初の日本開催…「ジャンプロープ世界選手権 2025」が繰り広げた熱闘─大会Report

2025.09.23

2025年7月21日(日)から8月3日(日)にかけて、神奈川県川崎市・カルッツかわさきにて、『ジャンプロープ世界選手権 2025』が開催された。

世界32の国と地域から、のべ2600名の選手が集結。当初の参加予想を1000人以上も上回ったという想定以上の展開に、川崎の街はジャンプロープで彩られた。

IJRUオフィシャルサイト、またはオリンピックチャンネルにて大会の様子は配信されている。とはいえ8日間という長期にわたる大会のようすを、全て視聴するのは難しいだろう。

激動の日々からまもなく2ヶ月ほど。少しずつ選手たちも次なる戦いに照準を向け始めたなかで、本記事では、可能な限り大会当日の写真と共に、この8日間がもたらしたものについて筆者の見解を交えながらまとめていきたい。

開会式には日本を代表するダブルダッチチーム「REG☆STYLE」も登場
大会前日にはJR東海とのコラボイベントが催され、街中がジャンプロープ一色に
各国から観客も押し寄せ、各日のチケットはほぼ完売
わずか数十秒、わずか数分に命をかける選手たちは精悍な面持ちだ
予選会場の体育館、大勢の選手・観客が押し寄せる
会場が歓声で揺れる凄技の瞬間も
最終の2日間は「FINAL」と銘打たれ、各種目の決勝が満員のホールで
REG☆STYLE・KAI率いる「FORTH」は金メダルを獲得
世界新記録も数々生まれた
回数を競う種目だけでなく、演技内の各技に点数が加算される「フリースタイル」も
日本選手団も国内新記録を数々樹立
日本発のダブルダッチの大会「DOUBLE DUTCH CONTEST」
その世界(決勝)大会は、今年からIJRU内の一種目として実施された

編集後記

JJRU(日本ジャンプロープ連合)のオフィシャルサイトを確認すると、JJRUの前身団体による国外の大会への派遣は、1996年から開始されたと記載がある。
それからまもなく30年が経とうとする2025年、史上初となる世界選手権の日本開催に至った。

開会式、日本選手団の入場

日本選手団のアスリートたちは予選を勝ち抜き、その後も続く厳しい鍛錬の末にこの舞台に立った。しかしこの「日本開催」という事実は、これまでに日の丸を背負って跳び続けた全てのアスリートたちの、汗と涙の上に存在する一つの大きなレガシーなのである。

開催地である川崎には、32の国と地域から集まったアスリートたちによって、世界の風と熱気が確かに吹き込まれた。
「ミールクーポン」と呼ばれる食事券がアスリート・大会関係者に配布されたこともあり、日常をささえる街は“非日常”に彩られ、川崎市職員もその光景に、世界大会の特別感を感じたと述懐してくれた。

大会前日、受付のために川崎市役所の前に集まる海外選手たち

その一方、日本の「特異点」も見えてくる。

本媒体で取り上げているように、2本のロープを用いる「ダブルダッチ」の、ことパフォーマンス分野において日本は世界の最先端を走る。
今大会でもDDC種目でHARIBOWが優勝したことや、そのHARIBOWが昨年世界的オーディション番組に出演したこと、また過去を遡れば「シルク・ドゥ・ソレイユ」などの世界各国のサーカスやショーなどに出演するなど、日本流のダブルダッチスタイルが、エンターテイメントとしても一定の地位を確立させ始めている

DDC優勝「HARIBOW」

そしてジャンプロープ全体の“縦軸”の繋がりもさることながら、“横軸”となるストリートの他カルチャーとの結びつきも深く、そうした土壌で育まれた日本のダブルダッチシーンは独自の発展を遂げ、伸展していったことを世界に改めて示した。

しかし一方で「ジャンプロープ」全体を見ると、世界トッププレイヤーは各国に分散している。そしてそんな仲間たちとは国境をまたながければ会えず、それゆえ、2年に一度の選手権の機会でしか会えないこともある
世界クラスのプレイヤーが当然のように国内に存在する、日本のダブルダッチの文化圏で育ってきた筆者はその光景に衝撃を受けた。おそらく本人たちにとっては当たり前のことなのだろうと思うが。

国境をまたいだ交流

これ以外にも私たちは世界の広さを文字通り感じ、見せつけられたシーンは数多くあった。日本が独自に発展させたこのカルチャーが、ジャンプロープという縦軸においても、更なる融合を果たす必要がある

とはいえ、日本が後塵を拝しているというわけではない。今大会において、日本はシニア・ジュニア 合計で56のメダルを獲得。獲得数で言えば出場した32の国と地域のなかで、日本が1位という輝かしい戦績を収めた。
特にジュニアにおいては単独で世界1位の獲得数であることから、日本のジャンプロープシーンの未来はかなり明るいと言える。
※IJRU公式インスタグラムの発表データに基づいて計算

ジュニア部門、シングルロープの二重跳びリレーで世界新記録を樹立した渡邉選手・廣瀬選手

最後に──私たちの目指す先にあるものの一つに、ジャンプロープシーンが一丸となって掲げる「オリンピック種目化」という道標がある。改めてここについても触れておきたい。

IJRU(ジャンプロープの国際組織)の会長であるShawn氏は、この世界選手権の成功が種目化にとっても重要だと語ったうえで、オリンピックを通して「世界中の人々がジャンプロープの創造性・芸術性といったような、豊かな要素に魅了される光景を見たい」と語る。

多くの感動的なモーメントがあった

開催国であるJJRU(一般財団法人 日本ジャンプロープ連合)・原竹 純事務局長は、オリンピックはあくまで「通過点」と語った。
「総合スポーツの祭典だから、いろんな人に見てもらえる。そこから選手の強化や業界の発展にも繋がって、その先にいつかワールドカップのような大きなムーブメントになって欲しい。
ロープさえあればできるほど手軽なのに、性別や国籍、宗教の壁をも超えて繋がれる。壮大だけど、ジャンプロープを通して世界の平和と健康につながるような世界を夢見ています。」

次は2年後、ノルウェーの地で再会を誓う

世界の情勢もシビアになりつつある今、スポーツの力による「平和」を嘯くなど夢物語なのかもしれない。しかし、その可能性を感じさせるモーメントの数々を目の当たりにし、改めてスポーツ、そしてジャンプロープが持つものの大きさについて考える。

世界の祭典は幕を下ろしたが、それは次なる物語のスタートでもある。選手をはじめ関わる全ての人々にとって、この大会を経て何か残るものがあったはずだ。
あれから早くも2ヶ月経ち、川崎にも少しずつ涼しい風が吹き込んできた。それぞれの思いを胸に、今日も世界のどこかでロープが回っている。

開催概要

「WORLD JUMP ROPE CHAMPIONSHIPS 2025」
開催期間:
2025年 7月27日(日)〜8月3日(日)
会  場:カルッツかわさき(神奈川県川崎市)
主  催:国際ジャンプロープ連合 (International Jump Rope Union:IJRU)
共  催:川崎市
事業主管:一般財団法人 日本ジャンプロープ連合(Japan Jump Rope Union:JJRU)

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FINEPLAY編集部
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