東京上映直前!プロサーファー山中海輝×田中大貴が明かす「旅に求めるもの」とは?

2025.03.22
Kanato Hamaguchi
text and interview by 水野 亜彩子 / Asako Mizuno 写真提供 Kanato Hamaguchi/Tomoya Murata

世界中を旅する2人のプロサーファー、山中海輝と田中大貴が挑んだ新たなプロジェクト、WEFiNDを立ち上げた。
今回、ドキュメンタリーシリーズ第1弾となるWEFiND「自分達が旅に求めているのは何なのか?」が2025年3月30日(日)に池袋HUMAXシネマズで上映される。

現役トップ選手でありながら競技者の顔だけではなく、サーフィン、そして旅の魅力をドキュメンタリーを通じて、たくさんの人々に伝えたいという思いから生まれた今作品。
今回の舞台である西オーストラリアで感じた自然の力やライフスタイル、そしてサーフィンの真髄を追求する彼らの姿勢が、どのように映像で表現されているのか。
インタビューを通じて、このドキュメンタリーの制作過程や彼らが描いていきたい世界を紐解いていく。

山中 海輝(以下:山中)
田中大貴(以下:田中)

このドキュメンタリーを作ったきっかけを教えてください。

Tomoya Murata

山中
僕と大貴は試合の遠征で一緒に過ごすことが多いのですが、試合以外のプライベートでサーフィンに行き、映像や作品を残していきたいと以前から話していました。自分たちができることは、サーフィンだけを詰め込んだものではなく、サーフィン業界を盛り上げるためにも、サーフィンをやっていない人でも楽しめる作品を作り、それをエピソード2、3と長く続けていけるものにしたいという思いがありました。10月にお互い時間があったので、このタイミングで映像を残そうと話が進み、今回のドキュメンタリーを作ることになりました。

「自分達が旅に求めるものは何なのか?」というテーマはどういった経緯で決まったのですか

Kanato Hamaguchi

山中
もし自分たちが波だけを求めているのであれば、「インドネシアやメンタワイに行った方がいいよね」って話をしていました。でも、今回どこに行くかとなった時に、2人とも一致して西オーストラリアだったんです。それは波だけではなく、旅に求めるものは他にもあるんじゃないかという話になって。それって一体何なんだろうというのを、このタイトルにすることで色々と見えてくるものがあるのではと感じていて。
旅に求めるものは各々あると思うので、「WEFiND 自分達が旅に求めるものは何なのか?」をテーマにしました。

田中 
海輝君と遠征して世界を回っている中で、オーストラリアでも、西オーストラリアに強い思い入れがありました。波を求めるなら、インドネシアのバリ島やクルイなど色々あるけれど、それ以外に海の広さとか自然の壮大さとか、スクリーンに収まらない程の大きさが西オーストラリアにはあるんです。そう言った、サーフィン以外の旅の醍醐味を見てくれた人に伝えたいという想いから、このタイトルが生まれました。

ドキュメンタリーを通じて特に見せたい部分はどのあたりにありますか

Kanato Hamaguchi

田中
サーフィンのかっこよさを表現するのはもちろん大事。

自分と海輝君の旅先での過ごし方の共通点としては、外に出て写真を撮ったり、その地の文化などに触れることなので、そういった旅先で見たモノやライフスタイルを映像を通して伝えたいという思いがありました。
サーファーだけではなく、さまざまな人にこの映像を観てもらい、「自分も海外に行きたいな」とか「サーフィンっていいな」と思ってもらえるだけでも自分達にとってこのプロジェクトを立ち上げた意味があると思っていて、視聴者に何か上映が終わった後にアクションを起こしてもらいたいという共通の思いがありました。

だからこそ、今回のドキュメンタリーのタイトルも「WEFiND」にしました。
自分たちだけではなく、観る人たちにも、何か気づきを持ち帰ってもらえたら嬉しいなという意識を大切に制作しました。

山中
制作に入る前に観てくれた人がどんな気持ちになってほしいか、最終的なゴールの部分だけ明確に決めていました。なのでWEFiNDというタイトルも現地に行くまでは決まっていなかったんです。
観た人が「私もサーフィンをやってみたい」とか、「自分も世界に旅に出たい」と感じてもらえるような、何かのきっかけになればいいなという思いが1つのゴールとして決めて、あとは、そのゴールに向かって進めていけば、自然とドキュメンタリーの内容は見えてくるはずだと考えて旅に出ました。

「何かのきっかけになって欲しい」というゴールを決めた理由を教えてください

山中
坂口憲二さんの『海から見た、ニッポン』の映像を見て育ち、小学校の時、海に行く時は必ず見ていました。だから、自分たちの次の世代である子供たちも、WEFiNDを見て『うわ、僕も行ってみたい!』って思ってくれるきっかけになったらいいなと感じています。
それはサーフィンだけではなく、遠征に行くならこういう場所を見てみたいな、とかそういう海以外のことを知ることも大切だと思うんですよね。

今回、坂口憲二さんにも『海から見た、ニッポン』の影響を受けて作品を作ったこともお話しさせてもらいました。

Tomoya Murata

試合で訪れた時と撮影で訪れた時で思いに何か変化はありましたか

Kanato Hamaguchi

田中
試合の時は試合会場で練習をして、地形をどれだけ理解して試合に挑めるかなど選手として取り組んでいます。しかし、今回は西オーストラリアの豊富なサーフポイントを巡りながら、風向きや潮の変化を確認し、良い波を求めてサーフィンをするという理想的な生活を送ることができ、今まで以上に視野が広がり、さらにサーフィンが好きになりました。

撮影中に印象に残った瞬間や場所はありますか

Kanato Hamaguchi

山中
やっぱり1番印象的だったのはクジラと出会えたことですね。
映像の中でも話していますが、2018年に西オーストラリアを訪れた時にドローンでクジラを撮影し、その写真や動画をInstagramに投稿したところ、DJIというドローンの会社から連絡があったり、そのような活動をきっかけに当時限られたクリエイターだけが動画コンテンツを届ける動画プラットホームのYahoo!クリエイターズに参加できたんです。
クリエイターになれたのはまさにその出来事があったからこそで、今回もその時と同じようなシチュエーションで、親子のクジラ2頭を撮影できたことが、まるで何かに導かれたような巡り合わせを感じ、とても印象的でした。

田中
最初にこのプロジェクトを立ち上げてから、営業をかけ、プレゼンを行い、スポンサー集めなどをすべて自分たちで行いました。そんな思いが詰まった中で西オーストラリアに来て、映像の中でも話していますが、『これ以上何もいらない』と心から感じる瞬間があって。
普段、試合やサーフィンが当たり前になっている生活を送っていますが、西オーストラリアでは、日本で非現実的に思えるような素晴らしい生活が、現地の人々にとっては日常の風景として溶け込んでいる。そんな夢のような環境を今回過ごすことで『本当に何もいらないな』と心から思いました。

今回のドキュメンタリーを作る際に、魅せ方などで注意した点や工夫した点はありましたか

山中
自分たちが魅せたいものと、人が観たいものって違うと思うので、そのギャップをできるだけなくしつつ、みんなが観たいと思ってもらえるものを意識しました。その中でも、サーファーのリアルな姿は、しっかりと発信していきたいので、そういったシーンはカットせずに残しました。

実際、僕がサーフィンのドキュメンタリーを見ていて思うのは、サーフィンのシーンで少し違うカービングを2本続けて見せられても、正直なところ、サーフィンを知らない人からしたら違いがわからないと思うんです。でも、サーファーからすれば、この違いが面白いんだって視点もありますが、今回はサーフィンの映像のバランスを取りながら、ライフスタイルや2人がこぼした一言など、そういった部分をできるだけピックアップするように工夫しました。

あと、自分は音楽で映像にのめり込むタイプなので、映像に合う音楽を探すために2〜300曲ほど聴きました。その中で最終的に選んだのは、結局11曲ほどでした。

Kanato Hamaguchi

田中
福岡の上映会が終わった後、みんなが「曲が良くて、何度もプレイリストを聴いている」と言ってくれたり、「あの曲を聴くと、あのシーンが思い浮かぶ」とも言ってもらえて、その言葉がすごく嬉しかったです。
自分たちが伝えたかった部分と、きっとマッチしていたんだなと思います。

山中さんは出演者でもあり、編集、監督という立場の中で難しかったことはありましたか

Kanato Hamaguchi

山中
自分だったら、ここ撮るのにな、とか、ここ必要じゃないかな、と思うことはありましたが、それを言葉にしてしまうと演技になってしまうので、「今からここを撮って」とも言えなくて…。
自分が見せたい部分はあるけれど自分が撮れない以上、指示を出してしまうとそれが演技になってしまう。
映像の構成についても、現地に行ってみないとわからない部分も多く、決まっていないこともあったので最後の編集が終わるまでは、どう仕上がるのか全く見えなくて本当に怖かったです。

この旅を通じて発見や学びはありましたか

山中
映像を自分が編集したからこそ、主観ではなく、客観的にサーフィンというスポーツをしっかりを見ることができました。
こういうところがサーフィンの魅力なんだとか、8日分の素材を、100 時間以上の時間をかけて毎日見て行く中で、心が揺れたり、引き寄せられるところって大貴の一言だったり、自分がぼそっと言った一言や表情だったりして。
この瞬間が好きなんだ、これがサーフィンだ、ということに気づけたからこそ、サーフィンがさらに好きになったし、旅もまた好きになれたという気づきがありました。

Kanato Hamaguchi

田中
無我が夢中でサーフィンを楽しんでいた小学生や中学生の頃は、ずっとウエットスーツを着たまま海で過ごしていました。そこから、試合中心の生活になり、試合に負けて嫌な気持ちになることもあったけれど今回、息き抜きで久しぶりにトリップに行けたことで、子供の頃の気持ちに戻ったように、ずっとサーフィンしていたいという気持ちになって、やっぱサーフィンって楽しいなと感じました。それが思えただけでも、これからの選手生命にとって絶対に大事なきっかけになったし、それが実感できたことが大きかったです。

上映会が終わって、トークショーで海輝君と一緒に前に出て話した時に感じたことは、自分たちがやってきたことが形になって、こうして多くの人が来てくれるということが初めてで、やってきて良かったなと感じられる瞬間が本当に良かったなと思いました。

Kanato Hamaguchi

旅や作品作りをしながら競技者として戦うことに、どのような意義を感じていますか

Kanato Hamaguchi

山中
自分は小さい頃からサーフィンがうまい人がヒーローのような世界で育ってきました。でも、その「サーフィンがうまい」って何で測るのかって考えた時、やっぱり世界で戦って試合で勝っている人がうまいと思う中、自分は大きいタイトルを持っていないので、1つでも大きなタイトルを取りたいです。
試合をしていると日々学びがあり、勝つためにも色々考えてサーフィンに向き合えるのでサーフィンが効率良く上手くなると思います。だから試合が好きですし、勝った時には普段味わえない気持ちを味わえるので続けています。

田中
多分、今何か1つのことに全力を注がないと、この先の人生でも全力でできないんじゃないかと思っています。今できることは全力でやって、それをこれからに繋げていきたいと思っています。
だからこそ、継続や意思を持って続けられているのかなと思います。

今後のプロジェクト計画があれば、お聞かせください

Tomoya Murata

山中
試合のスケジュール次第ではありますが、5月か10月あたりにスリランカや南アフリカなど、そういった場所を攻めたいと思っています。

田中
行きたい場所は本当にたくさんあります。
タイトルの『WEFiND』のように、自分たちで今回西オーストラリアに行って、感じたことや発見が沢山ありましたが、それはほんの一部に過ぎないんです。
今後は自分たちと全く関係のないようなゲストと一緒に旅をして、その人たちから学んだり、その人たちも自分たちから学んだりするようなストーリーがあっても面白いんじゃないかなと思います。例えば、ボディボーダーやロングボーダー、アーティスト、コーヒー豆職人など、一般の人が見ても面白いと思えるようなものがあれば、きっと気づきがあるはずなので。
そういったものを作れたらなというのが夢ですね。

プロフィール

山中 海輝

1994年7月2日産まれ
サーファーである両親の影響でサーフィンを始める。17歳で全日本ジュニア優勝、2度にわたり日本代表チームキャプテンとして世界選手権へ出場するなど、着実な戦歴を経て、プロ資格を取得する。関西大学卒業後、サーフボードとカメラを持って世界ツアーに参戦。見たもの、感じたことを写真や映像に残し、多くの人に伝えたいとの想いから本格的にクリエイター活動を開始し現在は著名人に帯同しての撮影や広告撮影などを担当している。

田中 大貴

1998年6月14日生まれ
福岡県出身
4歳の頃に両親がサーフィンをしていたのがきっかけで海遊びでサーフィンを始める。
16歳の時に第49回全日本サーフィン選手権大会にて初優勝。
翌年の全日本サーフィン選手権大会でも優勝し2連覇を達成。
その後、日本代表として4度選出され、17歳でプロ資格を取得。
現在は、世界最高峰のサーフィン組織WSL(ワールドサーフリーグ)を舞台に、世界各地の大会を転戦している。

WEFiND「自分達が旅に求めるものは波だけなのか?」上映トークイベントショーについて

“WE FiND  自分達が旅に求めているものは何なのか?”
「自分達が旅に求めているものは波だけなのか?」この問いの答えを探すべく、世界中を旅する2人のプロサーファーの姿を描くドキュメンタリシリーズ第1弾。

主演:山中海輝 / 田中大貴
監督:山中海輝
撮影:Kanato Hamaguchi / Tomoya Murata

開催日時:2025年3月30日日曜日
開場:18:00 (8Fロビーにて17:30よりグッズ販売開始)
上映開始:18:30 (45分間)
上映終了後:トークショー (20分間)
場所:池袋HUMAXシネマズ8F シアター2
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