フェンシング、カヌー。最近ではスノーボードのハーフパイプだろうか。
オリンピックでメダルを獲って初めてメディアに取り上げられ、「その競技に日本人選手が出場していたのか!」と知られる競技は多い。逆に言えば、メダルを獲れなければ、その競技がオリンピック種目になっているという事すら世の中に知られないのだ。
BMX(バイシクルモトクロス)も、そんな競技の一つだろう。
BMXレースは2008年北京オリンピックから正式種目となり、日本人選手も2008年から出場している。BMXフリースタイルが2020年東京オリンピックの新種目として追加され話題となったので、BMXという言葉を耳にしたことがある人もいるかもしれない。
競輪用や街中で乗る自転車よりもタイヤ径の小さい、頑丈な自転車で行われる競技だ。
日本にはいくつかのBMXレーストラックがある。
しかし、その中で、8メートルスタートヒルの練習が出来る施設は一つしかない。
それが、山梨県にあるYBP(Yuta’s Bike Park)だ。
空から見たYBP。画面左、長方形に見えるのが8メートルスタートヒル。写真提供:YBP PROJECT
ユウタのバイクパーク、という名前には訳がある。それは、このパークが、栗瀬裕太というたった一人の男の手によって作られたパークだからだ。
栗瀬裕太は、日本では大変に珍しい、BMX、MTB両方のプロレースライダーであり、フリースタイルライダーである。BMXレース、BMXダートジャンプ、MTBフォークロス、MTBダートジャンプの大会で優勝経験を持ち、MTBダウンヒルでも入賞している。
YBPで開催されたYBP GAMESにて、ファーストジャンプを飛ぶ栗瀬裕太。
13歳という若さでMTBメーカーとスポンサー契約を結んだ、海外でのレース経験もある華々しいライダーが、何故たった一人でコース作りを始めることになったのだろうか。YBPがオープンして5年経った今、彼は何を思っているのだろうか。YBP PROJECTが昨年から行っているBMXスクール「CLUB YBPレッスン」に伺って、話を聞くことにした。また、BMXイベントのMCを数多く務めているMCワダポリスに、栗瀬裕太という人物について語ってもらった。
冬のBMXスクールは、北杜市の協力により、長坂総合スポーツ公園の中にある施設で行われている。この日は平日、しかも大雨だったのだが、開始時刻前から子供たちが次々と集まって来ていた。
栗瀬:僕、初めての自転車が、よくある子供向けの、補助輪が付くようなのではなくて、BMXだったんですよ。親がアクションスポーツが好きだったんで。
初めて自転車に乗った場所も、自宅の前ではなくて、自宅の近くのBMXで遊べるところでした。自分が初めて自転車に乗った隣で、ダートでジャンプしている人達がいたのを覚えています。
4歳でMTBに乗り始めた栗瀬は、子供の頃から山の中でMTBを乗り回して遊び始める。やがてBMXレースの道に進むが、栗瀬はBMXレースだけではなく、MTBやBMXのダートジャンプでもプロとして活動し始める。幼少の頃からBMX、MTBで遊ぶ楽しさを味わってきた栗瀬本人にとっては、ごく自然な事だった。
栗瀬:実際にオリンピックで使われるコースを走ってみたい!!と思って。
オリンピックのBMXレースコースは、前年には完成しているんです。2020年東京オリンピックのコースも、2019年には完成する予定になっています。
僕が出場した2007年のワールドカップは、翌年の2008年オリンピックの為に作られたコースで行われました。
栗瀬:怖かった。怖かったです。あの怖さは一生忘れない。
自分がレースを始めた頃には、スタートヒルはまだ2,3メートルの高さだった。それがオリンピック前に物凄いスピードで進化してしまって、気がつくと8メートルの高さになってしまいました。初めて8メートルの高さに登って、どのくらいのペースで降りて行ったらいいのかも分からない。強豪のヨーロッパの選手は8メートルヒルとその先のファーストジャンプの高さにも慣れていて、どんどん突っ込んで行ってしまう。しかも8人が同時にスタートする。どうしたらいいのか、何も分からなかった。
北京から帰国した栗瀬は、日本に世界基準の練習場を作るべきだと訴え始める。次の世代にどんなに才能がある選手がいても、BMXレースで一番重要だと言われるスタートの練習が出来なければ、世界を舞台に戦うことは出来ない。
栗瀬は、実績のある人気選手だった。だが、彼の訴えは伝わらなかった。
栗瀬:どんなに必要なのかを訴えても、では作ろうか、という話がどこからも出てこないんです。ああ、伝わってないんだと。
それで、自分がやって見せなくてはいけないと思ったんです。
栗瀬裕太というライダーが、本気になって8メートルスタートヒルのあるコースを作り始めた、と注目されれば、もっと周囲を動かすことが出来るんじゃないかと。
栗瀬:長野県にある富士見パノラマスキー場で、コース造成を7年間担当していました。富士見パノラマで、雪が解けてから整備を始めて2ヵ月でコースを作る技術を身につけていたので、YBPは3、4カ月で出来るだろうと思っていました。
栗瀬は「甘かったです」と笑う。もともと整地された場所ではない。未開の地と言っても良い場所なのだ。八ヶ岳特有の地形、地質相手の格闘は、2年続いた。
栗瀬:最初は本当に一人でした。一人で朝から晩までショベルカーを動かして、ショベルカーを壊して。頭おかしくなったと思われてたと思います。でも、それでもずっとやってたら、少しづつ、協力してくれる人が出てきた。最後にはクラウドファンディングで沢山の人が助けてくれて、8メートルスタートヒルのあるコースを作ることが出来ました。
栗瀬:8メートルスタートヒルのあるコースを作って、選手たちに沢山練習してもらおう。今いるレベルの高い選手たちがYBPで練習してくれたら、世界に通用するようになる。その中からオリンピックでいい成績を残す選手が出てきて注目されれば、自分もBMXをやりたい、という子供達が出てくるだろう。やがてYBPでスクールが出来るようになると思っていたんです。
栗瀬:YBPのある北杜市さんが、生涯学習として、市民の方々向けの色々なイベントや講座をやっていて、そこでYBPでのBMX教室をすることになったんです。試験的に始めた2016年の教室に、地元の小学生たちが来てくれました。そこに来た子供達や、YBPのオープン当初から営業日に通って来てくれていた子供達を中心に、徐々に広まってくれて。2017年からスクールを本格的に行うようになりました。
栗瀬:バイクもヘルメットもお貸しできるように準備してるんですけど、スクールに何回か来てくれると、自分のバイクが欲しくなっちゃうみたいですね。このまま伸びていったら、いいレースライダーになるだろうな、という子も出てきています。
考えていたのとは順番が逆になっちゃいました。でも沢山来てくれて嬉しいです。
熱意のある子供達をさらにサポートしていく為に、BMXスクール「CLUB YBPレッスン」はこの4月、クラブチーム「TEAM YBP」として一新されることとなった。
栗瀬:まずは「楽しんでやること」をいつもレッスン生に向けて言っています。レッスンでは、基本的にBMXのレースを教えていて、その先に自分の進みたい道を見つけて欲しいです。自分はBMXレースも、MTBも、フリースタイルもダウンヒルもやってきたので、どれに進みたいと言われても教えてあげることが出来ます。でもそれは、子供の頃にBMXのレースをやって来て、レースの基礎が身に付いているからこそ出来たことです。基礎をしっかり身につけた上で、楽しむことができるようなチームになって欲しい。
スクールが終わった後は、全員で後片付けをする。やりたがらない子は一人もいない。誰もが率先して動いていたのが印象的だった。
子供達が帰って静かになった後、栗瀬に、最も聞いてみたかったことを尋ねてみた。
栗瀬:8メートルスタートヒルを作ろう、8メートルスタートヒルのあるコースを作ろう、というニュースは、何回も聞くんですよ。その度に、ああ良かったとホッとしていました。でも心配でもあって。この5年間、YBPを維持するだけで物凄く大変だったんです。今でも大変です。作る大変さも維持する大変さも分かっているから、誰が中心になって進めていくんだろ、上手く行ってほしいなと心配で。
でも色々な問題があって、全部話で終わってしまっています。
もう誰か早く作って、自分を安心させてほしい。
8メートルスタートヒルのあるコースは、現時点では日本にはYBPしかない。それは大変に魅力的な事でもある。YBPは、地元北杜市からの打診を受け、2020年東京オリンピックの事前合宿地として名乗りを上げた。そして、フランス代表の視察を受けることになる。
栗瀬:僕は正直すごく戸惑いました。だって、フランスの選手を勝たせるためにYBPを作ったんじゃないですから。
でも、ここで協力してもらうことができたら、もっとYBPを良くすることが出来るかもしれない。日本の選手達にとってプラスになるかもしれない。
そう思って視察を受け入れました。
この視察は、思わぬ出会いを栗瀬にもたらした。フランスチームのコースビルダーとして同行していたのが、ワールドカップなどのコースを作っているProTracks社の社長、トマス・ハモンだったのだ。
栗瀬:彼は、僕が見よう見まねで作り上げたコースを誉めてくれました。よく一人で作ったな、と。そして、何故君一人でやらなくてはいけなかったのかも分かる、と言ってくれました。嬉しかった。そして、僕がコース作りを学ぶことができるようにと、フランスに招いてくれました。
栗瀬:自分自身、コース作りをまだまだ学びたい、という気持ちがありました。でも、スクールも始まったばかりで、行こうかどうしようか迷った。
迷ったんですが、僕は、2007北京のワールドカップに出場しなければ8メートルスタートヒルを経験するチャンスが無かったかもしれないように、このチャンスを逃したら、次はないかもしれない。そう思って、現地で2週間、最先端の技術を学ばせてもらいました。
今そこで学んできたことを生かして、4月のYBPオープンに向けて整備を進めています。
栗瀬:僕がYBPで得たノウハウは、いくらでもお伝えします。いつでも呼んで欲しい。
でも、と栗瀬は言葉を続けた。
栗瀬:僕は助けてあげることは出来るけど、作れるかどうかは、その作りたいって思った奴が、どこまで努力できるかです。
そいつが、作れる、と思えるなら、出来るんですよ。
栗瀬裕太という人物について、少しはお伝えすることが出来ただろうか。
では、BMXシーンを長く見続けてきた人は、栗瀬裕太をどう見ているのだろう。
FMX(フリースタイルモトクロス)のMCとして知られるワダポリスは、BMXにも造詣が深く、X-GAMESのテレビ解説を務めている。YBPでは「WADAPOLICE JAM」という、ワダポリスの名前を冠したイベントも開催されている。
YBP GAMES2017にて、栗瀬とともにMCを務めるワダポリス。
ワダポリス:とても、我慢強い人だと思います。いまいち盛り上がらないBMXシーンをどうにかしたい、後継の為に道を開かなくては、という目的の為には、我慢することが出来る人。でも、物凄く我慢強いのに、無鉄砲な人です。思い立ったら後先考えずに始めてしまう。その落差がユウタ君の魅力的なところだと思います。
ワダポリス:今からだいたい20年ぐらい前、日本ではBMXが大人気だったんですよ。カッコいいライダーがいて、彼らがチームを作って、東京のお台場でショーをやったりしていました。それから、徐々に下火になって、今では人気があった頃のことを知らない人が多くなってしまった。
そこにユウタ君が現れて、一人でYBPを作り始めた。国際基準のコースを作って、国内のトップライダーを走らせて、海外からライダーを呼んで、お客さんを呼べるようになった。
シーンが変わる時に、こういう人が出てくるんだな、と思います。2020年東京オリンピックという追い風を受けて、裕太君とYBP PROJECTがどうなっていくのか。一人のBMXファンとして、とても楽しみにしています。
2018年4月7日、YBPは2018年シーズンオープンを迎える。営業日なら、かなりの確率で栗瀬裕太が笑顔で迎えてくれるだろう。BMX、MTBに乗ったことがない人でも、手ぶらでも、訪ねてみて欲しい。あなたが自転車を楽しむことが、YBP PROJECTの、そして2020東京オリンピックに出場するライダーの力になる。
栗瀬裕太は、そう信じている。
<栗瀬裕太さんが語る高耐久スマホ「TORQUE® G03」の魅力>
京セラの高耐久スマホ「TORQUE® G03」は、頑丈で埃にも強く、耐海水試験もクリアした防水性能なので、土や埃が付いたらそのまま水で洗える。 天気や気圧の情報が簡単に手に入るアプリもよく使ってます。 YBPのコースは保全のために、雨が降るとシートをかける必要があるんです。
的確なタイミングでシート掛けが必要で、そうした時に、「TORQUE® G03」の詳細な天気予報があると便利です。
画面や手が濡れていてもタッチ操作できて、雨の中でも気にせず使えるのもいいですね。
あとは、画面側に2つのスピーカーがあって着信音をかなり大きく設定できること。
「TORQUE® G03」くらいの大きな音(100dB以上!)が鳴ると、重機などを使ったコース整備作業中でも電話に気がつきやすいです。
他のスマホよりもワイドに写真や動画が撮れるので、クラブチームのレッスンは「TORQUE® G03」で撮影します。子供達が数名で走行する場合に、前後の子供の動きを同時に撮りやすいので、重宝しています。
カメラ専用ボタンがあるのも便利ですね。
栗瀬裕太さんも登場する「TORQUE® G03」の動画を「TORQUE」スペシャルサイトで公開中!
SPECIAL EDITION

FINEPLAYはアクションスポーツ・ストリートカルチャーに特化した総合ニュースメディアです。2013年9月より運営を開始し、世界中のサーフィン、ダンス、ウェイクボード、スケートボード、スノーボード、クライミング、パルクール、フリースタイルなどストリート・アクションスポーツを中心としたアスリート・プロダクト・イベント・カルチャー情報を提供しています。
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others「武術もストリートも大切に」3年ぶりの国内トリッキング大会『極限武術GATHERING』 オーガナイザーDaisukeに大会直前インタビュー!2022.06.24来る7月18日(月)にコロナ禍以来、初の国内トリッキング大会『極限武術GATHERING』が開催決定した。トリッキングとは「XMA(エクストリームマーシャルアーツ)」と呼ばれる武術発祥のカルチャーであり、中国武術・テコンドー・カポエイラ・ブレイクダンスなどのジャンルが合わさって誕生した新しいスポーツ。今回は、トリッキング世界王者 Daisuke(TOK¥O TRICKING MOB)による合同会社TTMを主催に様々な試みを加えた”異例”のトリッキング大会となっている。 FINEPLAYは今大会のオーガナイズを務めるDaisukeにインタビューを実施。大会に込めた想いから、将来的なトリッキングのビジョンまでを深く語った。 Daisuke(以下:D) 「シーンに一石を投じる」新たなフォーマットを導入した革新的な大会へ まずは今大会『極限武術GATHERING』を開催しようと思ったキッカケを教えてください D:このコロナ禍の中で若いプレイヤーたちが練習した技術を発表する場が無い状態が続いていました。そして今コロナの影響が収まりつつある中で、シーンに一石を投じる様な大会をしたいなと思ったことがキッカケです。 今回バトルジャッジで初めてスコア制を導入した理由を教えてください D:これはスノーボードやスケートボードなど、基本的にオリンピック化されているスポーツなどをモデルにしています。それらは得点化がされていて、それが基準の一つだと思っているので今回業界初のスコア形式のジャッジを導入しました。完全に今後、国際大会化することを目標にしてこの制度を取り入れたかたちになります。また、大会の信頼にも繋がると思っているのでジャッジシステムはしっかり詰めてやっています。 写真提供:Daisuke 「勝ち上がった選手にバトルユニフォームの支給」というシステムもありますが、これはどういった狙いがあるのですか D:このロールモデルになっているのは格闘技ですね。ボクシングやキックボクシング、MMAなどで彼等はパンツに企業・スポンサーのロゴをつけて試合していますが、それがある種の興行だと思っています。 ストリートスポーツもそういうのを早めに取り入れた方が、スポンサーさんが一丸となって選手を応援するシステムが作れると思います。ゆくゆくは選手1人1人に対していろんなスポンサーさんが着くようなシステムづくりの先駆けとして、今回はこのシステムを取り入れました。 更にゲストワークショップでは、初心者向けのプログラムも打ち出されています。具体的にはどういった内容で行われるのですか D:トリッキングの大会は国内で今までたくさんあったんですけど、ワークショップだったりトリッキングを体験できるスペースというのはあまり無かったのが現状でした。そこでプレイヤー以外の方にトリッキングに触れてもらって、本物のバトルを目の前で見てもらう事で、こんな大きい魅力的なスポーツなんだよっていうのを伝えたかったです。同時に全年齢の人がトリッキングの基礎や型に触れるきっかけとなるワークショップを今回は行います。 写真提供:Daisuke 今回の大会に参加するプレイヤーに期待したいポイントはありますか? D:特に今回はスコア制ジャッジで合計点の勝負になります。難しい戦いになると思いますがスコア制だとより気が抜けない、油断が出来ない戦いになってくるので、今発表されている3つのスコア、”Difficulty”(難しさ)、”World standard score”(世界水準点)、”Character”(個性)、をよく考えて「戦略的に上手く勝ってほしい」と思っています。 3つの中で「ワールドスコア(世界水準点)」とありますが、これはどういった基準なのですか? D:これは審査する時点での世界最高基準でコンビネーションの基準を1つ決めて、そのムーブがどれくらい価値のあるムーブなのかというのを点数付けします。この「世界基準点」が無いと難易度で測れないムーブが出た時に採点し損ねてしまうので。 基準を決めておくからこそ得点化し易くなる、ということなのでしょうか D:はい。常にトリッキング界は新陳代謝が激しいので、それについていけるような採点基準だと思っています。「技の難易度」とは違って、世界基準から見たら「何点だね」という形で、常にアップデートした採点をしていきます。なので一番伸びづらいポイントであり、世界のトップランカーはその点数が伸びて勝ちやすくなるといったスコアになります。 写真提供:Daisuke 今大会で「こんなプレイヤーに勝ってほしい」といった想いはありますか? D:個人的ではあるのですが、クリエィティブが勝ってほしいと思う面もありつつ、とにかくスキルがある人に勝ってほしいなとも思っています。今回の大会の採点基準だと、中盤くらいまではクリエイティブが勝ちやすく、最終的には誰にも真似できないような技術を持った選手がギリギリ勝つと思っています。そんな中、トップランカーたちをクリエイティブの選手が追い上げる様な構図になったら面白いですね。 「トリッキングが持つ2面性を押し出したい」 写真提供:Daisuke 「極限武術GATHERING」という大会名に込めた意味などがあればお聞かせください D:トリッキングは元々源流がXMA(エクストリームマーシャルアーツ)という武術なのですが、中国語の表記が「極限武術」なんです。それは日本でも意味は通じるし、正直 Trickingっていう横文字よりも分かりやすいなっていう印象もありました。 トリッキングが持つ「ストリートスポーツと武術の2面性」の中で、武術の部分もストリートの部分も両方押し出したいっていう意味で横文字と漢字で上手くストリート調にまとめるにはどうしようと考えていました。その中で「極限武術」がピッタリだなと思い、この大会名になりました。 写真提供:Daisuke 「トリッキングが持つ2面性」という部分でご自身で考えている事はありますか? D:本当に自分がこんなにトリッキングに熱くなっている理由のひとつが「トリッキングが持つ2面性」なんです。例えばガム食べながら大会会場に入ってくる人もいれば、道着で礼をして会場に入ってくる人もいるみたいなカルチャーなんです。 トリッキングは一見派手ですが、源流を辿ったら型もあるし、蹴りのミットの基礎練習もあるし、太極拳みたいなゆっくりな型もできます。対して、フリースタイルでオシャレをしたりなど、その人たちのタレント性を使ったサブカルチャー的要素もあります。 そういった武術の面での要素と、フリースタイルなサブカルチャー的要素の「2面性」を大切に、深堀りしてより広めていきたいなというのは個人的に思っています。大会によってもその背景で全然ルールは異なってきますが、トリッキングの軸の中にも様々な要素で多様化しているので、自分はそこがとても面白いなと思っています。 創意工夫の詰まったイベントに 写真提供:Daisuke 今回大会を開催するにあたって大変だったことや、苦労した点はありますか D:自分が主催で大会をやるのは初めてなのですが、実は全部順調に思えてるんですよね(笑)逆に何をミスするのか分からなくて、イレギュラーが思いつかないんですよね。それが逆に怖いですが、今はとても順調です! コロナ禍を経たうえで工夫されたポイントはありますか? D:今回はライブ配信にもチャレンジしています。ライブ配信中にユニフォームが写ったりコマーシャルを流したり、オンラインレッスンの宣伝だったり。今までのトリッキングの大会はそこまでそこに重きを置いていませんでしたが、ライブ配信自体が身近になった中で「発信」という意味でライブ配信も面白い視点で行っていきます。 逆にオフラインの「現場でしかできない事」でこだわった点はありますか D:グッズの販売ですね。スポンサーさんの商品展示も一つの要素ですが、サブカルチャー育成としてアパレルのポップアップみたいに商品のブースをしっかり設けています。 「トリッキングに費やした時間が無駄にならないような環境を作るのが自分の役目」 写真提供:Daisuke 最後にトリッキングカルチャーに対して将来的・長期的なビジョンがあれば教えてください。 D:トリッキングの2面性を使って、選手は企業さんと協力関係にあって選手として活躍していけるような環境を作っていきたいです。更にはサブカルチャー面も育成してお金が回るシステムを作っていきたいです。 今トリッキングをやっている人が費やした時間を損しないような環境を用意することが役目なのかなと思っています。今大会はそういった目標の先駆けの大会になれば良いなと思っています。みんなが選手を目指さなくても、嗜んでやっている人も増えてきたので、逆に今度は「トリッキングに携わって働いていきたい」っていう人たちも報われるようなシステムも構想として見え始めてきました。なので、今後しっかりそういった環境を自分たちが作っていきたいです。 Daisuke プロフィール 写真提供:Daisuke 2016年日本で行われた3種類の全日本大会すべて優勝、さらに世界大会HOOKED GATHERING2017にて日本人初王者に輝く。メディアやエンターティメント活動に富み、弟のReijiと共に行うシンクロトリッキングなど、新しいトリッキングの可能性を広げている。
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bmx「今の自分しかできない事をやり続ける」BMXライダー 早川 起生の見据える未来2022.06.22現在、BMX FLATLANDシーンにて飛ぶ鳥を落とす勢いで「X Games Chiba」「FISE」など数々のタイトルを獲得し、注目を集めているBMXライダー、早川起生( はやかわ・きお =20歳 )。彼は先月にRed Bullとのアスリート契約を締結し、日本人BMXライダーとして新たな可能性を広げている。そんな今大注目の彼にFINEPLAYは独占インタビューを敢行。気になる大会の裏側から生い立ち、今後の展望まで、早川起生の素顔に迫った。 早川 起生(以下:K) X Games、FISEを制した早川起生の軌跡 photo by Hikaru Funyu / ESPN Images まずはX Gamesの事からお伺いします。出場が決まった時はどのような気持ちで挑みましたか K:嬉しい気持ちはあったんですけど、同時に凄い複雑な気持ちもありました。僕はリザーバーとしての出場だったので、欠場になってしまった海外の選手に感謝する訳でもないですし、本当に複雑な心境でいました。でも一緒に練習させてもらう中で、皆やっぱり気合の入り方が違って、初めて見る技だったり構成だったり、そういった面では気合はめちゃくちゃ入りましたね。 早川選手はライディングの構成やルーティーンは毎回変えていたりするんですか? K:X Gamesでは凄い詳しい話になるんですが、2本どうしても自分が出したい技がありました。特に決勝戦は守るものも何もないので自分の中で1番難しいと思う技をやりましたし、自分が出来る最大限を発揮しました。 photo by Hikaru Funyu / ESPN Images FINALが終わった後の心境はいかがでしたか K:大会に出た以上、もちろん優勝したいという想いはあったんですけど、それよりも技を決めたいという気持ちの方が大きかったので、決勝戦で技を決めたときは自分が一番興奮していたかもしれないです。自分の持ち時間が終わった時には達成感みたいなものが結果が出る前からありました。X Gamesの舞台のために練習してきた技だったので、勝敗が分かる前から達成感が凄かったです。 photo by Hikaru Funyu / ESPN Images 優勝が決まった瞬間はいかがでしたか K:言葉にならなかったです。嬉しい、という気持ちを感じる前にみんなに胴上げしてもらって、ただ単にやり切った感というか、達成感がこみ上げてきました。嬉しさを感じる前に、様々な感情がありました。 先日行われた FISE は X Games を優勝してからの大会だったと思います。FISEはどういった気持ちで挑みましたか? K:とにかく人が多くて、初めてのFISEという事もあり、他の大会とは全然違う緊張感の中でのライディングでした。開催地のモンペリエに行く前は昔のFISEの動画を見たり、FISEっていう大会のジャッジの仕方だったり、どういったライディングをすれば評価されるのかというのを調べてモンペリエに行くくらい、特に緊張していました。でも初のUCIワールドカップだったのでそれぐらいの気合を入れて挑みました。 周りの早川選手を見る目も、X Gamesなどを経て変わってくると思いますがその点は意識されましたか K:やっぱり意識はしました。X Gamesで自分は勝ったのでここで負けられないという気持ちはありました。特にX Gamesに出ていた選手もみんな出ていたのでかなり意識しちゃいましたね。 FISEの時は出したい技や考えていた構成はありましたか? K:FISEはどの様にしたらいい点が取れるのかジャッジによって違うのですが、公式ルールに沿って得点を出すためにはどうすればいいのかという事は考えて練習していました。なので手堅くいく時、挑戦する時はしっかり選別して本番も挑みました。 予選の時はなかなかうまくいかず予選落ちの危機だったとお伺いしましたが K:一回戦目の一回目でミスしてしまって、そこから調子を戻せずかなりグダグダになってしまいました。ここ最近国際大会に出ていて、あんなにグダグダなライディングが無くて、頭が真っ白になって最後まで切り替えられませんでした。本当にパニックになっていました。 そのマインドの切り替えはどこかのタイミングでできたんですか? K:僕がダメダメだったライディングの後に一日だけ練習だけできる日があり、その後が2回戦という形式でした。その一日だけ練習できる日が本当に重要でした。最初は長いと思ってたんですけど、逆に長かったのもあり、その1日でミスしてしまった理由を考えながら練習して切り換えることができました。 photograph by ©︎JFBF 特に日本人選手は今回、佐々木選手や荘司選手など、高得点をだして、早川選手が最終ライディングでした。その時の気持ちはどうでした? K:僕は人のライディングを見ない時があって、今回は特に緊張していて自分の世界に入って集中していました。裏にいても舞台の盛り上がりは聞こえてきていて、荘司ゆう君のスコアが「本当にヤバイ!」みたいなのは聞こえてきていたんです。 僕のいるところからモニターも見れないし、ライディングも見ていなくてかなり焦りました。荘司ゆう君の出番は前半グループというのもあって、更に佐々木モトさんは僕と同じグループで僕の前の前に乗って90点だったので、「ちょとこれヤバいな」っていうのは感じていましたね。 最後自分のライディングをした時に、出そうと思ってたトリックは頭にありましたか? K:ありました。でもその技はモトさんや荘司君が90点台を出したから切り替えようと思ってたわけではありませんでした。そこで普段やらないようなことをやるよりも、しっかり考えてきたことをやろうと思ってました。焦った気持ちもあったんですけど、そこだけはブレずに自分がやってきたことを見せようというのは思ってました。 X Gamesに続き連覇になったと思うのですが、自分の中で大会に向けてやっていたことはありますか K:X Gamesも今回のFISEも勿論なのですが、どうしても決めたい技を集中的に練習していたのが特に大きかったと思います。日本の大会とかでは全体的に「こういうルーティーンをしよう」って平均的に練習をするんですが、X Gamesでは決めたい技をただひたすら毎日繰り返していました。FISEもそんな感じで練習して大会に挑みました。 photograph by ©︎JFBF 直近で達成したい目標などはありますか K:やっぱり新しい技を作るとか、ワールドカップで優勝したいとかはもちろんです。それに付随して、周りがやっていないことを進んでできればいいなと思っています。今回のFISEやX Gamesでリザルトを取れてからどう動くかが凄い重要で、行動面でも新しいことをできていければ良いなっていうのは思ってます。 それが今の目標でもあり、BMX FLATLANDを知らない方に知ってもらって、更に応援してもらえるように、今の自分しかできない事をできるようになりたいと思っています。 海外に挑戦するキッカケ 海外に挑戦しようと思ったキッカケを教えてください K:キッカケは海外の大会に招待してもらったことです。お金の面だったり、自分が一人で行けるのかっていう話だったり、だいぶ家族で話し合ったりはしましたが、海外の人から招待してもらえるっていうのは凄く光栄なことだと思ったので何とかして自分で行こうと思いました。 ルクセンブルグの大会もスイスの大会も招待されたので行きました。大会に招待されたら自分も何かが重ならない限りは行きたいと思っていますし、そういう面で海外に行くことは最近増えました。 初めて海外の大会はどうでしたか K:一番最初の印象はとにかく見てくれてる人だったり、その国の人がとにかく暖かかったという印象が強いです。自分が技を決めて凄い盛り上がってくれるっていうのは日本でも全然ある事なんですけど、ライディングが終わった後に話しかけてくれたり、対戦相手ですらも僕が技を決めたら喜んでくれたり、凄く暖かさを感じました。 帰りの飛行機で荷物のX線をやった時に、僕はトロフィーを預けれなくて手持ちで行ったんですよ。そこでカバンの中身がトロフィーだってことを知って、空港の人たちがその場で「おめでとう!」と祝ってくれたこともあって。「暖かすぎるなぁ!」というのは感じました。 日本の大会と海外の大会の違いなどは感じましたか? K:一番感じたのはリスペクトじゃないけど、バトルの相手に対する気持ちみたいなのは見習わなくてはいけないなっていうのはありました。X Gamesでも取り上げて頂いてるんですけど、決勝戦の相手のアレックス・ジュメリン(フランス)は、僕がスピンしてるときに、場を沸かせるために煽ってくれたりしてくれていました。 対戦相手ってバトルしてるのでそういう気持ちになれないこともあると思うんですよ。応援していても心のどこかで倒す、倒されるっていう気持ちもある中でそういうのを一切出さないでライディング中に応援してくれるっていうのは、自分が一番これから見習っていかなきゃいけないことだと思っています。 BMX FLATLANDに出会うまで「何もないところから生み出せるFLATLANDに惹かれた」 photo by Hikaru Funyu / ESPN Images 今、練習は1日どのくらいやっているんですか K:1日7~8時間くらいはやっていますね。今の自分の練習場所である、借りている倉庫で練習しています。フィジカルトレーニングなどもその倉庫で練習前と後に1時間行っています。 FLATLANDを始めたキッカケはなんですか K:12歳の頃に普通の自転車を買い替えるタイミングで僕の父親がBMXの動画を見たのがキッカケです。実は見た動画もFLATLANDでは無くて、その時はSTREETの自転車を買いました。そこでSTREETをちょっと乗っていたんですけど僕の住んでいる新潟県長岡市にパークが無く、ちょっと遊べるようなところも無くて。 なのでそこまでBMXに本気ではなく趣味程度でした。その時にたまたま何もない場所でできるBMX FLATLANDを知って、今自分が悩んでいる「何もないからこそできるBMX FLATLAND」が逆に魅力だと惹かれてすぐに、両親に頼み込んで買ってもらいました。 実際にFLATLANDの練習を始めたのは何歳くらいからですか? K:それも12歳くらいです。近くにBMXのお店があったのでそこに通いながら、お店の息子さんたちと歳も近くて一緒に乗っていました。 今の練習場所である倉庫というのはどなたかが作ってくれたんですか? K:空いてた倉庫の中にコンパネを敷いて作りました。やっぱり新潟は冬だと雪が凄くて外で乗れないことが多いんです。練習場もあるんですけどそこで自分の練習をしていると、人数が多ければ多いほど、練習効率も上がらなくて。そういった理由があって倉庫を借りてもらっています。僕の父が毎月支払ってくれているんですけど、そこは今後しっかり自分でどうにかしていきたいです。 X GamesやFISEで優勝したりなど活躍を収め、地元のテレビや新聞から取材などは増えましたか? K:かなり増えました!新聞に取り上げて頂いたり、地元のテレビ局から連絡をいただいたりだとか、そういったのは大きいですね。 BMXでいうとパーク種目の方がオリンピック種目なのでまだまだ世間的にはメジャーではあります。FLATLANDはメディアでの扱われ方がかなり小さいことが多いんですけど、僕自身が新潟出身だという事を知ってくれてお仕事を貰うことが多くなったので、その点は凄く嬉しいです。 Jason Halayko / Red Bull Content Pool 今後、地元の新潟県から発信していきたいことなどはありますか? K:新潟県でもBMX FLATLANDはまだまだメジャーじゃなくて「応援したくても応援の仕方が分からない」という声が多くあります。なのでもう少し一般の方がBMXと触れ合えたり、見に来れる環境だったり、体験してもらえたり、まずはBMXをメジャーにできるように、新潟から発信していきたいです! 新潟にライダーを増やすっていうのはかなり大きな目標だと思っています。まずは自分が住んでいる新潟から、自分をもっと知って貰えるように動いていきたいっていうのは思っています。 今BMXに乗っていて楽しいですか? K:楽しいですね!よく聞かれるんですよ、「1日何時間乗ってるの?」とか「オフの日はあるの?」みたいな。僕は全然オフっていう感覚が無いです。しっかり仕事にしなきゃいけないという自覚を持たなきゃいけないっていうのはあるんですが、今は常にBMXに乗っていたいという気持ちで乗っているので、全然苦に思っていないです。 もちろん大会で思うようにいかなかったり、自分が自信を持ってやった技が評価されなかったりなど、悔しい思いもあるんですけど、練習することに関しては技を考えたり、兄弟と乗ったりすることは楽しいです! 憧れのRed Bull アスリートへ Jason Halayko / Red Bull Content Pool 先日Red Bullアスリートとして契約を結ばれましたが、そのことは事前に知っていたんですか K:全く知らなかったです。本当にサプライズでした。X Gamesが終わった後に色んな人から「Red Bullから声かかった?」ということを聞かれたんですけど、全く声はかかっていなかったので諦めかけていました。「X Games優勝しても無理なのかな」っていう気持ちはあって、尚更想像もしていなかったです。なのでかなり嬉しかったですね。 Red Bullアスリートになる前は早川選手にとって「 Red Bull 」はどういった存在でしたか? K:Red Bullって夢のスポンサーみたいな感じに思っていました。大きな企業でRed Bullアスリートっていうのはかなり高い位置に思ってました。どんなに大きい大会でリザルトを残しても、それでもコンタクトを取れないっていうのは本当になりたくてもなれるものじゃないというのは感じていました。 最後に今後の展望があれば教えてください。 K:先程の話もそうですが今この時にしかできない動きをするという事です。大会のリザルトを獲るのも大事ですが、リザルトを獲ってからの動きが重要だと思っています。リザルトやそこまでの自分の行動が在るからこそ、できる事を探して自分から行動していきたいなっていうのは思っています。それが今の目標で、今しかできない事だと思っています。 早川 起生 プロフィール 2002年3月8日生まれの20歳。新潟県長岡市出身。12歳の時にBMXフラットランドを始め、普段は長岡市内の空き倉庫を借りて練習している。長岡工業高校を卒業し、現在はプロBMXライダーとして活躍している。2021年では、東京五輪の閉会式にBMXのパフォーマンスで出演し、スイスで行われた世界大会でも優勝を飾る。その功績が評価され、10代の日本人では初となるBMX界最高峰の賞「NORA CUP(ノラカップ)」を受賞した。 今年の4月に開催されたX Games Chiba 2022 Presented by Yogiboでも世界の名だたる強豪を抑え、見事金メダルを手にした。
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bmx世界を獲った勢い止まらず。エリート男子は早川起生が大会3連覇「マイナビ Japan Cup」BMXフリースタイル・フラットランド 第1戦2022.06.21BMXフリースタイル「マイナビ Japan Cup」フラットランド第1戦がイオンモール幕張新都心(千葉県)にて、2022年6月18日(土)~19日(日)の2日間に渡り開催され、男子エリートでは早川起生選手が、女子エリートでは川口朔来選手が優勝を収めた。 2022年シーズン開幕戦となった今大会は、キッズ6アンダーから30オーバーという幅広い年齢層で計10クラスに分けられ、出場者は北は北海道から南は沖縄まで日本中から合計61名が集まり、それぞれの選手が日々の練習で磨きあげた技を披露してトップの座を競い合った。 今大会の会場となったのは千葉県千葉市幕張にある商業施設「イオンモール幕張新都心内グランドモール1階 グランドコート」。3階まで吹き抜けになった会場には専用ステージが特設で用意された。会場は一般のお客さんも買い物がてら気軽に立ち寄って観戦できる仕様であったため、特に決勝時にはたくさんの観客が集まりトップライダーたちのパフォーマンスを観ながら固唾を呑んでその勝敗を見届けていた。 また同施設内でBMX試乗会も同時開催され、大会を観て興味を持った親御さんや子どもたちが試乗会に向かう姿も見られるなどBMXの普及を間近に感じられた機会となった。 なお、今大会は新型コロナウィルスの感染拡大防止に十分配慮した上で有観客での開催。会場内はソーシャルディスタンスを守った観戦席配置とマスク着用が義務づけられたが、徐々にコロナ禍以前のような日常を取り戻しはじめている様子も見受けられた。 以下は、今大会最注目の男女エリートクラス決勝の大会リポート。 2022年シリーズ開幕戦は若手とベテランによる熱い戦い。男子エリートは世界王者の早川起生が優勝。女子エリートでは弱冠16歳の川口朔来がエリートカテゴリー初出場初優勝 男子エリートクラス 男子エリートクラス決勝は、参加選手14名の中から予選を勝ち上がった上位8名にて争われ、決勝には8名中4名がフランス・モンペリエで行われた「UCIワールドカップ」での1位から4位の上位入賞者というまさに世界大会の決勝さながらのハイレベルな戦いがトップ選手たちにより繰り広げられた。 優勝を収めた早川起生photo by ©Naoki Gaman/JFBF そんなトップ選手たちによる接戦を制したのは早川起生。早川は今年「X GAMES CHIBA 2022」での金メダル獲得に続き、先月の「UCIワールドカップ」でも優勝するなどと過去最高成績を収めている注目選手。 早川起生のライディングphoto by ©Naoki Gaman/JFBF 今大会では世界一を勝ち取ったスピン系のリアトリックを更に進化させて他選手を圧倒。彼の持ち味であるペグではなくペダルを軸とする高難度のリアトリックの数々の中に、高難度トリック「サーカス」や新技も交えた新しいルーティンのライディングは92.75ptの評価となり見事優勝。今回の優勝により大会三連覇も収め、次の大会にも弾みを付ける幸先の良い開幕戦となった。 佐々木元のライディングphoto by ©Naoki Gaman/JFBF 準優勝は今大会に並々ならぬ思いで挑んだ佐々木元。日本のBMXフラットランド界を牽引している佐々木は今年で競技生活21年目を迎え、また今大会は佐々木が所属する鎌ヶ谷巧業株式会社の協賛の下、活動拠点の千葉県での開催ということもあり特別な思いの中、攻め切るライディングで優勝を狙った今大会。 佐々木元のライディングphoto by ©Naoki Gaman/JFBF 持ち前のフロントトリックにクロスフットやシートグラブなどを取り入れ自転車を変幻自在に入れ替える動きの中に、自身のオリジナル技 「元スピン」や、「クリフハンガースピン」など高難度のトリックと新技を組み込んだハイレベルなライディングを魅せるも1位の早川の得点にはわずかに届かない91.25ptで次回にリベンジの思いを募らせる悔しい結果となった。 観客を盛り上げる荘司ゆうphoto by ©Naoki Gaman/JFBF 3位は20歳の荘司ゆう。荘司も先月の「UCIワールドカップ」では海外の名だたるトップ選手たちを抑え、早川に続き準優勝という結果を残し急激に頭角を現している若手ライダー。 荘司ゆうのライディングphoto by ©Naoki Gaman/JFBF 様々なフロントトリックを中心にしながらもジャンプでリアやフロントにスイッチする豪快なトランスファーが特徴の彼は、終始完成度の高いライディングを魅せ、終盤ではタイヤでの「フットジャム」を挟んだ「ダブルブーメラン」で会場を沸かせ90.75ptをマーク。優勝の早川、準優勝の佐々木に迫る90点台で「マイナビJapan Cup」では初の表彰台に上がった。 女子エリートクラス 一方、女子エリートクラスは今回6名で争われた。前大会に比べて人数も多く初出場の選手からベテラン選手まで多様なメンバーが揃い、ベテランの経験と若手の勢いが交差する中で熾烈な戦いが繰り広げられた。 優勝した川口朔来photo by ©Naoki Gaman/JFBF ベテラン選手や前回優勝者たちを抑えて優勝を勝ち取ったのは大会及びエリートカテゴリー初出場の川口朔来。リアトリックとフロントトリックどちらも上手く組み合わせたライディングが特徴的な彼女はリアトリックの「メガスピン」やフロントトリックの「スチームローラー」、そしてフロントでの「バックスピン」など完成度の高いトリックを多くメイクし75.25ptをマーク。見事初出場初優勝を成し遂げた。 川口朔来のライディングphoto by ©Naoki Gaman/JFBF 準優勝は咋年度全日本チャンピオンの中川きらら。技数のバリエーションとロングルーティンを組み込んだライディングが特徴の中川は「ハングファイブ」を中心としたライディングの中で「フロントスクェーカー」や「スチームローラー」をメイクしていくも、終盤は足をついてしまう箇所が多くありルーティンとしてまとめ切れずスコアを71.75ptとし今大会は2位でフィニッシュとなった。 中川きららのライディングphoto by ©Naoki Gaman/JFBF 3位は伊藤聖真。リアトリックを中心に構成されたルーティンの中で「バックスピン」などメイク。前大会でメイクした高難度のジャンプトリックである「ファイヤーディケイド」にチャレンジするも今回はフルメイクできず悔しさの残るライディングとなったが、その他のトリックやルーティンが評価され64.25ptをマークし3位で大会を終えた。 優勝者コメント 優勝した川口朔来(左)と早川起生(右)photo by ©Naoki Gaman/JFBF 早川 起生 選手(男子エリートクラス)「今回は先日の国際大会でタイトルを獲ってから初の国内大会で結果にもこだわっていたので優勝できて嬉しいです。 現在短いスパンで色んな大会に出場しているので新技を習得することは簡単ではありませんが、今まで通りだと自分自身楽しくないですし、観に来てくださる方々を驚かせたいという思いがあるので今回も新技を取り入れました。 今後は勝つことももちろんですが、自分自身も観ている方もどちらも楽しめるライディングをしたいと思います。」 川口 朔来 選手(女子エリートクラス)「優勝できたことが素直に嬉しいですし、応援してくれた皆さんへの感謝の気持ちでいっぱいです。この大会に向けてとにかくメイク率を上げる練習をしてきました。今後も更にメイク率と完成度を上げて次の大会でも良い結果が残せるように頑張ります。」 大会結果 <男子エリート>優勝: 早川 起生 (ハヤカワ・キオ) / 92.75pt準優勝: 佐々木 元 (ササキ・モト) / 91.25pt第3位: 荘司 ゆう (ショウジ・ユウ) / 90.75pt 左から佐々木、早川、荘司の順photo by ©Naoki Gaman/JFBF <女子エリート>優勝: 川口 朔来 (カワグチ・サクラ) / 75.25pt準優勝: 中川 きらら (ナカガワ・キララ) / 71.75pt第3位: 伊藤 聖真 (イトウ・セイマ) / 64.25pt 左から中川、川口、伊藤の順photo by ©Naoki Gaman/JFBF <キッズ6アンダー>優勝: ハラフジ・ジョウジ / 56.50pt <ガールズロー>優勝: コガ・ココア / 60.00pt準優勝: マエダ・ユイ / 50.50pt第3位: ナベタ・ラン / 40.00pt <ボーイズ7-9>優勝: トダカ・ヤマト / 73.00p準優勝: ムライ・ユウト / 72.75pt第3位: ヤマシタ・トウマ / 69.25pt <ボーイズ10-12>優勝: ハヤカワ・ユオ / 74.00pt準優勝: カジワラ・レンヤ / 72.75pt第3位: ヒシカワ・タカトラ / 72.50pt <ガールズハイ>優勝: トダカ・アズサ / 78.50pt準優勝: キヨムネ・ユイ / 77.63pt第3位: カジワラ・サリヤ / 77.00pt <男子13-15>優勝: サセ・ハルキ / 78.25pt準優勝: カナモト・コタロウ / 71.50pt第3位: ハヤシ・セオン / 60.50pt <30オーバー>優勝: フジイ・セイジ / 66.00pt準優勝: オカヤマ・ジュン / 64.00pt第3位: ヤマシタ・ノブオ / 62.75pt <エキスパート>優勝: クドウ・タツヒト / 71.25pt準優勝: イシカワ・リョウ / 69.25pt第3位: オカダ・タク / 60.25pt 大会概要 ⼤会名称 : BMXフリースタイル「マイナビ Japan Cup」フラットランド 第1戦開催期間 : 2022年6月18日(土)~19日(日)- 2日間 -※詳細は公式HPをご覧ください。大会会場:イオンモール幕張新都心 グランドモール 1F グランドコート(千葉県千葉市美浜区豊砂1-1他) 主催: 一般社団法人 全日本フリースタイルBMX連盟(JFBF)特別協賛:株式会社 マイナビ協賛:鎌ヶ谷巧業株式会社出場選⼿:全10クラス(アマチュア含め) 計61名男⼦エリート 14名・⼥⼦エリート 6名
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others【YOKOHAMA URBAN SPORTS FESTIVAL 2022】ニューヒーロー&ヒロインが誕生したイベントの様子を凝縮したハイライト映像を公開!2022.06.15スポーツ×ストリートカルチャーの魅力に 50,000人が来場! https://youtu.be/bv81GyVyQVo YOKOHAMA URBAN SPORTS FESTIVAL 2022 After Movie 競技としてのプロスポーツとバックボーンにあるストリートカルチャーの魅力が融合した、アーバンスポーツのエンターテインメントイベント『YOKOHAMA URBAN SPORTS FESTIVAL 2022』(主催:YOKOHAMA URBAN SPORTS FESTIVAL 2022 実行委員会)が、去る6月4日(土) ~5日(日)に横浜赤レンガ倉庫 イベント広場・赤レンガパークにて、初開催された。 両日とも快晴の天候に恵まれ、SKATEBOARDING・BREAKING・PARKOUR・BMX FLATLAND・DOUBLE DUTCH・KIDS CHASE TAGの全6種目のアーバンスポーツ、キッズ向け体験会やミュージックライブ、マーケットエリアのいずれも大きな賑わいを見せ、2 日間合計で 50,000 人が来場した。 URBAN SPORTS RESULTS ©Yoshio Yoshida/YUSF SKATEBOARDING “SKATE ARK” Womens 優勝:織田 夢海(オダ・ユメカ)15 歳 準優勝:赤間 凛音(アカマ・リズ)13 歳 3 位:上村 葵(ウエムラ・アオイ)13 歳 ©Jason Halayko/YUSF SKATEBOARDING “SKATE ARK” Mens 優勝:石塚 佑太(イシズカ・ユウタ)23 歳 準優勝:佐々木 音憧(ササキ・トア)15 歳 3 位:渡邊 星那(ワタナベ・セナ)15 歳 ©Jason Halayko/YUSF BMX FLATLAND “FLAT ARK” Girls Class 優勝:Nina Suzuki 13 歳 準優勝:Kazuki Toyota 17 歳 3 位:Ao Ogawa 11 歳 ※エントリー時に入力された年齢になります ©Jason Halayko/YUSF BMX FLATLAND “FLAT ARK” Mens Novice Class 優勝:Souta Watanabe 15 歳 準優勝:Takatora Hishikawa 11 歳 3 位:Toha Fujii 12 歳 ※エントリー時に入力された年齢になります ©Jason Halayko/YUSF BMX FLATLAND “FLAT ARK” Mens Expert Class 優勝:Seiji Fujii 42 歳 準優勝:Kota Ikeda 15 歳 3 位:Kunihiro Shimakawa 55 歳 ©Jason Halayko/YUSF BMX FLATLAND “FLAT ARK” Mens Open Class 優勝:Naoto Tamaru 30 歳 準優勝:Takato Moriya 13 歳 3 位:Yu Katagiri 17 歳 ※エントリー時に入力された年齢になります ©Jason Halayko/YUSF BREAKING “FREESTYLE SESSION JAPAN 2022” 優勝:GOOD FOOT YOSHIKI / RENY REN / JUN / AMI / AYU / SHOSEI / SHUTO / GIN ©Kazuki Murata/YUSF DOUBLE DUTCH “DOUBLE DUTCH ONE’S FINAL 2022 MEN'S SECTION 優勝 KO-YA(コーヤ)32 歳 WOMEN'S SECTION 優勝 YuI(ユイ)28 歳 ©Kazuki Murata/YUSF PARKOUR “ONE FLOW BATTLE” 優勝:関 雅仁(セキ・マサヒト)26 歳 準優勝:KAITO(カイト)19 歳 3 位:朝倉 聖(アサクラ・セイ)23 歳 AUDIENCE MVP:TAISHI(タイシ)29 歳 ※エントリー時に入力された年齢になります ©Ayato Nakamura/YUSF KIDS CHASE TAG U-9(対象学年:小学1〜3年生) 優勝:佐俣 政朗(サマタ・セイタロウ)7 歳 U-12(対象学年:小学4〜6年生) 優勝:武山 佳生(タケヤマ・カイ)10 歳 MUSIC LIVE ©yokoching/YUSF JJJ(6月4日出演) ©yokoching/YUSF MONJU(6月4日出演) ©yokoching/YUSF STUTS(6月4日出演) ©yokoching/YUSF どんぐりず(6月5日出演) ©yokoching/YUSF FNCY(6月5日出演) MARKET AREA ©Ayato Nakamura/YUSF ©Ayato Nakamura/YUSF FOOD AREA ©Jason Halayko/YUSF ©Jason Halayko/YUSF 開催概要 開催名称:YOKOHAMA URBAN SPORTS FESTIVAL 2022 (略称:YUSF) 会 場:横浜赤レンガ倉庫 イベント広場・赤レンガパーク (住所:神奈川県横浜市中区新港1-1) 日 程:6月4日(土)・5日(日) 両日ともOPEN 10:00 CLOSE 21:00 入 場 料:無料 来場者数:50,000人(主催者発表) 内 容: SKATEBOARDING “SKATE ARK”BMX FLATLAND “FLAT ARK”BREAKING “FREESTYLE SESSION JAPAN 2022” *6月4日(土)のみ *ワークショップありDOUBLE DUTCH “DOUBLE DUTCH ONE’S FINAL 2022” *6月5日(日)のみPARKOUR “ONE FLOW BATTLE” *6月5日(日)のみKIDS CHASE TAG *ワークショップあり MUSIC LIVE produced by Spotify O-EAST (A to Z) 6月4日(土) LIVE:JJJ / MONJU / SPARTA / STUTS DJ:原島“ど真ん中”宙芳 / doooo(CreativeDrugStore) 6月5日(日) LIVE:どんぐりず / FNCY / tofubeats / Lil’Leise But GoldDJ:KM / shakke-n-wardaa MARKET AREAFOOD AREA 主 催:YOKOHAMA URBAN SPORTS FESTIVAL 2022 実行委員会 協 賛:GoPro / 六甲バター株式会社 / Hyundai Mobility Japan / FIJI Water / Manhattan Portage / MUGENYOYO / ChargeSPOT / KIBACOWORKS / BRIEFING / カシオ計算機株式会社 / JOYSOUND 協 力:一般社団法人ARK LEAGUE / 有限会社 OVER THUMPZ / 株式会社 I AM / 株式会社PKM / FINEPLAY / BEAMS SPORTS / Fanatics Japan G.K. 後 援:横浜市市民局 / J-WAVE 81.3FM 企画制作:株式会社横浜赤レンガ / 株式会社シブヤテレビジョン / 株式会社ローソンエンタテインメント / 株式会社乃村工藝社 / 株式会社グリーンルーム / 株式会社ZETA
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skate「スケボーはいろんな事を学べる」理学療法士スケートボーダー中坂 優太2022.06.13【インタビュー/FINEPLAY】理学療法士兼プロスケーターとしての経歴をもち、独自理論のスクールを展開。2022年からはスケートパーク経営者として活動、また運動学に基づいたオリジナルシェイプのデッキ開発も行っており、新しい展開をスタートさせる理学療法士スケートボーダー中坂 優太にインタビュー。 https://youtu.be/bXBFDsqrlBY 中坂 優太(Yuta Nakasaka)プロフィール生年月日 : 1984.2.24出身 : 静岡市活動経歴:理学療法士兼プロスケーターとしての経歴をもち、双方の知識と経験を融合させた独自理論のスクールを展開。オリンピック選手や世界で活躍するトップスケーターを排出している。2022年からはスケートパーク経営者として活動を始める。また運動学に基づいたオリジナルシェイプのデッキ開発も行っており今後新しい展開をスタートさせる予定。所属 : F2o parkスポンサー : NESTA BRAND. esskateboarding. The bearings. PCIS. Excellent 様々な受賞や表彰、戦績経歴(箇条書き)・2007.2008年『es Game of S.K.A.T.E』2年連続優勝・2007年 Transworld skateboarding Japan のThe rookie受賞