フリースタイルフットボールの新時代へ! AKIが語る「自分しかできない役割」とは

2024.01.22
Interview by 薮田悠翔 / text by 橋田 樹台 / ©Mauro Puccini / Red Bull Content Pool

昨年夏に開催されたフリースタイルフットボール日本一決定戦「JFFC 2023」で優勝に輝いたフリースタイルフットボーラー、AKI(Akinobu Komine) 。昨年日本チャンピオンとなった彼は、ベルギー・ブリュッセルで開催された世界大会「Red Bull Street Style 2023」にも日本代表として出場し、見事TOP4の成績を残している。

昨今のフリースタイルフットボールシーンで影響力を増す彼に、FINEPLAYはインタビューを実施。
現役の大学生である彼は連盟のスタッフとして精力的にイベントの運営にも関わっており、プレイヤーとしての目標からシーン全体を見据えた今後のビジョンまで、存分に語ってくれた。

AKI(以下:A)

フリースタイルを始めたキッカケは「TOKURAさん」

まずAKIさんがフリースタイルフットボールを始めたキッカケを教えてください

A:僕がフリースタイルフットボールを始めたのは2014年の中学2年生の時です。キッカケは、TOKURAさんが2012年にフリースタイルフットボールで世界一になり、そこからメディアなどに多く出演されていた影響でフリースタイルフットボールに興味を持つようになりました。

実際にご自身がやってみようと思った経緯もお伺いしたいです

A:2014年からフリースタイルフットボールはYouTubeで検索して一人で練習していました。そんな中、近所の駒沢公園でフリースタイルフットボーラーが集まる場所があり、そこに飛びこんだことが大きな出来事でした。コミュニティがあるのは知っていましたが当時は中学生でシャイだったので、ある程度調べて技ができるようになってから、半年後くらいに練習場所に飛びこみましたね(笑)。

高校時代のAKI / 写真:本人提供

フリースタイルフットボールを始める前は何か競技をされていたのですか

A:サッカーを5才の頃からやっていましたし、その後も中学校まではサッカー部に入っていました。中学校の時はサッカーとフリースタイルフットボール、どちらもやっていました。

AKIさんが今までフリースタイルフットボールを続けてきた中で良かったことはありますか

A:良かったことを挙げると「JFFC 2023」で優勝したり、世界中に友達ができたし、フリースタイルフットボールの経験を通して聖火ランナーもしました。そういったこともあり、フリースタイルフットボールを通して様々な経験が出来たことは一番良かったです。

AKIさんがバトルに出始めたのはいつ頃なのですか

A:地方の小さいバトルは高校生ぐらいから出始めていました。TOKURAさんをはじめ、元々バトルを見てフリースタイルフットボールを始めた世代なのでバトルに強い憧れはあったのですが、高校時代はそこまで大会には出ていませんでした。大学生になって初めてJFFCという大会に出たので、本格的に出始めたのは大学一年生からですね。

©Stefaan Temmerman / Red Bull Content Pool

普段はどういった練習をしていますか

A:バトルでどう勝てるのか、勝つ要素は何なのかということを考えながら練習しています。特にベテランの方々は歴がある中でそこを追い越さないとチャンピオンになれないので。ただそれだけではつまらないので、音楽に合わせてムーブをしたり色んな技を試すなど、結構自由にやっている面もあります。

AKIさんは感覚タイプというよりロジカルに組み立ててフリースタイルをやるタイプなんですね!

A:練習に関しての長期的なロードマップはロジカルに考えるんですが、短期的なバトルの場においては真逆で、感覚に近いフリースタイルの動きをしている感覚です。ロジカルには考えているんですが、構成を詰めたりせずにフリースタイルに気持ちよくムーブをするにはどうしたらいいかを考えています。

AKIさんのフリースタイルは言語化するとどのようなスタイルなのですか

A:人より動きが速く、キレや緩急があるというのが特徴的かなと思っています。でも僕自身あまりスタイルが確立されているとは思っていなくて、目指しているのはどのスタイルもできるオールラウンダーなんです。パワー系だったり、エアームーブだったり、ジャンルは様々あるのですが、ジャンルに関するスタイルは特に僕は意識していなくて、もっと概念的なスタイルを意識しています。

尊敬しているフリースタイラーはいますか

A:もちろん沢山いるのですが一人挙げるならKo-sukeさんです。僕が大学一年生の時に上京したタイミングの話なのですが、Ko-sukeさんとよく練習する機会があったんです。自分は大学生という時間に余裕がある中で、社会人をやっているKo-sukeさんが練習場所に行ったら誰よりも早くいる状態が常にあったんです。当時はトップの人がこれだけやっていたら到底勝てないなというのを思い、衝撃を受けていました。

悲願の日本一に輝いた「JFFC 2023」

JFFC 2023で優勝に輝いたAKI / ©Hikaru Funyu / YUSF

今年のJFFC2023の優勝した感想を教えてください

A:めちゃくちゃ嬉しかったです。一番目標にしていた大会だったのでそれが叶ったというのが一番嬉しかったのかなと思います。僕の今までのハイライトの中で上位にある出来事です。

会場は炎天下の野外ステージでしたが、コンディションはいかがでしたか

A:コンディション的には悪い方でした(笑)。でもその悪い中でどれだけ自分の良さが出せるかと考えた時に、比較的まだ僕は力を出せる方でした。気温が高かったですが、僕自身は汗をかきながらやりたいタイプなので好条件だったのかなと思います。床も熱をもっていてかなり熱かったですが、僕は長袖を着るという対策をしていました。長袖の方が地面と皮膚が直接触れないので、そこは作戦として功を奏したかなと思います。

©Hikaru Funyu / YUSF

大会にはどういったマインドで挑まれたのでしょうか

A:僕は大学生最後の年だったので圧倒的に準備の時間があったことと、去年まで出場していたチャンピオンのKo-sukeさんが今年はジャッジに回ったので、枠が空いたという要素がありました。加えて自分はJFFCを運営しているJF3という団体でスタッフもしているんです。運営側としても労力を注ぎ込んでいた中で、自分がプレイヤーとして負けるのは嫌だなと思っていました。

実際そこで日本一になられて取り巻く環境の変化はありましたか

A:日本一になったら環境は変化すると思っていたのですが、変化は特にありませんでした。それよりも2023年シーズンに関しては7月を皮切りに、ほぼすべての月に大きい世界大会があったので、そこで日本チャンピオンの看板を背負って戦うということが非常に忙しい一年でした。今までのフリースタイルフットボール人生の中で一年間の試合数は過去一だったと思います。

掴み取った世界最高峰の舞台「Red Bull Street Style(以下:RBSS)」

Red Bull Street Style 2023
©KREW Collective / Red Bull Content Pool

AKIは「JFFC 2023」のチャンピオンとして世界最高峰のフリースタイルフットボール世界大会「Red Bull Street Style 2023」への出場権を獲得した。
結果は地元のレジェンドプレイヤーとの対決も制し、見事初出場でTOP4の成績を残した。日本代表として出場した彼が感じた世界の舞台での経験、そしてステージ上で込み上げた感情などを赤裸々に語ってくれた。(※イベントレポート記事はこちら

   

日本代表として挑んだRBSSの大会を終えての感想を教えてください

A:楽しかったし嬉しかったこともあったのですが、フリースタイルフットボール人生史上で一番揺さぶられた大会でした。まず大会が始まる前から終わった後まで全部トラブル続きだったんです(笑)。始まる前は雪で飛行機が動かずに、5日間ミュンヘンに滞在した後、なんとか予選の前日に会場のブリュッセルに着きました。預入れ荷物は遅れて服も何も持っていけなかったので、現地で大会用のズボンや服、帽子を買い、靴も他の人の靴を借りて出場しました(笑)。

そういったトラブルに加えて、対戦相手はほぼホームだったので完全アウェイという状況が連戦で続いたので、それも中々厳しかったです。そういった経験を経て体力が必要だなと痛感しました。

予選を通過し、TOP8トーナメント初戦はレジェンドプレイヤーのBencokとの対決でした。会場の雰囲気や勝った直後の心情はいかがでしたか

A:Bencok(ベルギー)は2016年以来の世界大会の出場で地元開催だったので、完全アウェイの状況でした。本番前のウォーミングアップからフランスなど他のレジェンドプレイヤーが彼を励ましていましたが、僕は気にしないで黙々とウォーミングアップしていました。この雰囲気の中で勝ちきれるかっていうプレッシャーもあって、非常にシビアな環境だったと思います。
でも実際勝った時の感情は嬉しさが100%ではなく、ベテランの1番やりたかった選手と戦えた嬉しさ、それにプレッシャーや安心感、僕の勝利に対する会場のブーイングへの怒りだったり、様々な気持ちが入り乱れていました。

Bencok / ©Mauro Puccini / Red Bull Content Pool

今大会はルール改正やジャッジ基準が新しくなるなど、新たな試みが実施されていました。そちらはどのように感じましたか

A:ルールが変わったということに関して僕自身全く不服はないです。WFFA(World Freestyle Football Association)という世界連盟の大会が3、4大会ぐらい直近で続いていた中、そこから切り離されたRed Bull独自の大会になったんだと思います。別に日本の大会も全てが全て同じルールでやっているわけじゃないし、各大会には独自のルールがあって、その中でプレイヤーはそれを了承して戦っていると思います。そこで今までのスポーツ軸の大会が主流な流れに対して、昔にTOKURAさんが優勝してた頃のようなRBSSを取り戻そうとチャレンジをしていたのは肌で感じました。

今後日本人が世界大会で勝ち上がっていくためにどんなことが必要か、感じたことがあれば教えてください

A:やっぱり自分の軸をブレないようにすることですね。世界のレベルはかなり高いので、自分がやってきたものや、見せたいものをブレずに持っていることが大切かなと思います。スキルに関して僕が思うのは、難しいスキルを持っていることに加えて、指標では測れない自分にしかない強みがないと世界大会レベルで勝つのは難しいかなと思います。

具体的に海外勢と日本人のスタイルの違いや身体能力の違いは感じましたか

A:スタイルの違いは考え方の違いにあると思います。海外はすごい技をやったやつが強い!みたいなところがあって、そこにカッコよさや音楽性っていう部分が最近少し薄れてきてるのかなという印象があります。それに対して日本は音楽性やスタイルが強いと思っています。ただ日本人もその面だけじゃ多分ダメで、ある程度難しいスキルっていうのも備えた上で海外に通用できるようになるのかなと思います。

©Mauro Puccini / Red Bull Content Pool

「業界を変えていけるトリガーを作る」AKIが今後見据えるビジョン

AKIさんがフリースタイルフットボールのプレイヤーとして見据える直近のビジョンや目標があれば教えてほしいです

A:僕のプレイヤーとしてのキャリアは、大学4年生で日本チャンピオンにもなれて、目標にしていたRBSSでも良い成績を残せたのでもう終わってもいいかなぐらいなんですけど(笑)。けど今回のRBSSが終わってもう1回挑戦したいなっていう思いがやっぱり強かったですね。そこが今後の目標になるのかなと思います。

写真:本人提供

AKIさんのキャリアの中で、将来的なビジョンもあれば教えてください

A:大学卒業後はプロではなく、社会人の道を選びました。けど社会人を言い訳にフリースタイルフットボールを辞めるということは全くなく、プレイヤーとしてそこで妥協しないという目標は常にあります。プレイヤー以外の活動ではJF3の活動や、WFFA(世界連盟)にも関わっているので、プレイヤーとして強さを示しながらも、カルチャーサイドも育てていけるような人間になりたいなと思います。業界を変えていけるようなトリガーを今後は僕が作りたいなって思います!

「トリガーを作る」とありましたが具体的に今後チャレンジしたいことはありますか

A:あります!実は3月2日(土)に「Eyes on me」というイベントを開きます。そのイベントはバトルイベントだけではなく、ショーケースなど様々なコンテンツを実施します。バトルイベントに来る人たちはバトルをやってる世代であって、その他の世代の人たちが集まれる場所っていうのが、今はあまり少ないんです。下の世代もだんだん増えてきた中で、全世代が会するようなイベントを開催することで、カルチャーとしても成長していけたら良いなと思います。ぜひ皆さんも遊びに来ていただけたら嬉しいです!

AKI プロフィール

© Stefaan Temmerman / Red Bull Content Pool

2000年4月19日生まれ 東京都出身の23歳。パフォーマンスやワークショップ、CM・プロモーション出演等フリースタイルフットボールで様々に活躍。世界/日本連盟のスタッフとしても活動し、フリースタイルフットボールの普及のために大会開催、イベント発信、世界連盟とのパイプ役も担っている。

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FINEPLAY編集部
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