いよいよあさって、2024年1月28日(日)に神奈川県・川崎市の宮前市民館で開催される「Out Hedge Vol.10」。
2017年12月にスタートしたこのイベントは、シーンの流れに順応しながら少しずつ形を変容させ、唯一のナンバーイベントとしての地位を確立。
ついに節目の10回目を迎えることになる。
このうち過去8回の関東での開催にあたって、ディレクターとしてそれぞれ4回ずつの優勝経験を持つYUTTY KINGDOM. のt.taishiと、Dye you in my hueのイワネスインセインの二人が対談。
初回から振り返り、彼らは今のOut Hedgeをどう見ているのか。
イベントへの、そしてダブルダッチへの考えや思いを熱く語ってくれた。
聞き手はイベントオーガナイザーのYUTTY (YUTTY KINDOM.)が務める。
Out Hedgeの“原点”
2017年12月、“垣根(Hedge)を超える(Out)”という思いで生まれたこのイベント。初回は形式が少し異なり、参加者の学生がシャッフルされ、シーンで活躍するOBOG(現在のディレクターポジション)の元に集うという企画だった。
t.taishi (以下: タイシ)
主宰のユッティから「イベントをやりたい」って相談してもらって、お笑い芸人の「ドリームマッチ」みたいなものを提案したんだよね。
OBOGも組み合わせは抽選で、参加する選手も抽選でチームを組んでみたら面白いんじゃないかなって。
──(ユッティ) ダブルダッチ界には規模の大きい大会はあるけど、第三の付加価値をつけられるイベントをやりたいなって思いがずっとあって。
タイシの意見をもらって「上と下の世代を繋ぐイベント」というのは面白そうだなって思って、走り出した気がする。
イワネスインセイン (以下: イワネス)
その時期、ユッティさんがよく「イベントやりたい」って言ってたのを覚えています。
Vol.1の時はクルーバトル形式でしたよね?
──そうだね。Vol.1はまだ今のナンバー制度ではなく、最前線で活躍するOBOGのもとに、参加者が抽選で集まってチームを組むという仕組みでした。
そしてイワネスの言う通り、ショーケースではなくクルーバトル形式だったんだけど、タイシのチームが優勝していたよね。
タイシ
そうだったね。一緒に組んでくれたOBのトモキ(You Know Who)が良かった。
だけど参加者は大学1年生・2年生ばかりで、しかも大学から始めた子たちばかり。
「俺ら若手ばっかりだけど勝ったぜ」って言った記憶がある。
イワネス
覚えてますね。僕もOBとして参加していましたが、タイシさんの言っている通りだし、悔しかったのを覚えてます。バトルに慣れていなかったのでムーブが作れなさすぎて(笑)。
でも逆に練習していて、ショーケースだったら良いものができるんじゃないかな?と思った記憶があります。
──参加者やOBOGの負担を考えてクルーバトル形式にしたんだけど、意外とショーケースの方が楽かもとか、なんなら「負担が増えてもショーをやりたい」って声もあり、それならと2回目からはショーケース形式にしました。
イワネス
その時は関西の同期で上京してきたカスヤ(FLY DIGGERZ)と組んで、やっぱりショーは得意分野だったから、結構良いものができた手応えがあったんです。
本番当日も初っ端でカマして、想像以上にお客さんも盛り上がってくれて、結構色めいていたんです。
けど、蓋を開けたら後の出番のタイシさんたちが更に良いものを作ってきていて、またタイシさんに持っていかれちゃったなと。しかもOB枠はタイシさん、たった1人で。
──タイシ的にVol.2を振り返ってみてどうだった? クルーバトルとショーの違いとかって感じたのかな。
タイシ
大きく違いはなくて考え方は同じだったかな。
練習期間も長くあるわけじゃないから、難しいことをし過ぎると自滅してしまうだろうし。だったら簡単なことでやり切れた方がいいと思うんだよね。
特に参加してくれている大学生たちって、ちゃんと「ミスのない演技をやりきる」っていう感覚を経験できていない子も多かったし、まずは完成させてみて、そこから勝つか負けるか、っていうことをさせたかった。
イワネス
数を重ねて最近のOut Hedgeで思うのは、やっぱりディレクター側のリスクヘッジが上手くないなと。
いつものチーム、いつものチームメイトでやって成功率が7割くらいの技を、そのイベントのためだけの即席のチームでやっても難しいよね、って思うんです。
ところで気になったんですが、タイシさんってVol.1とVol.2、連続して優勝したじゃないですか。Vol.2の時、プレッシャーみたいなものってありましたか?
タイシ
プレッシャーというより「連勝したい」って思いはあった。
まだ出来たてのイベントだったし、みんな探り探りだったと思うけど、どんなに小さな大会とかイベントでも、お金を払って見に来ているお客さんがいる以上、ヘラヘラしてショーケースをやるのは違うよねって。
確かに1回目は俺も探り探りだった部分もあったけど、2回目はガチでやろうと。「やるなら優勝するでしょ」という気持ちで。
本気を示す
イワネス
Vol.3は、当時同じチームでも活動していたアユカ(FLY DIGGERZ)と一緒に出たのですが、今までの2回に比べるとやりたいことをやった手応えは感じられました。
参加している子たちと「どうしようか」って考えている時に、ももいろクローバーZの『行くぜっ!怪盗少女』を使いたいとなって、それなら全曲そういうキャッチーで雰囲気の似た音源にしてみようかと。
粗さはありますが、作っていくうちに結構好きな作品になっていったなと思いましたし、あとはミスを極力減らしてタイシさんの3連覇を止めたいという気持ちもありました(笑)。
──そこからイワネスが2連覇することになるね。この次のVol.4のショーも良かった。どちらも鮮明に覚えています。
イワネス
アユカに加えてナツミ(Mrs.DOUBLE DUTCH)を引き入れて、僕らのチーム「Call me a DIVA」のナンバーみたいな形でやりました。当時は正式な制度ではなかったですが。
パフォーマンス制作も真剣でしたが、終わった後の手応えも相当なもので「さすがに優勝するだろ」っていう感じでした(笑)。
振り返っても1・2を争うくらい頑張っていたんじゃないかなと思います。
イワネス
タイシさんも言っていましたが、この辺から僕も「ガチでやらないのはダサいな」ということを、より強く意識するようになっていました。
何なら他の人を焚き付けたいくらいの気持ちで。
タイシ
この時、俺は別の大会の練習を優先して出なかったんだよね。
イワネスもそうだと思うけど、俺もOut Hedgeには片手間で出ていない。
最近はイベントの数も増えて、色んなステージに立つことは大事なんだけど、その反面やることが多くて片手間になってしまうことは多いと思う。
俺もダブルダッチ好きだから「全部出るでしょ」って気持ちはよく分かるんだけど(笑)。
イワネス
僕も片手間にはできないですね。
人を見ていて「取捨選択したら良いのに」と思うこともあるし、しかし一概にどちらが正しいとも言い切れない。
ただOut Hedgeに限って言えば、僕は常に「本気でやる」という意思表示は色んな形でしているつもりなので、ある程度の覚悟や気合いがある人しか来ないというのはあると思います。
タイシ
俺も初回の練習で方向性を話すようにしていて「うちはごめんだけど、遊びじゃないから」みたいな(笑)。
大変な時もあると思うけど、更に1つスイッチを入れてもらえるように伝えることはしているね。
変に優しくしすぎないというか。
──2人ともそれぞれのやり方だけど、いずれにせよ「ちゃんと示す」ということは大事だね。
タイシ
それこそユッティたちと一緒にチームを組んで大会に出た時とか、そんなことをわざわざ言ったりはしない。みんな分かってくれているし。
“演じる”っていうと大袈裟かもしれないけど、「ディレクター」として振る舞う意識はしているかもね。
──今回のVol.10は今まで以上にディレクター陣の年齢層がぐっと下がって、参加者の大半を占める大学生たちとの年齢差は縮まった印象があります。
練習もするしプライベートでも遊ぶし、そういう友達みたいな付き合い方のナンバーも素敵だなって思うんだけど、確かに反面「締めるところは締める」って部分が弱いのかなと感じることもあるね。
“ナンバー制度”が誕生
そしてOut Hedge Vol.5より、シャッフルで決定するチームに加え、ナンバー制度が限定的に導入されることになる。
──ふと気になったんだけど、タイシがこれまで一緒にOut Hedgeでチームを組んで、「成長したな!」とか「この子は伸びるな」って感じた子はいた?
タイシ
Vol.6で、ユッティと一緒にキッズの子たちのナンバーみたいなチームを出したんだけど、その子たちはすごかったね。
当時は小学5年生とかだったかな。だけど大学生の比じゃないくらいしっかり練習してくれていた。
なんとなく俺とユッティがスピーカーの方に近づいてスマホを触ると、練習が始まることを察して最初のフォーメーションになるんだよね。一度フリを落としたらずっと練習しているし、復習とかもちゃんとしてきてたし、止まっている時間が一切なかった。
「上手くなる子は違うわ」って感心しちゃったね。
──あと個人的にはミヅキ(Synappse)じゃないかな? タイシと2人でソロをやっているムーブが印象的だったんだよね。
タイシ
そうだね。時系列が前後するけど、1つ前のOut Hedgeで、イベントの歴史の中で初めて“ナンバーチーム”を出したのが、おれとユッティの所属である「YUTTY KINGDOM.」というチームのもの。ミヅキは当時大学1年生とかだったかな。
練習は相当厳しかったと思うけど、それでもミヅキをはじめ皆がついてきてくれて、結果もついてきて嬉しかった。
──ミヅキはその後、学生の大会で日本一になって、今回のOut Hedgeではメインディレクターとしてナンバーを出すことになるんだけど、当時から見ている身としてはストーリーを感じてしまうよね。
そして思えばこの時が“ナンバー制”の先駆けだったわけだ。
タイシ
一緒に組んだヨシヒロとショウタ(YUTTY KINGDOM.)もそうだけど、俺たちのチームってマインドが“THE ダブルダッチ”なんだよね。
ステージの後ろで“あえて何もしない”を善しとしているチーム。むしろそれすらもパフォーマンスの一部だと思っているくらいの、シンプルで無骨な、いわゆる「王道」タイプの感じ。
──確かに最近のパフォーマンスは“外フリ”がついていることが多いかもしれない。
イワネス
僕は真逆のスタイルというか、“何もしない”ということはしない、常に動いているようなパフォーマンスなんですよね。
Vol.3とVol.4のショーがまさにそういうものを作って評価されたんですが、Vol.5からちょっと流れが一転して、再び王道スタイルのショーが評価されるようになった感じがあって。
その中で自分も過去のものを超える作品を生み出せた手応えもなくて、Vol.5やVol.6の時には「どうやって作品を作ればいいんだっけ」というスランプに陥った覚えがあります。
──でもさっきイワネスから「焚き付けたいと思っていた」という言葉があったと思うけど、これまでのイワネスのショーや姿勢が間違いなく全体の士気とかレベルを底上げしていたと思うんだよね。
イワネス
まあ確かにこの辺りから良いチームは増えた印象がありますね。活性化させられたんじゃないかという自負は、ちょっとはありました。
けど結局Vol.6はRUGRATSに負けて、当時あったOBのMVPもタイシさんが獲っていって、完敗でしたね(笑)。
タイシ
さっきも話に上がってたけど、Out Hedgeってリスクヘッジが重要だなって思うんだよね。RUGRATSもそこは重点的に考えて作った。もちろん、スーパーキッズたちだったからチャレンジもしてもらったけどね。
ディレクター側の俺やユッティが目立つショーを作るつもりはなかったし、むしろ「この子たちを輝かせたい」って考えると、メンバーの力量の把握は必須になってくる。
そしてそれが自然とリスクヘッジに繋がっていく。
イワネス
そうですよね。自分も「100%のパワーでできること」はやらせないようにしています。体感的には80%くらいまで落としてもできることじゃないと、本番もミスしてしまうような気がして。
まあこれ、Out Hedgeに限らない話ですよね(笑)。でも特にこのイベントには重要な考え方だと思っています。
完全ナンバー制へ
関西で開催予定だったVol.7は新型コロナウイルスの影響で中止に。
また色々な理由からVol.8からは開催拠点を関東に絞り、ついに全チームがナンバー制に移行する。
──やっぱり長く続けていると、ディレクター側と参加者の相性が合わなかったり、参加者の練習意欲が下がって練習に来なくなってしまうとか、「思ってたものと違ったショーだった」とか、色々と課題も生まれてしまって。
それなら「自分がやりたい」と思ったものを自分から選べる方がお互いのためだし、参加者も得られるものもより明確になるから狙いも定められるだろうし。
イワネス
それにVol.8からホールでの開催になったこともあって、今のフォーマットに近づいてきましたよね。ガラッと雰囲気が変わってアップデートされた感じ。
──イワネスはここで『インセイン組』というチームを作って、Vol.8・Vol.9と2連覇したんだよね。
イワネス
Out Hedgeとは関係なく、KEITAさん(REG☆STYLE)が「KEITA団」というものを作っていたんですよ。よく練習するとか、プレースタイルが似ている後輩たちを集めた集団みたいな。
特に何かをするわけではないけど、最初はなんとなく自分も作ってみたくて作りました。
それからOut Hedgeに出場することになって「自分が出るとしたらこれだな」と思って「インセイン組」という名前で出してみたら、元からいたメンバー以外にもいろんな新しい顔が集まってくれて。
嬉しいですよね。自分を慕ってくれる後輩たちと一緒にやれるのだから、爆発的に綺麗で良いものを作りたかった。
タイシ
“作品”っていうのを大事にしてるよね、イワネスは。パフォーマンスというより作品という感じ。
イワネス
Out Hedgeってダブルダッチの他の大会と比べると制約が少ないんですよ。人数も制限時間も自由。部門分けもないし、自分のやりたいことをできて、メンバーにも色々と教え込める。
でも未だに覚えているのは、その時にDJだったタイシさんがリハーサルを見て「絶対優勝すると思った」って言ってくれて。嬉しかったんですよね。
タイシ
覚えてるわ。絶対ここ優勝だなって思った。
俺はこの回には出場せずDJとして関わったんだけど、ステージの後ろのDJブースから見ていて、いろんなチームの仕上がりとか見ていてもここがぶっちぎりだなって感じた。
そしてインセイン組が優勝してからか、ステージングを意識したナンバーが増えたなって印象がある。
イワネス
そう思うと、前回のVol.9がダントツに全体のレベルが高かったと感じましたね。
自分より下の世代のディレクターが増えて、各ナンバーも勢いがあって。
その上、Vol.9から採点方法が変わりましたよね。
──そうだね。パフォーマンスが終わったら審査員が即採点して、その点数がスクリーンに表示されるっていう仕組みにしました。
ただその審査員の点数に加えてオーディエンスも投票できるようにして、その合計点数で最終順位が決まるという。
イワネス
学生の大会で準優勝した『Roar』の子たちが出したナンバーとか、本当に脅威でした(笑)。
しかも僕らはVol.8・Vol.9と同じインセイン組という名前で出場したので、彼らだけじゃなく色んなナンバーから「じゃああいつら倒すぞ」という空気感をひしひしと感じていて。
練習でもミスをゼロにまでは減らせなくて、不安の中で出番を迎えたんですがノーミスで終えることができました。
もちろん優勝は目指していましたけど、演技を終えたらもう僕の中では勝ち負けとかじゃなく、全てが完了していた感覚でしたね。
「故きを温ね、新しきを知る」
──さて、いよいよVol.10です。
今回タイシは「サブディレクター」として出場することになりますが、今の制度になる前から考えても、タイシが“メイン役”として出ないのは初になるのかな。
タイシ
そうですね。師匠のような存在のTMYさん(Who is Respected)と、これまたキッズナンバーみたいな形で出るんだけど、だからか今までと比べたらちょっと肩の荷が降りてはいる(笑)。
もちろんサブディレクターとして今回も優勝を目指してはいるんだけど。
──そしてイワネスはショーケースの審査員を務めるということで、いかがでしょうか。
イワネス
“一番高いシーン”でも通用するような半端ないものを見たいなって思いがあります。うまく説明ができないんですが。
僕、10年以上ダブルダッチを続けてきて思ったことがありまして。
ひと昔前って人口的にも技術的にも大学生がシーンの中心と感じることが多かったんですが、今ってそうじゃなくなってきていると思うんです。
Double Dutch Delight(学生の大会)で優勝したやつ、イコール「一番ダブルダッチが上手い奴ら」って感じだったものが、今はもっと上手いOBOGの人たちがいるわけですよ。
──確かに大学を卒業して社会人になったり、プロとして活躍しているプレイヤーは増えたよね。
イワネス
大学生中心のシーンにあった“本当にすごいもの”みたいなものが、その1つ上くらいの層にシフトして、逆に大学生たちに対して詰めが甘いなと感じることが増えたんです。
もちろん僕も完璧とは言い切れないけど、自分も自分なりには考えているつもりで。
ディレクターの顔ぶれも年下が増えてきているからこそ、やっぱりこの「詰めの甘さ」というところには妥協せずとことん追求してほしいし、半端ないものを見たいなと感じます。
──なるほどね。逆にイワネスより年上のタイシ的には、今の内容についてどう思う?
タイシ
自分が最後に出てから4年くらいが経って、Out Hedgeというイベントも大きく変わったよね。
完全ナンバー制になったり採点形式も変化があったし、さっきも言ったけど流行りも変わったと思う。前回(Vol.9)を見ていて「俺だったら優勝できるのかな」って思ったもん(笑)。
反面、正直ちょっと“ダブルダッチっぽさ”は減った気もするんだけどね。どこまで自分のスタイルが通用するんだろうという思いはあります。
イワネス
確かに僕が言うのも少しはばかられますけど、もっと「ダブルダッチっぽい」ことはやってほしいですね。
タイシさんの色々なショーを見ていると、ちょっとした工夫をしてショーを面白くしているなと思うんです。もちろん技術力は高いし上手いんですが、めっちゃ難しいことをやるのではなく、機転を利かせて心を掴んでくる感じがあって。
逆に言うと、“作品っぽい”ことをやっているだけというチームも増えた感じはします。
タイシ
今の学生の世代とかって「なにそれ見たことねえ!」とか「超やべえ!」と思う技を編み出したりしていて、確かにそれも魅力的なんだけど、ただどこかで“ダブルダッチっぽさ”を感じないなとも思うんだよね。
俺が意識してるのは「見たことない」よりも「その手があったか」と思ってもらえるもの。
──すごく納得いく見解だね。
タイシ
まあ逆に言えば、俺たちよりも若い子の方が体力もあって技術もあると思うから、追いつこうと同じことをやっても勝てないと思うんだよね。
じゃあ例えば基礎的なスライドから変な跳び方ができないかとか、新しい技なんだけど、どこかに“ダブルダッチ臭さ”を感じてもらえるようなちょっとした工夫を加えてみるという。
俺の出発点が基礎技だから、ただの二重じゃなくて、縄を踏んで浮かせて…みたいなのは、俺の好みではないんだよね。
──そんなものは基礎技の中にはないよね、って(笑)。でも見ていても確かにそう思うし、改めて言語化されて強く実感するね。
タイシ
俺やユッティの世代って「ロープの中でいかに凄いジャンプをするか」という考え方だったからね。
あの中で巧みなダンスステップをとか、豪快なアクロバットを、というのがスタートだったし、ロープの“回転”の部分を難しくして凄いように見せるという育ちをしてないから(笑)。
イワネス
自分も自分なりに「ダブルダッチっぽい」というのが何なのかというのは理解しているつもりなんですが、僕はそれを探求した上で“あえて外す”という選択肢があっても良いなと思うんです。
ただそれにも、やっぱり第一に(ダブルダッチっぽさを)理解をすることが必要。
こういう発言ってちょっと高圧的というか、いわゆる“老害”のように見えそうなのではばかられますけど…
やっぱり歴史を知ることって大事だと思います。昔から遡り発展の過程を辿って今こうなっている、ということ。
タイシ
その通り。でも逆に俺たち世代は“最新を知る”ことが必要なんだよね。おざなりになっている部分はあると感じます。
だから出身サークルの引退公演の映像とか、学生たちの大会の映像とか見たし。
さっき老害っぽく…と言ってたと思うけど、そうならないために俺たちは最新を知らなければならないよね。
──尋ねる側なのに出しゃばりすぎて申し訳ないんだけど、やっぱり10回やって改めて「みんなを活かせる人ってめっちゃカッコいいな」って思うんです。
僕は学生時代、HKRさん(alttype)から色んなことを教わってきて今がある。HKRさんの大きい背中を見て育ってきました。出場した子たちにもそういう存在が生まれてほしい。
プレイヤーとしてのスキルは当然大事なんだけど、やっぱり人を活かすのが上手い人も本当にカッコいいし、もっとフィーチャーされてもいいと思うんだよね。
その一つがOut Hedgeの「ディレクター」というポジションなのかな。そうあってほしい。
タイシ
確かにOut Hedgeのおかげで「パフォーマンスを作れる人」みたいな立ち位置に見てもらえるようになった気がするね。
イワネス
同感です。だからこそもっとディレクターの質が全体的に向上してくれたら嬉しいとは思いますね。
今って参加者側にオーディションがあって、通過しないとナンバーに出れない人もいるという形式ですが、ディレクター自体もオーディションするような時代がきたら面白いなと思います。なかなか難しいと思いますが。
あとこれは強く思うんですが、安易に照明に頼りすぎているなと感じることが多いですね。調整がうまくいかなかったりすると思いますが、そもそも照明のプランが下手だなと思うこともあって。
やみくもに“照明を使いたい欲”に惑わされてしまうと、本末転倒かなと。
タイシ
D.LEAGUEの影響などもあってなのか、照明を使いたいっていう子は多いよね。確かにかっこいいけど、俺も基本は明点させて、プラスシンプルな照明だけで十分じゃないかと思う派だな。
でもダブルダッチのイベントでここまで照明が多いものってないと思うから、ニュースタンダードを生み出していくという意味では大きな意味を持っているかもしれないね。
イワネス
個人的には、ピカピカさせ過ぎずにシンプルがいいと思います。“目潰し”を無駄に使って、肝心の中身が見えないとかありましたし。
特にVol.9に関しては非常にシンプルな照明の使い方をしましたが、ちゃんとムーブを見てもらえるようにするという戦略がハマったと思っています。
そこだけは結構、他のナンバーより2歩くらい先をいっていたんじゃないかなと自負していますね。
時代を切り裂け
並々ならぬ思いで臨んできた二人にとってのOut Hedge。そのステージに立つ後進たちへ、最後に彼らからの“エール”を訊いた。
──たくさんの熱い話をありがとうございました。2人がOut Hedgeに色んな思いを懸けてくれていたからこそ聞ける話だったと思います。
最後に今回出場するディレクター陣だったり、“未来のディレクター”たちにエールがあれば。
イワネス
審査員だから不用意なことは言えないんですが…
まあ僕は、結構厳しめに審査することになると思います。エールになっているか分かりませんが、その厳しい目を超えるものを見せてほしいです。
特にVol.8・Vol.9のインセイン組は傑作だと思っているので、今回それを超える作品が出てくることを楽しみにしたいです。
タイシ
俺も今回出るっちゃ出るからエールというと難しいけど、とりあえずまず、自分もサブディレクターとして頑張ります。
けれど今回の優勝って、イベントの歴史の中で1つ新しい記録になるよね。今まで関東で開催されてきたOut Hedgeは「俺とイワネスしか優勝してない」と言われてきたけど、そこに新しい人が入ってくる。
仮に俺が優勝したとしても、俺もイワネスもメインディレクターとして優勝することはあり得ないから、そこに名前を刻んでほしいですね。
イワネス
確かにそうですね。今後僕らが両方ナンバーを出さないことはあっても、その最初の1人目になれるのはこれが最初で最後です。
時代を切り裂くのは君だ。
イベント概要
「Out Hedge Vol.10」
日程 : 2024年 1月28日(日)
時間 : 13:00〜18:15 予定
会場 : 宮前市民館(神奈川県川崎市)
主催 : スキルハック
共催 : 川崎市
協力 : 有限会社 OVER THUMPZ
SPECIAL EDITION
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アクションスポーツ・ストリートカルチャーの映像コンテンツやニュースを通して、ストリート・アクションスポーツの魅力を沢山の人へ伝えていきます。
●今日 ○イベント開催日
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[PR] othersアクションスポーツシーンの発展と共に進化を遂げるクリエイターたちが受賞「CREATIVE X AWARD 2024 supported by SanDisk」2024.04.25アクションスポーツ業界の第一線で活躍するフォトグラファー及び映像クリエイターが参加した「CREATIVE X AWARD 2024 supported by SanDisk」。2022年に開催された前回に引き続き、第2回目となった本アワードには、以前より短い募集期間であったにもかかわらず映像部門と写真部門の2部門にて多くの応募が集まった。 そして今回はアクションスポーツ界をクリエイティブ面でも牽引するRed Bullの協力の下、Red Bull Japan本社にて授賞式を開催。なお本イベントでは、厳正な審査を勝ち抜き映像部門と写真部門で受賞された5名のクリエイターが表彰され、その後は審査員を含めクリエイター同士の交流の場も開かれるなど、アクションスポーツ業界のクリエイティブシーンのさらなる進化の1ページが刻まれた1日となった。 アクションスポーツシーンの発展を裏方で支えるクリエイターにフォーカスを当てたアワード 本アワードを開催するにあたって自らの想いを語る審査委員長であるフュールメディア株式会社代表取締役の梶野氏 本アワードはアクションスポーツの発展を陰で支えているクリエイターたちへフォーカスを当て、彼らのさらなる活躍の場を創出するサポートがしたいという思いから、長年この業界で様々な映像制作に携わってきたフュールメディア株式会社、クリエイターから絶大の信頼を得ておりアクションスポーツシーンの発展に貢献しているストレージブランド「SanDisk」を有するウエスタンデジタル合同会社、そして日本国内のアクションスポーツ業界を多方面からサポートし続けクリエイティブにおいても第一線を行くRed Bull Japan株式会社、加えて当メディア「FINEPLAY」を運営する株式会社ZETAの4社の思いが合わさって第2回目の本アワード開催が実現した。 和やかな雰囲気で開催された授賞式 当日は国内アクションスポーツ界の名物MCであるワダポリスによる進行の下、Red Bullを片手に非常に和やかな雰囲気の中で開催された。本イベントには受賞者5名のほかに作品へ参加したプレイヤーや彼らの友人も参列し、自分たちの受賞結果を楽しみにする一方、緊張した面持ちで結果発表を待ち、その受賞者の様子から今回の作品に込められた思いや努力を感じることができた。 授賞式後は少し緊張した雰囲気をほぐしリラックスして次のセクションに移るため、ドリンクを交えた歓談の場が設けられ、受賞者同士はもちろんのこと、審査員も会話に混ざりながら受賞作品へのフィードバックをする様子も見られる中で、笑い声なども止まず会場の雰囲気は完全に賑やかなものに変わっていた。そしてイベント最後のプログラムであるトークセッションでは、実際に全ての応募作品を見ながら、どういう観点で審査員が審査をしたのか、また作品の中で気になった点を受賞者へ直接質問したりとクリエイターたちにとって今後の作品づくりにおいて参考になる知見が得られる有意義な時間が流れた。 本アワードの様子はこちら なお本アワード受賞作品は以下の通りだ。 受賞作品紹介 映像部門 最優秀賞:山﨑 大輔 https://youtu.be/OzaevJRT1Dg 写真部門 最優秀賞:村田 一樹 映像部門 優秀賞:上原 一成 https://youtu.be/owxEmWqa2Mo 写真部門 優秀賞:松井 悠也 SanDisk 特別賞:いずも しゅうじ そして授賞式後には受賞者5名へインタビューを行い、これらの受賞作品に対する思いや使用機材のこだわり、また今後の活動目標などについて語ってもらった。 受賞者インタビュー 受賞者の5名左から上原、山﨑、いずも、村田、松井の順 クリエイターたちが考える本アワードのテーマ「Keep the Style」とは 本アワードを受賞した率直な感想と受賞作品に込められた思いについて聞かせてください。 SanDisk 特別賞:いずも しゅうじ いずも:以下 I) サーフィンは「天気・波・風」が第一条件となる中で、その3つが揃っている日を狙ってスケジュールを組み撮影するのですが、これらの要素が上手くかけ合わさって撮れたのが今回の一枚です。また今回の写真は朝日をバックに撮っていますが、直で太陽を撮ると白飛びしてしまうので少し太陽からズラした位置で波をしっかり撮れる画角を、サーファーと話し合い決めてから撮りました。 今回の作品は最近のものではなく過去に撮った作品なのですが、今でも色褪せることなく今回のアワードで高く評価していただけたことを本当に嬉しく思っています。 映像部門 最優秀賞:山﨑 大輔 山﨑:以下 Y) 今回「Keep the Style」というテーマでしたが、スタイルは言葉にするのが難しい中で、僕は他人と自分の違いから生まれる部分がスタイルだと捉えています。普段の仕事では一緒に活動しているライダーがストリートをメインとしていることもあり、撮影もアーバン(都市)を拠点にしたストリート系が多いです。ただ今回の作品は自分のルーツであるダート(土)をベースにしたマウンテンバイクを題材にしたことでストリート系とは対照的な作品に仕上げ、少しでも自分なりのスタイルで爪痕を残したいという思いがありました。 作品制作の中で出演してもらったライダーと意識したのは、フィールドが山の中であることから自分たちが走るラインをスコップで叩いて整備している様子なども含めて、ダートスポーツの色を見せられるカットを随所に交えてスタイルを表現したことです。 あとは数々のアーバンスポーツがオリンピック種目に選ばれて注目が集まる中、マウンテンバイクはまだまだ一般の人たちに認知されていないのが現状なので、今回そんなスポーツを題材にしてライダーと一生懸命作った作品を最優秀賞という形で選んでいただけたことは、このスポーツを愛する人間として今後もっと盛り上げていくためにも、日の目が当たるところへ露出できるありがたい出来事になったのでとても嬉しいです。 写真部門 最優秀賞:村田 一樹 村田:以下 M) 今回のアワードで最優秀賞を取ることができたことはとても嬉しいですし光栄に思っています。今回の作品に被写体として関わってくれたKAZANEとKENGOは昔からずっと撮ってきた二人だったので、その二人とこういった結果を残すことができて本当に嬉しいです。ストリートカルチャーは自分のルーツでもあるのでそれを全面に出してカッコよく撮ることを意識しました。そのためこの写真は構図やライティングも含めてとにかくカッコよさを見せることに追求した作品なので、それが評価されたのも嬉しいです。ただこの結果におごらずにこれからも自分のやるべきことをやってもっと技術を高めていきたいです。 写真部門 優秀賞:松井 悠也 松井:以下 MY) 今回の作品の撮影場所に選んだ東京の三軒茶屋は自分の住み慣れた街なのですが、その中に昭和の頃から残っていて、いつ取り壊しになってもおかしくないこの古き良き街並みを作品として残したいと思っていました。そんな時によく行く飲み屋さんの窓から見た風景がすごく綺麗だったので、この場所で作品撮りしたいなと思ったのが去年で構想から完成まで約1年ほど掛かった特に思いの籠もった一枚になっています。 あとこの作品を見るとライティング的にストロボ焚いていないように見えると思いますが、実際はストロボを使っています。被写体にはいつも一緒にこの場所で飲んでいるBMXライダーの山本悠くんにお願いしたのですが、彼の後ろの路地にアシスタントが隠れて絶妙なタイミングでライトを光らせながら撮影しました。また他にこだわった部分は編集中にもいろんな箇所をレタッチしたことで、自分たちがいつも通っている飲み屋街の持つ自然な雰囲気をいかに表現できるかに注力して作りました。 そして個人的にはいつも飲んでいる場所でいつものメンツとこの作品を作れたことが価値の高いものになっていますし、実際に本アワードで評価していただき受賞できたことも嬉しく思っています。ただ前回のアワードで優秀賞だった中で今回も優秀賞という結果は自分的には完全に負けたなっていう心境でもあります(笑) 映像部門 優秀賞:上原 一成 上原:以下 U) 正直に言うと最優秀賞を取れなかったことはとても悔しいです。なぜなら前回のアワードで受賞した作品よりも今回は作り込みましたし、本アワードのためだけではなく自分のルーツであるフリースタイルフットボールのカルチャーを持ってきて、自分の集大成となるくらいカッコよくて満足のいく作品ができたからです。でも今回の最優秀賞の作品を見させていただき、審査員からのフィードバックをもらったことで自分に何が足りないのかを再確認できましたし、すごくしびれる言葉をいただけたので、また次回開催される時には他の作品に揺らぐことなく自分のスタイルを貫いてよりさらに良い作品を出せるように頑張りたいです。 また今回の作品のコンセプトとしては「Keep the Style」ということで、僕としては自分のスタイルを曲げないことだと解釈しました。そのテーマの中であえて歪んで曲がったような世界を表現するため、時間が逆行して行く様子や不自然なくらいに大きい月などギミックを織り交ぜることで、そのような曲がった状況の中でその影響を受けずにスタイルを貫いていく姿を見せることに注力しました。この作品を通して自分の思うような表現はできたのでプレイヤーたちと同様に、僕自身もフィルマーとして自分のスタイルをキープしながら今後も満足いく作品を作っていきたいです。 プレイヤーと一心同体になり作品を作り上げる中で意識していること 撮影する上で必要となるのがプレイヤーとの連携だと思います。彼らとのコミュニケーションで意識していることはありますか? Y) 今回はマウンテンバイクの中でもダウンヒルやフリーライドという危険度が高い競技を撮影しました。ライダーもワンライン・ワンチャンスに命がけでトライしていて、もしライン上に岩が転がってきたり木が動いたりして接触でもすれば、日常生活までにも支障をきたすほどの大怪我になりかねないスピード感やジャンプを組み込んでライディングしているので、撮影する側がいかに彼らのストレスを少なくしてあげられるかを常に意識しています。 例えば、撮影の構図をライダーなしで先に何度も撮影することで、どういう形でライディングが撮られるのかを彼らに説明して納得してもらった状態でライディングに挑んでもらえるように心がけています。なぜならいくら自分がクリエイターとして優れていてこだわっていようが、命をかけてライディングするライダーには敵わないからです。 プレイヤーとのコミュニケーションが大切と語る村田さん M) 僕は撮影時のコミュニケーションはとても大事にしていて、今回であればフリースタイルフットボールやバスケットボールは自分がやったことのないスポーツなので、プレイヤーとして撮って欲しいポイントは詳しく知らないんです。でもその一方で撮影に関しては僕の方が知っているので、お互いに自分のタイミングやベストなポイントについてコミュニケーションを取って探り合いながら撮影しています。 また撮影中の間を空けないことも意識しています。なぜなら撮影中は自分しかどんな画が撮れているのか分からないので、プレイヤーに都度見せながら行うことで彼らが自分たちの撮られ方を意識してもらった上で撮影を進めています。 MY) 前回のアワードの際のインタビューでも話したかもしれませんが、僕はプレイヤーではないので彼らがどこを撮って欲しいのかを重要視しています。それは素人が見てカッコいいというポイントではなく、プレイヤーたちがカッコいいと思うポイントなのでタイミングも含めてヒアリングしながら撮影していて、そこに加えて今回のような作品撮りにおいてはそのプレイヤーが風景に馴染んでいるかどうかが大事だと思っています。これは一般的には見えない部分ではあると思いますが、このスポーツのカルチャーやプレイヤーの背景を把握した上で、その人に合った場所で撮らないと違和感のある作品に出来上がってしまうので、どの業界の人から見ても違和感がなく、みんなが納得のいく作品を作ることを常に心がけています。 彼らが創作活動を担う撮影機材へのこだわり 現在はどんな機材を使っていますか?またその機材を選んだ決め手を聞かせてください。 I ) 絶対に壊れない、絶対に止まらない、絶対にバグらないという点を基準に機材を決めています。今回の作品は「Canon 1DX Mark3」というミラーレス一眼のフラグシップのモデルを使って撮影しているのですが、どんな状況下でもしっかり性能を発揮してくれるので信頼しています。そのため逆に他のカメラで撮影するのは怖いです。シャッタースピード等の性能が重要という方もいますが、海というフィールドでは砂、風、塩が相手になる環境なのでそういった要素からデータや機能を守れるしっかりとした耐久性が大事になっています。 山﨑さんが信頼している「Canon C70」 Y) 今回の作品は山という自然の中で撮影するスポーツで、様々な不確定要素がある中で命がけでトライしているところを撮らせていただいたのですが、その決定的瞬間を撮影で再現できなかったりすることもあります。なので自然をフィールドに撮影する際は機材への信頼性が大事だなと思っています。 僕は「Canon C70」というカメラを使っているのですが、これはビデオ専用機なので熱暴走しても絶対に止まらないですし、内臓NDの画質調整も信頼しています。撮影においてはライダーたちがいけるとなった時に時間を取らずどれだけスムーズに彼らの時間に合わせて行えるかが大事なので、それを実現できる絶対に止まらないという確実性と綺麗な画質をバランス良く兼ね備えているのがこのカメラだと思っています。 M) 「Canon 1DX」の初期モデルを使っていますが、特にこだわりはないです。今までCanonのカメラしか使ったことがなく、他のカメラの良さを知らないので機会があれば違うカメラも使ってみたいなと思っていますが、現時点ではこのカメラで満足した撮影ができています。ただ僕は普段撮影時に連写せずワンショットだけで撮っているので、そういう意味ではこのカメラの特性は活かし切れていないかもしれませんが、長年使っていて慣れてますし使いやすい機材なので親しみも込めてこのカメラを今も使っています。 松井さんが使用している「Sony α74」 MY) 僕はたまたまご縁があって今は「Sony α74」という機材を使用しています。Sonyのカメラの良いところはRAWの情報量がとても多いので、他のカメラに比べても圧倒的にハイライトを戻すことができることだと思っています。 またレンズに関しても魚眼レンズで撮影するのが今回の作品撮りとしてはセオリーだと思いますが、あえて40mmという画角を使用しました。逆にこのレンズより望遠のものを使うと自分が載せたい他の情報も写らなくなってしまうので、なるべく情報量が写るようにやや広角のこのレンズを選びました。そしてパソコンもレタッチなどでかなり酷使しているので性能や仕様に関してはかなりこだわっています。 U) 僕は映画表現のようなシネマティックな画が好きなので、前回のアワードの作品から引き続き「Blackmagic Cinema Camera」を使っています。また今回はさらに映像のギミックとして、某映画からインスピレーションを受けたオマージュも加えてより映画に近い表現をしたいと思っていました。本来こういったアクションスポーツの撮影ではもっと軽いカメラでジンバルなどを使って安定した映像を撮ることが好まれますし、軽いカメラで性能も画質も良く、取り回しやすい機材もたくさんあるのですが、それでも僕はこのカメラで撮った映像の仕上がりが好きなので徹底して使用していますし、実際に今回の作品でも自分の求めていた映画のような表現を見事に演出してくれたのでカメラ選びは正解だったなと思います。 クリエイターたちが全幅の信頼を置くのがサンディスクの製品 普段使用しているストレージを教えてください。 I ) 以前、他社大手のストレージを使っていたのですが、過去に一回データが飛んでしまったことがあったので、それからは周りのクリエイターからも評判の高いサンディスクの製品を十数年ずっと使っています。実際の製品としてはこのカメラでは「CFexpress typeBカード」を使っていて、カメラごとに使用するタイプは違うのですが、常にサンディスクの製品を使っています。 周りのクリエイターたちが皆使っているため見分けがつくように自分のニックネームをSDカードに貼る山﨑さん Y) 僕のこのカメラはV90というSDカードの規格に適合しているので、今回副賞で頂いた「SanDisk Extreme PRO SDXC UHS-II card V90 256GB」も使用しています。僕も元々他社のSDカードを使っていまして、データが飛んだことはなかったのですが、撮影した映像が途中で止まることがありました。 映像での再現性が非常に大事なスポーツを撮っているため、この事象が起きてしまうことはあってはならないので、それ以降は「エクストリームな使い方をする人向け」というPRをされていたサンディスクの製品を使っていて、SDカードはもちろんのことSSDも使っていますが今まで不具合も起きたこともなく、安心して自分の撮影データを任せられるメーカーさんです。 サンディスクは間違いないと語る村田さん M) 「サンディスクは間違いない!」というのが一番思っていることで、使用していてとても安心感があります。製品としてはCFカードとSSDの2TBを使用していて、まずデータの読み込みが速いところとバックアップを取った時の不具合の少なさから、サンディスクの製品へ信頼があるのでこのメーカー以外のストレージを使ったことはないですし、これからもずっとサンディング製品を使い続けたいと思っています。 MY) やはりサンディスクという名が通っていて信頼できるブランドであることは使用する大きな理由ですが、最近のSDカードは特に転送スピードも速いですし、防水や耐衝撃もあるという部分もすごく信頼できるので愛用しています。 またハードディスクであればヘッドがダメになったり、ディスクが傷ついてしまう物理的な故障があると、それだけでデータを読み込めなくなってしまうのですが、SSDは内部に可動部品がないため故障する要因も少ないです。その中でもサンディスクのSSDはクオリティも高く、普段からSDカードでお世話になっていて信頼しているメーカーなので使用しています。 SSDを装着してすぐメディアのバックアップを取れるようにしている上原さん U) 以前、制作会社にいた時からサンディスクの製品を使っていたこともあり、その流れでフリーになってからも必然的に「これでしょ!」という感じで使い続けています。前回のアワードの副賞でいただいた製品も、現在仕事でガンガン使っていますがずっと快適に使えていますし、長年使用しているので愛着もあり自分の手に馴染むのはサンディスクの製品だなという域に達してしまったので今も使い続けています。 特に「サンディスク エクストリーム ポータブルSSD」は今回の作品制作でも重宝していて、プレイヤーと撮った渾身の撮影データを間違っても失いたくなかったので、すぐメディアのバックアップを取る形で活用しました。 クリエイターたちが思い描くアクションスポーツシーンの姿とは 今後アクションスポーツ業界において、自分たちの創作活動を通して目指していることを聞かせてください。 自分の作品づくりはもちろんのこと後進もサポートしたいと語るいずもさん I ) 最近は色々な大会やイベントでオフィシャルフォトグラファーとして関わらせていただくことが多いので、なかなか作品づくりに没頭できるような時間はあまりないですが、やはりこのような賞をいただいたことで改めて作品作りのおもしろさを再確認させていただきました。もちろん大会でアスリートたちが最高のパフォーマンスを見せる姿を写真に収めることも楽しいのですが、時間をかけて作り込んで作品を生み出すことも今後は徐々に再開していきたいと思っています。 今はサーフィンだけではなくスケートボードでも若い子たちと知り合うことが多くなってきて、彼らと一緒に何か作れたら良いなと思っているので実現できるように活動していきたいと思います。あとは大会やイベントで出会う若いカメラマンたちの道筋を作って彼らに仕事が回るような環境作りをしていきたいと思っています。 M) 僕はスケートボードがルーツにあるのですが、直近ではハイブランドの広告やファッション雑誌の表紙を撮れるようになることが目標で、その中でもストリートの躍動感をファッションと融合させることをテーマにしながら活動しています。今後もそのテーマをブラさず初心を大事にしながら撮り続けていくつもりです。 競技面だけではなくカルチャーに焦点を当てて作品をつくりたいと語る松井さん MY) 僕はこれらのスポーツの持つカルチャーに焦点を当てた作品活動を今後も続けていきたいと思います。やはり少しのミスが大怪我に繋がるような命がけのパフォーマンスが必要とされるスポーツだと思うので、プレイヤーのカッコよさをいかに作品として残していけるかを常に大事にしていきたいです。それはそのプレイヤーが有名かどうかに関わらず、その時の彼らのカッコいいところを残してあげることで、10年後20年後に振り返ってくれた時にどこか懐かしさを感じてもらえれば嬉しいからです。 そういった思いが根本にある中で最近感じているのは、そもそもこのカルチャーを盛り上げていかないといけないというところで、例えばBMXだと複数の種目がある中で一部がオリンピック種目になったりと最近注目されるようになってきているので、この勢いを自分の写真の力を使ってもっと加速させていきたいと思っています。 クリエイター活動を通してどんなアクションスポーツシーンになっていってほしいですか? Y) 僕は今回の作品で撮ったダートをフィールドにしているマウンテンバイクの撮影よりも、同じマウンテンバイクで街中をフィールドにライディングするストリートの撮影が仕事としては多いんです。でもそういった現場に関わっていて、海外よりも日本はストリートスポーツに対して一般の方の理解も少ないのが現状で、まだまだこういったスポーツを称賛するような文化は根付いていないと感じています。今後はお互いが歩み合いながらアクションスポーツやストリートカルチャーへの理解が得られるような社会になっていくと、クリエイターやプレイヤーに限らずシーンに携わる全ての人たちにとって良い環境になるなと強く感じています。 M) 僕は湘南出身でスケートボードやサーフィンのカルチャーが根付いた地域で生まれ育って、ずっとスケートボードをしてきた中で写真に出会い今の活動をしているので、今スケートボードがオリンピック種目になっているのが少し不思議な気持ちです。なぜなら今でもストリートでこういったスポーツをしていることに反対する人は一定数いる中で、そのストリートカルチャーから生まれたスポーツがこのようなオリンピック競技になっているのでなかなか珍しい状況だと思います。僕は今後日本社会が海外のようにストリートカルチャーを認めてくれる未来になることも考えながら創作活動を続けていきたいです。 アクションスポーツシーンと一緒にクリエイティブシーンも成長していったら嬉しいと語る上原さん U) 映像制作を始めたばかりの頃に影響を受けたものの一つにスケートボードビデオがあるのですが、まだ画質が粗い時代からプレイヤーと二人三脚で映像作品を作るというカルチャーができていたのがスケートボードのシーンでした。それからずっと自分のルーツであるフリースタイルフットボールやその他のカルチャーにも同様に映像制作のカルチャーが浸透して欲しいなと思いながら活動しています。 特に最近のSNS時代にも映像制作のカルチャーはハマると思いますし、そういった色んな媒体からの発信がどんどん増えていき、大手広告等を撮っていてアクションスポーツが好きなプロカメラマンの方がこのシーンに入ってきたがるような世界になれば良いなと思っています。 最終的にはこういった作品制作においてたくさん賛否が起こって欲しいです。なぜなら今はカッコいい映像を作るとただ褒められて終わるだけの方が多いですが、いろんな作品が増えていくことでプレイヤーやクリエイターの垣根を越えて良くも悪くも批判的なコメントも増えていくと思います。ただストリートカルチャーもそういう時期に大きく発展してきたので、そういうことがこの映像制作のシーンにも起こることで同様に発展していくと思うので、アクションスポーツやストリートカルチャーと一緒にクリエイターを取り巻くクリエティブシーンも成長していって欲しいと願っています。 受賞式に関する記事はこちら SanDisk「この瞬間を残したい」 「サンディスク エクストリーム ポータブルSSD」 500GB/1TB/2TB/4TB 読み出し最大1050MB/秒、書き込み最大1000MB/秒 最大3メートルの落下に耐える耐衝撃性能 IP65の防塵・防滴性能 256ビットAESハードウェア暗号化パスワード保護機能付き データ復旧ソフト「レスキュープロデラックス」1年間利用特典 USB Type-C™対応:iPhone15などUSB Type-C対応のスマホ内データの保存可能 5年間の限定保証付き
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othersCREATIVE X AWARD 2024 supported by SanDisk 授賞式がRed Bull Japanにて開催!2024.04.23アクションスポーツ、ストリートカルチャーというフィールドで活躍するクリエイターを発掘するべくスタートしたCREATIVE X AWARD。今回は第2回目である「CREATIVE X AWARD 2024 supported by SanDisk」が開催され、前回に引き続き、アワードを通してさまざまな表現の作品が応募された。今回はRed Bull Japan本社にて授賞式が初開催され、会場では受賞作品発表、審査員トークセッション、歓談の時間が設けられ、参加者たちによる多くの交流が見られた。 授賞式の様子 受賞式では審査員から受賞者たちに直接ボードが手渡され、その受賞結果に受賞者や被写体となったプレイヤー、その友人たちの緊張がほぐれた様子が見受けられた。その後、歓談の時間が設けられ、授賞式の雰囲気とは一変、和やかなコミュニケーションの場となった。 そんな雰囲気の中、最後のプログラムとして審査員トークセッションが行われ、審査員から応募作品に対して分け隔てなく、愛も感じられる様なさまざまな意見が飛び交った。審査員のみならず受賞者との意見交換も行われ、それぞれの応募者の作品にかける想いやこだわりが語られた。 各受賞者へのインタビューはこちらから 受賞者、受賞作品 映像部門 最優秀賞「山崎 大輔」 https://www.youtube.com/watch?v=OzaevJRT1Dg&feature=youtu.be 映像部門 最優秀賞「山崎 大輔」競技:MTBダウンヒル被写体:Tetsuma Haguchi 映像部門 優秀賞「上原 一成」 https://www.youtube.com/watch?v=owxEmWqa2Mo 映像部門 優秀賞「上原 一成」競技:フリースタイルバスケットボール被写体:yu-ta 写真部門 特別賞(SanDisk賞)「いずも しゅうじ」 写真部門 特別賞(SanDisk賞)「いずも しゅうじ」競技:サーフィン被写体:安井 拓海 写真部門 最優秀賞「村田 一樹」 写真部門 最優秀賞「村田 一樹」競技:フリースタイルフットボール、フリースタイルバスケットボール被写体:Kazane. Kengo from MONSTERBALLAZ 写真部門 優秀賞「松井 悠也」 写真部門 優秀賞「松井 悠也」競技:BMX被写体:山本 悠 審査委員 <審査委員長>梶野仁司:フュールメディア株式会社代表取締役映像プロデューサー、アクションスポーツジャーナリスト。これまで多くのアクションスポーツ系ブランドや、企業の映像作品を数多くディレクション。また、X-GAMESやRed Bull X-Fightersなど世界のビッグコンテストにも積極的に取材し、国内外のアクションスポーツメディアも手掛けてきた。2012年フュールメディア株式会社を設立し、アクションスポーツを題材とした幅広いコンテンツの企画 、プロデュースを行う。 <審査員>黒田賢:DirectorCG会社を経て、2006年 P.I.C.S.入社。現在P.I.C.S. management所属。 映像ディレクション に加え、Art Direction、Motion Graphics、3DCG制作等のキャリアを積む。 CM・MusicVideo・OOH等の企画 / 演出の他、ミュージシャンとのコラボレーション映像や、ストリートカルチャー / アクションスポーツをテーマにしたオリジナルワークスを展開する等、幅広く活動中。 <審査員>柏崎佑介:Cinematographer / Photographer桐島ローランド氏に師事後、2011年に独立。 TVCM、WEBCM、広告写真など広告を中心にショートムービー、ミュージックビデオなどムービー、グラフィック問わず幅広いジャンルで活躍中。アクションスポーツを被写体とした作品も数多く残す。 <審査員>ZiNEZ:Freestyle Basketballer日本とカナダのハーフ。2004年バスケットボール選手を目指したカナダでフリースタイルバスケットボールを始め、日本一決定戦において、史上最年少優勝記録と、初の連覇を成し遂げる。その後も現在に至るまで幾つもの大会を優勝し、海外でのショーや、国内においてもラジオDJ、タレント・モデルなどインターナショナルに活躍する。SNSではクオリティの高い映像作品などを発信している。 <審査員>ジェイソン・ハレコ:PhotographerFMXをはじめ、BMX、スノーボード、ブレイクダンス等、幅広いジャンルのアクションスポーツを撮影。これまでに様々な企業の広告やwebで実績を残す。2022年、アクションスポーツフォトグラフの権威、「RED BULL ILLUME」に作品が掲載された。 審査員コメント 授賞式に参加した審査員4名(左から梶野仁司、黒田賢、柏崎佑介、ZiNEZ) 黒田賢氏:「普段はライダーなどのコンテストはありますが、作品の創り手のとしてアワードというのはほぼなかったですね。作品を創るというのはもの凄く労力がいりますし、オリジナル作品を創るのは実はすごく大変なことなんです。創るということは正義だと思うので皆さんもこれから頑張って創っていって下さい。」 ZiNEZ氏:「写真と映像は誰でも取り組めるようになっていると思っていて、自分もそういった形でパフォーマンスを沢山の人に見てもらって自分の仕事にしていったということで、写真と映像というものが無ければ今の自分の職業は無かったと思っています。今これだけ写真や映像が普及したからこそ、流行りのものが多いと思うんですよね。僕たちがやっているストリートカルチャーというのは何にも支援されないところから始まり、これは新しいかっこよさであって、流行るということの種であると思います。そんな中でこのアワードが開催されるということは未来に繋がることだと思います。アワードを通して、次回もどんどん自分の癖をぶつけていって欲しいと思います。」 柏崎佑介氏:「みんなが映像を取れるようになってきているじゃないですか。全体のレベルが上がっているので、そんな中で今の流れといったものは関係なく、ぶっ壊して欲しいんですよ。あまり他のことは考えずに、自分がやりたいことをしっかり押し付けてくるぐらいの作品が見てみたいです。」 梶野仁司氏:「こういう時代だからこそ、映像作品というのは創りやすくなりました。そんな中でどんどんチャレンジして欲しいです。今回keep the styleというテーマがあり、僕たちが好きなスタイルという言葉をなぜ全面的に出してきているかというと、スタイルの中に見えてくるものってもっとあると思うんですよね。最近の映像作品をSNSも含めて色々見ていると、もう少し昔の方がスタイルが強調されていたかなと思っていて、そういうところで自分というものを表現してもらいたいです。良い作品は何年後までも残ると思うのでそういった形でみんなにチャレンジして欲しいしです。今回CREATIVE X AWARDを第2回目という形でやらせて頂きましたけど、こういう作品としてのシーンをもっと盛り上げていきたいと思っています。今までは競技のシーンを盛り上げることに注力してきたんですけども、これからは今回参加されたようなクリエイターの皆さんも巻き込んで、もっとそういった人たちにフォーカスが当たるようにし、結果的に全体のシーンがスポットライトを浴びるようにしていきたいなと思います。」 今回受賞した5名(左から上原 一成、山崎 大輔、いずも しゅうじ、村田 一樹、松井 悠也) 今回のCREATIVE X AWARDでは授賞式が初開催されたことで、審査員やクリエイターたちによる有意義な意見交換が行われ、アクションスポーツ、ストリートカルチャーに携わる人々による、さまざまなコミュニケーションがなされた。今後のクリエイターたちの活躍やシーンの発展にも注目していきたい。 各受賞者へのインタビューと撮影秘話はこちら
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snow「無理だと思えても挑戦することでさらに成長できる」前人未踏の挑戦を続ける岩渕麗楽のスノーボードへ懸ける思い2024.04.08近年、冬季オリンピックをはじめ「X Games」や「FISワールドカップシリーズ」などの世界大会で、女子日本代表選手たちがメダル獲得等の大活躍を見せていることで、一際注目が集まっている「スノーボード・ビックエア競技」と「スノーボード・スロープスタイル競技」。そんな世界最高レベルの選手が群雄割拠する日本のスノーボード界から、世界最高峰の舞台で前人未踏の挑戦を続けながら、日本人女子初の超高難度トリック習得をはじめ、2年後の2026年ミラノ・コルティナオリンピックでメダル獲得を目指すプロスノーボーダーがいる。 それが、2018年平昌オリンピック及び2022年北京オリンピックの2大会へ日本代表として出場し、昨年は「X Games Aspen」にて自身初となる金メダルを獲得した岩渕麗楽(いわぶち・れいら) 選手だ。数々の国際大会でのメダル獲得という輝かしい実績から、日本が世界に誇るトップスノーボーダーの一人である彼女は、平昌オリンピックと北京オリンピックでは2大会共にビックエア競技にて4位となり、惜しくもあと一歩メダルを逃したその悔しさから2026年のミラノ・コルティナオリンピックでのメダル獲得を目指し日々自身のスキルを極め続けている。 今回は、そんなさらなる高みへ挑戦し続けている岩渕選手にインタビュー。本インタビュー後の3月には自身が見事優勝を成し遂げた「ワールドカップスロープスタイル最終戦」を控えていた中で貴重な時間をいただき、彼女の世界最高峰で結果を残し続けられる強さの秘訣から世界女子初トリックの習得にかける思い、そして激しい競技生活から離れたオフの過ごし方も含め、岩渕選手が見据えている今後の目標やスノーボーダーとして表現したいことなど様々な角度から話を聞いた。 ※岩渕麗楽(いわぶち・れいら) 以下: L X Games Aspen 2024で獲得した2つのメダルに隠された努力の軌跡 先日のX Games Aspen 2024ではメダル獲得おめでとうございます。ビックエアで銀メダル、スロープスタイルでは銅メダルという結果でしたが率直な感想を聞かせてください。 L:去年の「X Games Aspen 2023」ではビックエアで金メダルを取っていたこともあり、今シーズンへのプレッシャーは感じていましたが、それ以上にX Gamesではスロープスタイルでメダルを取ったことがなかったので、今年はビックエアだけではなくスロープスタイルでメダルを取ることに対して、特に集中して臨んだ大会でした。なので今回しっかりその目標を達成することができて嬉しく思っています。 この大会に向けて準備してきたことや意識してきたことはありますか? L:私のスロープスタイルでの1番の課題は、他の選手と比べた時にジブセクションで難易度の高いトリックができないという部分だったので、今回のX Games Aspenの前にはワールドカップの大会を一つスキップして3週間くらい中国に行きプライベートで練習してきました。それくらい自分の強化が大事だと思ったので、大会出場よりも練習に重点を置き集中して取り組みました。 ちなみにジブセクション含め、今回のX Games Aspen 2024のコースレイアウトはどのようなものでしたか? L:今大会に限らないのですが、毎年X Gamesのコースではジブセクションのサイズも他の国際大会より大きく、アイテム数も一般的には平均6個程度であるのに比べて7~8個と多いです。もちろん2~3個アイテムが多いと、その分アイテムの間隔が短くなるのでできる技が限られてきます。そういうタイトなコースで自分のトライできる技が限られた中で戦い抜くことが難しかったです。 今大会を戦い抜いた中でご自身で感じられたことがあれば聞かせてください。 L:正直、今回メダルは取れないと思っていました。なぜなら本番の時にコース内は風が強くて、私自身と周りの選手との体格差の問題もあるのですが、どうしても体の大きい海外選手に比べて飛距離が出しにくく、予定していた高難度トリックをジャンプセクションでメイクできなかったんです。一方でジブセクションでは上手くいったのですが、ジャンプセクションでの自分のパフォーマンスに、周りの選手と大きな差を感じていたので、あまり自分のランに自信がありませんでした。でもジャッジにジブセクションでのトリックを高く評価してもらえたことで今回メダルが取れた感じなので自分でもびっくりしています。 強さの秘訣は、他選手にはないトリックの完成度と精度の高さ 普段は基本的にどこで練習をされていますか? L:実は世界の大会を転戦していく中で日本で滑る機会はどんどん減っています。毎年10月からワールドカップシリーズがスタートするのですが、始まってしまうと大会を周ることがメインになるので、なかなか一つの場所で常に練習することは難しいです。ただ国内にいる時によく行くのは私のコーチがプロデュースしているコースがある「GALA湯沢」で、海外ではオーストリアにある「Absolut Park」をベースにしています。 あと最近は日本国内の雪不足が結構深刻になっていて、国内で大きなジャンプを作っているところでも13mくらいである一方で、海外では20mサイズのキッカーを作っているので世界で戦うには日本国内だけで練習するのは難しくなっていることも背景にあります。またシーズン中は大会のある国に前乗りして、1週間くらい調整してから大会に出るという形がワンセットになっていて、それがシーズン中は次々続いていくのでベースにしているオーストリアでトレーニングできるのも今では年に1~2回くらいです。 ちなみにオフシーズンはどういう風に練習されているのでしょうか? L:国内はどこのスキー場も4月第2週くらいで営業が終わるので、それ以降の5月からは本格的にオフシーズンに入っていきます。オフシーズンは「埼玉QUEST」に週5~6回くらい通いながら、それ以外は東京の亀戸にある「KOBATORE STUDIO」というサッカーの長友選手などを教えている体幹を専門にしているトレーナーのジムでお世話になっています。そういった形で、私を含めほとんどの日本人選手は5月から8月の間は国内でオフシーズンを過ごした後、9月頃から季節が逆の南半球のニュージーランドなどに行ってシーズン入りすることが多いです。 ライディングの練習中には映像を撮って自分の技を振り返ることもあるかと思います。どんな機材を使うことが多いですか? L:スマートフォン等で撮影もできるとは思うのですが、GoProはアクションスポーツに特化したカメラで手ぶれ補正の性能が高く、私たちの速いスピードでジャンプを飛んでいる様子も綺麗に映してくれるので自分の技をチェックするときにこのGoProはとても役立っていて重宝しています。今使わせてもらっているGoPro12は、高性能なのでもちろん普通のレンズで撮るのも綺麗なんですが、GoPro専用の重ねられるカメラレンズがあって、そのレンズを使うと周りの景色をクリアにできたり、色味を変えて映像の雰囲気を変えられたりもするので、自分の技の見栄えがカメラの性能のおかげで良くなる点もGoProならではの特徴的な部分で気に入っています。 ちなみに自身のことを日々研究されている中で、岩渕選手の強みはどんなところだと思いますか? L:完成度と精度の高さにこだわって日々練習しているので、他の選手よりはトリックの形は綺麗だと思っています。もちろんエアーを大きくしたり、見栄えするために大きく動くことも意識しますが、どうしても自分より身体が大きい選手と比べると、いくら大きく動いても迫力負けをしてしまうことはあるので、そういう相手と差をつけるのが難しいところは自分のできる精一杯を頑張って、あとは他の選手には無いくらい自分のライディングの精度を上げることに重点を置いて日々練習しています。 また競技活動を支えてくれるコーチや家族は岩渕選手にとってどんな存在ですか? L:今は一人暮らしを始めたり、コーチとも専属契約を交わしたこともあって、家族との時間はだいぶ減ってしまっていますが、そんな中でも一番私を応援してくれているのは家族だと思いますし、そこへの感謝は忘れずに活動しています。また今のコーチも自分の時間を使って教えてくれていて、私自身メンタルが弱いときもあるのですが、そういう性格的な部分も知った上で技術的なコーチングと合わせて教えてくれるので、とても信頼して競技生活を送ることができています。 ビックエア競技をはじめ、大会時にはメンタルが重要な場面も多いかと思いますが、どのように対処していますか? L:一番は公開練習のうちに自分が不安に思っているところをしっかり確認して、「自分は大丈夫だ」っていう自信を本番前にちゃんと持っておくことです。また本番の時はもちろん失敗することは考えないようにして、自分が飛んでから着地するまでのイメージをずっと頭の中で反復しながら意識するようにしています。 激しい競技生活と対照的にオフで意識するのはリラックスした時間の使い方 スノーボードの他に好きなことや趣味はありますか? L:他のスポーツをする時間が無いのもあって、ほとんどインドアな趣味で完結することが多いです。遠征中は本を読むことや映画を観ることが好きで、特に本はミステリー系の推理小説が好きですし、映画であれば感動系をよく観ます。あと日本にいる時はパズルをやったり、写真を撮りに行ったりもします。やっぱり普段は競技に集中してかなり激しいことをやっているので、それ以外は落ち着いてリラックスしたいと思い、読書とか映画鑑賞でゆっくりした時間を取るようにしています。あとはリラックスするために、朝早くに海へ行って朝焼けを見たりとか、私のいとこもドライブが好きなので時間が合うときは一緒に夜景を見に行ったりと、景色の良いところに行って息抜きをしたりすることも多いです。 最近特にハマっている趣味はありますか? L:最近久しぶりに月9のドラマを見始めたのですが、時間がある時はそのドラマを追っかけています。今観ているのは「君が心をくれたから。」という永野芽郁さんと山田裕貴さんが主演をしている感動系のドラマなのですが、毎週月曜日を楽しみにしながら見ています。 オフではスノーボーダー以外の友達ともよく遊びますか? L:ちょうど明日(インタビュー翌日の2月19日)から地元の友だちが東京に遊びに来るので、3ヶ月前くらいからスケジュールを擦り合わせて今回会う予定を作りました。大体年に2、3回くらいは地元の友達とも会ったりしています。 世界女子初の超高難度トリックを引っ提げ挑むのは世界最高峰の頂 オリンピック2大会連続4位というあと一歩メダルに届かなかった経験から、2年後に控えるミラノ・コルティナオリンピックへ向けての意気込みを聞かせてください。 L:2大会連続4位という結果であと一歩メダルに届かなかった中で、そのメダルがあるかないかの差は私自身すごくその壁の大きさを感じてきました。2大会共、そのとき自分ができるMAXの技を出してギリギリダメだったということが共通点ですが、前もってしっかり準備するということは今までももちろん気をつけていました。でもいくら準備しても足りないということをこの2大会を経験して学んだので、自分に余裕ができるくらいきつい練習を今はするしかないと思って、最近はかなりメンタル的にも追い込んだ練習をしています。 ちなみに自身を追い込む練習を始めてから感覚的な変化はありましたか? L:大会中で技をかける時に前ほど気負わないでできるようになったと思います。やっぱり練習中から難しい技をどんどんやって恐怖心やそのトリック自体に自分を慣れさせることで、大会時の緊張を加味した上でも自分に余裕を持たせられるようになるので、こういった練習はこれからも続ける必要があると思いますし、実際この練習の成果が見られたのがこの前の「X Games Aspen 2024」だったのかなと思っています。 日本は世界トップレベルのライダーが多いですが、彼らは岩渕選手にどんな刺激を与えてくれていますか? L:近しい人たちがみんな世界レベルだと、常に自分に満足することなく、良い意味で焦りもありながらモチベーションを維持できると感じています。彼らがすごいことをすると私にも火が付くことがありますし、とはいえ足を引っ張り合うような関係ではないので、お互いが自分のことに集中しながら切磋琢磨できる良いライバルになっているんじゃないかなと思っています。 トリプルアンダーフリップなどの超高難度トリックへ挑戦し続けることへの思いを聞かせてください。 L:北京オリンピックまでにトリプルアンダーフリップがメイクできなかったことで、「自分はこれ以上上手くなれないんじゃないか?」という限界を感じていたのが北京オリンピックの少し前の時期でした。でも実際に北京オリンピックでトリプルアンダーフリップにトライしたことで「まだ自分はもう少し上手くなれる」って思えたんです。それから自分が無理だと思うような挑戦にも取り組み続けることが、今自分が成長するために必要なことなのかなと感じています。なので今では挑戦することに対して積極的に向き合うようになったと思います。年々、女子のレベルも高くなっていて、男子がやるような技もどんどん必要になってきています。ありがたいことにそういう技は周りの男子選手が先立ってやってくれているので、それを見よう見まねではないですが一緒に挑戦し続けながら、彼らを追っていけるように女子の中では常に新しいことや難しいことを第一線かつトップレベルでやっていけたら良いなと思っています。 そんな新しい技や難しい技に挑戦する時の恐怖心を乗り越えるために意識していることはありますか? L:一番意識していることは思い切りよくやることです。新しい技を雪山で挑戦する前に夏場は「埼玉QUEST」やオフトレ施設で自分に自信が持てるくらい体に技を染み込ませるようにしているので、雪山で挑戦する時は変に怖がって動きが小さくなってしまわないように、覚悟を決めて思いっきりやるっていうことだけは絶対に決めてトライしています。 スノーボードはいつも自分を成長させてくれる。岩渕麗楽がプロスノーボーダーとして表現したい姿とは スノーボードの好きなところや魅力はなんですか? L:私がスノーボードを好きになった最初のきっかけは、ジャンプした時の空中に浮いてる感覚からでした。その感覚が好きなのは今でも変わっていないですが、それ以上に自然をすごく感じられるというか、海外の大きい山にも行くようになってからそこで見る自然の大きさに圧倒される機会が多く、そういう風に自然を感じられる環境の中でできるスノーボードはとても気持ちが良いですし、魅力の一つでもあるのかなと思っています。 プロスノーボーダーとして表現したいことや次世代に伝えたいことはありますか? L:もちろん楽しみながらスノーボードすることはみんなに大前提として持っていて欲しいです。あと私自身は、北京オリンピックの時にトリプルアンダーフリップにトライして転んでしまい納得できる結果を残すことができませんでした。その時、自分では結果に繋げられなかったことがダメだと思い込んでいたのですが、私が挑戦する姿を見て影響を受けたと言ってくださった方もたくさんいたことを知れたので、今後も応援してくれるみなさんが、何かに挑戦することや勇気を持てるきっかけになるような滑りを、この現役生活の中でやっていきたいと思っています。更にその先で自分がどうなっていきたいかということに関しては、やっぱり私自身今までいろんな先輩のライダーが楽しそうに滑っているのが羨ましくて、その姿に憧れてこのスノーボードをずっと続けてきたところがあるので、とにかく自分が楽しんで滑っている姿をこれからもみなさんに見せることができたら良いなと思っています。 そんな岩渕選手が現在目指している目標はなんでしょうか? L:この競技生活の大きなゴールはやっぱりオリンピックでメダルを取ることなので、それを第一目標において日々頑張っています! 将来の夢を含めて最終的にどんな自分になりたいですか? L:スノーボードを通して一番感じているのは諦めないでやり続けることの大切さで、それは小さい頃からずっと続けてきたこのスノーボードで学んできたことなので、この先競技を引退することになって違うことを始めるかもしれないですが、その中でも挫けずに諦めず挑戦し続けたいと思う姿勢はスノーボードを通して得たことなので今後も大事にしていきたいと思っています。 最後に岩渕選手にとってスノーボードとはなんでしょうか? L:自分を成長させてくれるきっかけです。スノーボードを通して海外へ行くようにもなりましたし、挑戦することや語学勉強のきっかけにもなりました。さらに世界中ではいろんな人がスノーボードをやっているので、その人数の分だけいろんなチャンスがあります。そんな環境の中で、このスノーボードを通じたコミュニケーションから私自身いろんなきっかけや繋がりを見つけることができているので、これはスノーボードだからこそ可能になっていることだなと強く思います。そういう意味でも、スノーボードはどんなことに対しても常に自分を成長させてくれるきっかけになっています。 岩渕麗楽プロフィール 2001年12月14日生まれ。岩手県出身のプロスノーボーダー。両親の影響で4歳の時にスノーボードを始めると、小学校1年生の頃から本格的に大会に出場するようになる。13歳でプロテストに合格し、2017年12月にはビッグエアでワールドカップ初勝利。その後もビックエア競技では、2019-2020シーズンで FISワールドカップシリーズ ビッグエア競技にて年間ランキング1位に。そして昨年にはX Games Aspen 2023にて自身初の金メダルを獲得。またビッグエア競技では2018年平昌オリンピックと2022年北京オリンピックで4位という結果を残している。一方、スロープスタイル競技では2021年ワールドカップスロープスタイル最終戦での優勝を皮切りに、2022年北京オリンピックでは日本人勢最高位の5位になると、先日のX Games Aspen 2024では銅メダルを獲得。更に2024年シーズン最後のワールドカップスロープスタイル最終戦でも優勝を飾り、ビックエア競技はもちろんのことスロープスタイル競技でもその強さを世界に示している。現在は2026年のミラノ・コルティナオリンピックでのメダル獲得を目指し、日々大会転戦とトレーニングに励んでいる。
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danceStripes & Mennoが優勝!23年越しに開催した伝説のブレイキン・バトルイベント「Red Bull Lords of the Floor」2024.04.07カルチャーとしてのブレイキンにスポットライトを当てた世界大会 4月6日(日本時間:7日)にアメリカ・シアトルにて、ブレイキンの原点とも言えるレッドブルの伝説的なイベントRed Bull Lords of the Floorが開催された。Red Bull Lords of the Floorは、2000年代のブレイキンシーンを象徴する歴史的な大会であり、現在の30歳〜40歳以上の世代にとっては最も影響されたイベントの一つ。VHSでの映像を目にしていた日本人B-Boyも多く存在し、この大会を通じてスタイルや技が拡散されていった歴史もある。現在の若手世代は、Lords of the Floorという名前は知らなかった人が多いものの、過去にこの大会に出場していたB-Boy達が築き上げて来た、各国のシーンで育てられた世代だ。今も尚、昔のB-Boyのスタイルを取り入れるダンサーは多く、五輪予選で注目を浴びるダンススポーツで活躍する選手にも大きな影響を与えている。パリ五輪で新種目になることをきっかけに、この数年スポーツとしての文脈でブレイキンが取り上げられていることも多いが、本来のブレイキンはHIPHOPカルチャーが由来であり、ストリートダンスの要素が強い。およそ4ヶ月後に迫ったパリ五輪を前に、レッドブルがカルチャーとしてのブレイキンにもう一度スポットライトを当てながら、10代〜40代までという幅広い世代のB-Boy・B-Girlたちとブレイキンカルチャーを世界に発信する。今大会は2on2のトーナメント形式で行われ、招待枠で事前に12組のデュオが決まっており、残りの4枠は前日予選を勝ち上がったデュオが出場権を手にしている。日本からは、日本ブレイキンシーンの先駆者であるTaisuke、日本人B-Girlのアイコンとして活躍するAmi、パリ五輪の日本代表のShigekixなどが本戦に出場し、世界を相手に戦った。 Carlo Cruz / Red Bull Content Pool 初戦からレジェンド同士が激突する、Lords of the Floorならではの夢の対戦カードが実現 トーナメント表の左の山には、レジェンド勢が多くクレジットしており、通常のバトルでは見られないような夢のカードが1回戦から実現した。シルエットやB-BoyくさいスタイルにこだわるSKILL METHODZ(Flea Rock&Luigi)と、個性的なB-Boyの代表格であるHAVIKORO(Marlon&Palmer)のバトルでは、両極端なスタイルでこれまでシーンを引っ張って来た2組が激突。また、韓国のブレイキンシーンを代表する2名、Hong10&Physicxのデュオと、アーティスティックなスタイルを武器にするStripes & Mennoのバトルも注目カードの一つ。Hong10とMennoは共にRed Bull BC One(世界最高峰の1on1バトル)を生涯で3回制覇しており、ヤングレジェンド二人のマッチアップにもオーディエンスが大いに盛り上がった。会場は20年前の大会を見事に再現。観客席からダンサーが踊る真ん中のステージを見下ろすことができ、フロアは当時使っていたものを使用。その雰囲気の中で踊るレジェンドたちのムーブはもちろん、当時はキッズだったヤングレジェンド世代や、現在のトッププレイヤーである若手世代がこのステージで踊り、様々な世代がクロスすることで、今回のLords of the Floorならではの空気感が生み出された。 Little Shao / Red Bull Content Pool 日本のShigekix & Issinは世界のTOP4に進出 過去の大会を経験しているレジェンドたちの多くはクオーターファイナルで敗れ、TOP4入りを逃した。セミファイナルへ駒を進めたのは、パワームーブを主体に組み立てる南米を代表するB-BoyのLil G & Alvin。日本B-Boyのトップ1.2(ワンツー)コンビのShigekix & Issin。オリジナリティあふれるムーブを武器にするStripes & Menno。 セミファイナル勢で唯一、過去の大会を経験しているK-Mel & Prada-G。この4組が勝ち上がった。日本のShigekix & Issinは、Lil G & Alvinにジャッジ1票差で敗れ、惜しくもTOP4敗退。K-Mel & Prada-GもTOP4で姿を消すことになった。2000年代のブレイキンシーンを牽引し、過去のLords of the Floorでもアイコン的な存在だったK-Melが舞台を後にする際には、観客からスタンディングオベーションが起こった。 Little Shao / Red Bull Content Pool Stripes & Mennoの優勝は、現代版Lords of the Floorの象徴に Little Shao / Red Bull Content Pool 歴史的な大会の優勝をかけて戦うのは、セミファイナルまでに数多くのレジェンドたちを、独自のスタイルを貫きながら倒してきたStripes & Menno。1回戦から得意のパワームーブで会場をロックし、この日一番勢いのあるLil G & Alvinの二組。Lil G & Alvinは1人あたり3ムーブ制となる決勝戦でも(準決勝までは2ムーブ制)、最後までパワームーブを出し切り会場を沸かせたが、スキルとオリジナリティ、そして芸術性を兼ね備えるStripes & Mennoが勝利し、ブレイキンシーンに歴史を刻んだ。Stripesはアメリカの36歳、Mennoはオランダの34歳であり、今回も出場したレジェンドたちから直接的に影響を受けてきた世代でもある。一方で、二人は現在のブレイキンシーンにおいても最も独創的なスタイルの持ち主でもあり、その独自性や芸術性に影響される若手世代も多い。Stripes & Mennoは、上の世代から学んだことを土台に、現代的な要素を自ら取り入れ、現在のシーンを引っ張る存在とも言える。カルチャー要素が強く、それぞれのスタイルや個性に注目が集まりやすいLords of the Floorというバトルで、今回Stripes & Mennoが優勝したことにより、二人のスタイルがこれからの時代の象徴的なスタイルの一つになるだろう。そして23年ぶりに開催し、かなりの盛り上がりを見せたLords of the Floorが今後も開催されることを期待したい。 The moment of「Red Bull Lords of the Floor」 Little Shao / Red Bull Content Pool Little Shao / Red Bull Content Pool Carlo Cruz / Red Bull Content Pool Carlo Cruz / Red Bull Content Pool Carlo Cruz / Red Bull Content Pool Little Shao / Red Bull Content Pool Little Shao / Red Bull Content Pool
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danceブレイキンカルチャーの歴史的な大会「Red Bull Lords of the Floor」が明日アメリカ・シアトルで開催2024.04.06パリ五輪直前のこのタイミングで、カルチャーとしてのブレイキンにもう一度スポットライトを当てる 4月6日(日本時間:7日)にアメリカ・シアトルにて、ブレイキンの原点とも言えるレッドブルの伝説的なイベントRed Bull Lords of the Floorが開催される。パリ五輪の新種目として注目を集めるブレイキンだが、五輪でのブレイキンはスポーツ要素が強いことから、ダンススポーツと表現されることが多い。一方で、本来のブレイキンはHIPHOPカルチャーが由来しており、ストリートダンスの要素が強く、ブレイキンシーンではカルチャーの側面を支持する人たちも多く存在する。※ライブ配信ページは下部に記載 今回、レッドブルが23年越しに開催するRed Bull Lords of the Floorは、2000年代のブレイキンカルチャーを代表するイベントであり、これまでのブレイキンシーンを築いてきたレジェンドたちも多く参加してきた。そしてパリ五輪直前のこのタイミングで、再度このRed Bull Lords of the Floorが開催されることで、カルチャーとしてのブレイキンにもう一度スポットライトが当たり、五輪種目という側面だけではなく、ブレイキンカルチャーとその歴史にも注目が集まりそうだ。 今大会は2on2のトーナメント形式で行われ、すでに12組のデュオが招待枠として確定している。前日となる4月5日(日本時間:6日)には、前日予選が行われ100人以上のB-Boy・B-Girlが参加。勝ち上がったTOP4のでデュオに本戦の出場権が与えられた。 Little Shao / Red Bull Content Pool シーンを象徴するレジェンドからパリ五輪の代表選手まで、様々な世代がクロスする世界大会 日本代表として、招待枠で既に本戦出場が決まっているのは、TAISUKE&AMIのデュオ。キッズの頃から自らが先駆者として、日本のブレイキンシーンを世界に発信し続けてきたTAISUKE。そしてAMIは、2018年にRed Bull BC One B-Girlの初代世界女王となり、そこから数年間、日本と世界のトップランカーとして走り続けている。世界大会での実績十分な日本人二人がタッグを組み、同世代やレジェンド達とどのようなバトルをするのか楽しみだ。TAISUKEと同世代でアメリカのシーンを牽引しているEL NINOは、パリ五輪のアメリカ代表(内定)VICTORとタッグを組んで参戦する。EL NINOはキッズ時代に過去のLords of the Floorへ出場しており、今回は23年ぶりのカムバックとなる。アメリカのブレイキンシーンを代表する2名が、2on2でどのようなバトルを展開するのか要注目である。トーナメント表のTAISUKE&AMI、EL NINO&VICTORなどがいる反対の山では、レジェンド級のダンサーが勢揃いしている。過去の大会にキッズ時代のEL NINOを引き連れて出場していたK-MEL、シーンの中でも大先輩となるクルーSTYLE ELEMENTSやSKILL METHODZ。韓国のシーンを築き上げて来たPHYSIXなどなど、出場するダンサーたちも「これは観たい!」と思うような、豪華な対戦カードが多く存在している。世界レベルのB-Boy・B-Girlが集まり、10代から40代までの世代がクロスした大会は唯一無二であり、今回のLords of the Floorは、シーンにとっても歴史的な1ページとなるであろう。 Little Shao / Red Bull Content Pool Red Bull BC One All Starsの日本人メンバーであるSHIGEKIX&ISSINは予選を勝ち上がり本戦へ SHIGEKIX&ISSINは、ファーストムーブから会場をロックし、TOP16、TOP8と順当に勝ち上がって本戦出場の条件であるTOP4入りを果たした。TOP16のバトルでは、SHIGEKIXがこの日のハイライトと言っても過言ではないくらいのムーブを見せ、会場を大いに沸かせた。日本を代表する世界トップクラスの若手二人が、上の世代を相手にどこまで勝ち進むことが出来るか、挑戦が始まる。その他、前日予選では下記のデュオが予選を突破している。Red Bullのバトルに久々にカムバックする、元BC Oneワールドファイナル王者のISSEIも本戦で間違いなく注目されるB-Boyになるだろう。 前日予選を通過し本戦の出場権を手にしたデュオ Little Shao / Red Bull Content Pool Issei and Wing Zero, Found Nation (Japan)Gravity and Data (USA)Amir and Dias, Predatorz (Kazakhstan)Issin and Shigekix, Red Bull BC One All Stars (Japan) Red Bull Lords Of The Floor 概要 ルールトーナメントの勝ち抜き方式を採用。クルーごとに直接対決を行い、5名の審査員が勝者を決定。また対戦の組み合わせは、2001年当時のオリジナルルールと同様、イベント開催日直近の週末に発表される。 スケジュールDay 1 – 金曜日, 4/5: 予選 + ワークショップブレイキンワークショップ: 1:00-2:30PM PSTOGによる講演会: 3:00-4:30PM PST予選: 5 PM PSTDay 2: Red Bull Lords Of The Floor 本戦Red Bull Lords Of The Floor 本戦 @ ワム・シアター: 7:00 PM – 10:30 PM PSTRed Bull Lords Of The Floor 公式アフターパーティー 11:00 PM – 2:00 AM PST ライブ配信Red Bull TV日本時間:2024年4月7日·11:00 JST