Surf Voice vol.4 「1960年代、サーファーと車」

2020.06.12
FINEPLAY編集部
1968年、鎌倉七里ヶ浜「第3回の全日本サーフィン大会」で撮影されたダットサン・ブルーバード。多様なグレードラインナップがあり、60年代のサーファーの多くに支持された。

電気自動車やハイブリッド車、ターボチャージャーによるエンジンのダウンサイジングや自動運転の実用化など、昔では考えられなかったほど自動車の種類や機能は多様化している。
しかし1960年代初頭には、国内外を問わず自動車の種類は限られていた。為替が当時1ドル360円の時代である。憧れの外車を手に入れることは夢のまた夢であり、限られたごく一部の人だけが乗ることのできる車であった。

オーバーヒートはつきもの

3m近い重たいサーフボードをルーフに6枚積載し、6人乗車で僕らのサーフクラブがあった鎌倉から鵠沼のビーチまでを往復した。今では考えられない光景だ。
エアコンのない車内は、夏は蒸し風呂のような暑さになる。そのため窓を全開にして走った。三角窓からの風だけが頼りだったが、それも効果があるのは走っている時だけ。停車すれば再び地獄がやってくる。
オーバーヒートはつきもので、ボンネットを開けてラジエーターに水を継ぎ足しながらのドライブであった。
幸いラジオだけは「FEN」(Far East Network)が810k㎐でNHKの次に強い電波を流していたので、移動範囲内では十分にアメリカの雰囲気を感じとることができた。

トヨタ・パブリカ(写真中央左)といすゞ・ベレット(写真中央右)。空冷エンジンのパブリカは水周りのトラブルが少なかった。

バッテリー上がりも頻繁

1960年代は初期と後期では自動車の性能に雲泥の差があった。初期の自動車はバッテリー上がりも頻繁に起き、セルモーターでのスタートができなくなることがよくあった。
そんな時はクランクでエンジンを目覚めさせる。その頃の自動車はほとんどが縦置きのエンジンマウントであったので、フロントのメッキバンパーのあたりに穴があり、そこに鉄製のクランク棒を差し込みエンジン本体のクランクを直接手で回してかけることができた。
ピストンの上死点を探り当てて体重を乗せて一気にクランク棒を下ろす。バイクのキックスタートと同じ方法だが、一発でエンジンが掛からなければこの動作を何度も繰り返さなければならない。
運転席ではアクセルに足を置き、動き始めたエンジンを微妙に煽りながらアイドリングが安定するまで神にも祈るような気持ちで作業を繰り返す。
それでもダメならドライバー1人を残し、全員で車を押してスピードが乗った時点でクラッチをつなげる。いわゆる「押しがけ」だ。緩い下り勾配や自重の軽い自動車には有効なスタート方法だった。

surf voice
フォルクスワーゲン・バス(写真左)とダットサン・ブルーバード(写真右)。フォルクスワーゲン・バスはサーファーにとって、当時最高のステータスだった。

ダットサンは故障も少なく当時のサーファー御用達

こんな車事情だったが、波を求めるのが僕らの目的。自動車は動けば十分で、色やスタイリングは二の次であった。
実際にはチョイスするほどの車種もなかった。まだ独自の開発ができなかった日本の自動車メーカーがヒルマンやオースチン、ルノーをライセンス生産していたが、その中でダットサンは故障も少なく当時のサーファー御用達だった。
フォルクスワーゲン・バスはまだこの頃は目にすることがなかった。

文・写真提供:出川三千男

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