フェンシング、カヌー。最近ではスノーボードのハーフパイプだろうか。
オリンピックでメダルを獲って初めてメディアに取り上げられ、「その競技に日本人選手が出場していたのか!」と知られる競技は多い。逆に言えば、メダルを獲れなければ、その競技がオリンピック種目になっているという事すら世の中に知られないのだ。
BMX(バイシクルモトクロス)も、そんな競技の一つだろう。
BMXレースは2008年北京オリンピックから正式種目となり、日本人選手も2008年から出場している。BMXフリースタイルが2020年東京オリンピックの新種目として追加され話題となったので、BMXという言葉を耳にしたことがある人もいるかもしれない。
競輪用や街中で乗る自転車よりもタイヤ径の小さい、頑丈な自転車で行われる競技だ。
日本にはいくつかのBMXレーストラックがある。
しかし、その中で、8メートルスタートヒルの練習が出来る施設は一つしかない。
それが、山梨県にあるYBP(Yuta’s Bike Park)だ。
空から見たYBP。画面左、長方形に見えるのが8メートルスタートヒル。写真提供:YBP PROJECT
ユウタのバイクパーク、という名前には訳がある。それは、このパークが、栗瀬裕太というたった一人の男の手によって作られたパークだからだ。
栗瀬裕太は、日本では大変に珍しい、BMX、MTB両方のプロレースライダーであり、フリースタイルライダーである。BMXレース、BMXダートジャンプ、MTBフォークロス、MTBダートジャンプの大会で優勝経験を持ち、MTBダウンヒルでも入賞している。
YBPで開催されたYBP GAMESにて、ファーストジャンプを飛ぶ栗瀬裕太。
13歳という若さでMTBメーカーとスポンサー契約を結んだ、海外でのレース経験もある華々しいライダーが、何故たった一人でコース作りを始めることになったのだろうか。YBPがオープンして5年経った今、彼は何を思っているのだろうか。YBP PROJECTが昨年から行っているBMXスクール「CLUB YBPレッスン」に伺って、話を聞くことにした。また、BMXイベントのMCを数多く務めているMCワダポリスに、栗瀬裕太という人物について語ってもらった。
冬のBMXスクールは、北杜市の協力により、長坂総合スポーツ公園の中にある施設で行われている。この日は平日、しかも大雨だったのだが、開始時刻前から子供たちが次々と集まって来ていた。
栗瀬:僕、初めての自転車が、よくある子供向けの、補助輪が付くようなのではなくて、BMXだったんですよ。親がアクションスポーツが好きだったんで。
初めて自転車に乗った場所も、自宅の前ではなくて、自宅の近くのBMXで遊べるところでした。自分が初めて自転車に乗った隣で、ダートでジャンプしている人達がいたのを覚えています。
4歳でMTBに乗り始めた栗瀬は、子供の頃から山の中でMTBを乗り回して遊び始める。やがてBMXレースの道に進むが、栗瀬はBMXレースだけではなく、MTBやBMXのダートジャンプでもプロとして活動し始める。幼少の頃からBMX、MTBで遊ぶ楽しさを味わってきた栗瀬本人にとっては、ごく自然な事だった。
栗瀬:実際にオリンピックで使われるコースを走ってみたい!!と思って。
オリンピックのBMXレースコースは、前年には完成しているんです。2020年東京オリンピックのコースも、2019年には完成する予定になっています。
僕が出場した2007年のワールドカップは、翌年の2008年オリンピックの為に作られたコースで行われました。
栗瀬:怖かった。怖かったです。あの怖さは一生忘れない。
自分がレースを始めた頃には、スタートヒルはまだ2,3メートルの高さだった。それがオリンピック前に物凄いスピードで進化してしまって、気がつくと8メートルの高さになってしまいました。初めて8メートルの高さに登って、どのくらいのペースで降りて行ったらいいのかも分からない。強豪のヨーロッパの選手は8メートルヒルとその先のファーストジャンプの高さにも慣れていて、どんどん突っ込んで行ってしまう。しかも8人が同時にスタートする。どうしたらいいのか、何も分からなかった。
北京から帰国した栗瀬は、日本に世界基準の練習場を作るべきだと訴え始める。次の世代にどんなに才能がある選手がいても、BMXレースで一番重要だと言われるスタートの練習が出来なければ、世界を舞台に戦うことは出来ない。
栗瀬は、実績のある人気選手だった。だが、彼の訴えは伝わらなかった。
栗瀬:どんなに必要なのかを訴えても、では作ろうか、という話がどこからも出てこないんです。ああ、伝わってないんだと。
それで、自分がやって見せなくてはいけないと思ったんです。
栗瀬裕太というライダーが、本気になって8メートルスタートヒルのあるコースを作り始めた、と注目されれば、もっと周囲を動かすことが出来るんじゃないかと。
栗瀬:長野県にある富士見パノラマスキー場で、コース造成を7年間担当していました。富士見パノラマで、雪が解けてから整備を始めて2ヵ月でコースを作る技術を身につけていたので、YBPは3、4カ月で出来るだろうと思っていました。
栗瀬は「甘かったです」と笑う。もともと整地された場所ではない。未開の地と言っても良い場所なのだ。八ヶ岳特有の地形、地質相手の格闘は、2年続いた。
栗瀬:最初は本当に一人でした。一人で朝から晩までショベルカーを動かして、ショベルカーを壊して。頭おかしくなったと思われてたと思います。でも、それでもずっとやってたら、少しづつ、協力してくれる人が出てきた。最後にはクラウドファンディングで沢山の人が助けてくれて、8メートルスタートヒルのあるコースを作ることが出来ました。
栗瀬:8メートルスタートヒルのあるコースを作って、選手たちに沢山練習してもらおう。今いるレベルの高い選手たちがYBPで練習してくれたら、世界に通用するようになる。その中からオリンピックでいい成績を残す選手が出てきて注目されれば、自分もBMXをやりたい、という子供達が出てくるだろう。やがてYBPでスクールが出来るようになると思っていたんです。
栗瀬:YBPのある北杜市さんが、生涯学習として、市民の方々向けの色々なイベントや講座をやっていて、そこでYBPでのBMX教室をすることになったんです。試験的に始めた2016年の教室に、地元の小学生たちが来てくれました。そこに来た子供達や、YBPのオープン当初から営業日に通って来てくれていた子供達を中心に、徐々に広まってくれて。2017年からスクールを本格的に行うようになりました。
栗瀬:バイクもヘルメットもお貸しできるように準備してるんですけど、スクールに何回か来てくれると、自分のバイクが欲しくなっちゃうみたいですね。このまま伸びていったら、いいレースライダーになるだろうな、という子も出てきています。
考えていたのとは順番が逆になっちゃいました。でも沢山来てくれて嬉しいです。
熱意のある子供達をさらにサポートしていく為に、BMXスクール「CLUB YBPレッスン」はこの4月、クラブチーム「TEAM YBP」として一新されることとなった。
栗瀬:まずは「楽しんでやること」をいつもレッスン生に向けて言っています。レッスンでは、基本的にBMXのレースを教えていて、その先に自分の進みたい道を見つけて欲しいです。自分はBMXレースも、MTBも、フリースタイルもダウンヒルもやってきたので、どれに進みたいと言われても教えてあげることが出来ます。でもそれは、子供の頃にBMXのレースをやって来て、レースの基礎が身に付いているからこそ出来たことです。基礎をしっかり身につけた上で、楽しむことができるようなチームになって欲しい。
スクールが終わった後は、全員で後片付けをする。やりたがらない子は一人もいない。誰もが率先して動いていたのが印象的だった。
子供達が帰って静かになった後、栗瀬に、最も聞いてみたかったことを尋ねてみた。
栗瀬:8メートルスタートヒルを作ろう、8メートルスタートヒルのあるコースを作ろう、というニュースは、何回も聞くんですよ。その度に、ああ良かったとホッとしていました。でも心配でもあって。この5年間、YBPを維持するだけで物凄く大変だったんです。今でも大変です。作る大変さも維持する大変さも分かっているから、誰が中心になって進めていくんだろ、上手く行ってほしいなと心配で。
でも色々な問題があって、全部話で終わってしまっています。
もう誰か早く作って、自分を安心させてほしい。
8メートルスタートヒルのあるコースは、現時点では日本にはYBPしかない。それは大変に魅力的な事でもある。YBPは、地元北杜市からの打診を受け、2020年東京オリンピックの事前合宿地として名乗りを上げた。そして、フランス代表の視察を受けることになる。
栗瀬:僕は正直すごく戸惑いました。だって、フランスの選手を勝たせるためにYBPを作ったんじゃないですから。
でも、ここで協力してもらうことができたら、もっとYBPを良くすることが出来るかもしれない。日本の選手達にとってプラスになるかもしれない。
そう思って視察を受け入れました。
この視察は、思わぬ出会いを栗瀬にもたらした。フランスチームのコースビルダーとして同行していたのが、ワールドカップなどのコースを作っているProTracks社の社長、トマス・ハモンだったのだ。
栗瀬:彼は、僕が見よう見まねで作り上げたコースを誉めてくれました。よく一人で作ったな、と。そして、何故君一人でやらなくてはいけなかったのかも分かる、と言ってくれました。嬉しかった。そして、僕がコース作りを学ぶことができるようにと、フランスに招いてくれました。
栗瀬:自分自身、コース作りをまだまだ学びたい、という気持ちがありました。でも、スクールも始まったばかりで、行こうかどうしようか迷った。
迷ったんですが、僕は、2007北京のワールドカップに出場しなければ8メートルスタートヒルを経験するチャンスが無かったかもしれないように、このチャンスを逃したら、次はないかもしれない。そう思って、現地で2週間、最先端の技術を学ばせてもらいました。
今そこで学んできたことを生かして、4月のYBPオープンに向けて整備を進めています。
栗瀬:僕がYBPで得たノウハウは、いくらでもお伝えします。いつでも呼んで欲しい。
でも、と栗瀬は言葉を続けた。
栗瀬:僕は助けてあげることは出来るけど、作れるかどうかは、その作りたいって思った奴が、どこまで努力できるかです。
そいつが、作れる、と思えるなら、出来るんですよ。
栗瀬裕太という人物について、少しはお伝えすることが出来ただろうか。
では、BMXシーンを長く見続けてきた人は、栗瀬裕太をどう見ているのだろう。
FMX(フリースタイルモトクロス)のMCとして知られるワダポリスは、BMXにも造詣が深く、X-GAMESのテレビ解説を務めている。YBPでは「WADAPOLICE JAM」という、ワダポリスの名前を冠したイベントも開催されている。
YBP GAMES2017にて、栗瀬とともにMCを務めるワダポリス。
ワダポリス:とても、我慢強い人だと思います。いまいち盛り上がらないBMXシーンをどうにかしたい、後継の為に道を開かなくては、という目的の為には、我慢することが出来る人。でも、物凄く我慢強いのに、無鉄砲な人です。思い立ったら後先考えずに始めてしまう。その落差がユウタ君の魅力的なところだと思います。
ワダポリス:今からだいたい20年ぐらい前、日本ではBMXが大人気だったんですよ。カッコいいライダーがいて、彼らがチームを作って、東京のお台場でショーをやったりしていました。それから、徐々に下火になって、今では人気があった頃のことを知らない人が多くなってしまった。
そこにユウタ君が現れて、一人でYBPを作り始めた。国際基準のコースを作って、国内のトップライダーを走らせて、海外からライダーを呼んで、お客さんを呼べるようになった。
シーンが変わる時に、こういう人が出てくるんだな、と思います。2020年東京オリンピックという追い風を受けて、裕太君とYBP PROJECTがどうなっていくのか。一人のBMXファンとして、とても楽しみにしています。
2018年4月7日、YBPは2018年シーズンオープンを迎える。営業日なら、かなりの確率で栗瀬裕太が笑顔で迎えてくれるだろう。BMX、MTBに乗ったことがない人でも、手ぶらでも、訪ねてみて欲しい。あなたが自転車を楽しむことが、YBP PROJECTの、そして2020東京オリンピックに出場するライダーの力になる。
栗瀬裕太は、そう信じている。
<栗瀬裕太さんが語る高耐久スマホ「TORQUE® G03」の魅力>
京セラの高耐久スマホ「TORQUE® G03」は、頑丈で埃にも強く、耐海水試験もクリアした防水性能なので、土や埃が付いたらそのまま水で洗える。 天気や気圧の情報が簡単に手に入るアプリもよく使ってます。 YBPのコースは保全のために、雨が降るとシートをかける必要があるんです。
的確なタイミングでシート掛けが必要で、そうした時に、「TORQUE® G03」の詳細な天気予報があると便利です。
画面や手が濡れていてもタッチ操作できて、雨の中でも気にせず使えるのもいいですね。
あとは、画面側に2つのスピーカーがあって着信音をかなり大きく設定できること。
「TORQUE® G03」くらいの大きな音(100dB以上!)が鳴ると、重機などを使ったコース整備作業中でも電話に気がつきやすいです。
他のスマホよりもワイドに写真や動画が撮れるので、クラブチームのレッスンは「TORQUE® G03」で撮影します。子供達が数名で走行する場合に、前後の子供の動きを同時に撮りやすいので、重宝しています。
カメラ専用ボタンがあるのも便利ですね。
栗瀬裕太さんも登場する「TORQUE® G03」の動画を「TORQUE」スペシャルサイトで公開中!
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bmxUCI BMXフリースタイルワールドカップ/ミュージックライブ/地域グルメが楽しめる複合イベント 「FUJITA Presents ENOSHIMA WAVE FEST」が来年2月に開催!2023.12.04小田急電鉄株式会社はENOSHIMA WAVE FEST実行委員会を立ち上げ、2024年2月23日(金・祝)から25日(日)まで、小田急沿線が世界に誇る観光地・江の島エリアにて、日本では5年ぶりとなるBMXフリースタイル種目の世界大会「UCI BMX FREESTYLE WORLD CUP ENOSHIMA JAPAN」を中心とした複合イベント「FUJITA Presents ENOSHIMA WAVE FEST」を開催することを発表した。 「FUJITA Presents ENOSHIMA WAVE FEST」は、国際自転車競技連合(UCI)が主幹する男女BMXフリースタイル2種目(BMXフリースタイル・ パーク、BMX フリースタイル・フラットランド)の公式世界大会を開催すると共に、アーバンスポーツと相性の良いさまざまなジャンルのアーティストによるミュージックライブと、地元湘南・藤沢エリアにちなんだ食材を用いた店舗が出店するフードイベント「湘南-Food Festival」を併催する複合イベントとして、神奈川県や藤沢市などの地域関係者や企業による協力の下で開催が決定した。 photograph by by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF 「BMX フリースタイル・パーク」は、ステージ内に設けるさまざまなサイズのジャンプ台等のセクションで技の難易度・完成度・高さなどを競う種目であり、2022年世界選手権優勝者の中村輪夢(なかむら りむ) 選手や地元茅ヶ崎生まれのガールズライダー内藤寧々(ないとう ねね)選手などが活躍している。 photograph by Satoshi Saijo/Japan Cycling Federation/JFBF 「BMX フリースタイル・フラットランド」は、平坦なステージで選手とBMX が一体となって回転したりバランスを取ったりして芸術性を競い合う種目。ここ2年間は連続で日本人選手が世界選手権で優勝しており、 どちらの種目も多くの日本人選手が世界で活躍することで、国内での人気が高まっている自転車競技である。 なお、「UCI BMX FREESTYLE WORLD CUP ENOSHIMA JAPAN」とミュージックライブの観覧は有料チケットが必要となり、チケット販売の詳細や BMX 競技出場選手、ライブの出演アーティスト情報などは決定次第、順次発表となる。 イベント概要 開催日程: 2024年2月23日(金・祝)~25日(日)開催場所:江の島島内特設会場開催概要:(1) UCI BMX FREESTYLE WORLD CUP ENOSHIMA JAPAN 日本では5年ぶりの開催となるUCI公認世界大会(2) ミュージックライブ さまざまなジャンルのアーティストによるスペシャルライブ(3) 湘南-Food Festival【入場無料】 地元湘南・藤沢エリアのグルメが集結※ (1)(2)の観戦・観覧には有料チケットが必要です※ チケットの販売方法、BMX 競技出場選手、ミュージックライブの出演者 などの詳細は、順次発表します。 主催:ENOSHIMA WAVE FEST 実行委員会 共催:一般社団法人全日本フリースタイルBMX連盟後援:神奈川県、藤沢市、公益社団法人藤沢市観光協会、湘南藤沢活性化コンソーシアム、 一般社団法人日本アーバンスポーツ支援協議会協力:株式会社湘南なぎさパーク、江の島振興連絡協議会、江の島防災対策協議会スポンサー:ゴールドパートナー 株式会社フジタ シルバーパートナー 株式会社関電工 ブロンズパートナー 株式会社京三製作所
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dance【SAKAI DANCE FES.】世界レベルのダンスバトルが大阪・堺市にて開催!2023年12月2日(土)、3日(日)の2日間わたって【SAKAI DANCE FES.】が大阪府のららぽーと堺にて開催され、Day1となった2日(土)は、POPPIN’ 1on1 Battle “SAMURAI” と、KIDS 1on1 Battle “NINJA” のコンテンツが実施された。 観覧無料で世界レベルのダンスを体感できる本イベント。休日の大型ショッピングモール「ららぽーと堺」は多くの家族連れなどでにぎわい、偶然立ち寄った方も足を止めて観戦していたのが印象的であった。 【NINJA】U-10・U-15部門ではBGIRL RENとKO-KENが優勝に輝く 世界的にもトップレベルとされている日本のキッズダンサー業界において、日本のキッズダンサーの頂点が決まるALLSTYLE KIDS 1on1 Battle “NINJA”。今回はSPECIAL EDITIONとして実施され、U-10部門・U-15部門の2部門が行われた。優勝者には来年の「SHIROFES.2024 - NINJA」のシード権(宿泊費や交通費などを含む)が与えられ、関西をはじめ中国・四国地方からも多くのキッズダンサーが参戦した。 U-10部門ではBGIRL RENがBaby Lus1tとの決勝戦を制して優勝。Breaking vs KRUMPの対決となったが、小学生とは思えないほどハイレベルなパワームーブを見せつけたBGIRL RENが勝利した。 U-15部門ではKO-KENがJOEとのポッパー対決で勝利して優勝を掴んだ。KO-KENとJOEは互いにチームメイトでもあり熱量がこもったハイレベルな決勝戦を展開したが、KO-KENの動きの質感や発想力豊かな動きの数々が会場に集まった多くの観客を魅了していた。特にU-15部門ではスキルだけでなく個々のスタイルが見えるダンサーも多く、改めて国内キッズダンスレベルの完成度の高さを感じさせる内容となった。 BGIRL REN / © Jason Halayko KO-KEN / © Jason Halayko 【SAMURAI】MACCHO & Ringo Winbeeが優勝! 毎年、青森県 弘前市で開催される「SHIROFES.」にて実施されているPOPPIN’ 1on1 Battle “SAMURAI”。こちらもSPECIAL EDITIONとして、FEMALE部門・OPEN部門の2部門にて実施された。両部門の優勝者は、本イベントのメインコンテンツとなる「7 to Smoke(招待されたゲストダンサー6名が出場)」の出場権を獲得することとなった。 日本国内からのエントリーに加えて韓国からの参戦もあり、予選オーディションから本戦トーナメントまで大きな盛り上がりを見せた中、FEMALE部門ではRingo Winbee、OPEN部門はMACCHOが優勝に輝いた。 FEMALE部門 優勝 Ringo Winbee / © Jason Halayko OPEN部門 優勝 MACCHO / © Jason Halayko 【7 to Smoke】ではベトナムのMT POPが優勝! 7 to Smoke 出場者 © Jason Halayko メインコンテンツとなった「7 to Smoke」では、トーナメント優勝者のRingo Winbee、MACCHOに加えて、HOZIN(韓国)、KIDBOOGIE(アメリカ)、LOCO YOKO(日本)、MT POP(ベトナム)、GUCCHON(日本)、VINEET(インド) の6名が招待ダンサーとして出場。 7 to Smokeとは、制限時間(今回のSAMURAIは1時間)の中で出場者の8名が1on1 Battleを行い、勝ち抜き形式で勝者が決まるオランダ発祥のバトル方式だ。一回の勝ちで1ポイントが加算され合計7ポイントを獲得したダンサーが勝利、または、制限時間が経過した際に最も多くのポイントを獲得しているダンサーが勝利、といったルールになっている。 MT POP © Jason Halayko エンターテイメント要素が強く、ダンサーにとっては体力の消費も多い過酷なフォーマットにおいて優勝に輝いたのは、ベトナムからのゲストダンサー MT POP。 スタート直後から日本のGUCCHONが5連勝を記録し、一気に優勝が決まるかと思われたが、当日のOPEN SIDEの優勝者 MACCHOが王手となる6連勝を阻止。そこからは一時、8人のダンサーによる一進一退の攻防が続いたが、バトル時間が30分を経過したあたりからMT POPが連続でポイントを獲得して巻き返しを図る。 終盤には両者5ポイントを獲得しているMT POP と GUCCHONの対決となったが、MT POPが勝利して6ポイント目を獲得して王手。その勢いのまま7ポイント目も獲得して優勝に輝いた。今年の7月に開催された「SHIROFES.2023 - SAMURAI」でも優勝に輝いているMT POPは、細かくクリアなボディコントロール能力に加えて独創的なミュージカリティを武器に今回の7 to Smokeでも存在感を見せつけた。 【SAMURAI】OPEN & FEMALE 優勝者 コメント Ringo Winbee / © Jason Halayko ■FEMALE SIDE 優勝 Ringo Winbee 優勝した感想をお願いします! R:まず優勝できたことが本当に嬉しかったです。このイベントを凄く楽しみにしていたので、参加できて良かったし、SAMURAIは本当に好きなイベントなので結果を残せたことが嬉しいです。FEMAL SIDEで優勝できたこともそうですが、7 to Smokeなど貴重な体験をさせて頂いたことに本当に感謝しています。 7 to Smokeで印象に残っているバトルはありますか R:もちろんすべてのバトルが印象に残っていますが、GUCCHONさんやHOZINと目の前で戦えたことが嬉しかったし、特にGUCCHONさんは誰が相手でも真剣に向かってバトルしてくれるのでとても楽しかったです。 MACCHO / © Jason Halayko ■OPEN SIDE 優勝 MACCHO 優勝した感想をお願いします! M:今日は本当に楽しんで踊りたいなと思っていました。トーナメントで当たるダンサーも若い子が多かったですが、一緒に楽しめたと思うので、とても良い機会でした。 7 to Smokeに出場された感想はいかがでしたか M:やっぱり予選が終わってからの参加だったので、体力的にキツかったですね(笑)でも出場していたダンサーも知ってる人間ばかりで、いろんなシェアをしながらバトルできたことが良かったなと思います。この経験から得た内容で、もっと自分の踊りを追求していきたいと思っています。最高でした! 「SAKAI DANCE FES.」イベント概要 イベント名:SAKAI DANCE FES.(サカイダンスフェス)日程:2023年12月2日(土)~12月3日(日)観覧:無料時間:12月2日(土)11:00 開場 20:00 終了12月3日(日)15:00 開場 17:30 終了場所:〒587-8577 大阪府堺市美原区黒山22番1 ららぽーと堺 1F Fansta XROSS STADIUM(ファンスタクロススタジアム)開催コンテンツ:12月2日(土)・世界No.1を決める世界最高峰のPOPPIN’の世界大会 “SAMURAI(サムライ)”・キッズの日本一を決める全国大会 “NINJA(ニンジャ)”12月3日(日)・セイコー初のブレイキンイベント “Seiko 5 Sports Showdown”主催:一般社団法人Performing Arts Community後援:堺市協賛:SEIKO/三井不動産/Dickies/BreaKin’ “NinJA”
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dance新たなコンセプトのバトルに世界トップレベルのBBOYが挑戦!「Seiko 5 Sports Showdown」2023.12.03世界王者や日本ブレイキンシーンを代表するダンサーなど、世界中から選ばれたBBOY10名が大阪に集結 2023年12月3日(日)大阪堺市(ららぽーと堺 1階 Fansta XROSS STADIUM)にて、セイコー初のブレイキンイベント「Seiko 5 Sports Showdown」が開催された。出場したのは、招待枠で集められた世界トップレベルのBBOYと、一般の投票によって参戦が確定した全10名のダンサー。1on1バトル形式で行われる本イベントは、バトル終了後にWEBサイトのオンライン投票によってベスト・ブレイカー(1名)、ベスト・バトル(2名)の2部門にて優勝者が決定した。会場となる「ららぽーと堺」に集まったオーディエンスと、YouTubeのライブストリームにて観戦した視聴者によって、投票が行われた。今大会は、事前にマッチアップ(対戦相手)が確定している5試合のみの実施となり、出場するダンサーにとっても1マッチ限定という、全く新しいコンセプトとなった。 photograph by Jason Halayko 「Seiko 5 Sports Showdown」出場者 LIL KEV(フランス)KID COLOMBIA(オランダ)PHYSICX(韓国)STRIPES(アメリカ)PHILIP(アメリカ)SUNNI(イギリス)TAISUKE(日本)LIL ZOO(オーストリア・モロッコ)BRUCE ALMIGHTY(ポルトガル)VICTOR(アメリカ) 過去に全世界が注目したバトルの再戦など、今回ならではの対戦カードが実現 photograph by Jason Halayko ファーストバトルとなったLIL KEV(フランス)対 KID COLOMBIA(オランダ)は、YouTubeで1,000万回近く再生されているバトル(2019年の世界大会)を再現したマッチアップ。両者が得意とするパワームーブを、最大限に活かしたバトル展開で会場を沸かせた。日本からは、世界3連覇の経験を持ち、今もなお日本を代表して世界の第一線で活躍するTAISUKEが参戦。同じチーム(Red Bull BC One All Stars)に所属する、LIL ZOOと数年ぶりの対決が実現した。今大会で唯一の日本人ダンサーということもあり、この日会場に集まったオーディエンスからは一番の声援が飛び、盛り上がりを見せ、投票の結果この日のベスト・バトルにも選出された。他にも世界大会で顔馴染みのダンサーが多く参加する中、この日ベスト・ブレイカーに選ばれたのは、パリ五輪にアメリカ代表として出場が内定しているVICTOR(アメリカ)。2年連続で世界大会を制している実力者が、安定の強さを発揮して優勝した。 ベスト・ブレイカー「VICTOR」、ベスト・バトル「TAISUKE・LIL ZOO」コメント 左からTAISUKE、VICTOR、LILZOOphotograph by Jason Halayko 「Seiko 5 Sports Showdown」独自の形式でのバトルはどうでしたか? VICTOR:楽しかったよ!個人的にはもっとラウンド数を踊りたかったから、次回はもう少しラウンド数があったらいいな (笑) 。 LIL ZOO:正直、3ラウンドあったらよかった気持ちもあるけど(笑)。今日のバトルは観ていても楽しかったよ!スタイルが似ている人同士のバトルや、バックグラウンドがある対戦は、通常のバトルで偶然見れることも少ないので、こうやって事前に組まれた形式にも良さがあると思うよ。 TAISUKE:俺は2ラウンドが良かったかなって思います。2ラウンドに気持ちもムーブも全てを落とし込むことで、その人の全力が凝縮されると思うし、観てる側も「もう少し見たいな」という気持ちになってくれれば、ダンサーのことを調べてくれると思うので、ブレイキンシーンをより深く知ってもらうきっかけにも繋がるかなと思いました。 もしも次回出場するとしたら、誰と対戦したいですか? VICTOR:(少し悩んでから)ZEKUかな。 LIL ZOO:PACPACと対戦したいね。 TAISUKE:LILOUかHONG10ですね。 次の目標を教えてください VICTOR:パリ五輪が来年あるので、それに向けて練習を頑張ります! LIL ZOO:いつも大きい目標だけでなく、次にあるイベントやバトルに向けて全力で取り組むことを大事にしているので、これからもいつも通り、次のアクションに向けて頑張るよ! TAISUKE:来年の4月に海外でバトルに出る予定なので、それに向けて仕上げていくのが次の目標かなと思います。 The moments of「Seiko 5 Sports Showdown」 photograph by Jason Halayko photograph by Jason Halayko photograph by Jason Halayko photograph by Jason Halayko photograph by Jason Halayko photograph by Jason Halayko photograph by Jason Halayko イベント概要 日程: 2023年12月3日(日)時間: 15:00~17:30(予定)場所: ららぽーと堺 1階 Fansta XROSS STADIUM料金: 観覧無料招待ダンサー: LIL KEV(フランス)/KID COLOMBIA(オランダ)/PHYSICX(韓国)/PHILIP(USA)/LIL ZOO(オーストリア)/TAISUKE(日本)/SUNNI(イギリス)/STRIPES(ドイツ)/VICTOR(アメリカ)/BRUCE ALMIGHTY(ポルトガル)視聴・投票方法:イベント公式サイトから視聴・投票が可能
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danceセイコー初のブレイキンイベント【Seiko 5 Sports Showdown】いよいよ明日開催!2023.12.022023年12月3日(日)ららぽーと堺 1階 Fansta XROSS STADIUMにて、セイコー初のブレイキンイベント「Seiko 5 Sports Showdown」が開催される。 1on1 バトル形式で行われる本イベントは、日本・米国・欧州・アジアの世界各国から選ばれた10名のトップBBOYが日本に集結し、5つのバトルを繰り広げる。会場となる「ららぽーと堺」、そしてYouTubeのライブストリームにて観戦(無料)が可能となっており、バトル終了後にWEBサイトのオンライン投票によってベスト・ブレイカー(1名)、ベスト・バトル(2名)の2部門にて優勝者が決定する。 日本からはBattle Of The Year World Finalの3連覇や、Red Bull BC One World Finalでの活躍をはじめ、世界大会でも多くの実績を誇るBBOY TAISUKEが参戦。アメリカからはRed Bull BC One World Finalで2度の優勝の実績、さらに来年に開催されるパリ五輪 ブレイキン種目にて、アメリカ代表として出場権を獲得したBBOY Victorも本イベントに参戦する。 そのほか名だたるBBOYたちが激戦を繰り広げる予定だ。感動と興奮間違いなしの「Seiko 5 Sports Showdown」、世界トップレベルのブレイキンバトルに是非ご注目いただきたい。 本イベントの各バトルカード、そのほかイベント概要は下記からご確認ください。 1st Battle LIL KEV vs KID COLOMBIA 2nd Battle PHYSICX vs STRIPES 3rd Battle PHILIP vs SUNNI 4th Battle TAISUKE vs LIL ZOO 5th Battle BRUCE ALMIGHTY vs VICTOR イベント概要 日程: 2023年12月3日(日)時間: 15:00~17:30(予定)場所: ららぽーと堺 1階 Fansta XROSS STADIUM料金: 観覧無料招待ダンサー: LIL KEV(フランス)/KID COLOMBIA(オランダ)/PHYSICX(韓国)/PHILIP(USA)/LIL ZOO(オーストリア)/TAISUKE(日本)/SUNNI(イギリス)/STRIPES(ドイツ)/VICTOR(アメリカ)/BRUCE ALMIGHTY(ポルトガル)視聴・投票方法:イベント公式サイトからご視聴・投票いただけます。
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skateSkateboarding Unveiled vol.7 ~スケートボード写真の「ちょっと違うんだよなー」感~2023.11.30スケートボードを長年撮影していると、こんな質問をされることがある。 「この技ってボードが裏返ってる瞬間を使うんじゃないんですか⁉︎」 「踏み切りも着地も、どんな技なのかも全部わかるのにどこがダメなんですか?」 それらの写真について、選手や専門家と話すと、こんな会話になる。 「なんか技に失敗してるみたい」 「あのセクション(障害物)の意味ないじゃん」 まず、ここまでの流れでピンと来た方はかなりのスケートボードマニア。 そう、これは昨年Yahoo!ニュースエキスパートに公開し、驚異的な閲覧数とともに月間MVA(Most Valuable Article)も獲得した『スケートボード写真の「それじゃない」感 選手や業界関係者と、スポーツ報道のズレ』と同じ構成だ。 当時と比べれば、今は伝える側(卓越した人が伝える専門メディアではなくマスメディア)の知識や経験も増えたので、選手や専門家の意図を汲んだ写真にしようという意図が伝わるカットも増えたが、それ以上にスケートボード写真の世界は奥深く、上記の記事内容も氷山の一角に過ぎないので、今回はさらに掘り下げた内容をお届けしていきたい。 まずは前回のキーポイントとなった「暗黙のルール」からおらさい。それは以下の2点になる。 ・トリックのピーク (1カットで何のトリックを行なっているのかわかる一瞬) を押さえる ・アプローチと着地点 (どこで踏み切ってどこに着地しているのか) を収める 前回はこれらについて自分の写真を用いて解説したのだが、今回はそこを理解した先に陥りやすい誤認識や疑問について説明していく。 「どんな技かわかりやすい」がピークではない まずスケートボードの撮影をする時、最も重要となるのが、何のトリックをしているのかがわかることだ。もちろんそれは間違いではない。 ただそればかりに囚われると、今度はスケートボードで最も重要な個性やスタイルが表現できなくなる。 次の2枚の写真を見比べてほしい。 裏返っている瞬間は確かにわかりやすいが、ピークかと言われると⁉︎ これはキックフリップというつま先を背中側前方に擦り抜いて、ボードに縦回転を加えるトリックにになるのだが、それであればこの裏返っている瞬間が、どんな技であるのかが最もわかりやすいし、馴染みのない人でもすぐに理解できるだろう。 ではこの写真はどうだろうか。 このように身体を屈めて、最も高い位置に足がある一瞬こそピーク。そこには選手の個性も詰まっている。 今にも1回転し終わるタイミングなので、一見どんなトリックなのか分かりづらい人もいるかもしれない。 だが、「トリックのピークを押さえる」という暗黙のルールに従うと、実はこちらの方がふさわしいのだ。 その理由として注目してほしいポイントは足とボードの位置。 上の写真は前足で擦り抜いた直後になるので、ボードが裏返ってはいるものの、まだ跳ね上がっている途中で、前足も上方に擦り抜いたまま。後ろ足も引き上げている途中になる。それなのにピークというには無理があるだろう。その1テンポ前といった方が正しい。 対して下の写真は、ボードがほぼ回りきる瞬間ながら、両足を引き上げながら前方へ突き出し、ボードを捉えようとしていることがわかるし、1テンポ前と比べても高い位置にあるので、高さも最高潮を迎えている。 この技はハンドレール(手すり)を跳び越える瞬間が醍醐味なので、それであればボードも人間も最も高い位置にある瞬間をピークと見るのが妥当だろう。 でも、「このタイミングでは何のトリックかわからない」という人もいるかもしれないので補足しておくと、 「前足のスナップを効かせて背中側前方に擦り抜き、写真から見て反時計回りにボードを1回転させたところを両足でキャッチする」というキックフリップの動作を正確に把握できているかが重要になってくる。 そこを完全に理解していると、ピークの写真はどう見えるだろうか。 前足は背中側前方につま先を突き出したような構えになっているので、前足のスナップを効かせて背中側前方に擦り抜いた直後だとわかるし、反時計回りに回転するボードの軌道がわかっていれば、この後右側が上がってきて真上から捉えにきている両足に収まるんだなということが推測できる。そうやって成功している姿が想像できるからこそ、下の写真が”ピーク”となるのだ。 他の技を組み合わせるとどう見える⁉︎ では「他の技だとどう見えるの⁉︎」という人もいるかもしれないので、キックフリップバックサイドテールスライドという複合技でも見てみよう。 これは上記のキックフリップに加え、背中側にある対象物にテール(ボードの後端)を掛けるバックサイドテールスライドという動作も加わった非常に難易度の高いトリック。そこでボードが裏返っている瞬間はどうなっているのか見てみよう。 複合技の場合は対象物の高さに合わせ、高さを抑えたピンポイントなキックフリップが必要になることも多い。するとピーク手前の裏返っている瞬間は、ボードは明らかに低い位置にある。 ボードが対象物のレールよりもかなり低い位置にあるのがわかるだろう。 これではどの部分を掛けようとしているのかがわかりづらいだけでなく、ここまで距離が離れていると対象物にボードが届かずに失敗しているようにも見える人もいるだろう。冒頭の「なんか技に失敗してるみたい」の意図はここにあるのだ。 身体を回転させながら後ろ足はつま先からボードを捉え、前足はボード上に戻ろうとしている。それだけでキックフリップ・バックサイドテールスライドとわかる ではどの瞬間がピークになるのかというと、縦回転したボードをキャッチして後端をレールに掛けようとするこの写真になる。 ボードが裏返っていなくても、足とどのように触れているかで前後の動きがわかるため、ピークのタイミングとなる。 これを動作分析すると、まず後ろ足のつま先がボードの後ろ部分を捉えているのは、写真から見て反時計回りにボードを1回転させきった瞬間だからだ、400°くらいのところでキャッチしているといえばわかりやすいだろうか。 前足がボードから少し離れているのは、背中側前方に擦り抜いた足を戻そうとしているからで、この2点からキックフリップの動作入れていることが確認できる。 さらに身体は背中を進行方向に向けて80°くらい回っている状態であるし、レールのすぐ上にボードの後端があるので、この1テンポ先の動きかバックサイドテールスライドであることも推測できる。以上の要素から2つのトリックを入れた複合技であることがわかるため、ピークであるということができるのだ。 これが最初のキックフリップの説明も含め、冒頭の「この技ってボードが裏返ってる瞬間を使うんじゃないんですか⁉︎」という問いに対しての答えとなる。 アプローチと着地点の”全体像”が大切 となると、次は当然「踏み切りも着地も、どんな技なのかも全部写ってるのにどこがダメなんですか?」に対する答えとなるのだが、まずはこの写真を見てほしい。 一見なんの問題もないように見えるが、アプローチをよく見ると⁉︎ これはキックフリップでバンク(斜面)から上部のフラット部分に跳び移っている写真だ。どこから入ってどこに着地したかも確認できるので暗黙のルールにも則っている。 一見何の問題もないように思うかもしれないが、こちらの写真を見たらどう思うだろう⁉︎ こんなにバンク面が長いと当然人物は小さくなってしまう。ではどうするのが良いのだろう? 同じ選手、同じセクション、同じトリックであるにも関わらず与える印象は別モノになる。実はバンク面がすごく長かったのだ。 これだけ長ければ、当然アプローチは速いスピードが必要になるし、その分ボードコントロールがしづらくなり、難易度も高くなる。となれば、どちらの方がすごく見えるかは一目瞭然だろう。 スケートボードのライディング写真では、アプローチと着地のポイントを、”点”で見るのではなく”全体像”として捉えることが非常に重要なのだ。 これが、上記質問の答えとなる。 どこから撮るか!? がすごく重要 ただここまでバンク面が長いと、構図内に収まる人物は当然小さくなってしまう。 専門誌ならばそれでも全く問題ないが、一般に向けたマスメディアではトリックの難易度よりもわかりやすさの方が重要とされているし、第一に表情を捉えることを基本としているので、こういった類いの写真が選ばれることはないだろう。 ではどうすれば良いのだろうか!? それはあらかじめベストポジションを確保して構えておくことだ。 以下の写真を見てほしい。 フォトセッションイベントで撮影したフロントフットインポッシブルのライディングカット。先ほどよりバンクは小さく、人物は大きい。 着地点側から撮影すると、バンク面を小さく見せれるので、アプローチと着地を全体像として捉えながらも、人物をより大きく見せることが可能になるのだ。 ただこれはコンテストではなくフォトセッションイベントで撮影した写真になるので、事前にどこでどんなトリックをするのかを確認してアングルを決め、その上でフラッシュもセットすることができるのシチュエーション。 そうなるとこのように印象強い写真に仕上げることができるのだ。 動きを予測して事前に動く コンテストでは選手の目線や助走、スタンス(身体の向きや足を置く位置)から動きを予測し、予め撮影ポジションに移動することがとても大切だ。 ではコンテストのは時はどうすればいいの⁉︎ というと、さすがにライティングをするのは無理でも、着地点側に立つことは運営サイドの許可さえとれれば可能だ。 だがそれだけで良い写真が撮れるわけではない。自分の狙ったアングルで都合よく選手が技をやるなんてことは、まずないからだ。 そこで必要になるのが、動きを予測して事前にベストポジションに移動しておくことだ。 そのためには選手の得意技も把握しておかなければならないし、どういう流れでランを構成していくのかも、直前練習を見るなりして確認しておく必要がある。そうした経験を積み重ねて知識を身につけることで、初めて選手も含め、より多くの人が好む写真を撮影することができるのだ。 ただ中には突然技を変えてくる選手もいるし、何が起こるかは本番になってみないとわからない。そのため予測が百発百中で当たることなどまずない。 だからこそ自分は、今まで培ってきた経験と知識を活かして、頭をフル回転させながら常に動き回って撮っているのだが、それが本当に楽しいし、気が付けば毎回夢中になっている。 そうして思い通りに最高の写真が撮れた時の高揚感は、何にも変え難い至福の瞬間でもある。 では最後にひとつ質問をさせていただきたい。自分に以下の2つの撮影オファーがきたとします。 ひとつは有名な国際大会だけど、オフィシャルではなく取材申請が必要で、撮影ポジションが定められた自由度が低いオファー。 もうひとつは、地区大会だけどオフィシャルのポジションで、自分の好きなように動き回って撮影できるオファー。 皆さんならどちらを選びますか? 自分ならば間違いなく後者を選択するでしょう。 知名度があるコンテストはそれだけで撮っていて楽しいので、オフィシャルではないポジションでも撮ることはありますが、例え地区大会でも、運営側に信頼されて自由に撮れる撮影の方が純粋に楽しいし、今回書いたようなポイントも理解してくれています。 もちろん有名な国際大会でオフィシャルカメラマンで入れるに越したことはないので、そのためにも自分はこれからも自分の写真スタイルをさらに追求していきたいと思っています。 吉田佳央 / Yoshio Yoshida(@yoshio_y_)1982年生まれ。静岡県焼津市出身。高校生の頃に写真とスケートボードに出会い、双方に明け暮れる学生時代を過ごす。大学卒業後は写真スタジオ勤務を経たのち、2010年より当時国内最大の専門誌TRANSWORLD SKATEboarding JAPAN編集部に入社。約7年間にわたり専属カメラマン・編集・ライターをこなし、最前線のシーンの目撃者となる。2017年に独立後は日本スケートボード協会のオフィシャルカメラマンを務めている他、ハウツー本の監修や講座講師等も務める。ファッションやライフスタイル、広告等幅広いフィールドで撮影をこなしながら、スケートボードの魅力を広げ続けている。