日本勢が大健闘「第1回FIGパルクール世界選手権」女子フリースタイル種目では山本華歩が準優勝。大会最終日レポート

2022.10.19
日本勢初の準優勝を収めた山本と日本代表選手の泉、近藤、岩崎の3名
text by 畠山大樹/photograph by Shuji Izumo, Kazuki Murata

「第1回FIGパルクール世界選手権」が2022年10月14日(金)~16日(日)の3日間に渡り、有明アーバンスポーツパーク(東京都)で「URBAN SPORTS TOKYO 2022」内にて開催された。なおパルクール競技では史上初の第一回目の世界選手権ということもあり世界40か国からたくさんのトップ選手たちがここ東京有明の地に集まった。

また「URBAN SPORTS TOKYO 2022」では今大会の他に、スケートボード競技ストリート及びパーク種目の大会として「URBAN SPORTS TOKYO 2022 Skateboard Festival」、サイドコンテンツとしてBMXフラットランド、ブレイキン、ダブルダッチ、ヒップホップ、パルクールのデモンストレーション及び一般体験会が併催され、来場した一般のお客さんにとっては昨今国内外で人気上昇中のアーバンスポーツを全身で楽しめる3日間になった。

そして「第1回FIGパルクール世界選手権」は2日目を終えた時点で女子スピード種目、男子フリースタイル種目での世界王者が決定。優勝候補が入賞を逃すなど波乱の展開もあり最後まで誰が勝つか分からない接戦が繰り広げられた。そして最終日となった16日は男子スピード種目女子フリースタイル種目にて世界一の座が争われた。

以下は、今大会最終目のリポートとサイドコンテンツの様子を紹介。

最終日リポート

フリースタイル種目で惜しくも予選敗退となったが
見事なランを見せた岩崎優衣
photograph by Shuji Izumo

大会最終日は初日とは打って変わって、終日晴れという天候の中でほぼ滞りなく大会は進められた。会場内もたくさんの観客と選手たちの声援が飛び交い、アップテンポの音楽も相まって終始大盛り上がり。その影響もあってか選手たちのスーパープレーもたくさん飛び出し、まさに第一回目の世界選手権に相応しい締めくくりを見せた一日となった。

男子スピード予選・準決勝・決勝

勝乗志音のラン
photograph by Shuji Izumo

本当の意味で世界最速のパルクールを競い合う男子スピード種目には今年7月に行われたワールドゲームス2022と先月9月のワールドカップで優勝したボーダン・ コルマコフ(ウクライナ)をはじめ、世界中からトップ選手たち53名が出場。日本代表からは勝乗志音大西隼人の2名が参加した。

当種目は前日に行われた女子カテゴリー同様にセクションの中に敷かれたライン上を往復しその速さを競い合うタイムアタック形式で、2名ずつタイムを競い全体の上位10名が準決勝に進出する。
ゴールにあるタイマーのストップボタンのタッチの差が勝敗を分けるまさにスピードそのものといった競技で、予選トップタイムはエメルソン・オルドネス(コロンビア)の26.37秒。日本人選手は勝乗が31.04秒で23位大西が31.52秒で26位で惜しくも上位10位には残れず予選敗退となった。

大西隼人のラン
photograph by Shuji Izumo

そして53人から絞られた10人で競われた準決勝ではバトル方式に。ここからは更に6名に絞られるのだがここでも接戦が繰り広げられた。特にウクライナ代表のボーダン・ コルマコフとチェコ共和国代表のヤロスラブ・フムとの戦いは「26.12秒 VS 26.16秒」と100分の1秒で争われるほど。そしてなんと決勝進出者は6人中5人が26秒台と僅差の戦い。決勝での激しい争いが期待された。

100分の1秒の差で競われたボーダン・コルマコフとヤロスラブ・フムのラン
photograph by Shuji Izumo

そんな期待感の中で迎えた決勝では更に秒数を塗り替える戦いに。その中で注目されたのはウクライナ代表のボーダン・ コルマコフとイタリア代表のアンドレア・コンソリーニとの一戦。
準決勝1位通過のコンソリーニを置き去りにするスムーズで無駄のないコルマコフのオブスタクルの越え方には見ている他の選手たちのテンションもマックス。終始スピードを落とさずコルマコフが叩き出したタイムはなんと25.25秒。準決勝のタイムを1秒近く縮め見事初代世界チャンピオンの座を勝ち取った。コルマコフと一緒に決勝を争ったコンソリーニは25.84秒で準優勝3位はオランダのタンギ・ファンシンゲンが26.37秒で2人に続いた。

ボーダン・コルマコフのラン
photograph by Shuji Izumo
準優勝したアンドレア・コンソリーニ(右)のラン
photograph by Shuji Izumo

優勝者コメント

初代世界チャンピオンとなったコルマコフ選手
photograph by Shuji Izumo

ボーダン・ コルマコフ 選手/ ウクライナ
「記念すべきこの第一回の世界選手権で初代世界チャンピオンになることができてとても嬉しいです。そしてこのメダルを自分のためではなく母国ウクライナのために持ち帰ることができて良かったです。
僕はこの大会のためにもたくさんスピードに特化したトレーニングしてきたのでそれがこの結果に繋がったんだと思っています。今後はもちろん出場する大会で勝ち続けるのが目標ですが、やっぱりオリンピックへの出場が夢なので開催が実現することを願っています。」

女子フリースタイル予選・決勝

近藤凪紗のトリック
photograph by Shuji Izumo

女子フリースタイル種目には16名が参加。当種目だけに参加する選手もいる中、スピード種目では惜しくも入賞を逃したがここ直近のワールドカップで2連勝しているエラ・ブシオ(メキシコ)や今年のワールドゲームス優勝者のノア・マン(オランダ)も出場しハイレベルの戦いが繰り広げられるのは容易に考えられたこの試合。日本代表選手からは泉ひかり(所属:TOKIOインカラミ)、 山本華歩近藤凪紗岩崎優衣の4名が出場した。

泉 ひかりのトリック
photograph by Shuji Izumo

そんな予選では日本人勢も大健闘。上位8名が決勝に出られるフォーマットの中、山本が4位通過近藤が7位通過。そして泉も8位につけるも決勝には国別で2人までしか出場できないというルールに阻まれ惜しくも岩崎と共に予選敗退となってしまった。しかし決勝に2名の代表選手が勝ち上がれた国は日本だけであり日本のフリースタイルのレベルの高さを表した予選となった。

エラ・ブシオのトリック
photograph by Shuji Izumo

そして上位8名にて世界一の座が競われた決勝では優勝候補とされていたエラ・ブシオ(メキシコ)が圧巻のランを魅せる。バーで大きく体を振ってから飛び出し難易度の高い「ダブルバックフリップ 」をメイクしたり、各オブスタクルで回転系のトリックを確実にこなす。元々体操選手として活躍してきた彼女だからこその強みを発揮したランで27ptをマークして他選手を大きく突き放し初代世界チャンピオンの座を勝ち取った。

山本華歩のトリック
photograph by Shuji Izumo

そしてそんなブシオに次いで準優勝の快挙を成し遂げたのが山本華歩。「サイドフリップ」から「バックフリップ」のコンボや各オブスタクルでバラエティに富んだムーブを確実にメイクし25ptをマークした。
終始ミスもなく完璧な演技を披露した彼女は自分のランを終えた瞬間に大きく天に向かってガッツポーズ。完璧なランができたことに涙する姿を見て観客も感動し大きな拍手で祝福した。

アデラ・メルコヴァのトリック
photograph by Shuji Izumo

そして3位には24.5ptでアデラ・メルコヴァ(チェコ共和国)が入り、日本の近藤凪沙は健闘するも7位で大会を終えた。

優勝者コメント

初代世界チャンピオンとなったブシオ選手(中央)
photograph by Shuji Izumo

エラ・ブシオ 選手 / メキシコ
「今回初代世界チャンピオンになることができてとても嬉しいです。私は元々体操選手でそれからパルクールに転向してきましたが本当にこのスポーツが大好きです。それはスポーツとしてだけではなくてパルクールが持つ考え方やコミュニティーといった部分を含めてなのですが、改めてこのスポーツが大好きだなと感じられた大会でした。この大会に向けては技術的なトレーニングはもちろんのこと、どうしたら勝てるかをしっかり理解し戦略を立てて臨んだので勝てて良かったです。」

日本人選手コメント

準優勝した山本華歩選手
photograph by Shuji Izumo

山本 華歩 選手 / 日本
「世界選手権の決勝という舞台で自分のやりたいことを出し切り100%のランできてとても嬉しかったです。日本には海外ほど充実した環境がない中でハイレベルな回転技などを習得するのが難しく私自身も海外選手のような大技はできません。それでも世界と戦うために得点が高く加点されるコンボ技をたくさん練習してきました。その努力の結果がこの銀メダルとして表れて本当に嬉しいです。
私は2008年からダイエットをきっかけにゼロからこの競技を始めましたが、取り組み続けてここまで来れたので誰でも気軽にできるスポーツということを伝えて女性や大人でも始められるんだよっていうことを広めていきたいです。」

大会結果

photograph by Shuji Izumo

男子スピード種目
優勝 : ボーダン・ コルマコフ / ウクライナ
準優勝 : アンドレア・コンソリーニ / イタリア
3位 : タンギ・ファンシンゲン/ オランダ

photograph by Shuji Izumo

女子フリースタイル種目
優勝 : エラ・ブシオ / メキシコ
準優勝 : 山本 華歩 / 日本
3位 : アデラ・メルコヴァ / チェコ共和国
7位:近藤 凪沙 / 日本

サイドコンテンツ

スケートボード

photograph by Shuji Izumo

東京五輪でも使われたスケートパークでスケートボード競技ストリート及びパーク種目の大会として「URBAN SPORTS TOKYO 2022 Skateboard Festival」も開催された。

BMXフラットランド

photograph by Shuji Izumo

日本を代表するプロBMXライダーの佐々木元荘司ゆうがデモンストレーションで会場を沸かす姿が見られ、体験会でもたくさんの子どもたちがBMXにトライ。慣れてきた子がベーシックな技にもチャレンジする姿も見られた。

ダブルダッチ

photograph by Shuji Izumo

世界を代表するプロダブルダッチチーム「REG☆STYLE」や初日には「FLY DIGGERZ」がショーケースを披露。その後の体験会ではたくさんの子どもたちが参加していた。

ヒップホップ

photograph by Kazuki Murata

ヒップホップ体験会では音楽に合わせ、親御さん含めたくさんの子どもたちが一緒にダンスを楽しんだ。

ブレイキン

photograph by Kazuki Murata

「Valuence INFINITIES」「The Floorriorz」のレクチャーの下、プロダブルダッチチーム「REG☆STYLE」も加わりみんなで楽しくブレイキンを体験する姿が見られた。

パルクール

photograph by Shuji Izumo

真隣では同競技の世界選手権が行われているという贅沢な環境の中、興味を持った子どもたちが途切れず楽しく体験している様子が見受けられた。

大会概要

大会名称 : 第1回FIGパルクール世界選手権 presented by Yahoo! Japan
開催期間 : 2022年10月14日(金)~16日(日)- 3日間 –
※詳細は公式HPをご覧ください。
大会会場:有明アーバンスポーツパーク(東京都江東区有明1丁目7番2)
主催:国際体操連盟(FIG)、公益財団法人日本体操協会(JGA)、一般社団法人日本アーバンスポーツ支援協議会(JUSC)
共催:東京都
後援:日本オリンピック委員会(JOC)
主管:第1回FIGパルクール世界選手権実行委員会(LOC)
特別協賛:ヤフー株式会社
協賛:株式会社みずほフィナンシャルグループ、イオン株式会社、日本航空株式会社、ミズノ株式会社、富士通株式会社、LED TOKYO、オムニインターナショナル株式会社、TSP太陽株式会社、株式会社デジタルワレット、東武トップツアーズ株式会社、FINEPLAY、イオンディライトセキュリティ株式会社

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