スペシャルキャスト陣が語る、「エンタメ」について。ITADAKI 2023 特別企画

2023.09.21
text by 山本 大方 / photograph by 市川 桂

2023年 9月30日(土)に、神奈川県川崎市・川崎ルフロンで開催される『ITADAKI ダブルダッチ甲子園 2023』

この大会が他と一線を画すのは、“エンターテイメント”要素を多く含んでいることにある。
審査項目の30点分を「エンターテイメント」という項目が占め、またその審査員をダブルダッチプレイヤーではない、各ジャンルで活躍するパフォーマーが務める。
またそれに加え「観客投票」も実施され、パフォーマンスを見た観客による投票も順位に関わってくる。

そんなITADAKIには“大会アンバサダー”が設けられ、3年連続で「DA PUMP」KIMIと、プロダブルダッチチーム「REG☆STYLE」が就任。またエンターテインメントジャッジには、お笑い芸人のツネが登場。
今回、KIMI・ツネとREG☆STYLEのリーダー・KO-YAが対談。業界の最前線で活躍する彼らが、「エンターテイメント」について語り合う。
訊き手は、REG☆STYLEよりYUIが務める。

 

 

左からツネ・KIMI・KO-YA・YUI

YUI:
本日はよろしくお願いします!
ITADAKIに関わるスペシャルメンバーが一同に介したわけですが、最初にオーガナイザーであるKO-YAから一言もらおうかな。

KO-YA:
この度はお二人、ありがとうございます!
ITADAKIも3年目を迎えまして、お二人がこうして揃って企画に参加していただけること、そして当日を迎えることができるのが嬉しいです。

KIMI:
こちらこそ、今年もお呼びいただいて嬉しかったです。
ツネさんとも昨年ITADAKIで共演予定だったのですが、残念ながらコロナに感染されてしまい、お会いできなかったので嬉しいです。
当時はまだコロナの波があったシーズンでしたし、社会情勢も落ち着いて、いよいよ万全の体制で当日を迎えられそうですね!

ツネ:
昨年は悔しかったんですが、その分今年が本当に楽しみですね。

KO-YA:
実はKIMIさんはITADAKI 当日、グループ(DA PUMP)の活動もあってお越しになるのが難しいかもしれないというお話も出ていたんですよね。
代わりの方を探す考えもよぎりましたが、僕含め実行委員会で話し合っても、やっぱりKIMIさん以外がやられているビジョンが湧かなくて。
そしたらKIMIさんが頑張って調整してくださって。

KIMI:
稀有(けう)でしょ、本当(笑)。

KO-YA:
本当に嬉しかったです。
そしてツネさんとも今年こそご一緒できて、社会情勢も落ち着いて、いよいよ全てが整った!という気持ちです。

 

3人のルーツ

YUI:
今回の座談のテーマが「エンターテイメント」について、ということで。
最初に大会について軽く話してもらいたいんですが、ITADAKIは他のストリートやダブルダッチの大会と違ってエンタメ要素が強い大会なんだよね、KO-YA。

KO-YA:
それこそショーケースだと、技術を測る審査項目に加えて、ITADAKI独自の「エンターテイメント」という審査項目があるんです。
毎年、各ジャンルのトップランカーの方にお越しいただいて、エンタメ性を審査してもらう。
今年はコメディアンのツネさんに加えて、ダンサーのKAZANEと、フリースタイルバスケットボーラーのZiNEZ a.k.a KAMIKAZEの3人をお迎えしています。

左から ZiNEZ・KAZANE・ツネ

YUI:
ダブルダッチ界、なんならストリート界でも珍しい路線の大会で、競技感のある他の催しに比べると、出演する選手のキャラクターにまでスポットが当てられる印象だよね。
ということでお三方にエンタメをテーマにお話を訊いていきたいのですが、最初に皆さんがエンタメの道を歩み始めるルーツを伺いたいと思います。

ツネ:
人前に出ること自体は小学校くらいから好きで、目立ちたがり屋でずっとふざけていました(笑)。
22歳でNSC(※)に入って、そこから本格的にお笑いの道に進みましたね。当時流行していた『めちゃ×2イケてるッ!』という番組が好きで、この番組に出ている人たちみたいになりたいと。

(※)NSC:吉本興行が創立した、タレント・お笑い芸人の養成所。正式名称は「吉本総合芸能学院」。

KIMI:
一番最初に人前に立つことが面白いと思ったのは、中学校の文化祭かな。劇の主役でピノキオ役をやったのですが、まあキャーキャー言われちゃって(笑)。
当時って演劇にダンスを取り入れるのって少なかったので、劇中に踊ってみたら、結構な手応えを得てしまったわけです(笑)。

その後はクラブのショータイムなんかにも出たりしていたのですが、場数を重ねていくうちに「すごいことをすると、それ相応の拍手が返ってくるんだな」ということに気づいて、今に至るという感じですね。

KO-YA:
初めてのステージは… 4歳ごろですかね。僕のおばあちゃんの和太鼓に合わせて、ひょっとこの仮面をかぶって、親戚の前で「はい、踊りなさいコーヤ」って言われたのが最初です。
ちなみに今は85歳なんですが、バリバリ自転車を立ち漕ぎして移動してます(笑)。おばあちゃんの英才教育ですね。

 

3人の共通項

YUI:
お話を伺っていると、幼少期から“人を楽しませることが好き”な方々なんだなと思ったのですが、それを今お仕事にされているお三方にとっての「エンターテイメント」について色々お話を伺いたいなと。
ジャンルは三者三様ですが、共通項を探してみたいですね。
…え、KO-YA、ググるの?!(笑)

“ググる”KO-YA

ツネ:
共通項で言うと、リズムやテンポでしょうか。
テンポが良ければ気持ちって高揚しますよね。逆も然りで。

YUI:
ダブルダッチでも音楽に合わせて技を繰り出したりするんですが、やっぱりリズムやテンポってすごく大切なんです。
お笑いなんかでも重要なんですね。

ツネ:
お笑いもそれが狂うと悲惨なことになりますね(笑)。一緒にステージに上がる人や、ステージ裏の方々との連携も必要です。
ダンスもそうですよね?

KIMI:
もう乱れたら一貫の終わりですね(笑)。
YUIちゃんがさっき言っていたように、僕らも音に合わせてダンスしたり歌ったりするので、少しのズレでも見てくれる方々の気持ちを冷めさせてしまう。
特に僕らはグループなので、いかにみんなの動きを合わせていくか。

YUI:
なるほど。
今のお話を訊いていて、たとえば音楽と合わせることやロープのリズムなど、いわゆる「物理的なテンポ」も合わせることが大事ですが、「人同士の呼吸」を合わせることも大事なのかなと思いました。

YUI

 

一生懸命になること

KO-YA:
あとは「一生懸命に向き合う」っていうのもエンタメ――それこそ、“人を楽しませる”とか“感動させる”ものだと思うんです。
たとえば高校サッカーや野球の甲子園も、一生懸命な選手たちの姿って本当に感動するし。
今年のITADAKIも、開催前の段階から各団体やチームからのパワーが伝わってきて、年々ボルテージが上がっていることを実感していて、早くも心を動かされています。

YUI:
そうだね。色々テクニック的なものも皆さんお持ちだとは思うんですが、一番の根本の部分ってそこですよね。
いかに「本気」になれるか。

KIMI:
エンタメにゴールって無いと思うんです。そこに身を置く人間は、常に一生懸命に、本気になって前進していかなければならない。
その先の自分の目標や、ついてきてくれる仲間のこと、携わってくれる方々とどうしたら面白くなるかを考え続けたいです。
常に楽しいことを考え続けるために、楽しい自分でありたい。
ネガティブと風邪はうつりますからね(笑)。ってことは、ポジティブもうつるわけで。

KIMI

YUI:
確かにこのメンツといると、ちょっとした病気は治ってしまいそうです(笑)。
それこそKIMIさんは昨年末、ワンマンライブもやられていましたよね。改めてKIMIさんのエンタメに対する「本気さ」や「楽しませよう」という気概を強く感じさせてもらいましたし、何より本当に盛り上がっていました。

KIMI:
それも“前進”の一つでしたね。とにかくやることに意味があると思っていて、一人で進んでいかないといけない。恥をかいてもいい覚悟で。
でも、あの会場で一番楽しんでいたのは自分でしたし、そのつもりでやっていましたね。見にきてくれた先輩が「ムカつくくらい楽しそうだった」って言ってくれて、よっしゃと(笑)。

KO-YA:
「一番自分が楽しむ」ということも、エンターテイメントの一つな気がしましたね。

YUI:
例えば「ここで笑顔を見せる」みたいなテクニック的要素もありますけど、その笑顔が本当に楽しんでいる人の表情なのかって、伝わりますよね。
ツネさんはいかがですか? 最近は海外にも飛び出して色々と挑戦されていますよね。

ツネ:
めっちゃくちゃ緊張します(笑)。でも皆さんおっしゃるように、僕が一番に楽しんでいます。
もちろん上手くいくことだけではないのですが、振り返るとそれも含めて楽しいんですよね。その瞬間を本気になって臨めば、どうあれ「楽しい」と思える時間になる。
でも… やっぱり笑ってくれる瞬間が一番楽しいですよね(笑)。

 

“ミス”をどう乗り越える?

ツネ:
海外だと日本と笑いのツボも全然違うので、演目中に「ヤバっ」って思う瞬間も正直あります。
ここで反応が欲しいのに、思ったリアクションが得られなかったりすると、感情が高揚しているはずなのに一瞬すごく冷静になって「次どうしていこう」と考えたりする。
ステージ上の一瞬一瞬の判断が迫られる緊張感が僕は楽しいですね。

ツネ

YUI:
なるほど。ツネさん、すごくダブルダッチに向いてらっしゃるなと思いました。
私たちダブルダッチプレイヤーも、テンションだけで乗り切ろうとするとロープに引っかかってしまったりするんですよね。
テンションと冷静さのバランスが重要だなと思っています。

ツネ:
そうなんですね。やっぱり不安だと引っかかってしまったりしますか?

YUI:
本当にめちゃくちゃありますね、不思議なもので。
KIMIさんは以前私たちREG☆STYLEと、一緒にダブルダッチのパフォーマンスをやってくださいましたよね。

KIMI:
そうだね。やっぱり気持ちだけ先走ってもダメ。ターナー(ロープの回し手)との呼吸を合わせることって大事だね。
さっき言ったテンポもそうだし、「一生懸命さ」「自分が楽しむこと」も大事なんだけど、どこかで冷静な判断ができる脳みそも必要。

あと、僕の普段の活動でも「ここでオーディエンスを湧かせたいぞ!」と思って用意していても、ライブ本番で全然盛り上がらないときってあるんですよ。
その瞬間「うっわー、全然盛り上がってねえじゃん」って(笑)。

KO-YA:
いやー、分かります(笑)。
ダブルダッチってミスが分かりやすいスポーツで、動き自体がどれだけ綺麗でも、ロープに引っかかるとミスになりますし、見た目的にもミスが分かりやすいものなので痛感しています。きっと選手たちにも同じ経験があると思うんですよ。
お二人に伺いたいんですが、そういう「ヤバっ」って思った瞬間ってどうされていますか?

ツネ:
もう、開き直るしかないです(笑)。

KIMI:
本当にそうですよね(笑)。

ツネ:
焦ったら失敗するので、開き直って堂々と振る舞うのが一番だと思います。
時間は戻らないので、スベったら「めっちゃスベってるやーん」くらいに(笑)。

KIMI:
本当に一緒です(笑)。
失敗しても前にいるボーカルのISSAさんはめっちゃ歌っていて、僕も当然一生懸命に振る舞うんだけど、心の中ではかなり冷静です(笑)。
それこそITADAKIに出る選手のみんなも、例えば仮に立ち位置が違ったりしても「おれが正解だ」って顔をしちゃって、堂々としていた方がいいんじゃないかな。

YUI:
やはり経験を積んできたプロでもこういうことってありますから、そういうときこそ堂々といるべき、ということですね。

 

いよいよ開催!「ITADAKI 2023」

YUI:
最後に、今年もITADAKIが開催されるということで。残りわずかですね!
皆さんの意気込みをお伺いできればと思っています。

KIMI:
今年もアンバサダー兼MCとしてマイクを握らせていただきます。
3年目ですからね。3年もやっていると「去年出ていた子が今年はこうなってるんだ!」と成長を感じることもあります。
選手のみんなが、これまでどんな努力をしてステージに立っているのかに思いをめぐらせながらMCをできるのが嬉しく楽しみです。

何よりここ最近、ダブルダッチがかなり盛り上がっていることを強く実感しているので、僕自身も盛り上がっていきたいと思います!

昨年のITADAKIの様子。MCを務めるKIMI・YUI
(写真提供:ITADAKI 実行委員会)

ツネ:
皆さんが「どこまで楽しんでやっているか」を見たいです。僕は当日エンタメ項目を審査させていただくので、そこが自分の審査の内容に関わってきそうな気がします。
自分が楽しむことで、人を楽しませられる。見ている側の受け止め方もかなり変わってきます。KO-YAさんも先ほど言っていた「本気」を見たいですね。
僕らくらいの年齢になると、本気になっている高校生の姿にやられる時があるんですよ。むしろ「そういうのちょうだい!」って思っています(笑)。

ダブルダッチ的な技術も当然大事だとは思うのですが、芯の部分は「本気で楽しめるか」ということだと思うので、とにかく楽しんでほしいです。

YUI:
ITADAKIって2021年にできたばかりなので、REG☆STYLEのチームメイトで、高校時代からダブルダッチを始めたKAIはよく「今の高校生たちが羨ましい!」って言っているんですが、大学から始めた私でさえもそう思いますね。
それに、これだけシーンの外から熱い思いを持って大会に参加してくださる存在がいることが心強いです。
こうした環境にいるみんなは、自分を出し切ってダブルダッチを楽しんでほしいですね!
それでは最後に、オーガナイザーのKO-YAから一言お願いします!

KO-YA:
年々 ITADAKIが、高校生たちが本気をぶつけてくれるステージになっていると実感しています。
エンタメ要素が強い大会だからこそ、まずは「人を楽しませる」ということについて振り返って考える機会にしてほしいなと思いますね。

そして、総じて今日の皆さんとのお話にもありましたが、高校生のみんなの一生懸命な本気の姿を見たいです。
大会としては本当にどこが勝つか分からない戦いで、下馬評のある猛者からダークホースまで色々。溢れんばかりの熱量とみんなのダブルダッチを楽しみにしています。
でもやっぱり、当日は僕が一番楽しみます!

KO-YA

 

【 取材協力 】
「Cafe Habana TOKYO」
東京都渋谷区猿楽町2-11 氷川ビル1F

 

開催概要

「ITADAKI ダブルダッチ甲子園 2023」
日時 : 2023年 9月30日(土)
時間 : 13:00 開演予定
会場 : 川崎ルフロン
主催 : ITADAKI 実行委員会
主管 : 有限会社OVER THUMPZ
協賛 : ポカリスエット / ヘインズブランズ ジャパン株式会社
協力 : スキルハック
協力メディア : FINEPLAY

執筆者について
FINEPLAY編集部
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