東京オリンピック競技に指定されたサーフィン。以前は、ともすると「レジャー」として扱われていたこのスポーツは、いまでは競技スポーツとして世間一般に広く認められている。若いアマチュアサーファーは、大会に勝つための努力をいとわないし、いつかプロサーファーとして生活することを当然のように夢見ている。そして、「プロで稼ぐには、大会で勝たないと」。業界では、それが常識とされているのだ。
ところが、そのような“ルール”に囚われることなく、自身のサーフィンスタイルを貫き、それを生業にしている人物がいる。プロフリーサーファー小林直海、その人だ。地元鎌倉の海でサーフィンを始めたという彼は、波の上を流れるように滑っていく「フローサーフィン」というスタイルを得意とする。競技サーフィンで結果を残していた彼が、競技性から逸脱したフリーサーフィンに転向したのは一体、何故なのか。今回のインタビューでは、彼の母であるエリコさんを迎え、生い立ちや転向の経緯、そしてこれからの活動を二人に語ってもらった。
「サーフィンでオカンに叱られたことなんてなかった」
-まずはエリコさんの話を聞かせてください。鎌倉にはいつから住んでいるんですか?
エリコ:鎌倉に家を買ったのが25年前。「海まで30メートル!」って書かれた電柱の張り紙と電話番号が、目にバンと飛び込んできたんです。他にもいろいろ見て回ってたんですけど、それ見たら「ここしかないんじゃないか」って気がして、決めちゃいました。
-運命の出会いですね。では、いつから親子でサーフィンを?
エリコ:直海がサーフィンを始めたのは3歳の頃です。私が乗っているロングボードの先端に、いつも直海がいました。たしか浮き輪をつけていたと思う。
直海:そうだったっけ。おれが覚えているのは、幼稚園の頃に、折れたシングルフィンのロングボードをリペアしてもらって乗っていたこと。オカンが初めて買ったボードだったと聞きました。

-中学生の頃はどうでしたか?
直海:中学校でサーフィンしていたのは自分一人でした。隣町の学校と、通っている学校が合併したことがあったんですけど、それでも一人。だから当時は、おれが鎌倉で一番サーフィン上手かったんです。だけど、鎌倉から鵠沼海岸まで通うようになってから、自分よりサーフィンの上手い子どもがザラにいてビックリしました。
-初めての挫折ですね。「わー、なんだこいつら!」みたいな。
直海:そうです。すごく悔しかった。今までは鎌倉で一人だったから、鵠沼で初めてライバルや、海の友達ができたんです。
-その頃のキッズ・ボーイズサーファーには、いわゆる“教育ママ”のような、スパルタの親御さんが付いていた記憶があるのですが、小林家はいかがでしたか?
エリコ:うちはぜんぜん。ライディングを後でチェックするために、ビデオカメラで子どものサーフィンを撮ってる人もいたけど、私はいつも肉眼でした。運動会とかお遊戯会でもビデオ回したことないです。ビデオに通して見たくはなかったんですよね。
直海:サーフィンでオカンに叱られたことがないです。でも、他の家は厳しい親が多かったよね。ゆるくやってたのはウチくらい。のびのびしてました。
エリコ:サーフィンの大会に出させるなんて考えたこともなかったけど、鵠沼に行くようになってからかな、急に本人が「出たい」って言うからビックリして。直海、大会で負けたら一人でわんわん泣いてたよね。
直海:NSA(アマチュア大会)の決勝常連がそろってたからね。みんなは技をバシバシ決めてました。フローサーフィンしていたおれは、正直、勝てる気がしなかったです。
エリコ:私は好きでしたけどね。直海のサーフィン。

-直海くんの独特なサーフィンスタイルのルーツは、どこから来ているのでしょうか?
エリコ:やっぱり鎌倉の波じゃないですかね。沖から岸までずーっと乗ってました。ロングボード向きのゆるい波が多いから。それもあって、直海のサーフィンスタイルはレールワーク(ボードのレールを使って方向転換する動作)中心でした。
直海:それはあるかもね。波の上で縦にアプローチするリップみたいな技よりも、フローターみたいにボードを横へ流していく技をしてました。
エリコ:それと、競らなかったよね。大会の時はみんなと同じピークで競るんじゃなくて、ちょっとずらしたところで別の波を見つけて、一人でサーフィンしてました。
直海:その方が好きだったんです。競ることは得意じゃなかった。マークも苦手でした。ガツガツと波を取りにくるサーファーも嫌だったな。でも大会に出ることは好きでしたよ。仲間と成長できたし、だからこそプロにもなったし。
-参考にしているサーファーはいましたか?
直海:海外サーファーだと、デーン・レイノルズやクレイグ・アンダーソン、あとウォーレン・スミスです。ジェレミー・フローレスやケリー・スレーターみたいなバチバチのコンペティターじゃなくて、そことは少し違うことをしてるようなサーファーが好きで見ていました。
NSAの全日本大会で優勝して、クイックシルバーがスポンサーになった時も、同じクイックのメンバーに憧れてたデーンやクレイグがいたから、「同じステッカーをボードに貼れる!」ってはしゃいでいましたね。
それから、鵠沼でよく一緒にサーフィンしている中村光貴くんや、大会の勝ち方を指導してくれた善家尚文くん。あとは萩原周くんです。自分がボーイズクラスの頃に、周くんはジュニアクラスで活躍していました。サーフィンメディアに出ていた周くんのライディング動画は、いつもチェックしていました。本人とは全然喋ったことなかったんですが。
-たしか、直海くんも出ていましたよね。
直海:ちょこちょこですね。でもその頃、自分はアマチュアだったし、かっこよくサーフィンできてはいなかったと思う。自分は動画を観てひたすら驚嘆していました。すごいサーファーがいっぱい出ていたので。

競技サーフィンからフリーサーフィンへの転向
-では、プロサーファーになった頃の話も聞かせてください。いつからプロに?
直海:JPSAのプロ公認を受けたのは、18歳の高校生の時です。公認試合に出たのは、19歳になってからかな。アマチュアの時はもちろん、プロになってからも、たくさん大会に出ました。
-経験を積んで、結果を積み重ねていったんですね。
直海:そうですね。JPSAのランキングはトップ10に入らなかったけど、3年ほど11番、12番にいました。大会単体では、2位が最高のリザルトです。
-アマ・プロと競技サーフィンを続けていて、どんなことを考えていましたか?
直海:めちゃくちゃ勝ちたくてしょうがなかったです。そう思うと、常に自分のしたいサーフィンはしてこられたかな。アマ・プロともに自分が納得のいく結果は残せたので、スポンサーの期待にも少しは応えられていたと思います。
-フリーサーフィンへの憧れはどうでしたか?
直海:競技サーフィンと同じくらいありました。例えば、自分は大会を観るよりも、フリーサーフィンの動画を観る方が好きでした。デーンのフリーサーフィンの動画なんて観まくってましたね。
-では、プロフリーサーファーになった転機はなんですか?
エリコ:わりと最近だよね。JPSAでプロになって3年目くらいで、直海のサーフィンに点数が付かなくなってから。
直海:最初は、自分のフロー(サーフィン)が注目されてるっていう自覚がありました。高い点数がもらえていましたから。きっとジャッジから見て、フレッシュに映ったんだと思います。それで結果的に準優勝できた。その年にルーキーオブザイヤーも獲得できました。
そのおかげで、つぎからトップシード(優先権)を持って大会に臨めるようになりました。トップシードがあると、本戦の4回戦目・5回戦目から優先的に出られるので良いことなんですが、正直、難しさを感じていました。そこから勝ち上がれなくなって。

-ある種の「燃え尽き症候群」だったのかもしれませんね。
直海:そうですね。トップシードは一度勝てば賞金がもらえて、ランキングも維持されやすい。一方で、1回戦目から勝ち上がってくる人は賞金への貪欲さがあるし、その日の波のコンディションに対して調整がきいてる状態なんです。海から上がって、他の選手から「直海のライディング、点数低いよ」って言われて、落ち込む反面、うれしさも感じていました。
-え、うれしかったんですか?
直海:はい。それと同じくらい、「直海のサーフィン好きだよ」って声をかけてもらえることが多かったんですよね。それ以来、大会で求められているサーフィンと、自分のスタイルにギャップを感じ始めたんです。
エリコ:直海は変わってなかったよね。勝った時も、負けた時も、ずっとフローサーフィンだった。QS湘南オープン(日本で行われた海外ツアーの大会)が鵠沼で開催された時に、コナー・オレアリーのお母さんとお会いして。お母さん、直海のサーフィンを見てビックリした顔で言ったんです。「フローして勝ってる子は初めて見た」って。私はその言葉が忘れられないです。
-才能を見てくれている人がいたんですね。
直海:はい。あと、転向のきっかけというか、サーフィンする環境が良かったのかも。サーフボードのスポンサーであるゼブラ ホンクアートには、競技用のショートボードだけじゃなくて、いろんなボードがあったんです。フィッシュテールとか、シングルフィンとか、レトロボードとか。同じボードチームに所属していた先輩の中村光貴くんたちが、それらのボードを使って波に対するアプローチの自由さや、サーフィンの楽しさを改めて教えてくれました。
あとは、先輩の大橋海人くんと、フィルマーの小川拓くんに、インドネシアのサーフィン撮影に誘われたことがあって。そのインドネシアでの撮影が、おれの中で一番良い経験になりました。そこから自分のサーフィンの映像を残していくのにハマっていったんです。2年前の撮影では、偶然いっしょにサーフィンしたクレイグが自分を絶賛してくれました。憧れのサーファーに認められて、フリーサーフィンに対するモチベーションが高まりましたね。

-アフェンズがスポンサーになった時のことも詳しく教えてください。
直海:クイックシルバーがスポンサーから外れて、しばらくアパレルはノースポンサーで大会に出ていたんです。そうしたらある日、前から一緒に撮影をしていたフィルマーの方に、「スポンサーの話が来てるんだけど、どう?」って声をかけられて。それが2017年4月9日だから、もう3年になります。
アフェンズがスポンサーになるって決まってからサーフムービーを作って、それをオーストラリアに送りました。公式のインスタグラムに『Welcome Naomi!』って載ってるのを見た時は、日本人として最高にうれしかったです。
エリコ:雰囲気もいいよね、黒髪で。「日本人!」って感じ。海外受けしたんじゃないかな。
直海:そうだね。海外のアフェンズのチームライダーはけっこう、直海のスタイルが好きだって言ってくれてます。アフェンズのライダーってエアーとかが得意だけど、レールワークが最高だって。そんな奴はあんまりいないみたいな。だから直海は最高だって。
エリコ:それもうれしいね。
直海:そうそう。でも、海外のロングボーダーまで自分のサーフィンを評価してくれたのにはビックリした。ジャレッド・メルとか、トロイ・エルモアとか。
エリコ:ロングボーダーは直海のサーフィン好きになるよね。
直海:アグレッシブなサーフィンが好きな人には、自分のサーフィンは好かれないかもしれないけど、自分にハマるものがたまたまそこだったってことだね。
-スポンサーの話がきた時、お母さんの反応はどうでしたか。
エリコ:えっ。あ、私は基本的に全然なんとも。別にいいじゃん、みたいな。
直海:そうだね。否定的なことはまず、なかった。母は、おれが決めたことに今まで一回もNOって言ってきたことはないです。波乗りに関することでは一度もないね。
エリコ:とりあえず試合は全部、絶対に見てるんですよ。勝った時はみんなが褒めてくれるから、そこは放っておいてよくて。負けた時に、良かったところを私が褒めてあげたいって思っててるんです。だから必ず見るようにしてる。負けた時に一番味方でいたい。ほんとそれだけで。他のことに口は全く出しませんでした。

-競技とは違った、フリーサーフィンならではの厳しさもあると思うのですが、どうですか?
直海:ありますね。アフェンズの社長は、ジョノ・サーフィールドって人なんですけど、もともとQSサーファーで、サーフィンがめちゃくちゃ上手いんです。チューブライディングなんかはおれより上手い。だからサーフィンに対する目が肥えてるんです。こっちから送ったライディングの映像に「これじゃダメだよ」ってバッサリ返されることもありますね。
-スタイルの多様さはあるけれど、妥協は一切なさそうですね。
直海:めちゃくちゃこだわってますよ。映像としてのクオリティーが低ければ、フッテージとして認めてくれない。すごくシビアです。もちろん、競技サーフィンも同じくらいシビアですが。
ただ、フリーサーフィンの世界は競技と違って目に見える数字や順位がないから、ノルマがないというか。自分と相手を、どう納得させるかが勝負になるんです。
-直海くん自身は、どのように映像にだわっていますか?
直海:ライディングの順番、カットのタイミング、テイクオフの使う使わない、カメラとの距離感などです。年々、自分のサーフィンに対して自分が納得したいっていうのが強くなってきてて。だから、動画編集にも細かく言うようにしてます。ガンガン言える人と、恐れ多くて言えない人がいますけど(笑)。
ありがたいことに去年から、雑誌やメディアに取り上げて貰うことが増えたので、人目に触れる前に映像を細かく確認させてもらっています。その点では、10代・20代のフィルマーさんは自分のこだわりをわかってくれる人が多いので、とても期待しています。いっしょにいい映像を作り上げていきたいです。

プロフリーサーファーとしての歩み方
-最近加入した「WHAT YOUTH」について教えてください。
直海:「WHAT YOUTH」は、フィルマーのカイ・ネビルとエディターのトラビス・フェレ達のクリエイティブチームがスタートしたユースカルチャープロジェクトです。今年に入ってからジャパンチームが発足して、創設メンバーに僕が参加することになりました。
アフェンズを日本に流通させた万歳さんという方が、このプロジェクトに誘ってくれたことがきっかけです。僕たちは「ビバさん」ってニックネームで呼んでます。
-具体的にどんな活動をしているんですか?
直海:サーファーの村田嵐、渋谷玄仁、スケーターの中田海斗、ダンサーのRinaと一緒に運営しています。コラムを書いたり、アートワークを掲載したり。もちろん、サーフィンのフィルムも載せてますよ。
-新しい試みですね。始めてみてどうですか?
直海:チャレンジしてますね。この間は、ある人にインタビューしに行きました。自分はインタビューされることが多いから、この経験を生かしてやってみようって。そうしたら、終わった後の録音の文字起こしがめちゃくちゃ大変でした(笑)。
でも、生き方だったり、サーフィンスタイルだったり、これまで写真や動画で見せてきたものを新しい形でアウトプットできて楽しいです。

-順風満帆という印象を受けますが。
直海:そんなこともないですよ。実を言うと、契約してたスポンサーが二つなくなっちゃって。プロのフリーサーファーは、常に人の目を引きつけないといけないので。その点では、競技サーフィンと同じくらいシビアです。みんな大変なので、みんなで乗り越えていきたいですね。
-サーフィンが東京オリンピック競技になったとはいえ、業界が厳しいことに変わりはないと思います。
直海:特に今年はそうです。新型コロナウィルスの影響で、知り合いのプロサーファーは減給になっちゃいました。プロ野球選手みたいに年俸で莫大なお金が入るわけではないので、スポンサーが一つなくなると、とたんに経済的に厳しくなるんです。だから、サーフィンとは別の仕事をやっている人が大勢います。可能性のあるプロサーファーが、お金を稼げずにやめていくことが多くて。そういったプロサーフィン界の現状には、すごく問題意識を感じてます。

-では今後、プロフリーサーファーとしてどう歩んでいきたいですか?
直海:自分がかっこいいと思うことで、周りと自分を納得させていきたいですね。あと、プロにお金を回す。そのためにも、いままで自分がしてこなかったことに挑戦していきます。「WHAT YOUTH」もその一つです。アウトプットの場を増やして、自分のフッテージとサーフィンの素晴らしさを世間に発信していけたらなと。もっと多くの人に見て、触れてもらえれば、結果的にプロサーファーにお金が回るようになるんじゃないかと考えています。いまは、そのための畑を作ってるような感じです。必死に耕してます。
-では、最後に一言お願いします。
直海:どのスポーツもそうかもしれませんが、人って大会結果とか、順位に注目するじゃないですか。その方がパッと見てわかりやすいし、宣伝にもなると思うので。
おれはその中で、あえて自分のサーフィンスタイルで人を魅了していきたいと思っています。そして、自分の次の世代にも、それを道として示してあげたい。あまり大きなことは言えないんですけど。それで「フリープロサーファー」っていう選択肢が、みんなの常識になったら最高です。
小林直海

1995年7月11日生まれ。鎌倉市出身・在住。レギュラーフッター。プロ初年度の2014年に準優勝を果たし、ルーキーオブザイヤーを獲得。近年、フリーサーファーとしての活動を開始した。スポンサーは「Afends」「Zburh surf boards」「Fit systems」「Captain fin」「Grass green surf garage」「Brisa marina」。
text by 佐藤稜馬
photo by Kazuki Murata
SPECIAL EDITION

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bmx中村輪夢は2連覇、内藤寧々は女王返り咲き!「マイナビ Japan Cup Yokosuka」BMXパーク種目2023.06.052023年6月3日(土)、4日(日)に神奈川県横須賀市のうみかぜ公園にて「マイナビ Japan Cup Yokosuka」BMXパーク種目が開催され、男子エリート決勝では中村輪夢、女子エリート決勝では内藤寧々が優勝に輝いた。 今大会は「C1大会」としてワールドカップ出場に必要なワールドポイントを獲得することができ、外国人選手も参加可能な「国際大会」にグレードアップされて開催された。会場にも多くの観客が集まり、隣接されたショッピングモールでも足を止めて観戦する人々の姿が多く見られた。 女子は内藤寧々が女王に返り咲く。 内藤 寧々 ©Naoki Gaman / JFBF 今回国際大会として開催されたこともあり、近年では最大出場人数である7名が参加した女子エリートクラス。そんな予選を勝ち上がった4名で争われた決勝では前全日本チャンピオンで日本代表選手でもある内藤寧々が優勝し、再び女王へと返り咲いた。内藤は1本目のランで的確にトリックをメイクし49.20ptで暫定首位に立った。前回の名古屋大会では「540」を決めきれず優勝を逃していたが今回は一本目のランで540を封印し、まとまった構成を見せて確実にポイントを獲得した。 前回大会の優勝者である杉尾咲空は「360」や「1本目のランで38.60ptを獲得し、2本目のランで内藤のポイントを上回れるかに注目が集まったが得点は39.80ptでフィニッシュして2位となり、この瞬間に内藤の優勝が決まった。内藤はウィニングランの2本目で前回大会でメイクできなかった「540」にチャレンジ。惜しくも転倒し痛みをこらえる姿が見られるも、観客からは大きな拍手が送られた。自身の納得いくランとはならなかったものの今シーズン初優勝を手にした。 3位には今回国際大会になったことで初めて本シリーズに参加した韓国のオ・シネ。他の選手が使わない一番高いクオーターからドロップインし、スタイリッシュな「クロスアップ トゥ ターンダウン」を魅せるなど、日本人とはまた違ったクールなライディングを魅せてくれた。今後も海外選手の刺激を受けて日本の女子エリート界が更に発展していくことだろう。 中村輪夢は今シーズンのJapanCup 2連覇達成! 中村 輪夢 ©Naoki Gaman / JFBF 男子エリートにて優勝に輝いたのは絶対王者・中村輪夢。予選を1位で通過し、最終走者となった中村は、一本目のランから「バックフリップ・バースピン・トゥ・テールウィップ」や、「720・ダブルバースピン・トランスファー」など高難易度のトリックを連発。圧巻のランで89.00の高得点を記録し、暫定1位に立った。 2本目のランでは、1本目のランで得点を伸ばせていなかった溝垣丈司がフルメイクで会場を盛大に沸かせる。「360」のトランスファーや、「360・クアッドバースピン」の高難度トリックを上手くまとめて追い上げにかかる。 溝垣 丈司 ©Naoki Gaman / JFBF 今大会は2本のランを行い得点の高いランを採用する「ベストラン方式」であるため溝垣丈司の得点次第で優勝者が決まるかたちとなったが、惜しくも溝垣の2本目のランは78.60ptで及ばず。中村輪夢は自身のラストランを待たずして優勝が決定した。 優勝が決定した中村輪夢はウィニングランでも高難易度のトリック「720バースピン・トゥ・テールウィップを繰り出し、会場を盛り上げる。うみかぜ公園に集まった観客は今日イチの大きな歓声と拍手で中村輪夢のランに応え、初の国際大会となった「マイナビ Japan Cup Yokosuka」を締めくくった。 優勝者コメント 左:内藤寧々 右:中村輪夢 ©Naoki Gaman / JFBF 男子エリート決勝 1位 中村 輪夢今回は技の難易度も海外の大会でやるような技を決められたので良かったです。以前は世界の大会で一位も取っているので、日本の大会では負けられないなと思っています。パリ五輪の目標はもちろん一位をとることで、次勝てれば東京五輪の負けも活きてくると思うので、今はそこに向けて頑張りたいです。 女子エリート決勝 1位 内藤寧々今回はC1大会だったこともあって、前回の名古屋大会みたいにリスキーな技を2本ともやるより、1本目は自分のできる技をしっかりやって2本目でチャレンジしようと思っていました。そんな中で1本目がしっかりできたことは自分の中で良かったです。 大会結果 ©Naoki Gaman / JFBF <男子エリート>優勝:中村輪夢 / 89.00pt準優勝:溝垣丈司 / 78.60pt第3位:小澤楓 / 70.80pt <女子エリート>優勝:内藤寧々 / 49.20pt準優勝:杉尾咲空 / 39.80pt第3位:OH SINAI(オ・シネ)/ 35.40pt
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bmx佐々木元が横須賀で王座奪還!「マイナビ Japan Cup Yokosuka」BMXフラットランド種目2023年6月3日(土)、4日(日)に神奈川県横須賀市のうみかぜ公園にて「マイナビ Japan Cup Yokosuka」BMXフラットランド種目が開催され、男子エリート決勝では佐々木元、女子エリート決勝では宮嶋歩菜が優勝に輝いた。 シーズン2戦目の開催となった今大会では、前回大会の「マイナビJapan Cup」名古屋大会の男子エリートで優勝し、X Games Chiba 2023でも優勝に輝いている片桐悠や、先日行われたFISE Montpellierにて初優勝を飾った荘司ゆうなど、国内トップライダーたちが参戦しトップの座を競い合った。 男子エリート決勝に進出した12名 ©️Naoki Gaman / JFBF 男子エリートは佐々木 元がフルメイクで優勝! 佐々木 元 ©️Naoki Gaman / JFBF 男子エリートで優勝に輝いたのは千葉県出身の38歳、佐々木元(鎌ケ谷巧業)。前回の名古屋大会で優勝している片桐悠をはじめ、荘司ゆう、磯谷匠など有望な若手が勢いを増す中、ベテランが貫録のパーフェクトライディングで優勝をつかみ取った。 予選を3位で通過した佐々木は3分間のライディングの中でノーミスの完璧なパフォーマンスを見せる。どこかリラックスした雰囲気の佐々木は、自身のシグネチャートリック「元スピン」をはじめフロントを使った世界最高難易度とも言えるハイレベルなトリックを展開していく。クロスフットやノーハンドで多彩なスピンのバリエーションを見せ、ラストはクロスフットの切り返しで締めて91.50ptの高得点を記録。暫定1位に躍り出た。 片桐 悠 ©️Naoki Gaman / JFBF 佐々木の次に登場した伊藤真人は87.50ptでライディングを終了し、結果は最終走者の片桐に委ねられた。 片桐は持ち前の正確なライディングと「フルバイクフリップ」を用いた高難易度なトリックで攻めていく。名古屋大会に続いて2連覇が期待されたが、惜しくもライディング中に地面に足がつく場面があり、得点は90.83ptと高得点ながら1位の得点には及ばず準優勝。この瞬間に佐々木の優勝が決まった。なお佐々木は昨年に初開催された横須賀大会でも優勝しており、横須賀の地においては通算2度目の優勝となった。 「X Games Chiba 2023」や「FISE Montpellier」では表彰台に絡めず、前回の世界選手権以降なかなか良い成績を残せていなかった佐々木。各大会の優勝者(X Games Chiba 2023は片桐が優勝、FISE Montpellierは荘司が優勝)を抑えての優勝はひとしおだろう。自身のInstagramでも今回の優勝に対する喜びを表していた。 この投稿をInstagramで見る Moto Sasaki(@motosasaki)がシェアした投稿 女子は14歳の宮嶋 歩菜が大会2連覇! 優勝した宮嶋 歩菜 ©️Naoki Gaman / JFBF 女子は中川きららや川口朔来の常に国内大会トップに位置する2人を抑え、弱冠14歳の宮嶋歩菜が優勝して大会2連覇を飾った。決勝に進出したライダーの中で最年少の宮嶋は、物怖じしない落ち着いたライディングでトリックをメイクしていく。ラストは「スピンからマックサークルのコンボ」をメイクして終了。81.83ptの高得点で女子決勝で唯一の80点台を記録した。 2位には川口 朔来、3位には中川きららが入った。新たな世代がエリートクラスに昇格し、目まぐるしく順位が入れ替わる女子にも引き続き注目である。 大会結果 左:宮嶋 歩菜 右:佐々木 元 ©️Naoki Gaman / JFBF <男子エリート>優勝:佐々木 元 / 91.50pt準優勝:片桐 悠 / 90.83pt第3位:荘司 ゆう / 88.00pt <女子エリート>優勝:宮嶋 歩菜 / 81.83pt準優勝:川口 朔来 / 77.67pt第3位:中川 きらら / 77.50pt 大会概要 ⼤会名称 : 「マイナビ Japan Cup Yokosuka」開催期間 : 2023年6月3日(土)~4日(日)- 2日間 –※詳細は公式HPをご覧ください。大会会場::神奈川県横須賀市 うみかぜ公園(神奈川県横須賀市平成町3-23)主催: 一般社団法人 全日本フリースタイルBMX連盟(JFBF)共催:横須賀市後援:一般社団法人 日本アーバンスポーツ支援協議会特別協賛:株式会社 マイナビ協賛:鎌ケ谷巧業株式会社企業版ふるさと納税:信金中央金庫
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bmx今週末にBMXの聖地で開催される国際大会「マイナビ Japan Cup Yokosuka」の見どころ2023.06.02BMXフリースタイル種目の競技大会である「マイナビ Japan Cup Yokosuka」がうみかぜ公園 (神奈川県横須賀市)にて、今週末の2022年6月3日(土)~4日(日)の2日間に渡って開催される。 神奈川県横須賀市の全面バックアップの下で、 横須賀市では今回2度目の開催となるこの大会は今回より外国人選手も参加可能な「国際大会」にグレードアップされ、ワールドカップ出場に必要なワールドポイントを日本国内で取得できるようになることから、海外選手の参加も見込まれ去年より盛り上がることは間違いない。 そして今回の会場となる「うみかぜ公園」はダートジャンプコースやスケートパークが併設された公園であり、BMXカルチャーが根付く全国でも有数な聖地の一つだ。また大会レガシーとして前回使用されたセクションを中・上級者向けBMXパークとして常設したことから競技者からファンライドを楽しむ全てのBMXライダーにゆかりのある場所となっている。 本記事では、昨年よりも更に勢いを増した今大会を盛り上げる日本を代表するライダーたち4名をピックアップして紹介する。 BMXフリースタイル・パーク 中村 輪夢(所属:ウィングアーク1st) 中村輪夢のライディング「マイナビ Japan Cup」/ ©JFBF BMXフリースタイル・パーク種目ではもちろんのこと、日本のBMXシーンを牽引する今世界から最も注目されている選手の一人。昨年度には今まで日本人が成し得なかった世界チャンピオンとなり世界最高の称号を持つ彼が初めてこの横須賀大会に出場。UCIワールドカップを始め、X GamesやSimple SessionなどBMXの様々な世界大会で快挙を残してきた彼の走りを国内で見れる機会はそう多くないため今回是非この場に訪れて、世界も認める人間離れしたハイエアーとその中で繰り広げられる様々な回転技のコンビネーションを目の前で見て欲しい。 小澤 楓(所属:岐阜第一高等学校) 小澤のライディング「マイナビ Japan Cup」/ ©JFBF 前回の「マイナビ Japan Cup Yokosuka」ではエリートカテゴリー初優勝を果たした、弱冠15歳ながら世界レベルの実力を持つBMXライダー。2017年及び2019年には世界選手権で優勝しジュニア世界チャンピオンとなり、2021年には13歳~15歳の年齢別クラスでJFBFの年間シリーズチャンピオンの経験を持つ。昨年からJFBFのエリートクラスに昇格し最年少でありながら並いる強豪を突き放し優勝や準優勝を続けている彼。2022年のワールドカップシリーズFISEの最終戦では準決勝進出を果たすなど世界でも着々と結果を積み上げる彼の走りに今回も注目だ。 BMXフラットランド 片桐 悠 (所属:GLOW) 片桐悠のライディング「マイナビ Japan Cup」/ ©JFBF 今世界で一番強く、最先端のライディングをしていると言っても過言ではないほど、高難度で他の選手ができないトリックを多く持つ若手ライダー。師匠に世界大会11回優勝経験のある内野洋平を持つ彼は、内野同様に高難度かつ独創性の高いトリックを得意とする。その中で彼の代名詞は「フルバイクフリップ」という自分の身体のお腹側でバイクを横に一回転しキャッチする技。今までも世界大会でたくさんの好成績を残してきた彼だが、前回初めて出場した「マイナビJapan Cup」 第一戦で周りを大きく引き離し優勝。また先日開催された「X Games Chiba 2023」でも優勝した彼のライディングを横須賀で再び見ることができる。 荘司 ゆう 荘司ゆうのライディング「マイナビ Japan Cup」/ ©JFBF フロントトリックとリアトリックの両方を扱い高難度トリックを魅せる彼。そんな彼が一躍世界最高峰の選手として認識されるようになったのは、2020年にフランスで行われたワールドカップに初出場し、若さを生かしたパワフルなライディングで勝ち取った準優勝がきっかけ。同年は国内大会で表彰台に登り、ポイントランキングで年間3位になる。また先日行われたFISE Montpellierでは初優勝を飾るなど今乗りに乗っている彼が今大会に出場だ。 大会を更に盛り上げるサイドコンテンツ 「マイナビ Japan Cup」/ ©JFBF 今回は更にこの大会を色々なジャンルや年齢層の方に楽しんでもらうべく様々なサイドコンテンツが用意されている。競技観戦ももちろんだが、是非自身でもこのスポーツを体験するなど色々な楽しみ方で素敵な週末を横須賀で過ごしてほしい。 【アーバンスポーツ体験会】 BMX、スケートボードの体験会を開催。体験用具をたくさんご用意し、アーバンスポーツ初心者を広く歓迎します。 【のりものフェスタ連携スタンプラリー開催】 6/4(日)にヴェルニー公園で開催の「よこすかYYのりものフェスタ」とコラボしたスタンプラリーを開催。 スタンプラリー完走者にはBMXペリーのオリジナル缶バッジをBMX会場でプレゼント。 またヴェルニー公園とうみかぜ公園間で無料シャトルバスを運行します。 【BMXペリー限定Tシャツ販売】JFBFと横須賀市の連携協定のシンボルとして昨年発表し人気を集めた「BMX に乗るペリー」が進化し、オリジナルTシャツに!大会会場で限定販売します。 横須賀青年会議所による【ワンコイン地域活性プロジェクト】6/4(日)に市内で 500 円以上のお買い物をしてレシートを会場ブースに持参すると、横須賀市×BMX ステッカープレゼント。(無くなり次第終了) ※6/2(金)は終日雨天予報のため全てのプログラムがキャンセルとなります ※6/3(土)に予定していた体験会やブース営業等のイベントは全て中止となりました 大会概要 ⼤会名称 : 「マイナビ Japan Cup Yokosuka」開催期間 : 2023年6月3日(土)~4日(日)- 2日間 -※詳細は公式HPをご覧ください。大会会場::神奈川県横須賀市 うみかぜ公園(神奈川県横須賀市平成町3-23)主催: 一般社団法人 全日本フリースタイルBMX連盟(JFBF)共催:横須賀市後援:一般社団法人 日本アーバンスポーツ支援協議会特別協賛:株式会社 マイナビ協賛:鎌ケ谷巧業株式会社企業版ふるさと納税:信金中央金庫
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skate自身の冠大会というプレッシャーを跳ね除けた、王者堀米雄斗のラストラン「UPRISING TOKYO Supported by Rakuten」楽天グループ株式会社が主催するスケートボード・ストリート種目の国際大会「UPRISING TOKYO Supported by Rakuten」が2023年5月26日(金)から28日(日)の3日間にわたり、有明アリーナにて開催され、男子は堀米雄斗、女子は上村葵が優勝し記念すべき第1回大会の王者の座を獲得した。 「UPRISING TOKYO Supported by Rakuten」は日本を代表する大手企業の楽天グループと同じく世界を舞台に大活躍する日本人プロスケーター堀⽶雄⽃との戦略的パートナーシ ップのもと開催された。この大会は堀米の信念でもある「スケートボードカルチャーとスケートボードの楽しさを伝えていきたい」という思いを発信していくための活動の一環としても注目されていた。そんな信念を根底に設計されたパークは、ハリウッド・ハイを模した12段のステアや東京の街をモチーフにしたセクションなどストリート要素が色濃く表れたセクションも特徴的であった。 そんな今大会の決勝は世界中から名だたるトップスケーターが集まり初代王者の座が競われる中で数々のドラマが見られた。今回はその中でもそんなハイレベルな戦いを見事勝ち取った男女ストリート、ストリートベストトリックの優勝者である各4名が魅せたドラマを本記事では触れたいと思う。 予選での怪我を堪え、勝ち取った優勝 上村 葵 ©Rakuten Sports 世界大会で結果を残す選手から大型ルーキーまで日本の最高峰の選手だけで争われた女子決勝は予選で負傷した膝の痛みが多少残る中でランに挑んだ14歳の上村葵が優勝。技の多さはさることながらセクションの使い方という意味でも様々なバリエーションを兼ね備えている彼女は、緊張した面持ちで1本目に入る。終始安定したランを進めるも最後に侵入したビックハンドレールでの「バックサイド・ボードスライド」を失敗し転倒、やはり痛みが残るのかやや足を引きずるような仕草も見られた。スコアは51.29ptだった。 暫定7位で迎えた2本目は「フロントサイド・フィーブル」で始める。トリックのトランジション中は膝をかばいなからゆっくり移動するも着実にトリックを決めていき、最後はビックハンドレールでの「バックサイド・スミスグラインド」をメイク。自分の狙ったトリックのメイクに思わず笑顔が溢れガッズポーズを見せた。おそらく怪我をした足を使うライディングで不安な中決めきったことへの喜びと安心感だろう。周りからも歓声が湧き、コース横で見ている仲間たちとグータッチする様子も見られた。そしてスコアを84.19ptとし暫定1位へ浮上した。 最後の3本目のランでは最初のトリックで転倒。ヘルメットと下に被っていたキャップがズレてしまい被り直す時間もありなかなかランを再開できずにて時間だけが過ぎていく。その後も再開するもトリックをメイクできずに転倒。スコアを上げることが出来なかったため優勝できるかの命運は上村の後の最終滑走者である赤間の結果に託されたが、赤間もなかなかトリックが決めきれず転倒もよく見られた。上村は2本目のベストスコアを守り切り見事優勝。優勝が決まった瞬間に他の選手たちや仲間が駆け寄り彼女の優勝を称えていた。 また2位には神奈川出身の吉沢恋、3位には兵庫県出身の大西七海が入った。国内外で輝かしい実績を誇る西矢椛の大会欠場もあったが、決勝に進出した10名はすべて日本人選手であり、10代前半のスケーターたちの活躍が特に印象的であった。 ラストランで掴み取った逆転優勝 堀米 雄斗 ©Rakuten Sports 男子決勝には堀米雄斗をはじめ、池田大輝や白井空良、佐々木音憧など国内トップレベルの実績を持つ選手がラインナップ。海外からもシード選手として参戦しているカルロス・リベイロ(ブラジル)や準決勝を1位通過したトミー・フィン(オーストラリア)など豪華な顔触れとなった。 今大会開催のきっかけとなり優勝候補筆頭であった堀米雄斗は決勝で自身の思うようなライディングができず苦戦。1本目では終始安定したトリックでランを進めるが最後にトライした「ノーリー270・バックサイド・ボードスライド」で着地に失敗し80.81ptに。 暫定4位で迎えた2本目では天を見上げてひと呼吸置いてからランに入る。少しバランスを崩しかける様子もあったが全体的はミスのないランを展開するも、またもやラン終盤の同じセクションでトライした「ノーリー270・バックサイド・ボードスライド」で着地に失敗。失敗した後には自分に苛立ちボードを投げる様子も見え、スコアを75.48ptとし、4位のまま最終ランを迎えた。 最後は暫定5位で3本目のランを迎えるが、ランに入る前の表情はどこか心を決めたような様子。ランの最初はハリウッドハイセクションでの「ノーリー・バックサイド180・スイッチフロントサイド50-50」をメイク。その後も「ノーリー270・バックサイド・ボードスライド」をメイクしていく。そしてランの最後はハリウッドハイセクションで1・2本目とは違う「スイッチ180・クルックドグラインド」をチョイスし見事フルメイクを決め87.94ptをマークした。会場からは大きな歓声が沸き、見事「UPRISING TOKYO Supported by Rakuten」の初代王者に輝いた。 ランの前に見せた表情はきっと気持ちを切り替えて、勝ちに行くトリック選びをした決意の表れだろう。実際優勝後のインタビューでは「1、2本目のランは最後のトリックが上手くいっていなかったので自分の中で調整して3本目は乗り切れた」と話していた。いろんなプレッシャーがある中ラストランで決め切る姿は、東京オリンピックでの決勝を彷彿とさせる世界一になった選手の強さだと改めて感じさせた。 前田 日菜 ©Rakuten Sports 濱村 大征 ©Rakuten Sports また男女の決勝後にはジャムセッション形式で男女の「ベストトリック」がハリウッド・ハイのハンドリールとダウンレッジで開催された。様々な選手が自分たちのベストを披露する中で、一際歓声も多かったのが女子は前田日菜の「キックフリップ」をエアキャッチでパーフェクトメイク、男子は濱村大征のメイクした「バックサイドKグラインドノーリーフリップアウト」。この2人が優勝を勝ち取り、今大会の全てのコンテンツを締めくくった。特にベストトリックは今大会のミッションである「国内外のスケートボードとそのカルチャーの発展」に沿った、国内のこれから世界で輝く才能が世界中に発信される瞬間を目の当たりにした。 各部門 優勝者コメント ©Rakuten Sports 男子優勝 堀米 雄斗 「優勝できてすごくホッとした気持ちです。1、2本目のランでもう少し決め切れていれば違うトリックのチョイスもできたんですが最後のトリックが上手くいっていなかったので、自分の中で調整して3本目に乗り切れたので良かったです。今シーズンの出だしはあまり良くないので、ここから切り替えて6月のローマで行われるオリンピック予選もクリアしていきたいです。」 女子優勝 上村 葵 私はバックサイドスミスが一番得意で、そのトリックで乗って優勝できたので良かったです。今大会は街中の手すりと同じような大きさのセクションが置かれていらので、そこが大会として印象的でした。今の私の日本のランクが6位ぐらいなので、今後は3位以内に入って必ずオリンピック代表になりたいです。 女子ベストトリック優勝 前田日菜 「自分の好きな技でベストトリックをとれたので良かったです。私の得意なキックフリップは人それぞれで見え方が違って、自分らしいキックフリップで乗れたので嬉しいです。この大会が終わったらアメリカに行くので、頂いた賞金はその費用にしたいです!」 男子ベストトリック優勝 濱村 大征 「自分のベストな技で挑戦した結果、このような結果を頂けたので良かったです。日本で海外の人と滑ることができたし、今後もスケートボードを広めていくために活動していきたいです。」 大会概要 イベント正式名称: 「UPRISING TOKYO Supported by Rakuten」 日程: 2023 年 5 月 26 日(金)〜28 日(日)会場: 有明アリーナ(東京都江東区有明 1 丁目 11-1)主催: 楽天グループ株式会社後援: 東京都、江東区大会カテゴリー: 男子部門、女子部門、ジュニア部門 その他イベント: エンターテインメント、音楽、ファッション、スケートボードカルチャー関連の催し大会ビジョン: 「すべての人にスケートボードの魅力を届け、価値を創造する存在となる」
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climbボルダーW杯前半戦が終了!気になる日本人選手の活躍は?2023.06.012023年5月21日(現地時間)アメリカ・ソルトレイクシティにて、ボルダーW杯第3戦となる「IFSC ボルダーワールドカップ ソルトレイクシティ」が開催され、合計6戦が組まれている今シーズンのボルダーW杯は折り返しを迎えた。 ここで日本人選手の現時点でのW杯年間ランキングも踏まえて前半戦を振り返り、6月2日(現地時間)からチェコにて行われるボルダーW杯第4戦にも注目していきたい。 男子・楢崎智亜が年間ランキング1位に浮上 楢崎 智亜 / ©Slobodan Miskovic/IFSC. 現在、男子のボルダーW杯年間ランキング(2023年5月22日時点)1位は楢崎智亜だ。W杯開幕戦の八王子大会では準決勝敗退と振るわなかったが、2戦目のソウル大会では調子を上げて準優勝で銀メダルを獲得。降雨により決勝戦は行われず準決勝の結果が最終成績となったが、持ち前の実力を発揮して表彰台に食い込んだ。 そして迎えた第3戦のソルトレイクシティ大会では、決勝の舞台で全課題を完登する大活躍。堂々のパフォーマンスで優勝を手にし、ボルダーW杯前半戦を終えた。 現在楢崎の年間ランキングは1位だが、2位には僅差でフランスの18歳 メジディ・シャールックがつけている。彼はW杯初戦の八王子大会、2戦目のソウル大会を2大会連続優勝している若手選手だ。第3戦のソルトレイクシティ大会は「残りのシーズンに集中するため」として大会出場はなかったが、今後もトップ争いに絡んでくるであろう選手だ。 この投稿をInstagramで見る Mejdi Schalck(@mejdi_schalck)がシェアした投稿 さらにソルトレイクシティ大会では16歳の安楽宙斗が2位となり、自身初の表彰台に上がっている。安楽の年間ランキングは5位と上位につけており、日本人では楢崎に次いで高い順位となる。ほかにも日本人選手では一昨年、昨年と2年連続で年間ランキング1位に輝いている緒方良行など実績を兼ね備えた選手がまだまだ控えている。 ボルダーW杯は6月14日から~16日にオーストリアで行われる第6戦が最終戦となり、その後はリードW杯へと続く。そして今年の8月にはパリ五輪の出場権がかかるクライミング世界選手権(ボルダー&リード)もスイスで開催されるため、より熾烈な争いがこの先にも待っているだろう。 日本の選手たちがオリンピック出場へとつながる世界選手権に出場するためには、W杯で結果を出して日本代表選手に選ばれることが必要となってくる。まずはボルダーW杯 第4戦以降の日本人選手たちの活躍に引き続き期待したい。※世界選手権の日本代表枠 5 つのうち安楽宙斗 、楢崎明智、百合草碧皇の3名がすでに決定しており、残り2枠が争われる 安楽 宙斗 / ©Slobodan Miskovic/IFSC. 野中生萌は年間ランキング3位をキープ 野中生萌 / ©Dimitris Tosidis/IFSC. 野中生萌は現在のW杯年間ランキング(2023年5月22日時点)3位につけており、八王子大会で準決勝敗退、続く第2戦のソウル大会では優勝、ソルトレイクシティ大会では準決勝敗退の結果となっている。 現在の女子年間ランキング1位はアメリカのブルック・ラバトゥだ。八王子大会で優勝、ソウル大会は3位、ソルトレイクシティ大会では3位、と安定した成績で常に表彰台に上がっている。続くランキング2位のナタリア・グロスマン(アメリカ)もソルトレイクシティ大会で今シーズン初優勝を飾り、調子を上げてきたように見える。ランキング上位を占める海外勢に対して松藤藍夢や伊藤ふたばなどの日本勢が割り込んでいけるのか、期待しながらボルダーW杯後半戦も見ていきたい。 そして女子も同様、8月には世界選手権を控えており日本代表の枠は森秋彩と松藤藍夢が決定している。残り3つの代表枠には誰が絡んでくるのか、こちらも引き続き注目していきたい。