所有欲を刺激する「パタゴニア」のトング。この激レア品が湘南の海を守る

2022.09.15

パタゴニアのラインナップには、ときに「こんなアイテムがあったの!?」と驚かされる。そんなトレジャーハント的要素があるからこそ、次なる新作にも俄然興味が掻き立てられるのだ。

ユナイテッドアローズの清水 学さんが手にしたアイテムもまた、その類の名品である。

清水 学●1996年にアルバイトスタッフとしてキャリアをスタート。2016年にオープンした東京・南青山の名店「エイチ ビューティ&ユース」の初代店長をはじめ、数々のショップマネージャ―と本部責任者を歴任。現在は湘南のライフスタイルショップ「カリフォルニアジェネラルストア」のディレクターを担当する。

ファッションとしてパタゴニアに傾倒した日々

清水さんがパタゴニアを初めて手にしたのは約25年ほど前。ユナイテッドアローズに入社してすぐのことだ。

「当時は誰もがパタゴニアのスナップTやマウンテンパーカを着ていましたね。そこでブランドの存在を意識し、江ノ電で鎌倉へ出掛けた記憶があります。当時は目白にショップがありましたけど、パタゴニアは鎌倉店がいわば本丸。そこで買うステータスのようなものはありましたよね」。

20代後半で札幌へ転勤した際も、スノーボードウェアにパタゴニアを選んだ。

当時は山ブランドとしての印象が強かったそうだが、東京へ戻って本格的にサーフィンを始めてからは海ブランドとしての認識に切り替わったという。

「サーフィンを本格的に始めたのは札幌から戻ってきてから。同時期に“旧”カリフォルニアジェネラルストアにも通い始めました。かれこれ20年ぐらい経ちますね。そこではパタゴニアも扱っていたんですよ。その当時の雰囲気を、今の店舗にも活かしています」。

“旧”カリフォルニアジェネラルストアはビーチクリーンにも積極的で、常に地球環境への配慮も意識していた。そのDNAは、清水さんがディレクターを務める“現”カリフォルニアジェネラルストアも継承。清水さんが愛用するパタゴニアアイテムも、そのDNAに関連する。

ブランドの強い信念を感じさせるトング

今回、清水さんが愛用品として紹介してくれたのが、この“トング”。これまで多くのパタゴニアンに”Myパタゴニア”を見せてもらったが、さすがにトングを紹介してくれたのは清水さんが初である。

「これは“現”カルフォルニアジェネラルストアのオープン準備をしていた頃に購入しました。毎年リリースしているものではないようですね。このショップをオープンするにあたって、ビーチクリーンも引き継ぎたいと考えていました。

そこで、いろいろ調べているうちに、こんなカッコいいトングを見つけたんですよ。スタッフ分もまとめて購入したかったのですが、在庫がなく、4本しか買えませんでしたが(笑)」。

トングの先端にはラバーグリップが付いており、明らかに焚き火などには不向き。まさにゴミ拾い用に作られたものと推察できる。環境保全に力を入れる、パタゴニアらしいアイテムである。所有欲も刺激されるレア品だ。

トングを持ち、ハワイで購入したというパタゴニアのハットを被れば、清水さんのビーチクリーンコーデの完成だ。

「ハワイに行ったら、必ずと言っていいほどみんなノースショア側のパタゴニアへ寄りますよね(笑)。エリア名が入ったものなど、その土地のパタゴニアのスーベニアみたいなTシャツがあるじゃないですか。そういうのは僕もつい買っちゃいます。このハットを購入したのも、そんなノリに近かったですね」。

清水さん曰く、このハットは「国内ではあまり見かけたことがなかったモデル」で、当初は奥様が自分用に買ったものだそう。

「でも、最近は僕が被っちゃってます(笑)。ブリムも広く、日除けにもちょうどいいので。これらのアイテムで固めながら、洋服は動きやすさと気持ち良さをキモにしています。この時季は基本はTイチ。さらに海でも映える白パンがお約束になっていますね」。

そして、日々スタッフとともに店舗周辺や鵠沼海岸のゴミ拾いを続けている。

「このお店を立ち上げたときのコンセプトのひとつに“サステナブル”がありました。ショッパーを用意していないのもその一環です。もちろん、この場所に構えたからにはビーチクリーンもマストですよね。

このエリアにはKBCC(鵠沼ビーチクリーンクラブ)というサーフチームのボランティア団体があるのですが、その方々が行っている活動にも月に一度参加しています」。

ショップのマインドとも合致するパタゴニア

パタゴニアは、現在のカルフォルニアジェネラルストアの精神に共鳴する点が多いと清水さんは考えている。

「パタゴニアは、先頭に立って環境保護活動をしているじゃないですか。環境保護のために売上の1%を利用する『1%フォー ザ プラネット』を設立し、自ら加盟しているのもそう。化繊が流れ出ないようにするための『グッピーフレンド・ウォッシング・バッグ』の取り扱いを啓蒙しているのもそう。

そういった活動に感化される部分は多々あります。地球環境をあれだけ真剣に考えている企業の姿勢は素晴らしいし、今は敵いませんが、店としても彼らを超えるくらいの意気込みは常に持っていろんな取り組みをしたいと思っています」。

カリフォルニアジェネラルストアの“斬新な試み”も、パタゴニアの企業理念に触発されてのものだ。

「パタゴニア創業者の『社員をサーフィンに行かせよう』という本にはとても考えさせられました。それもあって、オープン後の半年間はスタッフを固定していなかったんです。『働きたい人〜』と募って、手を挙げてくれた人に来てもらっていました。

なのでサーフィンが趣味であったり、ヨガが好きだったり、サステナブルに興味がある人など、30名ほどのスタッフを毎日ローテーションしていたんです。大変は大変でしたけど、いい経験にはなりましたね(笑)。スタッフが笑顔で働ける現場作りというのは、常に意識しています」。

パタゴニアの魅力について、「未来を考えているところ」と論じる清水さん。そして、なにより働いている社員みんなが楽しそうなところにブランドの真髄が垣間見えるとも付け加える。

生活の豊かさとは、心の在り方によるところが大きいとしみじみと感じさせられる言葉ではないか。

佐藤ゆたか=写真 菊地 亮=取材・文

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(この記事はOCEANS : 「所有欲を刺激する「パタゴニア」のトング。この激レア品が湘南の海を守る」より転載)
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