キャリア20年の異種チーム始動「まだ誰も見たことのないエンターテイメントを目指して」OBJECTSインタビュー

2025.05.20
text,interview by Takako Ito

フラフープ、フリースタイルバスケ、けん玉、軟体ブレイクダンスという他に類を見ない組み合わせで、新たなパフォーマンス創造を目指すクリエイティブチーム「OBJECTS」(オブジェクツ)が始動した。メンバーは、ストリートダンスシーンで活躍するSHINSUKE(Beat Buddy Boi)を筆頭に、各ジャンルにおいてそれぞれシーンを牽引してきた、フリースタイルバスケのZiNEZ a.k.a KAMIKAZE(以下 ZiNEZ)、けん玉のEAZY、ブレイクダンスのDoltonがそれぞれキャリア約20年を経てチームを結成。スキルと個性を掛け合わせることで、唯一無二のパフォーマンスを生み出すことを目指し世界に挑戦するという。なぜこのタイミングで、彼らがグループを結成することになったのか。また、今後の挑戦についても話を訊いた。

一夜のショーが生んだ手応えと可能性

まずはじめに、チーム結成のきっかけについて教えてください。

SHINSUKE:
きっかけは昨年の12月に僕が所属するチームのBeat Buddy Boi(以下BBB)主催のイベントがあり、それに向けてメンバー各自が自分の企画を作ることになりました。そのショーの枠に一緒に出て欲しいなと思い、他の3人に僕から声をかけさせてもらいました。この数年、僕はフラフープを使うパフォーマンスをソロで行っていたのですが、ちょうどソロだけでなくショーケースとして複数人でやってみたいと思い始めていたんですよね。ZiNEZとはバトルやフリースタイルスペースなどに一緒に出たりしていたので、まずZiNEZとは絶対一緒にやりたいと思いました。他に面白い融合がありそうな人を何人か入れたいなと思い、僕が提案したメンバーがDoltonとEAZY君でした。

DoltonさんとEAZYさんを選んだポイントは何だったのでしょうか?

SHINSUKE:
これまでも、ストリートでそれぞれ活躍する人たちが集まったクルーのような集団は結構あって、その集団は「THE・STREET」のイメージだったんですけど、僕のフラフープは魅せ方としてアートっぽいこともできると感じていました。 ストリートダンスのイベントに出るクルーではなく、もっと幅広く色々なところに出られるチームにできないかと思い、Doltonが閃きました。Doltonは、ブレイクダンサーとして唯一無二のアート的表現をすることが魅力的です。シルク・ドゥ・ソレイユにも参加するほど、ブレイキンをベースに美しいダンスを踊るんですよね。

EAZY君は共通の知人の紹介で知り合い、僕がフラフープを使ったパフォーマンスで今後の展開に悩んでいた時、彼に相談をしたんです。話を聞いている中で、考え方や人間性も良いなと思いました。何より、けん玉とダンスの融合スタイルが凄いんですよね。同じモノを使うパフォーマーとして、EAZY君と一緒にできたら面白いのではないかと思い声をかけさせてもらいました。

一緒にパフォーマンスをしてみて、いかがでしたか?

SHINSUKE:
そもそもDolton君以外は全員サイズ違いのモノを使用したパフォーマンスをするので、15分のショーができるとは思っていませんでした。初めての試みだったので、お互い試行錯誤の連続でした。でも、それがとっても心地良かったんです。新しく、見たこともない表現を様々な視点でクリエーションをしていく過程にワクワクしました。気が付けばメンバーみんなでアイデアを出し合い、実際に試しながら15分のショーを作ることができました。それが僕たちの想定以上に反響がよくて、手応えを感じたんですよね。BBBのメンバーにも、これは続けるべきだと言われ、OBJECTSのみんなも同じ気持ちでいてくれて、本格的にやっていこうとなりました。

異才たちの融合が生み出す唯一無二のパフォーマンス

OBJECTSならではのオリジナリティについて教えてください。

SHINSUKE:
まず僕が思うOBJECTSは、一人ひとりが全く異なる武器を持っていて、それらの組み合わせを変えるだけで無限に創造できるというところが、めちゃくちゃ強いところだなと感じています。それぞれ個性が死ぬほど強くて、必殺技みたいなものがあったとしたら、それを1.5倍、2倍ぐらいに魅せることもできる相乗効果があるなと。

チームのみんなで想像をして「これってこれを掛け算したらやばくない?」みたいな、「ちょっとやってみようか」っていう実験を繰り返していくことで、OBJECTSの形がだんだん形成されていきます。その過程で時折特大ホームランが生まれたりするんですよね。俺たちでも何が起きるか本当に分からない、やってみるまで分からない。だからこそ楽しいし、それらがどう評価されるのかすらも多分誰も分かってない中で日々新しいものを生み出している感覚が、初心に還るワクワクというか・・。とても刺激的に感じています。 

EAZY:
けん玉視点でいうと、どうしても地味なカルチャーというか、そんな派手なことできる感じではないので、より大袈裟に動いたり高く上げたりなどを通じてステージで魅せれるように、これまでのソロの活動とは違う試行錯誤をし新たな領域にチャレンジしています。 例えば、バスケットボールをもらってそのボールでけん玉をやるとか、 フラフープの中をけん玉を通してみるとか。 他の人のモノとか他の人の動きを使って、けん玉の動きが斬新に面白く見えたり、難しく見えたりする動きができること自体が新しい表現としてすごい面白く感じます。 「こんなことができるの?」という可能性にも繋がるんで、そこをもっと一緒にやりながら見つけていきたいと思っています。

4人それぞれのシーンとキャリアについて

異なるシーンで活躍をされてきたみなさんですが、それぞれのシーンやキャリアについて教えてください。

SHINSUKE:
僕は10歳からジャズダンスを地元の新潟で習い始めて、18歳の時に上京をしストリートダンスにシフトしました。ブレイキン以外のジャンルは踊れるかなと思います。それから、BBBを結成し『JAPAN DANCE DELIGHT』で優勝することができました。実質日本の頂点を仲間と一緒に獲り、それからも多くのことにチャレンジをし続けてきました。現在は主にBBBの活動をベースとし、2.5次元作品の舞台出演や振付、ニコニコ系のダンスバトルに出たりと幅広く活動をしています。BBBはHIPHOPをメインに踊るのですが、メンバーそれぞれがそれとは異なる“何か”ができることにもチャレンジをしていて、その流れで僕は数年前からフラフープ×ダンスに挑戦しソロで活動をしていました。

EAZY:
そもそも僕がやっているようなけん玉のスタイルが生まれたのは、日本のお土産でけん玉を持ち帰ったアメリカ人がYouTubeなどでかっこいい映像を撮り、動画をアップし始めたことがきっかけでした。たまたまその人がエクストリームスポーツ系のカルチャーをやっている人だったので、そっち系の界隈に結構ハマっていきました。

世の中的にYouTubeがどっと流行り、みんなが見れるようになったらYouTube界隈でムーブメントが起きました。それから、Instagramで動画を上げられるようになった時期にまたこのカルチャーが拡がったように思います。インスタは最初動画を投稿するのに15秒の制限がかかったと思うんですけど、15秒がけん玉にとって丁度良い時間だったんですよね。 15秒でワントリックを決めて動画を上げるのが世の中で流行って、同時多発的に世界中あちこちで新しい技が生まれ今のカルチャーが定着した印象があります。

僕は小学生の時にけん玉を始めて、特技を聞かれたら「けん玉」と答えるくらい自信がありました。大学に入りストリートダンスをやり始めて、遊びでけん玉をしながらちょっとステップ踏んだらバカウケしたんですよ。その時に「このスタイルでやってみたい!」と強く感じました。 そこから、本格的にけん玉のスキルとダンスのスキルを上げたいなと思い磨きをかけてきた感じです。

ZiNEZ:
僕とEAZYは同い年なので、近い場所を生きてきたように思います。 EAZYのけん玉は2010年代前半にアメリカで火がつきました。 けん玉ブームが来て、その時に僕たちもフリースタイルバスケでYouTube活動をしていたので、お互いの存在をインスピレーションの元にし合っていました。 僕はボールで、EAZYはけん玉というところでお互いのカルチャーをチェックしていて、EAZYは僕が出場する大会にも来てくれたり、僕がNHK WORLD-JAPANで番組をやっていた時にけん玉にフォーカスする回があって、その時からシーンを含めて交流がありました。

東京という街自体が、世界中でどの街よりもジャンルの垣根なく交流する街だと思うんですよね。 僕はSHINSUKEさんもDoltonさんも知っていて会ったら挨拶をしていましたし、SHINSUKEさんとは同じチームでやらせてもらったりしました。 僕は15歳でフリースタイルバスケを始めて、19歳の時にカナダから日本に帰国をした際、最初に入ったチームがTokyo Creatistと言うマルチカルチャークルーでした。そこの出身というのもあり、おそらく様々なストリートカルチャーの人たちと10代から繋がることができて、みんなで東京ストリートカルチャーというのを盛り上げてきたように思います。

Dolton:
僕がブレイクダンスを始めたきっかけは、高校の学祭にダンスで出るからちょっとやろうぜっていう友人の話からスタートしました。元々僕はサッカーで世界に行こうと思っていました。 そのくらいサッカーを本気でやっていたのですが、サッカーで世界を取るのは難しいなと感じていた時に文化祭のダンスに誘われ、いざ練習してみたらトーマス(ブレイキンの技)が一発でできたんですよ。その時に「これだと世界行けるんじゃないかな」と思い、サッカーからダンスにシフトしました。

当時は地元の秋田でダンスを続けていたのですが、学べる場所が身近に無かったので、いわゆるストリートで練習をしていました。もっとスキルを磨きたいと思い地元を離れ上京しブレイキンバトルに出たのですが、その時にみたブレイキンがあまりにも僕のスタイルのブレイキンとはかけ離れていたんですよね。それもそうで、元々僕はBBOYがルーツの荒々しいバトルスタイルをみて練習してきたわけではないですし、独自の練習が故の僕が理想とするブレイクダンサー像があったんです。荒々しさというよりは、その真逆の繊細さや芸術性のあるブレイクダンスを理想に描いていました。なので、シルエットを美しく魅せるためにスキニーパンツで踊るスタイルを考え、“細くて綺麗に魅せるのもかっこいいんだよ”“その柔らかいのもアートなんだよ”という、綺麗にブレイクダンスを魅せるというのを常に考えてやってましたね。

それぞれの想いと唯一無二で目指す先

OBJECTSの活動に対するそれぞれの想いとこれからの展望について教えてください。

EAZY:
せっかく新しいことを始めるので、やっぱみんながやったことないことにどんどんチャレンジしていけたらいいなと思います。今までけん玉のカルチャーに無かったことをもっと拡げて、下の世代の子たちにも可能性を見せ続けられる存在でいられたら嬉しいです。この活動通して、僕自身も刺激をもらい、クリエイティブな発想に磨きをかけていけたらという気持ちです。

ZiNEZ:
僕個人がOBJECTSの活動を通して見出したいのは“答え”かもしれません。インターネットの革命があってからモノを持った人たちがダンスをしてパフォーマンスをするようになりましたが、それに対して答えというものが未だ存在していないというのが、この飽和している今の時代だと感じてます。 例えるなら、コーラス部隊がダンサーだとして、今までのダンサーが作ってきたコーラスの文化に、モノという楽器を持つことで、バンドとして世の中に出ることができる。 これってすごい新しいことだと思うんで、僕のビジョンはX JAPANのようなパフォーマンスチームを作ることです。

僕たちのスローガンは「All Can Dance Under the Music」。何をやっていても音楽の下ではみんな踊ることができるというコンセプトなので、 そういう仲間たちを増やすことでOBJECTSという表現者のための保護国を作りたいです。 目で見るX JAPANがOBJECTSで、それが世界の表現を変えていく。壮大かも知れないけど、これまでずっとこのシーンでやり続けてきたからこそ、そう思っています。

Dolton:
僕は、ずっとレールの先頭を走っていたいという欲はあるんですよ。シーンの最先端というか。それを個人ではなくこういうチームでやっていきたいという想いが強いです。 見たことのないショーを作り世界的に受け入れられるパフォーマンスをしていきたいですね。もっと大きく言うと、ワールドツアーを行い認知を上げ、それに憧れる子たちが増えてくれたら嬉しいなと思います。「こうじゃなきゃダメ」という概念を崩す自由さみたいな幅を伝えていきたいです。

チームでやりたい理由も、普通に何事もみんなで共有した方が楽しい世界じゃないですか。一人でやることの達成感や自由さみないなものも当然ありますが、僕は良いも悪いも一緒に味わう仲間が欲しいです。それが楽しいから。その上で、OBJECTSを通じたメッセージとしては、日本のパフォーマンスカルチャーの新たなモデルとなることを視野に入れています。特に、けん玉のような日本発祥の要素や、東京という都市が持つ多様な文化が交錯する独自性を武器に、世界に打って出る可能性を感じています。

SHINSUKE:
一言で言うと“世界平和”です。異なる文化や歴史を持つ僕らがお互いの長所を活かし短所を補い合う姿は、世界がそうあるべき姿を体現できるのではないかと思っています。練習を通じて感じたことなので思いっきり結果論ですが、日々メンバーと一緒に活動をする中で感じることができました。そして、それを体現するチームだなと思い、その“想い”を掲げ活動をしていきたいと思っています。

あとは個人的に、めちゃめちゃクリエイティブになれる居場所だなと思っています。だから僕は僕のためにOBJECTSやってるみたいなとこも正直あったりするんですよね。このチームを通じて僕たち自身の概念もぶち壊しながらチャレンジすることで、初心に還り、みんなと新たな創造をしながら可能性を探っていきたいと思っています。頑張ります。

プロフィール
OBJECTS(オブジェクツ)
「All Can Dance Under the Music」をテーマにフラフープ、フリースタイルバスケットボール、けん玉、軟体ダンサーという世界に1つしかない組み合わせによる新しいパフォーマンスを創造するチームである。

SHINSUKE|フラフープ,ストリートダンス
1984年5月16日生まれ
10歳からジャズダンス、18歳でストリートダンスを始め35歳でフラフープに出会う。2011年日本最大のダンスコンテスト『JAPAN DANCE DELIGHT』にBeat Buddy Boiとして優勝。舞台出演、振付などで活躍する中、新たな表現の試みとして今のメンバーを集めOBJECTSを始動。まだ誰も見た事のないエンターテイメントを目指す。

ZiNEZ a.k.a KAMIKAZE|フリースタイルバスケットボール
1990年8月10日生まれ
フリースタイルバスケ最強の国、日本で史上最年少優勝記録と、初の連覇を成し遂げ、その後も現在に至るまで幾つもの大会を優勝し審査員を務める。イベント主催、メディア出演や海外でのショーをはじめ、日本武道館やNYマディソンスクエアガーデンでもフリースタイルバスケを披露している。ラジオDJ、タレント・モデルなどインターナショナルに活躍するフリースタイル・バスケットボーラー。

EAZY|けん玉
1990年12月7日生まれ
ミラノ万博など、世界18カ国のイベントやテレビに出演。シルクドソレイユのワークショップにも参加するなど、世界が注目するパフォーマー。従来のけん玉イメージを覆すダイナミックなパフォーマンスで、世界のエンターテイメント界へのさらなる進出を目指している。01HEADS・ZOOMADANKE・KROMのメンバーとしても国内外で活躍中。

Dolton|軟体ダンス
1987年10月31日生まれ
BBOYに軟体を取り入れたスタイルで、「kinetic art」として、サーカスの世界大会で日本人ダンサー初のショーを受賞。シルクドソレイユからオファーを受けラスベガス公演に出演。独創的な動きや技を追求し唯一無二なアーティストであり続けることをモットーに活動中。

告知情報
日本テレビ系列「THE DANCE DAY」決勝大会出演
放送日時:2025年5月20日(火)19:54〜22:54

執筆者について
FINEPLAY編集部
FINEPLAY は世界中のサーフィン、ダンス、ウェイクボード、スケートボード、スノーボード、フリースタイル、クライミングなどストリート・アクションスポーツに関する情報を発信するスポーツメディアです。
ピックアップフォト
アクセスランキング
FINEPLAY
アクションスポーツ・ストリートカルチャー総合メディア

FINEPLAYはアクションスポーツ・ストリートカルチャーに特化した総合ニュースメディアです。2013年9月より運営を開始し、世界中のサーフィン、ダンス、ウェイクボード、スケートボード、スノーボード、クライミング、パルクール、フリースタイルなどストリート・アクションスポーツを中心としたアスリート・プロダクト・イベント・カルチャー情報を提供しています。

アクションスポーツ・ストリートカルチャーの映像コンテンツやニュースを通して、ストリート・アクションスポーツの魅力を沢山の人へ伝えていきます。

イベントスケジュール
5月 2025
    1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
« 4月   6月 »

●今日 ○イベント開催日

ピックアップフォト
編集部おすすめ記事
アクセスランキング
FINEPLAY
アクションスポーツ・ストリートカルチャー総合メディア

FINEPLAYはアクションスポーツ・ストリートカルチャーに特化した総合ニュースメディアです。2013年9月より運営を開始し、世界中のサーフィン、ダンス、ウェイクボード、スケートボード、スノーボード、クライミング、パルクール、フリースタイルなどストリート・アクションスポーツを中心としたアスリート・プロダクト・イベント・カルチャー情報を提供しています。

アクションスポーツ・ストリートカルチャーの映像コンテンツやニュースを通して、ストリート・アクションスポーツの魅力を沢山の人へ伝えていきます。

配信先メディア一覧