界に誇る日本のフラットランド界の神童である片桐悠【FLAT ARK 2023 in 阪神甲子園球場】

2023.12.29
優勝し胴上げされる片桐悠
©︎FLATARK

今回、阪神甲子園球場の特別協力の下「阪神甲子園球場100周年記念事業」としてBMXフラットランド種目の世界大会【FLAT ARK 2023 in 阪神甲子園球場】が兵庫県西宮市の阪神甲子園球場グラウンド内にて、2023年12月23日(土)~12月24日(日)の2日間にわたって開催され、男子では片桐悠選手が、女子は本村果鈴選手が優勝し世界チャンピオンの座を獲得した。

今年10周年を迎える本大会には、世界17か国から130名あまりが出場し、全5カテゴリーにて老若男女問わず世界最高峰のBMXフラットランドライダーにて熾烈な戦いが繰り広げられた。そして今回からは「Men’s OPEN」だけではなく「Women’s OPEN」も開催されたことから男女両カテゴリーでの世界チャンピオンが決まる10周年に節目にふさわしい大会となった。

会場の様子©︎FLATARK

そんな記念すべき大会の舞台となったのは日本野球の聖地「阪神甲子園球場グラウンド内」。前代未聞となる会場での開催に、来場したお客さんや出場ライダーたちは終始興奮冷めやらぬ状態。野球界で数々の歴史的な熱戦が繰り広げられたグラウンド上に「FLAT ARK」の特設ステージが設置され、2日間に渡って終始大盛り上がりの中で今大会は開催された。

以下は、世界チャンピオンを決める戦いとなった「Men’s OPEN」と「Women’s OPEN」の決勝戦の大会リポート。

特別フォーマットにより降りかかるプレッシャーの中、世界最高峰の強豪選手をねじ伏せる「9 Over」を叩き出した片桐悠。

片桐悠のライディング ©︎FLATARK

12月の寒さが身体にこたえる一方で、会場は晴天で天候にも恵まれ、キリッとした空気の中で繰り広げられた今大会最高クラスMen’s OPENの決勝戦。今回、世界中から集まった38名のトップライダーの中から予選を勝ち上がった8名に加えて、過去大会で入賞経験のあるシード選手2名を含めた計10名で優勝争いが行われた。

なお今回のMen’s OPEN決勝の特別競技フォーマットは、60秒間のソロラン1本+30秒間のベストコンボ6本の合計7本のうち、上位スコア3本の合計得点により順位を決める形となり、1本あたり最大10点の最高30点満点でジャッジされた。

今年の夏の「YUSF FLAT ARK 2023」と同様の競技フォーマットであり、ベストコンボに関してはライディング中の転倒を含め足をつく動作や時間内にルーティンを終えないと0点になるシビアなルールから、高難度ルーティンを短い時間の中で決め切ることが求められ、選手たちにとっては厳しい戦いとなった。

そんなプレッシャーを跳ね除けて、見事この戦いを制したのは「X Games Chiba 2023」の金メダリストであり、世界中のBMXライダーたちが選ぶアワード「NORA CUP」にて今年のフラットランド種目の最優秀選手賞を受賞した片桐悠

60秒間のソロランではリアタイヤを軸にしたスピンを中心に、回りながら手足のポジションを入れ替えてはバランスの取りにくいペダル軸でのトリックを展開。途中ではスピンしながらも一時的に両足が離れる「舞空術」という高難度のリアトリックをルーティンに盛り込み、終盤には身体の内側で抱えた状態のバイクを横に回す「ジャグリング」にトライするも最後までまとめきれずミス。それでもルーティンのレベルの高さが評価され8.3ptをマークした。

その後のベストコンボでは1本目で彼のオリジナルでもある「フルバイクフリップ」からの「ジャグリング」、そして様々なポジションに切り替えながらの「バックスピン」で綺麗に決め8.9ptをマーク。
2本目と3本目では同じルーティンへの挑戦にミスが続くも、4本目でしっかりリベンジ。リアトリック「ロープアローニ」でのペダル軸での加速から、バイクを元の向きに戻すのと同時に両足でペダルキャッチし、「マニュアル」の体勢でスピンを加えながらまた片足でペグ軸のスピンに戻りフィニッシュという今まで見たことのないルーティンを見せた。
片桐本人もようやくメイクできたこのコンボに両手でガッズポーズをして喜びを露わにしていた。そんな彼のコンボには今大会唯一の「9 Over」である9.0ptがスコアされ会場も今日一の盛り上がりを見せた。

ガッズポーズをする片桐悠 ©︎FLATARK

その後、5本目と6本目では更に得点を伸ばすべく新たなルーティンにトライするも残念ながらメイクとはならなかった。しかし9.0ptと8.9ptのスコアが大きく得点を伸ばしたことで3本の合計26.2ptがトップスコアとなり見事優勝を収めた

準優勝は2023年度のUCI世界チャンピオンの荘司ゆう。ソロランではフロントトリックのルーティンの中に「エルクグライド」から「ハーフパッカー」でのスピンや、「トランスファー」をメイクしていくもラストルーティンでは「ブーメラン」に失敗しまとめきれず7.5ptとした。

ベストコンボでは1本目から、クロスフットの切り返しから「ハーフパッカー」、そして正方向に戻してツーフットで加速させて、「フロントスピン」中に「トランスファー」という彼が今年のFISE Montpellierで優勝を獲得した時のトリックを交えたルーティンで8.4ptをマーク。
2本目でミスをするも、3本目ではリアタイヤ軸の「バックスピン」に続く切り返しから、「ブーメラン」でダイレクトにフロントトリックへスイッチし、「フロントスピン」をしながらバイクを跨ぎその体勢からリアタイヤに「トランスファー」しフィニッシュするコンボで8.7ptとし得点を伸ばす。

荘司ゆうのライディング ©︎FLATARK

その後4本目と5本目とミスが続く中で迎えた、ラスト1本では会場に声援を煽り盛り上げた上でトライ。リアタイヤ軸のスピンから「トランスファー」でフロントトリックのスピンへ移り最後はダブルタップの「ブーメラン」をメイクして8.7ptを獲得。何とか評価対象となる3本を8点中盤から後半でまとめるも合計得点を25.8ptとし、片桐には届かず準優勝となった。

3位は今回シードライダーとして出場した今大会最年長の45歳で通称「キング」と呼ばれる森崎弘也。リアトリックとフロントトリックをどちらも扱えるオールラウンダーな彼は、ソロランではフロントタイヤを軸にして高速スピンを交えたりポジションを変えながらトリックを詰め込む高難度ルーティンでランを展開。残り20秒あまりでもう1つルーティンを加えにいくもここは決めきれずタイムオーバーとなったが8.2ptでベストコンボへ繋いだ。

ベストコンボではなかなか決められず1本目から4本目までミスし追い詰められる状態。そんな中迎えた5本目では、リアトリックとフロントトリックのスピンを「トランスファー」を使いながら上手くスイッチさせていき加速。最後はバイクを背面に捉えながらワンフットの難しい姿勢で「バックスピン」というコンボをメイクして今までの嫌な流れを断ち切ると8.8ptをマーク。

この勢いそのままに最後の6本目では、フロントトリックとリアトリックのスピンで「トランスファー」しながらスイッチしてオールラウンドさを見せつけるライディング。リアトリックでのサドルとフロントペグに足をかけた難しいスピンを加えながら最後は「ディケイド」で収めるコンボを見せた。そしてこのコンボが8.6ptの評価を受けて3本の合計点を25.6ptとして3位入賞を決めた。

大会初の女子世界王者の座を獲得したのは若き実力者である本村果鈴。

優勝した本村果鈴 ©︎FLATARK

一方で今回初開催となったWomen’s OPENには世界中から23名のトップライダーが出場し、決勝では予選を勝ち上がった8名により、大会初代世界王者の座を争う展開となった。そして今回の決勝進出者は全員日本人選手であり、改めて女子カテゴリーについても日本人のレベルの高さを感じさせる展開となった。

なお競技フォーマットは120秒間のラン1本での戦いとなり、予選よりも30秒長い時間の中で自身のベストルーティンを多く見せていくことが勝敗を分ける焦点となった。

そんなハイレベルな戦いを制したのは本村果鈴。過去には「Chimera A-side Final」で優勝した経験もあり、弱冠13歳ながら世界最高レベルの実力を持つ彼女。長い手足を活かしたライディングから繰り広げられるのはリアとフロントの両方のトリックの数々。

この決勝ではリアタイヤを軸にしたバックスピンの切り返しから、フロントに軸を変えて「バックスピン」中にハンドルを半分ひねり、「エルクグライド」の体勢からバイクを跨ぎ、サドルを持ちツーフットでバランスを取り綺麗に最初のルーティンをまとめる。
次は自身が得意とする「ウィップラッシュ」を混ぜた「タービン」のルーティンから、クロスハンドでの「フロントスピン」を決めていくと「バリアル」でハンドルを戻し綺麗な「バックスピン」で収めてノーミスのランを展開。

前半戦をパーフェクトに決めたことから、余裕がある状態で挑む後半1分では、フロントの「バックスピン」の中で足をクロスさせて逆足でタイヤをスカッフさせてスピードをつける難しいトリックを決めてガッズポーズ。
またバックワーズでの「ウィップラッシュ」からのクロスフットの「バックスピン」などを丁寧に決めて見せた。ラストトリックは惜しくも転倒しメイクとはならなかったが終始ハイレベルなルーティンを見せたことで26.6ptをマークして優勝念願のチャンピオン獲得に思わず涙を浮かべる姿も見せていた。

準優勝は優勝した本村と同じく13歳の梶原沙璃耶。フロントトリックのバリエーションの多さに定評がある彼女は、フロントタイヤを軸に「ピンキースクエーカー」で車体を左右の足で弾いていくルーティンを見せると、バックワーズで「ウィップラッシュ」を2回メイク。 
ラストは中盤でミスをしてしまった「マックサークル」の中に「ハーフバースピン」を入れた後「ブーメランアウト」をするルーティンに2度トライするも、足をついてしまいメイクとはならなかった。しかしバリエーションとオリジナリティが評価され25.6ptという成績を残し2位の座を勝ち取った

3位はここ最近更にメキメキと力を付けて頭角を表してきた印象のある14歳の清宗ゆい。フロントタイヤを軸にしたバックワーズのスピンのルーティンでライディングを始めると、「ウィップラッシュ」から「マックサークル」そして「ハングファイブ」の形に持っていく流れではミスするも、その後は「バックスピン」の中で足のポジションを変えたり、ハンドルの持ち手を変えるなど難しいポジションから「バックスピン」の派生トリックを決めるルーティンをしっかりメイク。

最後は高速バックスピンからダイレクトにツーフットの「ハーフパッカー」に入る高難度ムーブに3度トライするも足をついてしまい決め切ることはできなかったが、それでも24.8ptをマークした。もしこのトリックが決まっていれば更に順位を上げていただろう。

大会結果

©︎FLATARK

<Mens OPEN >
優勝: カタギリ ユウ
準優勝: ショウジ ユウ
第3位: モリザキ ヒロヤ
4位: シーツェ・ファン ベルケル
5位: イソガイ タクミ
6位: ウチノ ヨウヘイ
7位: モリヤ タカト
8位: タマル ナオト
9位: イトウ マサト
10位: カタギリ リョウ

©︎FLATARK

<Womens OPEN>
優勝: ホンムラ カリン
準優勝: カジワラ サリヤ
第3位: キヨムネ ユイ
4位: タカハシ ナナエ
5位: スズキ ニーナ
6位: イシザキ ミサキ
7位: タグチ シホ
8位: トヨタ カズキ

©︎FLATARK

<Mens EXPERT>
優勝: カナモト コウタロウ
準優勝: フジイ トウハ
第3位: ヒラノ ショウキ

©︎FLATARK

<Mens NOVICE>
優勝: ナカヤス ヨシヒト
準優勝: カジワラ レンヤ
第3位: カドイ アタル

©︎FLATARK

<Womens  NOVICE>
優勝: コガ コノカ
準優勝: ヤギ アンリ
第3位: オカダ ミオ

大会概要

阪神甲子園球場100周年記念事業
名称/ FLAT ARK 2023 in 阪神甲子園球場
名称(読み方)/
フラットアーク ニセンニジュウサン イン ハンシンコウシエンキュウジョウ
日時、開催種目/
2023年12月23日(土) 8:00~17:00
メンズオープンクラス予選、ウィメンズオープンクラス予選
メンズエキスパートクラス予選、ウィメンズノービスクラス決勝
2023年12月24日(日)8:00~17:00
メンズオープンクラス決勝、ウィメンズオープンクラス決勝
メンズエキスパートクラス決勝、メンズノービスクラス決勝
会場/ 阪神甲子園球場グラウンド内(〒663-8152 兵庫県西宮市甲子園町1-82)
主催/ 一般社団法人ARK LEAGUE(アークリーグ)
特別協力/ 阪神甲子園球場
後援/ 兵庫県、西宮市、西宮市教育委員会
メディアパートナー/ 朝日放送テレビ株式会社、FM802
参加選手/ 133名
参加国数/ 17か国

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