怪我を乗り越えて強さを見せた草木ひなのが優勝!「第3回マイナビスケートボード日本OPEN supported by Murasaki Sports」パーク女子決勝

2025.04.09
記事提供: CURRENT/photograph by ©︎WSJ

2025年4月5日(土)〜4月6日(日)に「第3回マイナビスケートボード日本OPEN supported by Murasaki Sports」 が鵠沼海浜公園スケートパークにて開催された。昨年パリオリンピックを含む世界的に大きな注目を集めたシーズンが終わり、次は3年後に開催されるロサンゼルスオリンピックを見据える中、新たなスタートが切られた2025年シーズンの公式開幕戦が今大会。

今大会にはオリンピックメダリストである四十住さくら開心那が欠場した一方で、国際大会派遣選手の選出や2025年強化指定選手の選考に関わる重要な大会ということもあり全国から実力者たちが集まった。大会当日は決勝日に雨天が予想されたことから、本来予定されていた準決勝を取り止め、予選の結果から上位8名が決勝に出場する展開に。

そんな本決勝は全17名の出場者の中、予選を勝ち上がった合計8名で競われ、スタートリストは福田碧、加藤渚都夏、小川希花、貝原あさひ、鷹野芙由佳、藤井雪凛、能勢想、草木ひなのの順となった。

大会レポート

【ラン1本目】

貝原あさひのライディング ©︎WSJ

オリンピックや国際大会と同様に今大会の決勝は45秒のラン3本目のうち1本のベストスコアが採用されるフォーマットで行われた。このフォーマットは一度ボードからを落ちた時点でランを続行できなくなるため、後半で攻めのトリックにトライするためにも1本目は走り切ってフルメイクすることでまずベースとなるスコアを残しておきたいところ。

決勝1本目最初の滑走者となったのは福田碧。福田は様々なグラインドトリックをベースに取り入れた全体的に流れるようなライディングを見せる。エクステンションでの「ブラントtoフェイキー」やコーピングでの「フロントサイドリップスライド」を決め切りフルメイクすると62.85ptをマークし幸先の良いランを見せた。

そんな福田の後に滑走しフルメイクしたのは加藤渚都夏。彼女はトランスファーでの「アリウープ」をメイクすると、エクステンションでの「リーンエアーtoテール」やコーピングでの「バックサイドボードスライド」などスタイルのあるライディングで59.19ptをマークした。

貝原あさひのライディング ©︎WSJ

他のライダーたちがなかなかスコアを伸ばせずにいる中で、彼女たちを上回るスコアをマークしてきたのは貝原あさひ。まずはディープエンドでの豪快な「マドンナ」をはじめ、エクステンションでの「ノーリーバックサイドディザスター」、そして最後には「フェイキーオーリーtoバリアルフリップ」をメイクして66.47ptをマークし次のランへ繋いだ。

草木ひなののライディング ©︎WSJ

今大会予選1位通過で決勝に挑む草木ひなのは、1本目から暫定1位のスコアをマークするライディングを見せる。全体的に余裕を感じさせるスタイルで一つ一つ丁寧にトリックをこなしていく彼女はトランスファーでの「アリーウープサランラップ」や、コーピングでの「バックサイドスミスグラインド」、そして最後はディープエンドで「フロントサイドロックンロールスライド」をメイクしてランを終えると67.88ptをマーク。2本目以降でのライディングでのアップデートを予感させるライディングで1本目を終えた。

【ラン2本目】

藤井雪凛のライディング ©︎WSJ

2本目では、1本目でのスコアが伸び悩んだライダーたちが大きく順位を上げる展開に。やはり1本目では少し体が温まっておらず思ったようなライディングをできていないような様子も見受けられたが、この2本目のランではラスト1本の前に高得点を叩き出したいという強い気持ちも感じられた。

まずは1本のミスを修正して、スコアを伸ばしてきたのは小川希花。ラン1本目では終始見事なライディングを見せるもタイムアウトギリギリの最後で転倒し、57.27ptと惜しくもスコアを伸ばしきれなかった。2本目ではミスを修正し、ディープエンドの「バックサイドスミスグラインド」、コーピングでの「フロントサイドスミスグラインド」や「バックサイドフィーブルグラインド」そして「バックサイドブラントスライド」など1本目で見せたハイレベルなトリックをクリーンに決めて最後までフルメイクし、スコアを63.87ptまで引き上げた。

そして小川と同様に1本目のランをアップデートしてきたのは鷹野芙由佳。1本目では惜しくも途中で転倒してしまいスコアを伸ばせなかった彼女だが、2本目ではトランスファーの「フロントサイドリップスライド」を皮切りにディープエンドでの「バックサイドスミスグラインド」、そして「フロントサイドボーンレス」など最後までトリックを決め切りフルメイクで終えるとスコアを64.61ptまで引き上げた。

藤井雪凛のライディング ©︎WSJ

さらにその鷹野よりも大きくスコアをアップデートして見せたのが、ここ鵠沼スケートパークをローカルとしている藤井雪凛。1本目では中盤にトランスファーでの「アリーウープノーズグラブ」で転倒してしまったものの2本目では見事に修正。トランスファーでの「キックフリップインディグラブ」をはじめ、「アリーウープノーズグラブ」、そして決勝では彼女だけが見せた中央のスパインからサイドのボウル面へのトランスファーをメイク。トリックだけではなく終始高いエアーとスムーズなライディングでランをまとめて66.93ptまでジャンプアップした。

2本目を終えてラスト1本を前に暫定では1位が草木、2位が藤井、3位が貝原の順となり、この時点では上位3名が4点以内でひしめき合っていたことから、ラスト1本でどのようななトリックを見せるかに注目が集まった。

【ラン3本目】

草木ひなののライディング ©︎WSJ

最終ランとなった3本目はほとんどのライダーがベストランにトライするもミスが続きスコアアップができない状態に。そんな3本目のランでベストスコアを残したのは能勢想。予選では70.52ptをマークし草木に続き2位で決勝へ駒を進めた彼女。1本目でのミスから1本ずつスコアアップして見せた中、最終ランでは様々なセクションを見事に使いライディング。特にディープエンドでは「バックサイドテールスライド」「フェイキーキャバレリアル」そして「バックサイドバリアルフリップ」などを綺麗に決めて64.06ptとスコアを伸ばしたが惜しくも5位で大会を終えた。

そして気になるのは貝原藤井、そして草木によるトップ3争い。まず貝原がさらにスコアを伸ばすべく終盤で「フェイキーバリアルフリップインディグラブ」にトライするも転倒し惜しくもスコアアップならず。続いて藤井は前半で「キックフリップインディグラブ」に失敗し残念ながら草木に迫ることはできなかったが、その後藤井は時間外で本来メイクしたかったディープエンドでの「マックツイスト」をギャラリーに向けてメイクし会場を盛り上げた。

草木ひなののライディング ©︎WSJ

そして暫定1位の座を死守しウィニングランとなった草木ひなの。1本目と2本目ではメイクしていなかったディープエンドでの「バックサイド540」をセカンドトリックで綺麗に決め切ると、その後はコーピングでの「バックサイドスミスグラインド」や、ディープエンドの長い「フロントサイドロックンロールスライド」などをメイクしフルメイクでランを終えた。そのスコアはなんと80.11ptと後続を大きく引き離し、見事完全優勝を成し遂げた。

草木はその後自身の決勝ランを振り返り、「(藤井)雪凛ちゃんがマックツイストを決めていたからバックサイド540を決めたいと思った。」と話していたが、草木は現在肩を痛めており今大会には痛み止めを飲みながら挑むほど状態だったという。この背景から改めてライバルたちの存在の大きさや、お互いに高め合うことができるスケートボードの持つカルチャーの素晴らしさを再認識させられた大会だった。

大会結果

左から藤井、草木、貝原の順 ©︎WSJ

1位 草木 ひなの 80.11pt
2位 藤井 雪凛 66.93pt
3位 貝原 あさひ / 66.47pt
4位 鷹野 芙由佳 64.51pt
5位 能勢 想 / 64.06pt
6位 小川 希花 / 63.83pt
7位 福田 碧 / 62.85pt
8位 加藤 渚都夏 / 59.19pt

最後に

©︎WSJ

今大会を通して感じたのは国内女子カテゴリー全体の競技力の底上げだった。それはトリックレベルのことに限って差しているのではなく、ルーティンの構成からライディング中でのトリック遂行力など包括的に見てライダーたち全体のレベルが上がっていると感じとれた。

その背景を考察すると、このスケートボード・パーク種目が持つお互いを称え合い高め合う点がこの競技レベルの底上げに影響していると筆者は考える。オリンピアンを含め多くのライダーが日本を飛び出し、世界で活躍することで年々レベルアップしていくこの日本のスケートボードシーンだが、そういった世界で活躍するライダーが日本国内で練習したり、大会に出場したりと国内のライダーとの接点が増え、お互いに切磋琢磨していることが日本全体のレベル向上に繋がっているのではないだろうか。

さあ今年も始まったスケートボードの大会シーズン。3年後に控えるロサンゼルスオリンピックに向けてはもちろんのこと、競技レベルが上がっているこの日本でオリンピアンを含めたシーンを牽引するライダーに対して国内のライダーたちがどのように台頭してくるのかにも注目していきたい。

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