Skateboarding Unveiled vol.8 ~写真文化とフォトセッション~

2023.12.27
どう考えてもここは試合会場ではない。スケートボード写真にはスポーツの枠を超えた魅力がある。
text and photography / Yoshio Yoshida

スポーツをルーツに持たないスケートボード

スケートボードのストリート種目のルーツは街中だ。スポーツとしての一面はカルチャーが発展していく段階で後から生まれたものになる

「スケートボードは他のスポーツより写真や映像に残す文化が根強い」

いきなりこんなことを言われても意味がわからない人も多いだろう。

だが自分は確信を持って真実であると伝えたい。なぜならスケートボードの歴史を辿れば、そこにはものすごくクリエイティブな世界が存在しているからだ。

その前に、スケートボード写真を語る上で重要なところとして、スポーツをルーツにしていないことを挙げたい。その時点で「スポーツ写真」の枠からはみ出ていたんだと、今になって思うようになったのだが、オリンピック競技に採用され、スポーツとしての一面が大々的に報道されるようになるまでは、当たり前のことでこの事実に自分自身が気付いていなかった。

そもそもX Gamesや先日開催されたWORLD SKATEの世界選手権などを撮りにくるマスメディアのカメラマンの方々は、数あるスポーツのひとつとして撮りに来ている方ばかり。であれば世間からスポーツだと思われていなかった、カルチャーと呼ばれていた頃から撮影している人達からすれば、スケートボード写真の捉え方が根本から違っていて当然だった。

コンテストの結果よりも重要なこと

有名なストリートスポットはすぐに話題となり、そこで未露出の技を成功させることは、スケーターにとって最大の名誉だった

では以前のカルチャーの時代はどうだったのかというと、コンテストにおける勝ち負けよりも、「どこどこのスポットで誰々がなんの技をメイク(成功)した」という話題の方が明らかに盛り上がっていたし、その証拠として後日写真が専門誌に掲載され、最終的にブランドやメディアの映像作品としてリリースされることで、プロスケーターやブランドの価値が向上し、売り上げに繋がるというマーケティングが成り立っていたのだ。

いわば写真はブランドやプロスケーターの個性を表現する上でこれ以上ないプロモーションツールになっていたというわけ。

だとすれば、写真や映像を残す時、撮影する側は当然創意工夫をこなすようになる。

同時にスケーター側も自身の持つスキルの最高レベルを形に残そうとするので、自然と作品としての価値が高まっていくのだが、その要素をより高めるものとして「同じ場所で誰かが成功させたトリックは出さない」という暗黙のルールがある。

なぜなら無限のスポット選択肢があるストリート(もちろん人としてやってはいけない場所はあるが)において、同じ場所で同じトリックを行うのは、先に成功させた人に対してリスペクトに欠けているとされ、たとえ成功しても価値は半減してしまうからだ。撮影する場合は、今までメディアに出ておらず、なおかつ既出のトリックよりも難易度を上げることが礼儀でもあり、そうすることで周囲のプロスケーターや業界関係者からも尊敬を集めることができるし、トリックも進化してきた。

フォトグラファーに求められる独創性

同じトリックでも使うレンズやアングルに工夫をこなして印象を変える。時には太陽光が生む影を使うのも効果的だ

ではその時に写真を撮る側に求められることは何になるだろうか!?

それは「今までと違う画を創り上げる」ことだ。静止画の場合、トリックは違っても、アングルやライティングが既出の写真と同じでは、見た人に鮮烈なインパクトを与えることはできない。

だからこそトリックに合わせてアングルやレンズ、ライティングや露出に工夫を凝らし、新しい見え方を創造し続けていく必要がある。そして時にはそこに季節や時間帯といったエッセンスも加えて、オリジナリティやカッコ良さの究極を求め続ける、スケートボーダーとの共同作品作りといっていいだろう。

スケートボードの写真は、こうして誰も成し遂げていないことをいかに静止画で伝えるのか⁉ をもとに発展してきており、その過程には芸術性も内包された、究極の自己表現の場になっているのだ。
そのためスケーターによっては、コンテストで優勝すること以上に、「あの場所であの技をメイクすること」の方を重要視する人も多く、スポットの歴史を塗り替え、自分超えを果たすことにスポーツの枠を超えた価値を見出しているのだ。

確かにオリンピックに代表されるコンテストの中には多くのドラマがあるし、喜怒哀楽の詰まった選手の表情からはストーリー性も感じ取れる。そこを撮りたい気持ちも十分に理解できるのだが、スケートボードの写真には、誰も成し遂げていないことを証明する証拠としての部分に真の価値があるからこそ、競技中に見せる一瞬の真剣な表情やエモーショナルな仕草が最優先となることはない。そこが他のスポーツ写真とは一線を画した部分ではないかと思っている。

ただ表情を優先する写真が悪いわけではなく、はっきりと見えるに越したことはない。ただそれ以上に優先されるべき事柄があるので、そこを理解していないと、リアルなスケートボードコンテストの現場では”使えない”というレッテルを貼られてしまうので注意が必要だ。

とはいえコンテストではアングルが自由に選べないことも多いので、最優先事項を頭に入れつつ、他要素とのバランスをいかにして取るかを、自分は心がけて撮影している。

フォトセッションを行ったきっかけ

トッププロと同じ条件で本格的な撮影を体験する。それがスケートボード写真文化を知るひとつのきっかけになってくれたら幸いだ

かなりざっくりとした内容だが、以上がスケートボードの写真文化になる。

これを前提に、少しでも多くの人に知ってもらいたい、多くの人と共有したいとの想いで行なっている活動を紹介させていただきたい。それが「フォトセッション」だ。

行うようになったきっかけはコンテスト現場で会う保護者の方などからかけられる言葉だった。それらは「毎回写真楽しみにしています!」「いつかウチの子も撮ってもらえるように頑張ります!!」といった類のものなのだが、その時にこう思ったのだ。
プロ仕様の機材できっちりライティングをし、スケートボードのことを理解したフォトグラファーに本格的な撮影してもらうことは、ものすごく貴重な機会になるのではないか⁉ と。

プロスケーターならば自身のライディングを写真に残すことは仕事だし、自分も数えきれないくらいそのような現場を経験してきたので、当たり前の感覚だったのだが、プロスケーターとして活躍できるのは、全体のスケーターの数からすればごく僅か。その他多くのスケーターにとっては、トッププロと同じ条件で本気で撮影してもらえることはプレミアムな経験になるのでは!?

そしてひとつのイベントとして成立するのでは!? と思ったのだ。

幸い自分はストリートセッションやコンテストの撮影以外にも、専門誌に勤めていた頃にフォトセッションイベントの撮影も経験していたのでノウハウはあった。あとは時代に合わせて形を変えていくだけで良かったというわけ。

通い慣れたパークでも、フォトセッションを行うことで、さらに高難度のトリックにチャレンジするきっかけ作りができるのではないだろうか。

他にもやろうと思った理由はある。

ひとつは「コンテストの代わり」にもなるのではないか!? ということ。

コンテストの場合、皆が少しでも良い滑りをしようと会場となるスケートパークまで足を運び、事前に練習に励むことはよくある話だが、スケートボードの文化的背景を考えたら、フォトセッションでも似たようなことができると思っている。

どういうことかというと、フォトセッションが決まれば、参加者は少しでも良いトリックを残したいと思うはずだ。であれば「当日までにあのセクションであの技をメイク(成功)させたい」という想いで練習に励むことができるし、それがスキル向上にもつながると思う。

それにスケートボードは元来自由なものであったし「コンテストで勝つことが全てではない」という魅力や楽しさに触れるきっかけにもなると思っている。もちろんコンテストで優勝を目指すのも素晴らしいことだが、スケートボードにはそれだけに収まらない魅力があるのも確かなので、そうやっていろんな魅力に触れてほしいと思っている。

子供の成長記録にも最適

何度か開催しているgrindland SUNZUIでのフォトセッション。今では毎回のように参加してくれるスケーターもいる。ありがたい限りだ。

フォトセッションは、保護者の方から見ても子供の成長記録になるので、かけがえのない一瞬を永遠に閉じ込めることができるという観点から見れば、定期的に開催する価値も十分にあると思う。スタジオで残すような記念写真をスケートボードに置き換えたと例えれば理解しやすいのではないだろうか。

もちろん自分もその一瞬を切り取ることに全精力をつぎ込んでいるし、今まで数々のプロスケーターを撮影させてもらった経験もあるので、被写体側にどうやったらもっとカッコ良くなるか!? といったアドバイスも出来る。そうして一緒に有意義な時間を過ごせたら幸いだ。

ロケーション次第で様々な発展の可能性

バスの中で場ボードを回したり、ドラム缶を置いて跳び越える。周囲の協力が得られれば、”芸術”作品を共に創り上げることも可能だ。

フォトセッションは汎用性や発展性の高さも大きな魅力ではないかと思っている。

実は今コラムで掲載している写真は、全て今秋行ったフォトセッションイベント内で撮影したものなのだが、実にバラエティに富んでいることがお分かりいただけるはずだ。

ひとつは千葉県南房総市にあるスケートパーク、grindland SUNZUI主催のもと、ROMI’s Oceanさんの協力を得て、アメリカのカリフォルニアで実際に走行していたスクールバスを舞台に車内で撮影したり、そのバス背景にハーレーを跳ぶというシチュエーションを自作させてもらった。こういったプラスαの要素も組み込むと、参加者さんの思い出もより色濃くなるだけでなく、お店側のプロモーションとしても活用できるので、そういったコラボも面白いと思う。

もう一方は神奈川県横須賀市にて、行政側の許可を得て三笠公園内の一部を期間限定で開放したイベント。そこにセクション(障害物)を設置し、自由に移動しながら遊ぼうというものだ。

これは発想次第で無限の組み合わせが可能だし、スケートパークでは作り出せない風景写真の要素も詰まっている。そうしてストリートの雰囲気を味わいながら公式に写真に残せるのは最高の記念になるだろうし、さらに言えば、カルチャー全盛期のスケートボード写真文化を、現代風にアップデートさせた良いサンプルにもなっていると思う。これもスケートボードの大きな魅力だと確信している。

スケートボード写真の文化を未来へ継承したい

来年もこうした皆が笑顔になれるイベントを開催できたら幸いだ

いつものパークで残すも良し、近くのお店や施設とコラボするも良し、期間限定のイベントに組み込むも良し。

今はそうやって過去に撮影した写真を額装して飾っていることを、嬉しそうに報告してくれる人もいる。自分の写真が多くの方の生活に溶け込んでいるのは、撮影者にとっても幸せだ。

さて、来年はフォトセッションでどれだけの土地に行くことができるだろうか。 上手い下手など関係なく、数多くのスケートボーダーと写真に残す喜びを共有し、この文化を未来へと継承していくことは、自分にとっても大切な仕事になると思っている。

 

吉田佳央 / Yoshio Yoshida@yoshio_y_
1982年生まれ。静岡県焼津市出身。
高校生の頃に写真とスケートボードに出会い、双方に明け暮れる学生時代を過ごす。
大学卒業後は写真スタジオ勤務を経たのち、2010年より当時国内最大の専門誌TRANSWORLD SKATEboarding JAPAN編集部に入社。約7年間にわたり専属カメラマン・編集・ライターをこなし、最前線のシーンの目撃者となる。
2017年に独立後は日本スケートボード協会のオフィシャルカメラマンを務めている他、ハウツー本の監修や講座講師等も務める。
ファッションやライフスタイル、広告等幅広いフィールドで撮影をこなしながら、スケートボードの魅力を広げ続けている。

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