「LAKAI THE FLARE」のジャパン・プレミアが 7/3 日(月)に開催
前作の「Fully Flared」 からちょうど10年。満を持してのリリースとなる、LAKAI LIMITED FOOTWEARの最新作「LAKAI THE FLARE」(ラカイ・ザ・フレール)のジャパン・プレミアがDVDのリリース前に先行して、 7月3日(月)に、東京都渋谷にありますタワーレコード渋谷店地下1階の「CUTUP STUDIO」にて開催することが決定!
作品の内容としては、TEAMも一新されてスケーターも多種多彩。
Dan Wheatleyがメインフィルマーになり撮影クルーも一新され新鮮な仕上がりとなっている。
もちろんOGメンバーのMIKE&RICKも出演しSPIKE JONESも製作に参加しているのでCrail Tapの匂いはそのまま残っている。
入場もフリーになるので、会場に入場可能なキャパまで入場OK!!
当日はDVDでは決して感じられない映像体験を感じられる空間になることは間違いなし!
~「LAKAI THE FLARE 」ジャパン・プレミア 開催概要~
開催日時:2017年7月3日(月) OPEN 20:00 DOOR OPEN21:00 START予定
(※開催時間は変動する場合もございます。)
開催場所:タワーレコード渋谷店 B1F CUTUP STUDIO
(東京都渋谷区神南1-22-14 B1F / TEL: 03-3496-3661)
入場料金:フリー
主催:オーエスシーディストリビューション
協賛、協力: タワーレコード渋谷店、LAKAI LIMITED FOOTWEAR
問い合わせ先:
オーエスシーディストリビューション
〒150-0047 東京都渋谷区神山町2-10 吉田Yビル3F
TEL:03-6804-7317 FAX:03-3468-2658
メール:info@oscdist.com
SPECIAL EDITION

FINEPLAYはアクションスポーツ・ストリートカルチャーに特化した総合ニュースメディアです。2013年9月より運営を開始し、世界中のサーフィン、ダンス、ウェイクボード、スケートボード、スノーボード、クライミング、パルクール、フリースタイルなどストリート・アクションスポーツを中心としたアスリート・プロダクト・イベント・カルチャー情報を提供しています。
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●今日 ○イベント開催日
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parkour山口県・宇部市で「第4回パルクール日本選手権」が開催!女子は絶対王者が連覇2023.09.262023年9月23日・24日に山口県 宇部市の国道190号の特設会場にて、パルクールの日本一決定戦である「第4回パルクール日本選手権」が開催された。本大会は宇部市主催の「UBE URBAN SPORTS FES 2023」と同時開催となり、会場には多くの観客が詰めかけた。 23日(土)に実施された「スピード女子」では泉 ひかり(TOKIOインカラミ)が優勝。24日(日)に実施された「スピード男子」は本居 一輝、「フリースタイル女子」では永井 音寧(TOKIOインカラミ)、「フリースタイル男子」では関 雅仁(TOKIOインカラミ)が優勝に輝いた。また、女子の泉ひかりはスピード種目で大会3連覇、永井音寧はフリースタイル種目で大会4連覇を飾った。 第4回パルクール日本選手権 開会式© Jason Halayko 【スピード】女子・泉 ひかりが大会3連覇! 泉 ひかり © Jason Halayko 23日に実施された「スピード女子」では泉 ひかりが優勝に輝き、大会3連覇を飾った。今大会の出場者は泉ひかり・山本 華歩の2名のみであったが、ワールドカップでの優勝経験もある泉 ひかりは38.645秒のタイムで見事、優勝を勝ち取った。 本居 一輝 © Jason Halayko 24日に実施されたスピード男子では20歳の本居 一輝が初優勝となった。タンクトップにバンダナなどウェッサイスタイルで登場した本居 一輝は、予選を5位で通過。決勝には昨年の世界選手権に日本代表として出場した大西 隼人や勝乗 志音が名を連ねる中、本居は予選からタイムを2秒近く縮めてフィニッシュ。大きな歓声と共に大会初優勝を飾った。 【フリースタイル】永井音寧・怪我を押して勝ち取った大会4連覇 永井 音寧 © Jason Halayko 女子フリースタイルでは絶対王者である永井 音寧が圧巻のランで大会4連覇を飾った。優勝後のインタビューでは「両足首を怪我していて心配だった」と語っていたが、怪我を全く感じさせないほどのスピード感とトリックの完成度で、まさに「国内敵なし」といった強さを見せつけた。直近では国際大会での活躍も多く、今後も彼女が世界の舞台で活躍していく姿に目が離せない。 関 雅仁 © Jason Halayko 大会のトリを飾った「フリースタイル男子」では関 雅仁が優勝に輝いた。決勝では大貫海斗や宮崎裕来、前回大会チャンピオンの朝倉 聖などの強豪が決勝に顔を揃える中、得意の鉄棒を使ったトリックなどパワフル且つハードな演技で会場を沸かせた関 雅仁。30点満点中28点という高得点で堂々の初優勝となった。 男子フリースタイル決勝進出者 © Jason Halayko 宇部市で開催された本大会は、未来のメダリストを一目見ようと宇部市内外からも多くの観客や来賓の関係者も詰め掛け、大盛況で幕を閉じた。2024年 パリ五輪の正式種目としては不採用だったパルクールだが、今後のオリンピック種目の候補として大きく注目されている。 オリンピック競技採用に向けて、より「競技」としての見方も強くなるパルクールだが、今回のような公道(国道190号線)で大会が実施されることで「ストリートカルチャー」の面もクローズアップされた形となった。特にスピード男子で優勝した本居 一輝や、フリースタイル男子で決勝に進出した松本 蛍など、競技のスキルだけでなくファッションや普段の活動スタイルからストリート色を感じる、華のあるプレイヤーが活躍していたのも印象的であった。今後も引き続きパルクールのカルチャー面、そして競技としての発展に期待して注目していきたい。 優勝者コメント © Jason Halayko スピード女子 優勝:泉 ひかり(※大会3連覇) 「まずは走り切れてホッとしています。でもプランしていた通りの走りが出来なかったので悔しいです。そして今回もたくさんの方に大会を見に来ていただき、本当にありがとうございました。パルクールは一見難しそうに見えますが、どなたでも何歳でも始められるので、興味を持った方は是非パルクールを体験してみてください!」 © Jason Halayko スピード男子 優勝:本居 一輝「シンプルに優勝できて嬉しいです!僕は競技とストリートの2つの面でパルクールをやっています。街中でのパルクールもとても魅力的でめちゃめちゃ楽しいので、競技だけでなくストリートの面も見てもらえたら嬉しいです!」 © Jason Halayko フリースタイル女子 優勝:永井 音寧(※大会4連覇)「今回は両足首を怪我していて心配だったんですけど、まずは全部やり切れたことに安心しています。パルクールって一つのセットでもみんな使い方が全然違うし、その人オリジナルの技もあるので、そういったところをどんどん注目していただきたいです!」 © Jason Halayko フリースタイル男子 優勝:関 雅仁「自分は12年くらいパルクールをやっていて、日本にパルクールの大会がなかった時からやっていました。その後大きな怪我をし、ブランクの期間に日本にも大会ができてきました。なかなか大会に出れない時期が続きましたが、ちょうどカムバックした2年前の「第2回パルクール日本選手権」では3位、昨年の大会では準優勝、そしてこの4回目の今大会で優勝ができたのでとても嬉しいです!」 大会結果 © Jason Halayko スピード女子1位:泉 ひかり(TOKIO インカラミ) 38.645秒2位:山本 華歩 41.682秒 © Jason Halayko スピード男子1位:本居 一輝 23.636秒2位:勝乗 志音 (MISSION HIROSHIMA) 23.799秒3位:永田 悠真 24.029秒 © Jason Halayko フリースタイル女子1位:永井音寧 (TOKIO インカラミ) 25点2位:山本華歩 24点3位:近藤凪紗 23点 © Jason Halayko フリースタイル男子1位:関 雅仁 (TOKIO インカラミ) 28点2位:大貫 海斗 (TOKIO インカラミ) 27.5点3位:勝乗 志音 (MISSION HIROSHIMA) 26点 大会概要 タイトル :『第4回パルクール日本選手権』会期 : 2023年9月23日(土祝) ~24日(日)会場 : 山口県 宇部市 国道190号 特設会場主催 : (公財)日本体操協会後援 : (一社)日本アーバンスポーツ支援協議会協力 : 宇部市競技種目 : スピード(男子・女子)、フリースタイル(男子・女子)観戦 : 無料参加体験 : パルクール一般参加体験コーナー同時開催 : 「UBE URBAN SPORTS FES 2023」(BMX, 3X3, スケートボード など)
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skateSkateboarding Unveiled vol.6 ~ムラサキパーク東京の軌跡を辿る~「想い出が詰まった場所です」「青春時代を共に過ごしました」「私たちの憩いの場所でした」 無くなってみて、初めて当たり前にあった場所の大切さに気付く人も多い。 “伝説のスケートパーク”と捉えている人もいるだろう。『ムラサキパーク東京』のことだ。 前回のコラムでは2009年にムラサキスポーツに経営権が移り、Map’s Tokyoからムラサキパーク東京へ名称変更、2014年に全天候型の屋内パークが完成したところまでをお届けしたが、今回は今年5月7日の営業終了までに行われたコンテストやイベントの写真から、一時代を築いたスケートパークの軌跡を辿っていきたいと思う。 未来の金メダリストの一日 ムラサキパーク東京をホームとしていた当時16歳の堀米雄斗 といったところで、いきなり変化球から入らせてもらうのだが、まずは「The Days Inn」という、トップスケーターの1日を追う企画から紹介していきたい。 これはかつて自分が在籍していた専門誌、「TRANSWORLD SKATEboarding JAPAN」の人気コーナーで、2015年2月に撮影したもの。当時、飛ぶ鳥を落とす勢いで国内シーンのトップに上り詰めていった堀米雄斗に密着させてもらったのだが、後のオリンピック金メダリストを育てたという事実は、ムラサキパーク東京がどれだけシーンに貢献をしてきたのかがわかる重要な証拠となるだろう。 メジャーブランドも次々にコンテストを開催 MAKE IT COUNT 2015で優勝した田中陽 次は同年5月に開催されたElementによる「MAKE IT COUNT」。 もともとElementは、この前年に富山の「NIXSスポーツアカデミー」で同イベントを開催するなど、国内で話題性あるパークがオープンしたら真っ先にコンテストを行ったり、映像作品をリリースしてきた。この年の会場にムラサキパーク東京を選んだのも自然な流れだろう。 当時は並いる若手有望株を抑え田中陽が優勝。瀬尻稜や松尾裕幸といった、同社が抱える様々なブランドに所属する豪華ライダー陣によるデモも行われ、盛大な盛り上がりを見せた。 デモンストレーションで圧倒的な存在感を見せつけた瀬尻稜 そして7月にはVOLCOMが「WILD IN THE PARKS」を開催。これはアメリカ各州や世界各地で行うコンテストの日本ラウンドにあたり、“OPEN”と“14 and UNDER”の2クラスの優勝者にはThe Berricsで行われるチャンピオンシップスへの出場権が与えられ、現地までの航空券と宿泊が用意された。 優勝は堀米雄斗と池田大亮で、彼らが世界へと足を踏み出す最初の一歩となったのだが、この時は10歳以下のLIL’ MONKEYクラスも行われ、見事池田大暉が制覇している。 彼らの今の活躍を見れば、誰もが納得する結果と言えるのではないだろうか。 またこちらは余談になるのだが、このイベントからパーク中央部のセクションがリニューアルされており、以後この三角形型のセクションがパークの定番となっていった。 優勝した堀米雄斗(左)のライディングと、池田大亮(右)。このコンテストは両者の世界進出の足がかりとなった。 LIL’ MONKEYクラスで優勝した池田大暉(右端) 当然海外のプロスケーターも来日 左からユーン・サル、エリック・コストン、ショーン・マルト。彼らからの声掛けでリラックスしたポートレートが撮影できた 続いては海外から来たライダーのデモとスクールイベントを。これは同年12月にSkull Candyクルーとして来日したエリック・コストンとショーン・マルト、さらにフォトグラファーのユーン・サルという面々。 最近ではRed Bullチームの来日が記憶に新しいが、それでもブランド単位のジャパンツアーは以前と比べれば少なくなったように思う。 以前は毎月のように様々なブランドの来日ツアーが行われていた時代もあったし、筆者もその情報に心を躍らせていたひとりだ。 だがそれ以上に、今はX GamesやSLSといった国際大会が日本で開催されるようになり、あらゆるトッププロを一挙に見れるようになったのだから、時代の進歩は凄まじい。 デモでライディングを披露するエリック・コストンとショーン・マルト。写真からも彼らのスタイルが伝わる JSFによるストリートのコンテスト 2016年に入ると、今度はJSF (Japan Skateboarding Federation)がストリートのコンテストを開催している。 今はストリートがAJSA、パークスタイルがJSFというイメージを持つ人が多いと思うので、もしかしたらこの事実には驚きを持つ人もいるかもしれない。 だが優勝は池田大亮、2位に堀米雄斗という顔触れは当時の他のコンテストと変わらない。 彼らがいかに突出していた存在だったかがわかる一枚だ。 優勝した池田大亮(中)のライディングと、2位の堀米雄斗(左)、3位の根岸空。集まっているメンツも今を代表する豪華スケーターばかり。 オリンピック追加種目発表記者会見の場にも選出 そしてこの年で忘れてはいけないのが、オリンピック種目への採用が正式に決定したことだろう。 実はその記者会見場に選ばれたのもムラサキパーク東京だったのだ。これはおそらくではあるが、当時はスケートボードの社会的認知度がまだまだ低かったため、世間一般にどんなものなのかを見てもらおうと。デモンストレーションも兼ねた記者会見となったのでないかと思う。 ただ日本のスケートボードの歴史においては、ものすごく重要な一瞬であったことは間違いのない事実だ。 おそらくこの時がメディアも含め、世間がスケートボードを目にした最初のタイミングではないだろうか。それもあってか、当時はマスメディアも摩訶不思議そうなに見つめていた記憶がある。 東京五輪に向けた国内大会も多数開催 優勝した池 慧野巨と参加選手たちの面々。よく見るとあんな人やこんな人も発見できる その後はオリンピックに向けて、徐々にスケートボードシーン全体が社会からの注目を浴びるようになってくる。これは2018年5月に開催された第2回全日本選手権の写真になるなのだが、第1回と第2回の開催場所に選ばれたのもムラサキパーク東京だったのだ。 ただその後はムラサキパーク笠間や、村上市スケートパークといった、新たにオープンしたコンクリートのスケートパークへ徐々に移行していったので、ビッグコンテストの開催は減っていくのだが、東京五輪に向けた戦いの初期を支えていたのは間違いなくココだった。 当時の優勝は池 慧野巨(左)と伊佐風椰(右)。この優勝をきっかけにちょうど現在開催中のアジア大会への出場権を獲得した。 それでも2019年はまだまだ国内のコンテストシーンのど真ん中に居座っていたことがわかる。 なぜなら2月にはWORLD SKATE JAPANの全身であるJRSF(Japan Roller Sports Federation)によるJAPAN OPENが初開催されているからだ。 この年はオリンピックを翌年(その後コロナ禍により一年の延期となったのは皆さんが周知の事実)に控え、いよいよ本格的なライダー選考の始まったタイミングであり、強化選手選出を兼ねたコンテストだった。そこでAJSA(日本スケートボード協会)との共催で行われ、5月の村上での第3回日本スケートボード選手権大会と合わせて絞り込まれていった。 2019年の優勝は池田大亮(左)と、藤澤虹々可(右)。 時代には左右されないAJSAのムラサキカップ 2018年のムラサキカップは優勝が池田大亮で2位が白井空良なのだが、実はこの数ヶ月後に行われたJRSF JAPAN OPENも同じ並び。堀米雄斗がアメリカに拠点を移してからは、この2名が国内の覇権を争っていたことがわかる。 ここまでの話を聞くと、ムラサキパーク東京は見事に時代の波に乗り、次々にコンテストを開催、そして成功させていった場所だと思うかもしれない。 だがその一方で、昔から変わらないものもある。AJSAのムラサキカップだ。 これはオリンピック競技の採用が決まる前から開催されているもので、当然2018年も2019年も、もちろん今(今年はムラサキパーク立川立飛のこけら落としイベントの一環で行われた)も開催され続けている。多くの皆さんもご存知だと思うが、AJSAは日本一の、しかもぶっちぎりで長い歴史を持つ団体だ。そこには世の中の流行り廃りに左右されず、しっかりとした基盤とピラミッド型の育成システムを創り上げ、コンテストを通して業界の底上げを図っていくという意思表示の表れでもあると思っている。そんなAJSAを、自分は可能な限りずっと協力していきたいと思っている。 2019年は青木勇貴斗、山下京之助、白井空良による三つ巴の戦い。本当に僅差であったため、まさかの優勝に青木勇貴斗は驚きの表情を見せていた 近年広がりを見せるフォトセッション 撮った写真を即座に編集して当日中に本人へ渡す。撮影後は画面を食い入るように見つめていた参加者たち その後世界がコロナ禍に見舞われたことで、しばらくイベントの開催はなくなり、自分が足を運ぶことも減っていったのだが、久しぶりに訪れたのが、2021年3月に行われたJASA (ジャパン・アクション・スポーツ・アソシエーション)によるフォトセッションになる。 これは現在徐々に広がりを見せている形式のイベントで、撮影した写真データを当日中に編集し、その場でもらえるという試みだ。 というのもプロスケーターにでもならない限り、普段の生活では大判印刷できるようなカメラで、しかもプロカメラマンにライティングまでして撮ってもらう経験は、そうそうあるものではないと思う。現にこの時も多くの人が、「僕も(私も)撮ってくれ! 」声をかけてくれたし、実は今も現在進行形でこういったイベントの企画は進めているので、開催した際はぜひ皆さんにもご参加いただけたら幸いだ。お子さんの成長の記録としてもピッタリではないかと思う。 そしてこの年の7月にあったビッグイベントといえば、まだまだ記憶に新しい東京オリンピックだろう。 本番会場は有明アーバンスポーツパークだったが、これはその直前にボードライダーズ社の主催で、メディア向けの公開練習が行われた時のものだ。 同社に所属する西矢椛、中山楓奈、岡本碧優、青木勇貴斗が華麗なライディングを披露し、マスコミからの質問に答えていたのだが、中には岡本碧優が滑っているのを疑問に思う人もいるだろう。なぜなら彼女は女子パークの選手であり、ムラサキパーク東京はストリートのパークだからだ。 だが、そこにも当然理由はあって、この日は本来ならムラサキパーク笠間で行われる予定だったのだが、降雨により急遽屋内施設であるムラサキパーク東京に会場が変更されたのだ。 だからこそではあるが、ストリートのパークで滑る岡本碧優というレアな一枚を撮影することができた。 クォーターではあるが、岡本碧優(左)がストリートのパークを滑るというレアな一幕。そして西矢椛(右)はご存知の通り、この数週間後に日本史上最年少の金メダリストとなった。 継続は力なり 藤澤虹々可とPOD CorporationによるPOD Games そして次がムラサキパーク東京の営業終了前に、自分が撮影した最後のイベントになる。 POD Coporationと藤澤虹々可によるPOD Gamesだ。 ただ彼女はこのコラムにも載せた2019年のJRSF JAPAN OPENの覇者で、まだまだ現役バリバリのトップガールズスケーターだ。 しかも自分は彼女の10歳にも満たない頃の写真も撮影しているので、まさかこんなに早く彼女と裏方の立場で一緒に仕事することになるとは思っていなかった。 でも今思うと、そんな出来事もお互いスケートボードが好きで続けてきたから実現したのだと思う。 今やその数も増えたガールズイベント。今後もきっと増加の一途を辿っていくことだろう ここまでの流れを辿れば、やはり世の中は「諸行無常」であると思わざるを得ない。だがそれと同時に「継続は力なり」という言葉の意味も、時を重ねることで感じ取れるようになってきた。 残念ながら今はもう「ムラサキパーク東京」は存在しないが、そのレガシーは「ムラサキパーク立川立飛」に立派に受け継げれている。これからも『ムラサキパーク』の名はそのままに、時代の最先端をひた走っていくのだろう。 一個人が撮影した写真だけで、これほどのストーリーが出来上がってしまうのだから。 吉田佳央 / Yoshio Yoshida(@yoshio_y_)1982年生まれ。静岡県焼津市出身。高校生の頃に写真とスケートボードに出会い、双方に明け暮れる学生時代を過ごす。大学卒業後は写真スタジオ勤務を経たのち、2010年より当時国内最大の専門誌TRANSWORLD SKATEboarding JAPAN編集部に入社。約7年間にわたり専属カメラマン・編集・ライターをこなし、最前線のシーンの目撃者となる。2017年に独立後は日本スケートボード協会のオフィシャルカメラマンを務めている他、ハウツー本の監修や講座講師等も務める。ファッションやライフスタイル、広告等幅広いフィールドで撮影をこなしながら、スケートボードの魅力を広げ続けている
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doubledutch初のガールズチームでの世界制覇!「Mrs.DOUBLE DUTCH」インタビュー2023.09.252023年7月、アメリカ・コロラド州にて開催されたダブルダッチの世界大会「DOUBLE DUTCH CONTEST WORLD 2023」。コロナ禍によって4年ぶりとなった、プレイヤーたちが待ち焦がれた実地での開催。見事世界一のタイトルを掴み取ったのはガールズチーム「Mrs.DOUBLE DUTCH」(ミセス ダブルダッチ)。チーム結成は8年前。彼女たちがどのような道のりを辿って“世界一”となったのか。これまでの歩みと今大会へ懸けた思い、そしてこれからについて訊いた。 ABOUT “Mrs.DOUBLE DUTCH” 10名の女性ダブルダッチプレイヤーで結成されたチーム。各メンバーがプレイヤーのみならず、メディア・モデル活動や、大会でのゲスト・審査員など、多方面で活躍している女性ダブルダッチチームのパイオニア。今回の世界大会にはこのうち7名が出場。 (左から) KYOKA・REINA・MISA・HARUNA・MAYU・SUMIRE・HARUKA(写真提供:Mrs.DOUBLE DUTCH) ※以下、記事中ではチーム愛称「ミセス」と表記。 "女性プレイヤーの希望になりたい” ミセスが結成されたのは2016年。当時のダブルダッチシーンについてと結成に至った思いについて、リーダーのMISAはこう壊述する。 MISA「多くのプレイヤーは大学のサークルでダブルダッチに出会うので、卒業というのが一つの分岐点なんですよね。プレイヤーとして続けるか否かという。ですが、当時は女性でプレイヤーとして続けている人が少なかったんです」 左から SUMIRE・MAYU・MISA・HARUKA 「どうにかして女の子たちがプレイヤーとして活躍し続けることができないか。そんな声に触れるたびに考えるようになり、女の子のチームを作ってみることにしました」 そこでMISAを中心に、現メンバー MAYU・MOEMI・HARUNA・SUMIREを含めた7名でMrs.DOUBLE DUTCHが結成された。 結成当初の写真(写真提供:Mrs.DOUBLE DUTCH) MISA「チームを作ったことに対する責任感はありましたが、私の中ではあくまで実験的な試みでもあったんです。前例のないチャレンジだったからその先どうなるかも予想できなかったし、当時はプロ以外で同じチームを長く続けている人も多くなかったので。でも女性のダブルダッチプレイヤーの希望でありたい、可能性を切り拓きたいという思いはありました。そこで『Mrs.DOUBLE DUTCH』と名付けたんです」 確固たる思いを持って走り出したミセス。結成直後に、彼女たちは国内最大級の大会「DOUBLE DUTCH CONTEST 2016」の国内予選に出場することを決める。しかし、その結果は17位。本戦出場となる“10位以内”には届かなかった。 DD CONTEST 2016 出場時。(写真提供:Mrs.DOUBLE DUTCH) MAYU「“女子だけ”の難しさを感じた部分もありました。今思えば妥当な結果だと思いますが、今にいたるミセスの活動の源流だったというか、そこで私たちに火がついたというか」 HARUNA「当時、私とSUMIREは大学4年生の卒業間近で忙しい時期だったこともあり、MISAさんがほとんど全ての曲や衣装を準備してくれていたんです」 MISA「でもミセスを“長く続けていこう”とだけは決めていて、そのためには1人が作った作品でチームを続けていくのは無理だと思ったんです。チームメイトと関係性を築いて『ここは自分のアイデアなんだ』『この瞬間自分は輝いているんだ』ってことを自覚しながらやらないと長く続けられない」 その後、メンバーそれぞれの活動を経て、2017年の「Double Dutch Delight」では一般部門で優勝を果たすほか、「DOUBLE DUTCH CONTEST」の上海大会に2年連続で出場し、2019年には優勝。 このほか、個々がミュージックビデオの出演やゲストショーケース、アパレル活動や審査員など、多岐にわたって活躍。“ガールズチーム”としての存在感を確立させていく。 2019年、オリジナルメンバーの一部がプレイヤーとしての活動を終えたこともあり、ミセスとしての活動を継続するべく、AYUKA・KYOKA・REINA・NATSUMI・HARUKAが加入し現体制となる。 (後列) 左から1番目 AYUKA / 2番目 KYOKA / 3番目 REINA / 6番目 NATSUMI(前列) 左から1番目 HARUKA(写真提供: Mrs.DOUBLE DUTCH) 国内予選に向けて――「ミセス式」のパフォーマンスメソッド それからしばらく経ち、2023年。最大級の大会である「DOUBLE DUTCH CONTEST」に再び出場することを決意する。世界一のためにまず国内予選を制する必要がある。同部門への参加は約120チーム。その中で、まず上位5チームに残らなければならない。 注:オフィシャルサイト等の情報を元に、編集部で制作 MISA「今年は久しぶりとなる実地での開催。しかもフルメンバーで大会に出るチャンスは今回を逃すとしばらくないかもしれないと思い、出ることを提案しました。ただ各々の都合もあるし無理はさせたくないから、イエスかノーで答えて、と」 そうして集まったのが今回のメンバーである7名だ。 MISA「ただ各々仕事や家庭もあって、社会人チームは予定を合わせるのにも一苦労です。だから最初に集まりやすいメンバーでネタ(動きや技)を作って、そこから音を合わせていきました。 MAYUが音のストックを色々持っているので、MAYUが提案して、それを曲編集をやってくれるRisA(※)に伝えて進んでいきました」 (※)RisAミセスのパフォーマンス音源を作成していた人物。これまでのミセスメンバーが出場していた別チームの音源も作成するなど、数多くを手がける名曲編者。 中央がRisA(写真提供:Mrs.DOUBLE DUTCH) 同じチームを継続し続けていくメリットも多いが、その反面、期待値がインフレし高いハードルにもなりうる。そんな彼女たちのパフォーマンス作りは、どのように進められていったのか。 MISA「『みんなが見たいミセス』『メンバーがやりたいミセス』というのはそれぞれ違うと思ったんです。だから今回、私が『こうしたい』とは極力言わないようにしていました」 SUMIRE「逆にMISAさんが委ねてくれたからこそ、話し合いは積極的にありました。新メンバーが入ってできることが増えたのもあって、『こういうネタもできる』『これよりこっちの方が良さそう』という感じで」 MAYU「“ミセスをどんなカラーにするか”ということを踏まえ、1つ1つ細かいことでもみんなで話し合ったからこそ、みんながやりたいものにまとまっていったんです」 KYOKA「『これは違うんじゃない?』と言うときも、それを言うからにはしっかり代案がありますし、試す価値があるから試す。逆に『ここは⚫️⚫️が跳んだ方が良さそうだね』ということも話しました」 HARUNA「各々が自分の出来ることをしっかり自覚しているんだけど、その上でミセスって“他薦”が多いんです。チームメイトのこともよく理解していて、その人の技やスタイルに合いそうなことを判断できる。だから『自分たちがやりたいミセス』と『みんなが見たいミセス』を両立させることができたと思うんですよね。自分たちでワイワイ盛り上がっているように見えるかも知れませんが、客観視もしています。パフォーマンスの多くは最後にスピード(駆け足飛び)やアクロバットなど、ダイナミックな大技で締めくくるケースが多いのですが、そのやり方だと他には勝てないなと思ったんです。勝つための他にない部分、そこがいわゆる『ミセスらしさ』ということなのかなと。ミセスならではの要素、ミセスならではのパフォーマンス構成に同意してくれることで、それが自信に繋がっていきました」 それぞれが意見を出し合い、自分の理想と他者像を重ね合わせながら進めるのが“ミセス式”のパフォーマンス作りだ。どうしてもその手法だとなかなか意見がまとまらなかったり、メンバー同士で衝突することも考えられるが、彼女たちにそういったことはなかったようだ。 左から HARUNA・REINA・KYOKA MAYU「意見がまとまらない状態で置いておくことはほぼありません。『そこいいね』『そこ微妙だね』を繰り返します。だから喧嘩もないです。当然時間はかかってしまいますけどね。あと良いものが出来たら自分たちでも盛り上がってしまいますし、自分やお互いをめっちゃ褒めます(笑)」 MISA「険悪な空気になることもありません。もちろん議論が白熱したり、出来ないことによって落ち込んだりはしますが、それはどのチームにもあるレベルのことで、取り立てて激しいようなものではありません。メンバーを見ていると、みんな作品を作ることに対する意識が高いんです」 KYOKA「ミセスは最年長と最年少のメンバーで9つも離れていて、見てきたダブルダッチや影響を受けてきたものなども全然違います。だからこそ色々な意見が出るし、それらを互いにリスペクトできるんです」 MISA「色々と意見が飛び交うので、“お蔵入り”になった技や音はたくさんあります。ボツのものだけでショーケースが1本できるくらいには(笑)。当然自分たちが頭を絞って作ったものなので、それらを捨てることに未練が無いと言えば嘘になります。けれど客観視していくなかで、勇気を持ってボツにすることも必要。『これはKYOKAっぽくないよね』とか『これはミセスらしさじゃないと思う』とか。皆さんが見たいと感じてくれたミセスになっているのだとしたら、そこが理由だと思いますね」 MAYU「例えば手の開き方1つとっても、指の開き方の間隔から角度まで細かい一つ一つを擦り合わせていきます」 筆者がミセスのパフォーマンスに“女性らしさ”を感じるのは、まさにこうした部分が所以だろう。女性のきめ細やかな感性と丁寧さが、今回の勝利を手繰り寄せていることを感じる。そうして迎えた、国内予選の当日。 KYOKA「結果、パフォーマンスはミスが1つ。今回の大会は審査基準的に、ノーミスとミス1つで6点差がついてしまう仕組みなんです。この1つのミスが順位を大きく左右しかねないと思っていたので、終わった直後に『確実に世界大会へ上がれる』という自信はありませんでした。本来だったら、ノーミスでパフォーマンスを終えて衣装で会場を練り歩いて、『ミセスすげえ』ってチヤホヤされて、これから出番の学生たちに「頑張ってね」なんて声をかけて… とかってこと細かくイメージして臨むんですが(笑)」 国内予選のパフォーマンス中(写真提供:Mrs.DOUBLE DUTCH) そうして迎えた結果発表――。5位、4位とチーム名が呼ばれていくが、ミセスの名前はまだ呼ばれていない。 HARUNA「会場を沸かせていた他のチーム、ノーミスを出していたチームも色々と見ていて、もうダメかも…と。最初はチームメイトの手を握りながら結果を聞いていたのですが、みんなすーっとその手を離してしまって」 一瞬の静寂を経て、MCが次の結果を読み上げる。「3位は……… Mrs.DOUBLE DUTCHーー!!」 KYOKA「結果が出たとき、何より『ミセス』をまだ続けられることが嬉しかったんです。またミセスで練習できる。またこの人らと会える。またこの人らと一緒に帰れる。『コロラド(世界大会の開催地)に行ったらさ』ってことをたくさん話してたから、それもできるなって」 拓かれた世界への道 そうして手にした世界への切符。舞台をアメリカ・コロラド州へと移し、次なる戦いが始まる。世界大会ではパフォーマンスに加え「フリースタイルバトル」という種目がある。DJが掛ける音楽に合わせムーブを披露し、チーム同士が1vs1で優劣を競うというものだ。 MISA「国内予選が3月、世界大会が7月なんですが、まず国内予選のパフォーマンスをリメイクするかどうかという話になりました」 REINA「予選と本戦ではパフォーマンスを少し作り替えるチームが多く、当然私たちもまず作り替えるかどうか、というところから話がスタートしました。ですが結果としてはそのまま持っていきました」 MAYU「私たちは1つ1つの技や音に対してかなりの時間を費やし議論をしています。ボツになったものは私たちの中の“予選”を通過しなかったからそうなった。また同時に、あのパフォーマンスが国内予選を通過したのにも理由がある。だから変えずにいこうと」 HARUKA「RisAに音源の編集を頼むときも、パフォーマンスの内容を変えると歌詞を途中でぶった斬ることになって、気持ちが乗っかっていかないんですよね。歌詞で振り付けを決めている部分もありましたから。でも『こうできる?』と訊いたらすぐ対応してくれて、しかも逆に提案までしてくれて、丁寧で。こうした支えなくしてミセスは無いなと感じますね」 HARUNA「そうなんです。本当にいろんな人に支えられているんです。世界大会の渡航にはかなりの資金が必要になるので、イベントを開いたりクラウドファンディングなどをやったんです。でもそういったツールを設けたことで、皆さんから応援の声がたくさん届くようになったんです」 SUMIRE「練習終わりに、皆さんからクラファンに寄せていただいたメッセージを全員で読んだのですが、もうみんなボロ泣きで(笑)」 HARUNA「ダブルダッチの仲間に限らず、それぞれ自分たちの人生で出会ってきたたくさんの人が支えてくれていることを実感して『世界大会がミセスとしての最終地点ではいけない』とも思いました。この感謝を体現するため、大会の後まで活動し続けなければならない。だからこそ、世界大会では優勝しなければならないと」 周りの応援を力に決意を新たにしたという彼女たち。いよいよ渡米し、大会直前を迎える。 MAYU「問題はフリースタイルバトルです。私たちは他のチームのやり方を真似していては勝てない。決勝まで進むと5ムーブ披露することになるのですが、どのタイミングでどのムーブをぶつけるかによって勝敗が大きく左右される」 HARUKA「実はコロラドに渡ってから、大会前日の練習で結構議論したんです。初めてくらいですかね?あれだけ熱くなったのは。バトルムーブをどう組み替えるか、どう構成するべきかということは国内の練習で決めていたんです。でもやっぱり不安になってしまって…。普通だと大会前日は身体を休ませたり、練習しても控えめに進めることが多いんですが、前日とは思えないくらい練習もかなりやったんです。議論もたくさんして」 応援は間違いなく彼女たちの力になっていた。しかし一方で「勝たなければならない」という思いが、じりじりと焦りを引き起こしていく。 国内予選の比にならないほどのプレッシャーだったと振り返る彼女たちだったが、議論の末になんとか方針もまとまり、練習を終えて会場に足を踏み入れたときのことだった−−。 MISA「世界大会は何日にもわたって開催されていて、私たちの大会の前日にも競技の種目の大会があったんです。それで、他国の選手の表彰を見ていたときです。ぼんやりと、私たちもあの表彰台の一番上で表彰されて、君が代が流れて… なんてことを考えていたら、思わず涙が溢れてしまったんです。これまでの日々が実を結んだイメージが、勝手に湧いてくるようにして出てきて。でも一番驚いたのは… ふと横を見たらメンバー全員が同じように泣いていたんです(笑)」 HARUNA「私たちもMISAさんと同じように、優勝した自分たちのイメージを関係のない選手の表彰に重ねて号泣してしまっていたんです」 HARUKA「この一件を私たちは『ブルートゥース』と呼んでいます(笑)。でもかなりの衝撃だったと共に、大きな自信にもなりました。それぞれが目指していた先にあるものって、ここまで同じものだったんだなだと」 迎えた本番当日。メンバーのKYOKAが一時期アメリカを拠点にダブルダッチ活動を行っていたことなどもあり、ミセスに対する会場の注目度は最高潮に。 そうして彼女たちは遂に、夢にまで見た世界大会のステージに立つ。 KYOKA「ステージに出てきただけで本当に盛り上がってくれていたんです。出てきて大盛り上がりした時『あっ、イメージ通りだ』なんて思ったりして(笑)。でも照明が付いて音源が掛かると、余計なことは一切考えないようになって、パフォーマンスに没頭していたというか… いわゆるこれが『ゾーン』ってやつなんですかね。疲れすらも感じなくて、結果的にノーミスで終えることができたのですが、終わってはける時までそれにすら気付かなかったんです」 MAYU「変な例えかも知れませんが、“ショーの中に閉じ込められた”ような感じでした。終わってからしばらくして誰かが『ノーミスじゃない?』って言って初めて気付いたくらいです」 世界大会のパフォーマンス中(写真提供:Mrs.DOUBLE DUTCH) その結果、パフォーマンスでは見事1位に。しかし彼女たちの戦いはこれで終わらない。世界一を決める最後の種目であり、“鬼門”であるフリースタイルバトルが始まる。 MISA「どのチームと当たっても一筋縄ではいかないでしょうから、とにかくひるまないようにしようと話していました。でもいざ戦っているときは、それよりも『楽しい』という気持ちが勝っていました。パフォーマンスで勝ち上がったとき、その結果以上に『まだミセスとしてできる!』という方が嬉しくて。だから決勝まで進んでムーブがどんどん終わっていくと、不思議なことに寂しさも感じました。私たちが必死になって考え続けたものが徐々に世に放たれていって、何とも言えない気持ちになって…『この瞬間をしっかり覚えていたい』『目に焼き付けていたい』と強く感じたんです」 KYOKA「私も勝ちたい思いは強かったのですが、それ以上に楽しくて、なんなら勝ちにいこうとし過ぎると勝てないでしょうから、楽しんで『ミセスらしく』やりたいと思っていました。私たちが私たちらしく、ミセスがミセスらしくあることを、会場中の人たち、中継を見てくれていた人たち、そして応援してくれた全ての人たちに見ていてほしくて」 国内予選のフリースタイルバトル中(写真提供:Mrs.DOUBLE DUTCH) 最後のムーブを終え、いよいよ結果発表。審査員が両チームの手を握り、勝利したチームの選手の腕を挙げることになっている。カウントダウンが始まる。一瞬の静寂。空気が張り詰める。ほどなくして、審査員が片腕を高らかに掲げる。その腕は… MISAを掴んでいた。女性のみのチームとして世界を征するのは、10年の歴史の中で初のことだった。 優勝直後のようす(写真提供:Mrs.DOUBLE DUTCH) KYOKA「もちろん嬉しかった。喜びました。ここまでの道のりで心細くなったことはあっても、前日に同じ涙を流してからは、世界一になることを信じて疑わなかった。神様がこっちを向いてくれたように感じました。 大会が終わって会場を後にしようとしたとき、虹が掛かっていたんです。『あ、天気まで私たちの味方してくれてるじゃん』なんて話しながら(笑)」 MISA「体調を崩してしまうことも多いメンバーが、異国の地でも最終的に誰も体調を崩すことなく、万全の状態で迎えられたんです。たくさんイメージを重ねてここまでやってきましたが、現実は“ブルートゥース”を上回る光景が待っていました」 「ここでは幸せであること」 偉業を成し遂げはや1ヶ月。最後に、世界一になった彼女たちの“これから”について訊いた。 MISA「結成当初、8年もチームを続けていることなど想像してもいませんでしたし、こんな幸せな未来も考えられていませんでした。だから正直この先も明確な目標などがあるわけではありません。けれど1つ、ずっと変わらないビジョンがあります。それは『ここでは幸せであること』。私たちはパートナーや家族、友人や職場の方々のご理解など、置かれている環境のおかげでダブルダッチに向き合うことができています。それをすっ飛ばして考えることは違うなと感じていて。その上で続けることは難しいんです。ぼーっとただ続けることは簡単かも知れないけれど。私はミセスのメンバーが幸せであり続けてほしい。今回大会に出ていないメンバーも、ダブルダッチから離れてしまったメンバーも。そしてそういう場である『Mrs.DOUBLE DUTCH』がこれからも続いてほしい。そしてチーム結成当時、出たくても出られなかった子たちに道を作りたい、少しでも希望になれたらという思いがあったけど、こうした私たちの努力が、後ろに道を作れていたら嬉しいと思っています。先のことは分からないけど、いつかまた新たなメンバーが加わったりして、私たちが『初代』なんて言われちゃったりして(笑)」 MAYU「そうだね。いつか『もうミセス10代目? 挨拶きてないんだけど』とかって言っていたりしてね(笑)」 初のガールズチームでの世界一を成し遂げた彼女たち。しかしそのタイトル以上に、8年という長い歳月を重ねてきた中で、彼女たちが創ってきたものの大きさは測り知れない。 そのバイタリティと原動力の源にあったのは、仲間への愛情とダブルダッチへの思い。そして、弾むような彼女たちの楽しげな会話だった。 “突飛な妄想”から夢を描き叶え続けてきたミセス。次に何を目指し、どこへ向かっていくのだろうか。ダブルダッチに夢を見る全ての女子たちの思いを乗せて、旅は続いていく。
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doubledutchスペシャルキャスト陣が語る、「エンタメ」について。ITADAKI 2023 特別企画2023.09.212023年 9月30日(土)に、神奈川県川崎市・川崎ルフロンで開催される『ITADAKI ダブルダッチ甲子園 2023』。 この大会が他と一線を画すのは、“エンターテイメント”要素を多く含んでいることにある。審査項目の30点分を「エンターテイメント」という項目が占め、またその審査員をダブルダッチプレイヤーではない、各ジャンルで活躍するパフォーマーが務める。またそれに加え「観客投票」も実施され、パフォーマンスを見た観客による投票も順位に関わってくる。 そんなITADAKIには“大会アンバサダー”が設けられ、3年連続で「DA PUMP」のKIMIと、プロダブルダッチチーム「REG☆STYLE」が就任。またエンターテインメントジャッジには、お笑い芸人のツネが登場。今回、KIMI・ツネとREG☆STYLEのリーダー・KO-YAが対談。業界の最前線で活躍する彼らが、「エンターテイメント」について語り合う。訊き手は、REG☆STYLEよりYUIが務める。 左からツネ・KIMI・KO-YA・YUI YUI:本日はよろしくお願いします!ITADAKIに関わるスペシャルメンバーが一同に介したわけですが、最初にオーガナイザーであるKO-YAから一言もらおうかな。 KO-YA:この度はお二人、ありがとうございます!ITADAKIも3年目を迎えまして、お二人がこうして揃って企画に参加していただけること、そして当日を迎えることができるのが嬉しいです。 KIMI:こちらこそ、今年もお呼びいただいて嬉しかったです。ツネさんとも昨年ITADAKIで共演予定だったのですが、残念ながらコロナに感染されてしまい、お会いできなかったので嬉しいです。当時はまだコロナの波があったシーズンでしたし、社会情勢も落ち着いて、いよいよ万全の体制で当日を迎えられそうですね! ツネ:昨年は悔しかったんですが、その分今年が本当に楽しみですね。 KO-YA:実はKIMIさんはITADAKI 当日、グループ(DA PUMP)の活動もあってお越しになるのが難しいかもしれないというお話も出ていたんですよね。代わりの方を探す考えもよぎりましたが、僕含め実行委員会で話し合っても、やっぱりKIMIさん以外がやられているビジョンが湧かなくて。そしたらKIMIさんが頑張って調整してくださって。 KIMI:稀有(けう)でしょ、本当(笑)。 KO-YA:本当に嬉しかったです。そしてツネさんとも今年こそご一緒できて、社会情勢も落ち着いて、いよいよ全てが整った!という気持ちです。 3人のルーツ YUI:今回の座談のテーマが「エンターテイメント」について、ということで。最初に大会について軽く話してもらいたいんですが、ITADAKIは他のストリートやダブルダッチの大会と違ってエンタメ要素が強い大会なんだよね、KO-YA。 KO-YA:それこそショーケースだと、技術を測る審査項目に加えて、ITADAKI独自の「エンターテイメント」という審査項目があるんです。毎年、各ジャンルのトップランカーの方にお越しいただいて、エンタメ性を審査してもらう。今年はコメディアンのツネさんに加えて、ダンサーのKAZANEと、フリースタイルバスケットボーラーのZiNEZ a.k.a KAMIKAZEの3人をお迎えしています。 左から ZiNEZ・KAZANE・ツネ YUI:ダブルダッチ界、なんならストリート界でも珍しい路線の大会で、競技感のある他の催しに比べると、出演する選手のキャラクターにまでスポットが当てられる印象だよね。ということでお三方にエンタメをテーマにお話を訊いていきたいのですが、最初に皆さんがエンタメの道を歩み始めるルーツを伺いたいと思います。 ツネ:人前に出ること自体は小学校くらいから好きで、目立ちたがり屋でずっとふざけていました(笑)。22歳でNSC(※)に入って、そこから本格的にお笑いの道に進みましたね。当時流行していた『めちゃ×2イケてるッ!』という番組が好きで、この番組に出ている人たちみたいになりたいと。 (※)NSC:吉本興行が創立した、タレント・お笑い芸人の養成所。正式名称は「吉本総合芸能学院」。 KIMI:一番最初に人前に立つことが面白いと思ったのは、中学校の文化祭かな。劇の主役でピノキオ役をやったのですが、まあキャーキャー言われちゃって(笑)。当時って演劇にダンスを取り入れるのって少なかったので、劇中に踊ってみたら、結構な手応えを得てしまったわけです(笑)。その後はクラブのショータイムなんかにも出たりしていたのですが、場数を重ねていくうちに「すごいことをすると、それ相応の拍手が返ってくるんだな」ということに気づいて、今に至るという感じですね。 KO-YA:初めてのステージは… 4歳ごろですかね。僕のおばあちゃんの和太鼓に合わせて、ひょっとこの仮面をかぶって、親戚の前で「はい、踊りなさいコーヤ」って言われたのが最初です。ちなみに今は85歳なんですが、バリバリ自転車を立ち漕ぎして移動してます(笑)。おばあちゃんの英才教育ですね。 3人の共通項 YUI:お話を伺っていると、幼少期から“人を楽しませることが好き”な方々なんだなと思ったのですが、それを今お仕事にされているお三方にとっての「エンターテイメント」について色々お話を伺いたいなと。ジャンルは三者三様ですが、共通項を探してみたいですね。…え、KO-YA、ググるの?!(笑) “ググる”KO-YA ツネ:共通項で言うと、リズムやテンポでしょうか。テンポが良ければ気持ちって高揚しますよね。逆も然りで。 YUI:ダブルダッチでも音楽に合わせて技を繰り出したりするんですが、やっぱりリズムやテンポってすごく大切なんです。お笑いなんかでも重要なんですね。 ツネ:お笑いもそれが狂うと悲惨なことになりますね(笑)。一緒にステージに上がる人や、ステージ裏の方々との連携も必要です。ダンスもそうですよね? KIMI:もう乱れたら一貫の終わりですね(笑)。YUIちゃんがさっき言っていたように、僕らも音に合わせてダンスしたり歌ったりするので、少しのズレでも見てくれる方々の気持ちを冷めさせてしまう。特に僕らはグループなので、いかにみんなの動きを合わせていくか。 YUI:なるほど。今のお話を訊いていて、たとえば音楽と合わせることやロープのリズムなど、いわゆる「物理的なテンポ」も合わせることが大事ですが、「人同士の呼吸」を合わせることも大事なのかなと思いました。 YUI 一生懸命になること KO-YA:あとは「一生懸命に向き合う」っていうのもエンタメ――それこそ、“人を楽しませる”とか“感動させる”ものだと思うんです。たとえば高校サッカーや野球の甲子園も、一生懸命な選手たちの姿って本当に感動するし。今年のITADAKIも、開催前の段階から各団体やチームからのパワーが伝わってきて、年々ボルテージが上がっていることを実感していて、早くも心を動かされています。 YUI:そうだね。色々テクニック的なものも皆さんお持ちだとは思うんですが、一番の根本の部分ってそこですよね。いかに「本気」になれるか。 KIMI:エンタメにゴールって無いと思うんです。そこに身を置く人間は、常に一生懸命に、本気になって前進していかなければならない。その先の自分の目標や、ついてきてくれる仲間のこと、携わってくれる方々とどうしたら面白くなるかを考え続けたいです。常に楽しいことを考え続けるために、楽しい自分でありたい。ネガティブと風邪はうつりますからね(笑)。ってことは、ポジティブもうつるわけで。 KIMI YUI:確かにこのメンツといると、ちょっとした病気は治ってしまいそうです(笑)。それこそKIMIさんは昨年末、ワンマンライブもやられていましたよね。改めてKIMIさんのエンタメに対する「本気さ」や「楽しませよう」という気概を強く感じさせてもらいましたし、何より本当に盛り上がっていました。 KIMI:それも“前進”の一つでしたね。とにかくやることに意味があると思っていて、一人で進んでいかないといけない。恥をかいてもいい覚悟で。でも、あの会場で一番楽しんでいたのは自分でしたし、そのつもりでやっていましたね。見にきてくれた先輩が「ムカつくくらい楽しそうだった」って言ってくれて、よっしゃと(笑)。 KO-YA:「一番自分が楽しむ」ということも、エンターテイメントの一つな気がしましたね。 YUI:例えば「ここで笑顔を見せる」みたいなテクニック的要素もありますけど、その笑顔が本当に楽しんでいる人の表情なのかって、伝わりますよね。ツネさんはいかがですか? 最近は海外にも飛び出して色々と挑戦されていますよね。 ツネ:めっちゃくちゃ緊張します(笑)。でも皆さんおっしゃるように、僕が一番に楽しんでいます。もちろん上手くいくことだけではないのですが、振り返るとそれも含めて楽しいんですよね。その瞬間を本気になって臨めば、どうあれ「楽しい」と思える時間になる。でも… やっぱり笑ってくれる瞬間が一番楽しいですよね(笑)。 “ミス”をどう乗り越える? ツネ:海外だと日本と笑いのツボも全然違うので、演目中に「ヤバっ」って思う瞬間も正直あります。ここで反応が欲しいのに、思ったリアクションが得られなかったりすると、感情が高揚しているはずなのに一瞬すごく冷静になって「次どうしていこう」と考えたりする。ステージ上の一瞬一瞬の判断が迫られる緊張感が僕は楽しいですね。 ツネ YUI:なるほど。ツネさん、すごくダブルダッチに向いてらっしゃるなと思いました。私たちダブルダッチプレイヤーも、テンションだけで乗り切ろうとするとロープに引っかかってしまったりするんですよね。テンションと冷静さのバランスが重要だなと思っています。 ツネ:そうなんですね。やっぱり不安だと引っかかってしまったりしますか? YUI:本当にめちゃくちゃありますね、不思議なもので。KIMIさんは以前私たちREG☆STYLEと、一緒にダブルダッチのパフォーマンスをやってくださいましたよね。 KIMI:そうだね。やっぱり気持ちだけ先走ってもダメ。ターナー(ロープの回し手)との呼吸を合わせることって大事だね。さっき言ったテンポもそうだし、「一生懸命さ」「自分が楽しむこと」も大事なんだけど、どこかで冷静な判断ができる脳みそも必要。あと、僕の普段の活動でも「ここでオーディエンスを湧かせたいぞ!」と思って用意していても、ライブ本番で全然盛り上がらないときってあるんですよ。その瞬間「うっわー、全然盛り上がってねえじゃん」って(笑)。 KO-YA:いやー、分かります(笑)。ダブルダッチってミスが分かりやすいスポーツで、動き自体がどれだけ綺麗でも、ロープに引っかかるとミスになりますし、見た目的にもミスが分かりやすいものなので痛感しています。きっと選手たちにも同じ経験があると思うんですよ。お二人に伺いたいんですが、そういう「ヤバっ」って思った瞬間ってどうされていますか? ツネ:もう、開き直るしかないです(笑)。 KIMI:本当にそうですよね(笑)。 ツネ:焦ったら失敗するので、開き直って堂々と振る舞うのが一番だと思います。時間は戻らないので、スベったら「めっちゃスベってるやーん」くらいに(笑)。 KIMI:本当に一緒です(笑)。失敗しても前にいるボーカルのISSAさんはめっちゃ歌っていて、僕も当然一生懸命に振る舞うんだけど、心の中ではかなり冷静です(笑)。それこそITADAKIに出る選手のみんなも、例えば仮に立ち位置が違ったりしても「おれが正解だ」って顔をしちゃって、堂々としていた方がいいんじゃないかな。 YUI:やはり経験を積んできたプロでもこういうことってありますから、そういうときこそ堂々といるべき、ということですね。 いよいよ開催!「ITADAKI 2023」 YUI:最後に、今年もITADAKIが開催されるということで。残りわずかですね!皆さんの意気込みをお伺いできればと思っています。 KIMI:今年もアンバサダー兼MCとしてマイクを握らせていただきます。3年目ですからね。3年もやっていると「去年出ていた子が今年はこうなってるんだ!」と成長を感じることもあります。選手のみんなが、これまでどんな努力をしてステージに立っているのかに思いをめぐらせながらMCをできるのが嬉しく楽しみです。何よりここ最近、ダブルダッチがかなり盛り上がっていることを強く実感しているので、僕自身も盛り上がっていきたいと思います! 昨年のITADAKIの様子。MCを務めるKIMI・YUI(写真提供:ITADAKI 実行委員会) ツネ:皆さんが「どこまで楽しんでやっているか」を見たいです。僕は当日エンタメ項目を審査させていただくので、そこが自分の審査の内容に関わってきそうな気がします。自分が楽しむことで、人を楽しませられる。見ている側の受け止め方もかなり変わってきます。KO-YAさんも先ほど言っていた「本気」を見たいですね。僕らくらいの年齢になると、本気になっている高校生の姿にやられる時があるんですよ。むしろ「そういうのちょうだい!」って思っています(笑)。ダブルダッチ的な技術も当然大事だとは思うのですが、芯の部分は「本気で楽しめるか」ということだと思うので、とにかく楽しんでほしいです。 YUI:ITADAKIって2021年にできたばかりなので、REG☆STYLEのチームメイトで、高校時代からダブルダッチを始めたKAIはよく「今の高校生たちが羨ましい!」って言っているんですが、大学から始めた私でさえもそう思いますね。それに、これだけシーンの外から熱い思いを持って大会に参加してくださる存在がいることが心強いです。こうした環境にいるみんなは、自分を出し切ってダブルダッチを楽しんでほしいですね!それでは最後に、オーガナイザーのKO-YAから一言お願いします! KO-YA:年々 ITADAKIが、高校生たちが本気をぶつけてくれるステージになっていると実感しています。エンタメ要素が強い大会だからこそ、まずは「人を楽しませる」ということについて振り返って考える機会にしてほしいなと思いますね。そして、総じて今日の皆さんとのお話にもありましたが、高校生のみんなの一生懸命な本気の姿を見たいです。大会としては本当にどこが勝つか分からない戦いで、下馬評のある猛者からダークホースまで色々。溢れんばかりの熱量とみんなのダブルダッチを楽しみにしています。でもやっぱり、当日は僕が一番楽しみます! KO-YA 【 取材協力 】「Cafe Habana TOKYO」東京都渋谷区猿楽町2-11 氷川ビル1F 開催概要 「ITADAKI ダブルダッチ甲子園 2023」日時 : 2023年 9月30日(土)時間 : 13:00 開演予定会場 : 川崎ルフロン主催 : ITADAKI 実行委員会主管 : 有限会社OVER THUMPZ協賛 : ポカリスエット / ヘインズブランズ ジャパン株式会社協力 : スキルハック協力メディア : FINEPLAY
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bmx中村輪夢が前人未踏の大会5連覇、内藤寧々は2度目のタイトルを獲得「第7回全日本BMXフリースタイル選手権」フリースタイル・パーク種目2023.09.20「第7回全日本BMXフリースタイル選手権」フリースタイル・パーク種目が岡山県岡山市の岡山市役所前にて2023年9月16日(土)~17日(日)の2日間に渡り開催され、男子エリートでは中村輪夢選手が大会5連覇、女子エリートでは内藤寧々選手が自身2度目の全日本タイトルを獲得した。 今大会には今年の日本一を決める大会ということもあり、子どもから大人まで各カテゴリーのトップライダー合計115名が全国から集まった。出場選手たちは自分たちが日々の練習で磨いてきた、思い思いのベストトリックを入れ込んだライディングを大勢の観客の前で披露しながら、各カテゴリーの全日本タイトルの座を狙い熾烈な戦いを繰り広げた。 今回の大会会場となったのは岡山市役所前。岡山市役所の駐車場に設置された特設パークは大通りに面し十字路の角に位置していることから、一般のお客さんも気軽に立ち寄れ、観戦には好立地の会場での開催となった。実際に会場にはBMX関係者から一般の観客まで大勢の方がコース横へ集まり、大きな拍手と歓声を上げて観戦している様子が見られた。 なお今大会の模様は、昨年に引き続きNTT西日本グループの協賛・技術提供により「双方向ライブ配信」によりリアルタイムで視聴可能となった。本プラットフォーム上ではオンラインでコメントや歓声を送ることができ、その様子は会場の大型モニターとリンクされていて、会場に行けない方でもまるでその場にいるかのように応援ができる。そしてこのライブ配信では実際に選手たちがジャンプ台で魅せる複雑な大技を連続写真のように映像化する技術が導入され、どのようにそのトリックを繰り出していたのかを一連のモーションで確認でき、逆にオンラインだから可能となる新しい観戦体験を提供した。 以下は、今大会最高峰カテゴリーである男女エリートクラス決勝の大会レポートだ。 圧倒的な大差を見せ付け優勝した絶対王者。男子エリートは中村輪夢が、女子エリートは内藤寧々がタイトルを獲得。 男子エリートクラス決勝 photograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF 男子エリートクラス決勝は12名の中から予選を勝ち上がった8名で争われた。ここ最近は高い実力を持つ10代の若手選手が増えている日本のBMXフリースタイル・パークシーン。今回も若手選手が多く勝ち上がったが、一方でベテランや長年トップで活躍選手もいるなど選手たちの個性が分かれた見応えのある決勝となった。 中村輪夢のライディングphotograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF 今回、他の選手たちを圧倒し大差を広げて優勝したのは中村輪夢。中村はラン1本目から超大技「720・テールウィップ」や「フレア・テールウィップ」そして「720・バースピン」をメイクするパーフェクトランディングで早速91.30ptをマークし暫定1位へ。圧倒的なスコアだったからか、その後も中村の1本目のスコアが塗り替えられることはなく、2本目を迎える時点で優勝が確定。 中村輪夢のライディングphotograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF ウィニングランとなった2本目では、プロ野球チームである阪神タイガースの歌「六甲おろし」をバックに更にハイレベルなライディングを魅せる。「バックフリップ・クアッドバースピン」を皮切りにスタートしたランでは、1本目でもメイクした「720・テールウィップ」や「720・バースピン」はもちろんのこと、「アリーウープ・フレアテールウィップ」そして「360・ダウンサイドテールウィップ to バースピン」など数々の超大技組み込んだランで94.60ptを叩き出し完全優勝。なお今回の優勝により中村は全日本選手権5連覇を収めた。 溝垣丈司のライディングphotograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF 準優勝は今年のアジア選手権でチャンピオンの中村に続き2位入賞を果たした溝垣丈司。世界中からそのスタイルが高評価されている彼は、ラン1本目は「トリプルトラックドライバー」、ジャンプ台逆飛びの「360 to クロスアップ」など回転系のコンボトリックで構成し、かつその中で約5mのほどの距離を跳び切る「ビックトランスファー」を交えたランを魅せるも、最後にジャンプ台に飛び乗る形で見せた「バックフリップ・180」で失敗し、スコアを59.80ptとした。 その後1本目を上回るべく挑んだラン2本目では見事に修正。同じルーティンを更なる完成度でこなし、1本目で失敗した最後の「バックフリップ・180」をメイクし、そこに「キックフリップ」を加えて会場を沸かした。このランは80.14ptと評価され、見事順いもジャンプアップ。2位入賞という形で全日本選手権を終えた。 小澤楓のライディング photograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF 3位は今シーズンの世界選手権で並いる強豪選手抑えて、自身初の準決勝進出を果たし着実に実力つけている小澤楓。持ち前のコンビネーションの多さとスピード感のあるランで各セクションで細かく様々なトリックを連発。その中でも2本目で見せた「360・ダブルダウンサイドテールウィップ」や「360・テールウィップ to バースピン」の完成度の高さと、他選手より多くのトリックをメイクしているにも関わらず、終盤でも疲労を感じさせずに大技をメイクする姿には彼のフィジカルの強さを感じられた。今回はトップスコアを80.00ptとして溝垣に僅差で2位の座を譲ることとなったが、小澤はエリートカテゴリー昇格後2年連続で全日本選手権の表彰台を獲得した。 女子エリートクラス決勝 女子エリートクラス決勝は5名で争われ、今回は日本代表選手である内藤寧々に加えて今年からエリートクラスに上がってきたスキルフルな若手ライダーにより今年の全日本タイトルの座が争われた。 photograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF そんな中、今年見事全日本タイトルを獲得したのは内藤寧々。内藤は今回特にハンマートリックは用意せず、綺麗にトリックをメイクすることとスピード感を意識したライディングで安定したランを魅せる。 ラン1本目では逆飛びで加速しながら、「360・クロスアップ」や「タックノーハンド to クロスアップ」そしてクオーターでの「テールウィップ」を綺麗にメイクし、自身の代名詞でもある「ワンフット・クロスアップ to キャンキャン」を入れ込むランで60.40ptというスコアを収める。ラン2本目では1本目ではメイクしていない「バックフリップ」も入れ込んだライディングをするも1本目ほどスコアは伸ばせず60.20ptをマーク。しかしベストスコアである60.40ptを守りきり、エリートカテゴリーにて自身2度目のタイトルを獲得した。 内藤寧々のライディングphotograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF 準優勝は今年からエリートカテゴリーに昇格した山本結花。彼女はラン1本目から攻めのライディングを魅せる。男女ともに新たな歴史が刻まれた一戦「第7回全日本BMXフリースタイル選手権」フラットランド種目クオーターでの「540」をはじめにメイクし、勢いをつけると「キャンキャン・タイヤグラブ」や逆飛びでの「トランスファークロスアップ」を決める。終盤では「360」をメイクするライディングで54.40ptというスコアで暫定2位に位置付けた。 更なるスコアアップをトライした2本目では、女子で未だ誰もトライしたことがない「540・バースピン」に挑戦するも失敗。その後はランのスコアは気にせず、制限時間いっぱいを「540・バースピン」のメイクに費やすもランディングに失敗。ベストスコアは1本目の54.40ptとなったが暫定2位を維持し2位入賞を果たした。 杉尾咲空のライディングphotograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF 3位は山本同様に今年エリートクラスへ昇格し、「マイナビ Japan Cup 名古屋大会」では優勝を収めた杉尾咲空。他の選手に比べてストリート系のトリックも得意とする彼女は、完成度の高い「バースピン」を中心したライディングを魅せる。セクションを大きく使いスパインや様々なセクションでトリックを決めながら、中盤には「360」やストリート系のトリックである「スミスストール」をメイク。しかしスコアは思ったほど伸ばすことができず2本目の48.60ptをベストスコアとし、エリートクラス最初の年の全日本選手権を3位入賞で締め括った。 優勝者コメント 優勝した内藤と中村photograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF 中村 輪夢 選手(男子エリートクラス)「連覇を重ねることでプレッシャーが増し、本大会でも緊張感を持った中で迎えた決勝となりました。決勝1本目では理想とする走りができなかったので悔しさは残りますが、2 本目のランには満足しています。 先日の世界選手権や今大会を経て、まだ完成度に課題が残っているので、現在一番の目標としている来年のパリオリンピックに向けて練習を重ねていき、東京オリンピックのリベンジを果たしたいです。」 内藤 寧々 選手(女子エリートクラス)「優勝できて嬉しい気持ちでいっぱいです。今回の練習走行では確認したい項目をまとめられず、少し焦りと不安が残る中での決勝だったのですが、決勝ではスピード感と大ディングの綺麗さを意識したことで自分の予想を上回る得点を出すことができました。 今後も国際大会でのさらなる経験を積み、海外の大きな大会でも表彰台を獲得したいです。」 大会結果 photograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF <男子エリート>優勝: 中村 輪夢 (ナカムラ・リム) / 所属:ウイングアーク 1st 94.60pt準優勝: 溝垣 丈司 (ミゾガキ・ジョージ) / 所属:湘南工科大学附属高等学校 80.19pt第3位: 小澤 楓 (オザワ・カエデ) / 所属:岐阜第一高等学校 80.00pt photograph by Naoki Gaman /Japan Cycling Federation/JFBF <女子エリート>優勝: 内藤 寧々 (ナイトウ・ネネ) / 所属:第一学院高等学校 60.40pt 準優勝: 山本 結花 (ヤマモト・ユイカ) / 所属:第一学院高等学校 54.40pt第3位: 杉尾 咲空 (スギオ・サクラ) / 所属:細田学園高等学校/AIRWALK 47.00pt <キッズ4アンダー>優勝: コジマ・ハル / 62.50pt準優勝: フカマチ・コウト / 54.75pt <キッズ5-6>優勝: ナガゾノ・ジンロウ / 64.25pt準優勝: ウチヤマ・シキ / 56.88pt第3位: サカノ・エマ / 55.00pt <ボーイズ7-8>優勝: マスイ・チアキ / 80.25pt準優勝: タカハシ・ヒサシ / 71.25pt第3位: タナカ・ケンタロウ / 57.50pt <ボーイズ9-10>優勝: ニワ・コウキ / 76.75pt準優勝: オゴケ・ユウト / 75.63pt第3位: フダモト・ユウマ / 70.13pt <ガールズ7-9>優勝: ウメバヤシ・ユマ / 74.75pt準優勝: ニワ・ココロ / 60.25pt第3位: アダチ・コノハ / 44.75pt <ガールズ10-12>優勝: ホソカワ・イロハ / 76.50pt準優勝: オクザキ・トモカ / 75.75pt第3位: タナカ・アヤノ / 67.63pt <ボーイズ11-12>優勝: シミズ・ハル / 79.25pt準優勝: アカツカ・ヒロキグスティ / 77.38pt第3位: タニモト・リョウガ / 61.50pt <男子13-15>優勝: マツモト・ショア / 77.25pt準優勝: ジンボ・トラノスケ / 69.00pt第3位: マツウラ・アオウ / 60.00pt <男子30オーバー>優勝: コシヤマ・マサヒロ / 66.25pt準優勝: イシイ・コウスケ / 61.50pt第3位: シモノ・マサシ / 59.63pt <女子13-15>優勝: オザワ・ミハル / 87.75pt準優勝: ヨシダ・ミオ / 54.75pt第3位: スギモト・ミク / 38.75pt 大会概要 ⼤会名称 :「第7回 全日本BMXフリースタイル選手権」開催期間:2023年9月16日(土)~17日(日) - 2日間 –※詳細は公式HPをご覧ください。大会会場:パーク会場- 岡山市役所 構内駐車場 (岡山市北区大供1丁目 1-1) 主催:公益財団法人 日本自転車競技連盟 (JCF)主管:一般社団法人 全日本フリースタイル BMX 連盟(JFBF) 後援:岡山市、岡山商工会議所、公益財団法人 JKA、 一般社団法人日本アーバンスポーツ支援協議会、一般社団法人岡山県アーバンスポーツ協会 特別協賛:ライト電業株式会社エントリー数:フリースタイル・パーク種目 115名