日本BBOYシーンのパイオニア TAISUKE が考える、今ダンサーにマネジメントが必要な理由

2021.12.17
photograph by AYATO./text by Shin Akiyama

プレイヤーとしても常に進化を続けて日本のBBOYシーンを切り開いてきたTAISUKE。先日、世界的なブレイクダンスの大会「BATTLE OF THE YEAR WORLD FINAL 2022」を日本で開催することを発表。ブレイキンカルチャーを様々なアングルから盛り上げる TAISUKE に、今年から始動したマネジメント・プロデューサーの活動についてインタビューを実施した。

様々な経験を持つTAISUKEがダンサーのキャリアをつくる。新たな活動が2021年に始動!

-新たに始めた活動について教えてください

グッドチョイスエンタテインメントに所属して、自分はマネジメント・プロデューサという役割で参加しています。やることになった経緯としては、2024年のパリ五輪に向けてブレイクダンスに注目が集まったり、色々な企業も参入するようになってくると思ったからです。

-このタイミングでやろうと思った理由は?

今、自分はダンス歴が24年くらいで、年齢的にも30歳を超えたタイミング、世の中的にもコロナの影響というのもあって、いろいろ考えながら自分と向き合う機会が多いです。

最近新たにサポートを始めてくれた企業もいて、世の中的にはこんな状況ですけど、「本当にありがたいな…」と思っていて、これを自分だけでなく現役でやっている他のダンサーにも広げていきたいと思ったし、企業からのサポートや、それを得るためにダンサーが動く活動が自分だけで終わったら意味がないし、次の世代に繋がっていかないので当然必要ですよね。

photograph by AYATO.

-ダンサーの「プロ意識」について、どう思いますか?

やっぱりプロ意識と言っても、ダンサーはプロとアマチュアの境目っていうのが無いのが現状です。ただそれを自分で定義として作れば「俺はこれで初めてプロになった」とか「あ、まだ俺はアマチュアだ」っていう定義は自分で作れるからいいんですけど、それを良い事に色んな人が「自分はプロだよ」っていう風に発し、オリンピックていうものを使って凄い沢山の人が前へ前へと出てきたと思うんです。でもそう言ってる中で本当にプロ意識をもって今までそういう行動をしてた人が何人いるのってなった時にほぼほぼ居ないんですよね。絶対に。

-活動を始めてから、どんな動きがありましたか?

今マネジメントしているメンバーの中で、実際にCMの撮影が決まった人がいたりとか、後はオファーも少しづつ増えています。通常ダンサーってそういう情報があまりおりてこないと思ってて、例えばオーディションの話とかも事務所に所属していたり、伝手がないと難しいと思うんですよ。最近では、有名なダンサーを指名してのオファーだけでなく、「ブレイクダンスが踊れる人が必要」という相談も増えているので、そういうお仕事のチャンスを現場にも接着させていきたいです。

あと、自社でもSPIRIT WORKERというハイパフォーマンスウエアのブランドをやっていて、そのブランドマーケティングを通じてメンバーのセルフブランディング育成もしています。プロ意識を上げてもらうために、実際に大会で着用してもらったり、成績によってインセンティブがあったり、細かい部分ですけど例えば、写真撮影の時にブランドのロゴが見えるようにするにはどうしたら良いのか?とかも、選手が考えながら動いていけるようにサポートしています。

photograph by AYATO.

TAISUKEが考えるブランドや企業との共創とは

-これまでTAISUKEさん自身はどんなマネジメント経験がありますか?

基本的にはセルフマネジメントなので、海外とのやり取りも含めて全部自分でやっているし、自分のことを説明する資料とかも自分で作るんですよね。今ではイベントのオーガナイズもするので、大会の営業も回りますし、そういうことも含めて結構セルフマネジメントでやってきました。昔、大手の事務所に所属していたこともありますが、やっぱりダンサーってマネジメントの取り扱い説明書的なものもないし、海外の仕事も多いのでなかなか難しかったです。

-セルフマネジメントはいつ頃から意識しましたか?

2016年のRed Bull BC One ワールドファイナルに出場するタイミングから結構変わりましたね。2016年の3月頃までにスタジオで持っていたレッスンを全て止めました。プロ野球選手とかサッカー選手を見ても、現役で第一線でやっているプレイヤーがレッスンはやっていないし、ゴルフもレッスンプロ的なものはありますけど、現役のトッププレイヤーはやっていないですよね。もちろん教えることは次世代のためにも必要なので、ブレイキンで将来こうなりたい!本気で上手くなりたい!勝ちたい!という人たちにフォーカスするために、定期的にワークショップなどの開催はしています。

2016年 Red Bull BC One World Final 写真: Dean Treml / Red Bull Content Pool

-企業の人と話す上で意識していることはありますか?

ブランドや企業とコラボする理由を聞かれたら全て答えられるようにしていました。こちらからサポートをお願いするときや、イベントの営業をするときも一緒ですね。例えば、今サポートしていただいている車メーカーでいうと「なぜダンサーで車なの?」って疑問を持つ人もいると思うんですけど、そういうのもしっかり自分の中で理由を考えてから取り組むようにしています。国内であれば車で地方へ行くことが出来るし、地方の子が東京に来れなくてもこっちから行くことが出来る。だからサポートしていただいている価値があると思っています。

ただ着ているだけ、付けているだけではなくて、そこまで考えることで自分をサポートしてくれているブランドをもっと背負えるし、説得力もあるし、他のダンサーとも差別化になると思います。

photograph by AYATO.

「誰でも上を目指せる環境をつくりたい」 パリ五輪に向けてTAISUKEが意識していること

-五輪の新種目としてブレイキンが注目を集める中、TAISUKEさんは何を考えていますか?

2024年のパリ五輪で一般的にも注目されているし、代表的なBBOY・BGIRLがメディアに出演することも増えてますよね。今後もっとこういう活動が増えてくると思うんですけど、偏った選手やチーム、大会、団体だけが露出されるとシーンにとっては良くないと思うんです。だから自分でマネジメントの活動を始めて、いろんな選手や活動を露出することにつなげているというのもあります。

マネジメントのスタイルもいろいろあって良いと思っていますし、実際に自分のところは契約でガチガチに縛らないようにしていたりします。オリンピックでブレイクダンス自体が注目は集めると思いますが、皆がオリンピックやスポンサーへこだわらなくてもいいと思いますし。

photograph by AYATO.

-実際にどんなことをしていきたいですか?

オリンピックって誰でも目指せるものだと思うので、シーンの中で偏ったイメージが広がらないようにはしていきたいです。例えば「オリンピックってもうこの人で代表が決まっているから目指さなくていいや…」みたいな。今はまだ事例が少ないので限られた人にフォーカスされることが多いですが、マネジメントがついていなくても結果を残していたり、活躍しているBBOY・BGIRLがたくさんいるので、そういう人たちをサポートしていきたいです。

メンバーも1.2人とかではなく多めにしたり、世代も若い人から30歳近い人も入れてやっていて、いろんなスタイルでダンサーのキャリアを考えていけるように意識しています。若い人が大会で活躍すること以外にも、ダンスの価値があると思うし。

2020年 Red Bull BC One Japan Final  写真:Jason Halayko / Red Bull Content Pool

-TAISUKEさんが考える自分の役割は何でしょうか?

実際にオリンピックまでにマネジメントしている子たちの人数も増えるだろうし、「いろんな子たちがそれぞれの立場からオリンピックを目指せる状況をつくる」のが俺の役割だなって思いますね。

あとブレイクダンス自体の認知でいうと、東京五輪のときは「実はスケボーってこんなにすごかったんだ!」という感じだったと思うんですけど、そうではなく「ブレイクダンスってすごいよね!」「日本のBBOY・BGIRLを応援しようよ!」という状態をつくってからパリ五輪を迎えたいです。

そのためには先日発表したBOTY(BATTLE OF THE YEAR)のファイナルを2022年に日本で開催することもそうですが、大きいブレイクダンスの国際大会ってまだ日本でやったことが無いので、シーンを盛り上げて世の中に認知されるためにはもっとそういうこともやっていきたいです。一般の人たちがブレイクダンスを目にする機会を増やしたいし、そこで自分がマネジメントしている選手たちが活躍できるように、そのために今の活動を頑張りたいですね。

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