アートを始めた経緯と、今のスタイルや思い Takayuki Matsumine

2019.07.18

今回の記事では僕がなぜアーティストになったのか?またどういうスタイルやモチベーションでアート活動に取り組んでいるのかを紹介したいと思います。

バックグラウンド

 実は本格的にアーティストとして活動し始めたのはまだこの2年くらいです。もともとデザインやものづくりに興味があったことから、19歳の頃からデジタルグラフィックデザインを独学で勉強し始めました。時代とテクノロジーに救われたと思いましたね。自分でペンを握ってデザインのラフ画を描いたりすることが難しい中で、コンピューターとグラフィックソフトウェアがあることは奇跡であり運命に感じました。まさに水を得た魚、とにかくのめり込んで今日まで来たという感じです。

 デジタルデザインで著名なアーティストやアスリート、企業とのコラボレーションをする機会が増えていくにつれて、やはり自分のオリジナリティある作品が作りたいという気持ちが膨らんでいきました。そして2017年にデジタルグラフィックデザイナーからアーティストに転身しました。

 転身後もデジタルグラフィックのテクニックが作品づくりに活きています。主に使うソフトウェアはPhotoshop, Illustrator、Zbrushにフュージョン、立体の作品を作り出す時はPhotoshopから数えると5つのソフトフェアを介して制作するんです。

Takayuki Matsumine

今のスタイルは

2018年にスイスのArt Baselを見学したことを機に、ものづくりに対する考え方が一掃されました。作品の価値は、作家本人がどれだけ一人で仕上げたかということだけではなく、プロダクションワークのように作家が制作のアイディアを発案しディレクションすることで、作品の制作規模を広げるんですね。そいった作る体制と評価の価値観に新しさがありました。それぞれのスペシャリストが分業して仕上げるスタジオワーク、または外注であっても良いし、ようは作家のアイディアや意図が宿っていることが現代アートのひとつの醍醐味になっていたんです。僕自身、もともと職人気質でしたから、自分が最後まで手がけたものがすべて、と思っていました。一方で誰もがそうですが、自分でできることの幅には限度があるわけなので、その限界のタガが外れているArt Baselの世界観にすっかり魅了されました。

 以前はキャンバスに向かって、平面の世界観の中で何を作ろうか必死に考察していたんですね、今考えるととても凝り固まっていて窮屈な考え方でした。最近では解放されたように作品を考案しています。もちろんキャンバスに絵を描くこともしますし、アッセンブラージュのようなものの組み合わせから、立体造形、インスタレーションまで、頭に浮かんだものを様々な形で表現しています。それでも職人気質が抜けきらないところもあり、自分自身でモデリングといって立体作品の原型を作る彫刻作業のようなことも未だに手がけるんですね。僕のデジタル彫刻が3D最先端技術で100%ピュアに造形される感覚はかなりエキサイティングで、どうもやめられないんです。

Takayuki Matsumine

最近の作品について

 今までに養ってきた技術と感性で全て吐き出す、といった感じでキャンバスへの平面から立体造形、デジタル映像を含んだインスタレーションを作品として制作するのが今のスタイルです。キャンバスにアクリル、ミクスドメディア(絵の具や材料の混入)、デジタル平面に映像、デジタル彫刻からの出力造形と、持ち合わせている技術で何でもやります。

 作品づくりのテーマは大きく2つ:
1. The Perfect Accident

 17年前のあの完璧な事故が僕に与えたもの

Takayuki Matsumine

2. Channeling and Funneling

 限りない知的好奇心の奥底にアクセスし、絞り出したもの

Takayuki Matsumine

この2つのテーマから作品を生み出しています。

 日常に潜むものからの新しい感覚の発見、または全く新しい世界観をプレゼンテーションし、時には共有できることがやりがいです。僕自身、日常の単純なものを新しく見ていくことや、全く新しいものへの興味がすごく強いんですね。例えば、テーブルに置いてあるマグカップ、天井からぶら下げることでもうマグとしては機能しなくなり、普段は気にすることのないマグの底を覗けるようになるんですね。だから何?それがアート?って話ですけど、少なくとも「もの」を新しい価値観で見ることになりますね。そしてそれをトライする行為を観る側が想像したり、普段の固定観念では動き出さない新しい創造って実はあるんじゃないか!?と少しでも新しい方へ心が動くことが大切だと思うんです。「そんなんよくわかんねぇよ笑」という思いが湧くとすると、実はもう心が固まってしまっているかもしれません。新しい考え方、奇想天外、実はそれがあらゆる場面、もしくは仕事での「より良い」をつくっていくモチベーションに一役かうことになるかもしれないんですね。

シンプルに、好きか嫌いかから観てもらえることがスタートですけど。

Takayuki Matsumine

今回は僕がアートを始めた経緯と、今のスタイルや思いについて書いてみました。引き続き、ロサンゼルスでの活動をレポートします!お楽しみに!

Takayuki Matsumine (松嶺 貴幸)

1985年12月9日生まれ。岩手県雫石町出身。東北の豊かな自然が織りなす強烈な四季の中、 野生の動植物が嬉遊に生息する生命豊かな環境で生まれ、郷土民芸品の継承を担っていた祖父母の影響で「ものづくりに」の機会に恵まれた幼少期を過ごす。2001 年フリースタイルスキーの転倒 事故により頸椎を骨折、脊髄を損傷。2 年 8 ヶ月病院で治療から、自身の生命と向き合う機会を賜った。 生きる欲求と死への恐怖や苦悩が強烈に混ざり合い、本能の根底から「生」の価値観が湧き上がった。2013 年、単身で アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルスに渡り、サンタモニカカレッジでインダストリアルアートに出逢うと、そのエンターテイメント文化に触発され、全く経験のなかったアートの世界に飛び込んだ。現在は、燃えたぎるものを外部に排出し、残像した脳の内部で起こるニューロン・スパークや神経蘇生への欲求、強烈に飛び出し続ける脳波など宇宙論を形成する量子を自身の作品に落とし込み、造形、イン スタレーション、テクノロジー&サイエンティフィック・フュージョンをはじめとする作品に、一刻一 刻発火し、更新される考察を吐き出している。

2018年4月   View from the Broken Neck  @SO1 Gallery

2018年11月   The Perfect Accident  @aiina Gallery

2019年5月   The Factors  @ガロウ Gallery

執筆者について
FINEPLAY編集部
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