Surf Voice vol.6「Surf Island 新島 第2話」

2020.08.10
FINEPLAY編集部
1960年代から1970年代にかけてはサーフィンの道具や文化がダイナミックに変化した時代だった。初めて新島を訪れた際に使っていた9フィートのボードも、その数年後であるこの写真では6フィートまで短くなっている。

新島に到着した私たちは植松の兄が出してくれた迎えの車に分乗し、彼の実家へ直行した。5分足らずの移動だったが、車窓から見た新島の景色は今でも忘れない。夏の弱い西風とぬけるような青空、そして海岸線にいきなり迫る山々。
竹芝桟橋からわずか160キロ南下するだけで、こんな美しい島があるとは思いもしなかった。植松に誘われなかったら新島を訪れることもなかったかもしれない。特別な人との出会いは、その後の人生を大きく変えることもあると、新島での体験を通じて私は確信することになる。

新島の自然を満喫

写真は本船が、はしけを頼らず直接接岸できるようになってからのもの。安全性、利便性が格段に上がった。
写真は本船が、はしけを頼らず直接接岸できるようになってからのもの。安全性、利便性が格段に上がった。

新島での滞在では、植松の実家にお世話になった。ご両親への挨拶を済ませ、私たちは船がついた港とは反対側に位置する、羽生裏海岸へと向かった。
新島特有の潮風でボロボロにやれたトラックの荷台に乗り、ボードを抑えながら畑を突っ切り、海までの近道を飛ばす。
今では絶対にやってはいけないトラックの荷台の使い方は、子供の頃はごく普通だった。揺れるたびにボードを必死に抑える。一昼夜の船旅であったこともあり、若かったとはいえ体は疲れを感じていた。しかし、まだ見ぬ波への期待と興奮から、疲れも次第に消え去っていった。

畑を抜け、コーカ石の粒で白く埋め尽くされた砂浜。その先には真っ青な海が広がる。ビーチブレイクながら、ところどころにサンドバーを形成し、サーフィンに理想的な波がそこかしこに点在している。真夏だというのに、海の中はもちろん、広い砂浜には誰もいない!

ボードを荷台から下ろすやいなや、海に一目散に駆け出す。初めての海へ入る前はいつも緊張する。波のサイズやコンディションはもちろんのこと、生息する危険な生物や動物には細心の注意が必要だ。自然界には私たちが知識として学習したことが、現実として存在する。
透明度の高い海水に太陽の光が海底まで届き、自分が波待ちしている影がくっきり映る。生まれ育った鎌倉の海とは、違う光景が緊張を生む。
当時はまだリッシュコードという流れどめもなく、波に巻かれてボードから落ちたら自力で泳いで岸まで戻らなければならなかった。初めての海で泳ぐ、それも周りに誰もサーファーがいない状況は結構不気味だった。

それでも何度か繰り返し波に乗るうちに、すっかり気分は爽快。サーフィンの持つ独特の爽快感にいつしかどっぷりと浸かっていた。

くさやの味と島バブル

1970年に行われた「第二回新島杯争奪サーフィン大会」の様子。広い砂浜と、遠浅の海が現在とは別物の景色を映し出している。
1970年に行われた「第二回新島杯争奪サーフィン大会」の様子。広い砂浜と、遠浅の海が現在とは別物の景色を映し出している。

サーフィンを1日中楽しんだ後は植松家に戻り、早めのディナー。くさやに、島自慢(焼酎)、つみれ揚げ、アシタバの天ぷら。全てがはじめてのものばかりだった。
鎌倉ではアジの開きといえば、塩の天日干しが最高のものだ。しかし新島の特産であるくさやは、大きなムロアジを独特の臭いタレにつけて干したものだ。この味には、一発でやられてしまった。
嫌いな方には絶対許されない匂い(島の製造工場近辺一面にこの匂いが漂っている)だが、好きな人にはたまらない味だ。特に、生干しと呼ばれる一夜干しは、卵かけご飯にアシタバのおひたし、豆腐の味噌汁とともに朝の食卓に供され、育ちだかりの私たちの食欲を湧き起こした。

良い波の噂が全国のサーファーに広まったこともあり、その後新島を訪れるサーファーが瞬く間に増えた。夏になると民宿は人を捌ききれず、庭には仮設の宿泊施設が増設されるなど、島バブルが起きる。
町役場がサーフィン大会を主催し、やがて東京都知事杯までに格上げされるに至った。日本のプロサーフィンや国際大会、ウィンドサーフィン大会までもが開催された。
人が増えればそれなりの問題は起きたが、この島の自然風土は今もサーファーを暖かく迎え入れてくれている。
日本各地で見られる、砂浜が極端に減少している光景はここ新島も例外ではないが、一度うねりが届き波が割れ始めれば、サーファーを満足させるワールドクラスのパワーは健在だ。

文・写真提供:出川三千男

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