「何者でもない自分」が世界へ。Ringo Winbeeが語るRed Bull Dance Your Styleへの覚悟

2026.10.20
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Interview & text by Manato Furuta

今夏、世界最大級のストリートダンスバトル「Red Bull Dance Your Style」の日本大会「Red Bull Dance Your Style National Final Japan」、悲願の日本一に輝いたRingo Winbee。今最も勢いのあるダンサーの一人である彼女は、2026年10月24日(土)、スイス・チューリッヒで開催される「Red Bull Dance Your Style World Final」に日本代表として挑む。

5歳でダンスを始め、幼少期から第一線で活躍してきた彼女。しかし大人になり、周囲が就職活動を進める中で「自分には何があるのか」と進路やダンサーとしての在り方に悩む時期もあったという。

それでも自身の武器を信じて勝負に挑み、掴み取った日本一。「何者でもない自分」から、最高峰の舞台へ挑む彼女の原動力とは。世界大会を目前に控えた今、その胸のうちと覚悟に迫る。

4度目の挑戦で掴んだ日本一

Haruka Ambai/Red Bull Content Pool 

— 「Red Bull Dance Your Style National Final Japan」優勝、おめでとうございます。改めて、率直な感想を聞かせてください。

Ringo Winbee:ありがとうございます。今回が4度目の挑戦で、どうしてもDance Your StyleのWorld Finalに行きたいという想いが強かったんです。いつか取りたいとずっと想い続けて、ようやく掴み取ることができました。曲のカテゴリーも決まっているので、対策してしっかり準備をして臨みました。

その結果、優勝することができたのですが、当時は結果がついてこない時期でもありましたし、自分が今後どんなダンサーになっていくのかを迷っている時期でもありました。その迷いが、結果によって吹っ切れたような感覚があって。目標を達成できた嬉しさとともに、また新しい目標ができたな、という気持ちでした。

— 進路についても、いろいろ模索されていた時期だったと伺っています。

Ringo Winbee:そうなんです。周りの友達が就職活動をしていて、自分もその流れで就活していました。大学生活を送る中で選択肢はたくさんあるけれど、ダンスは本当に大好きで、続けていきたい。でも、ダンサーとしての道でいいのか、大きな迷いがありました。 

それでも、やっぱりダンサーでありたい気持ちがずっとあって。そこで勝負に出て、結果次第で自分の進路を決めよう、と考えていたんです。まさに、今回の優勝が大きなターニングポイントになりました。 

National Finalで貫いた「音楽」の表現

Suguru Saito/Red Bull Content Pool 

— 7月のNational Finalでは、「ここで死んでもいいという気持ちで踊った」とコメントされていました。あのバトルを、振り返ってみていかがですか。

Ringo Winbee:純粋に楽しんで踊れていました。その中で、「勝ちたい」という気持ちがダンスに出たのかなと思います。その気持ちだけは誰にも負けていないという自負はありました。体力的にもタフな大会でもあったので、振り返ってみると身体的にも限界まで追い込んでやっていましたね。

— Dance Your Styleは観客がジャッジで、音も決まっている特殊な形式です。ステージ上で意識していたことや、準備していたことはありましたか。

Ringo Winbee:自分の武器は、みんなが持っているようなダイナミックな技ではありません。そういった踊り方は本当にできないので、自分がやってきたPOPPINGのスタイルで、いかに音を表現して見せられるか、音楽を表現できるかを意識していました。それが自分の強みで、そこで生きていきたいと信じたかった気持ちもあって、頑張って意識していたところです。

その上で、曲を知っていないといけませんし、踊りにくい曲やジャンルもあるからこそ、どうやって表現しようかというところは、すごく準備しました。

— 苦手な曲も聴き込んだとコメントされていました。

Ringo Winbee:そうですね。ある程度曲を覚えるだけではなくて、「この曲ではどういうムーブをしようかな」というところまで考えて準備しました。

「音を見せる」Ringo Winbeeのスタイル

Haruka Ambai / Red Bull Content Pool

— Ringoさん自身が考える、「自分はこういうスタイルだ」というものはありますか。

Ringo Winbee:いろんなスタイルをミックスして踊っていくタイプではあるんですけど、音の表現をダイレクトにする、パッと音楽が見えるようなダンスが好きなんです。今の日本のシーンの主流ではないんですけど、どちらかというと、韓国や中国のダンサーに多いスタイルがずっと好きで。それが自分のスタイルでもあるので、極めていきたいなと思っています。

— POPPINGダンサーの中にも、いろいろなスタイルがあると思います。そうした中で、シーンの第一線で活躍している方々には、どんな特徴があると感じますか。

Ringo Winbee:評価軸が明確にあるわけではないですし、大会によって変わりがちなんです。ただ、何が評価されるかを意識して踊る事よりも、やはりクオリティが高い事が重要だと思っています。

今の日本は、自分のようなバチバチ系が少数派になってきた感覚があります。もともと日本は、わかりやすく音をはめていく人が多かったんですが、最近はアニメーション系で踊る人も増えて、だいぶスタイルが分かれてきているなと感じます。そうした中でも、飛び抜けてクオリティが高い人たちや、自分のスタイルを確立している人たちは、やはりすごいなと思います。

「Ringo Winbee」のルーツ

— 「Ringo Winbee」という名前の由来と、ダンスを始めたきっかけを教えてください。

Ringo Winbee:名前は、先生の一人のBROTHER BOMBさんにつけてもらいました。Ringoは本名なんですけど、Winbeeは、Winが「勝つ」で、Beeが「蜂」なんです。蜂は体がちっちゃくても、すごいヒットを弾いて刺すようなイメージ、ということでつけてくれました。

ダンスを始めたのは5歳の時です。もともと父がダンス好きで、イベントを見に行ったり習い事をしたりする中で「私にもやらせたい」と思ったのがきっかけでした。 

小さい頃の私は、父と一緒に走ったりする活発で少年っぽい女の子でした。とにかく体を動かすことや音楽番組が好きで、日常的に踊っている姿を見た父が、地元のダンススタジオに通わせてくれたんです。 そこからのめり込んで、7歳くらいで初めてダンスバトルに出ました。地元のスタジオを離れて、都内の有名なダンサーのところに通い始めて、POPPINGや他のジャンルも習いながら様々なバトルに出ていました。

8歳か9歳くらいの時に、初めてPOPPINGのバトルに出ようと言ってもらって、挑戦してみたら「案外いけるね」と。ソロバトルにも出るようになったら、結果が結構ついてきたんです。それがきっかけで、だんだんPOPPINGが増えていきました。

— バトルの時の赤い衣装が、とても印象的です。何か意識されているのでしょうか。

Ringo Winbee:逆に言うと、こだわりはないんです。小さい頃から赤の服を着すぎて、気づいたら赤を着ていないとバトルのモードが入らなくなってしまっていて。赤をたくさん着たり見たりしているので、服屋でかわいいと思って手に取ると赤い色だったりします。一度、違う衣装で踊ってみて、「なんか違う」とまた元に戻ったり。ずっと同じ衣装を着ているので、逆にこだわりがないのかなとも思っています(笑)。

「何者でもない」から見つけた答え

— 優勝コメントで「何者でもない自分が世界で優勝して人生を変えたい」と話されていたのが、とても印象的でした。この言葉に込めた意図を教えてください。

Ringo Winbee:どういう言葉を選んでいいのかわからないんですけど、最近すごく感じているのが「フィジカルの強さ」なんです。ダンス界全体を見渡しても、圧倒的な体格差があったり、多彩な技を持っていたり、フロアで力強く回れたりするダンサーが本当に増えてきていると感じています。他のジャンルはもちろん、世界のトップスターたちも本当にすごいです。

POPPINGでも、背中がしなるほど曲がったり、体が驚くほど柔らかかったりと、「分かりやすい武器」がある。でも自分には、そういうチャームポイントのようなものが何一つないなと思っていて、最近はそれが少しコンプレックスでもありました。そういった意味で、「何者でもない」と言ったのかなと思います。 

でも、フィジカルが重視される時代だからこそ、無理にそっちへ寄せるのではなく、自分の強みを貫き通す方がかっこいいんじゃないかと、何周も考え抜いてようやく辿り着いたんです。この自分の体で表現できる最大限の「ミュージカリティ(音楽性)」で世界一を取れたらすごく夢があるし、かっこいいなと思っています。

— 以前、バトルで勝ちきれなかった時期があったともお話しされていました。踊り方や向き合い方が変わったきっかけはありましたか。

Ringo Winbee:これというきっかけはないんですけど、長くダンスをやってきて、昔は「ちっちゃい女の子なのに、めっちゃヒットが強い」という一つの「主語」があったからこそ、いろんな大会に出させてもらったり海外に行かせてもらったりしたんじゃないかなと、改めて振り返ってみてそう感じています。ちゃんと大人になって主語が「普通の女の子」になった時、「何も持ってなくない?自分」と思ったのが、まず一つあって。 

そこからどうやって戦っていくんだろうと考えているうちに、日本のダンスシーンの流行も変わっていきました。流行に寄せないと勝てない時代なのかな、と思い始めたこともありました。私は勝ちに執着してしまうタイプなので、バトルについて考え込む時間がこの2、3年結構ありました。上がれていた予選も上がれなくなったり、勝てていた大会も勝てなくなったりして、結果がどんどんついてこなくなってしまって。

もちろん自分の成長が追いついていないのが前提ですが、言い訳を探そうと思えば、いくらでも外部のせいにする仮説は出てきました。

でも、もっと上の人たちのダンスを見る中で辿り着いた答えは、「自分の好きなスタイルを貫いて頂点に立てば、絶対に納得させられるし評価される」ということでした。その想いで挑めたことが、今回の結果に繋がったんだと思います。

イベントを創る側として見えた景色

— バトラーとしてだけでなく、イベントの主催などもされていますよね。そうした経験は、Ringoさんの人生にどう活きていますか。

Ringo Winbee:大学でダンスをやっていた時、ダンスでお世話になった人が、大学生の大きな大会を運営することになって、「一緒にやらないか」と誘ってもらったのがきっかけで、運営に携わるようになりました。

全日本大学ストリートダンス選手権の運営に入ってからは、ダンスシーンの見え方が一気に変わりました。イベントは当たり前に開かれているわけじゃないんだな、と。一つのイベントを開くのに、たくさん考えることがあって、こうしたらもっとよくなるんじゃないか、という視点を持つことができました。

— 大規模な大会ですよね。

Ringo Winbee:当時は、多分300人くらいのダンサーが出場していました。全国大会だけでなく、予選大会から運営していたんです。

最近、ダンサー自身がイベントを企画したりバトルを開催したりする動きが増えてきていると感じています。すごく素敵なことだと思うのでもっと増えてほしいですし、自分もどんどん実行していきたいです。

今もイベントの手伝いをしたりコンテンツを担当させてもらったりしていて、大変な面もありますが、それも含めてすごく楽しく取り組めています。こういう裏方の仕事も自分に向いているんだなと、改めて思っています。

世界の舞台、World Finalへ

— World Finalは、海外の舞台です。日本の舞台と、何か違う感覚はありますか。

Ringo Winbee:会場の雰囲気というか、海外の反応がすごいんです。昔から海外に挑戦する機会はあって、海外で歓声を浴びる感覚はすごいなと思ってきました。海外のダンサーはすごくレベルが高いですが、日本のバトルは技術やスキルを厳密に評価するシリアスな基準が多いと感じます。だから日本だと「きれいに踊らなきゃ」とどこか枠にとらわれてしまって、感情をフルに出しにくい場面があったりもしました。

でも海外は、バイブスやフィーリングで決まるような開放感があります。海外のステージに立つと「ここでは何をやってもいいんだ」と自分自身が解き放たれる感覚があって、毎回ワクワクしながら踊れています。

— 今回の出場者の中で意識している相手はいますか。

Ringo Winbee:みんなやばいですよね(笑)。Candymanさんなども、昔から世界で活躍している人たちなので、頭を抱えてしまいます。自分としては、まずその人たちと戦えるところまで行けるか、というところに結構プレッシャーを感じています。もちろん、倒せたら嬉しいですが、それ以前のところで負けないようにしないとなと思っています。

Jason Halayko / Red Bull Content Pool

— 世界に立ち向かっていく、ご自身の武器や、注目してほしいところはありますか。

Ringo Winbee:やっぱり、ミュージカリティを貫きたいと思います。音楽に負けないくらい自分の表現力も高めて、誰よりも音を取ってかましたいです。

特別アクロバットができるわけでもなく、体格的にも恵まれている方ではありません。手足が長くてダイナミックな海外のダンサーたちと正面からぶつかることになるからこそ、World Finalが決まってからは、タフで力強いムーブも準備しています。 

— 改めて、RingoさんにとってRed Bull Dance Your Style World Finalはどんな舞台ですか。

Ringo Winbee:年々規模が大きくなっているのは、昔から見てきたからこそよく分かりますし、難易度も高い。自分にとってはハードルの高い挑戦です。でも、自分のことをもっと信じてあげたら超えることができるかもしれない。信じ続けることがすごく大事だと、National Finalを通して感じました。今まで自分がやってきたことを信じて、準備も頑張っています。

レベルが高いからこそ、正直プレッシャーはすごく感じています。まだ現場の空気感や実際のレベルが見えきっていない部分もあるので。「こんなところで負けちゃダメだ」と自分で自分を追い込んでいるところもあります。でも出る以上は絶対に勝ちたい。その一方で、純粋にこの舞台を楽しみたい気持ちも強く持っています。

ダンスで生きると決めた先へ

— もちろん優勝が目標だと思いますが、その先に思い描いている目標や、どんなダンサーになっていきたいかを教えてください。

Ringo Winbee:改めて、ダンサーとして生きていこうというのは、何周も考え抜いて決めたことです。私はダンスで生きていくと決めたので、その覚悟を持って、誰よりも強く、結果も残せるように頑張っていきたいです。話したいことはたくさんあるんですが、とにかくダンスで生きると決めてからの今の人生が、すごく楽しくて幸せなんです。その原動力を忘れることなく自分の踊りに落とし込んで、今後の大会でも良い結果を残していきたいです。 

また、自分はこのダンスシーンに還元することが大好きなので、ここまで育ててくれたことに感謝し、その感謝を日本規模だけでなく世界規模でも形にできたらと思っています。具体的に何をやるかは決まっていないですが、そういった機会があればいいなと思っています。

— 最後に、読者や、下の世代のダンサーたちへメッセージをお願いします。

Ringo Winbee:自分がやってきたこれまでのこと、自分自身を、めちゃくちゃ信じてあげてほしいです。自分を認めて信じてあげたら、内側からあふれてくるオーラのようなものが、きっと人に伝わるんじゃないかなと思います。悩んだり、考えたりしてもいいと思うんですが、「自分が一番だ」という気持ちで生きていきたいなと、私自身も思っています。

大会概要

名称:Red Bull Dance Your Style World Final 2026
日程:2026年10月24日(土)
会場:Hallenstadion(スイス・チューリッヒ)
形式:1対1のミックススタイル・ダンスバトル(観客投票で勝敗を決定)
出場者:16名(ワイルドカード8名 + Pre-Final勝ち上がり8名) 

プロフィール

Ringo Winbee

神奈川県出身のPOPPINGダンサー。5歳でダンスを始める。最初はヒップホップに取り組んでいたが、やがてPOPPINGの魅力に傾倒し、音楽をダイレクトに表現できる「音ハメ」と即興性を武器に成長。12歳で台湾のバトルで準優勝を果たしたのを皮切りに、韓国、中国、フランス、イギリスなど世界各国のバトルに招待され、「Juste Debout Kids Side」ベスト4、「UDO World Championship」優勝(2019年)などの実績を残してきた。

国内でも「DANCE@LIVE」RIZEサイド優勝、「THE DANCE DAY」全国決勝大会出場など数々の結果を持つ。 高校ではダンス部のリーダーとして全国大会出場に導き、大学ではダンスサークルでクルーを率いて大会優勝を果たすなど、学業との両立でも注目を集めてきた。テレビCMやミュージックビデオへの出演、K-POPとストリートダンスを融合したイベントの主催など、活動の幅も広い。 

2026年には「Red Bull Dance Your Style Qualifier Tokyo」を勝ち抜き、「National Final Japan」で4度目の挑戦にして日本王者に輝いた。「SHIROFES.2026」ではO-18 COLLEGE ALL STYLE 1ON1「ROOKIE」で2大会ぶり2度目の優勝を飾っている。日本代表として、10月24日(土)に「Red Bull Dance Your Style World Final」(スイス・チューリッヒ)に挑む。

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