JFFC王者Shoheiの哲学。静と動の「陰陽」スタイルと、技術を超えた「心の成長」がもたらした栄冠の軌跡。

2026.01.30
text and interview by 薮田悠翔

フリースタイルフットボール日本一決定戦JFFC10thで優勝し、現在シーンが最も注目する選手の一人であるShoheiMONSTER BALLAZに所属し、チーム、個人共にパフォーマンスでも活躍する彼のフリースタイルフットボールに対する熱意や考えを紐解く。

フリースタイルフットボールとの出会い

――まずは自己紹介と、これまでの歩みについて教えてください。
本名は藤本将平、フリースタイラーネーム「Shohei」として活動しています。岡山県出身ですが、幼少期はシンガポールで育ち、大学時代は和歌山、その後はイギリスのマンチェスターでのワーキングホリデーや札幌での生活を経て、現在は東京にたどり着きました。

――競技との出会いや、影響を受けた方はいますか?
2008年頃、テレビ番組などでクリスティアーノ・ロナウドとイギリスのフリースタイラー、ビリー・ウィングローブが共演しているのを観たのがきっかけです。当時はサッカーをやっていましたが、大学入学を機にフリースタイル一本に絞りました。影響を受けたプレーヤーはたくさんいますが最初に思い浮かぶのはSeanですね。シンプルに「見た目がかっこいい」という衝撃から入り込みました。

――ご自身のスタイルをどう定義していますか?
一言で言えばダイナミック、大技というのはありますがその他だと「陰陽(いんよう)」です。足裏のストールやフリーズといった「静(陰)」の動きと、アグレッシブなフロアやスピーディーな「動(陽)」の動き。この二面性がはっきりしているかと思います。また、周囲からはパワー系と言われますが、自分ではいかに「余裕を持って、苦しくないように見せるか」という軽やかさも意識しています。

フリースタイルフットボールとライフスタイル

――フリースタイルフットボールを続けている理由は何でしょうか。
「自分が社会のシステムから外れていたい」という思いが根底にあります。一般的な会社員としての生き方ではない、自分を表現する豊かな生き方を求めた結果、自分の中にあった手段がフリースタイルでした。

――競技を続ける中で、考え方が変わった瞬間はありましたか?
大学時代、どれだけ練習しても本番、人前で実力が出せない時期があり、それが本当に辛かったんです。それを克服するために、年月をかけて自分の内側に目を向けてきました。フリースタイルフットボールのおかげで精神世界の旅が始まりました。

仏教や禅の思想、チャクラの話など、目に見えない「本質」を本で学び、心を制御する方法を模索しました。週末に行っている太極拳も、動きながら心をコントロールする「動の瞑想」として、パフォーマンスに直結しています。

――フリースタイルフットボールが自分にもたらしてくれたものは?
沢山ありましたが、人間としての心の成長をもたらしてくれたし、海外も含め色々なプレーヤーとの関わりができたのは大きかったと思います。

JFFC 10th 優勝の舞台裏

――10回目という記念すべき大会での優勝。率直な感想と、過去の大会との違いを教えてください。
本当に光栄で、感謝しかありません。過去の大会では恐怖心や雑念で集中できないこともありましたが、今回は「自分を信じ切る」というマインドが全く違いました。

2025年の2月にカナダに行く機会があり、そこで自分の内側に意識を向けてフリースタイルをする状態が人を一番惹きつけるということを感じ、特に人前でパフォーマンスする時の意識が変わりました。

その後7月にドイツでの国際大会に呼ばれることとなり、元々2025年はバトルに出る予定はなかったですが大会に出場しました。大会に出るメンバーも強かったこともあり、最初はベスト8くらいに行けたらいいと思っていましたが、カナダで学んだことが体現できたこともあり、優勝することができました。

その後9月に岡山で行われたSSB(Setouchi Style Bomb)で優勝しJFFCへの出場権を獲得し、今年は自分の年だと確信し宇宙からレールを敷かれているという感覚にもなりJFFCに出場することとなりました。

――バトルで「勝ち」と「表現したいこと」のバランスはどのように取っていますか?
自分は表現したいことを全振りなんじゃないかと思います。フリースタイルフットボールを自分は勝つためにやっていないので、普段やっていることをバトルでやっています。

――当日のルーティンや、バトル中の思考についても伺いたいです。
朝はマイケル・ジャクソンを聴いてエネルギーを入れ、大会会場では映画『エアベンダー』の『Flow Like Water』という曲をリピートして聴いていました。過去の感情をすべて水に流し、ただ流れる状態でいるという感覚をイメージしていたかったです。

バトル中に相手がムーブをしている最中は次何の技をやろうかを考えていますが、自分が動いている時は、今回はあえて何も考えていませんでした。最初の1発目の技だけ決めて、あとは魂に任せて動くだけというイメージでした。

JFFC10thに向けての準備

――大会に向けた練習期間と、1日の練習時間は?
JFFCに向けた練習期間はSSBが終わってからの2ヶ月、1日の練習時間は2時間ほぼ毎日やっていました。

――大会に向けて、どのような準備をしましたか?
技術練習以上に「自分の波動を上げる」ことにフォーカスしました。日常生活から心地よい状態で過ごし、ポジティブなエネルギーを満たすことを徹底したんです。練習も、嫌な反復練習はせず、自分が楽しめる内容を優先しました。勝つために、迷いがあった「過去の自分」を捨てた感覚です。

――技術面・構成面で意識していたことは?
技術面では基本的に成功するとしても大技はさらに精度を上げました。あとはトゥワイス(同じムーブを二回やること)は無視し、自分の技を信じてやれば大丈夫という思いでプレーしました。

構成面に関してはランダムで、大会当日は攻めないと負けていたかもしれない場面もあり、攻めに転じた場面は何回かありました。この技を出せば間違い無いという技をちゃんと持っておくというのは大事だと思っています。

――大会直前期の練習スタイルは?
嫌な練習をしないというのには気遣い、反復練習はあまりせずに楽しく練習できることを優先してやっていました。大会では使わない技も練習したりとネガティブな練習にならないように楽しく練習することを心がけました。

フリースタイラーとして

――バトラーとパフォーマー、それぞれの表現の違いをどう捉えていますか?
バトルに関しては今回のJFFCのような場面では獲物を狙う「狼」のようなアグレッシブな状態で挑みますが、ショーケースはお客さんに向けた「平穏」に近い状態で臨みます。

――チームでのショーと、ソロでのショーにおける表現の違いは?
所属する「MONSTER BALLAZ」での活動とソロでは責任の重さが違います。チームでは相当大事なところを任されているので、より丁寧に技をやっています。ソロでのショーは自分の感性を100%出し切り、攻める表現も大切にしています。チームのショーはもちろんみんなで作りますがソロでのショーは完全に自分の感性次第で表現も変わってくると思います。

――DJ活動を始めたきっかけ、良かったことは?
EDMをはじめ音楽が好きで、アーティストやDJをよく見ていました。DJ機材のデザインが好きで自分で持ちたいというのもあり、DJをするようになりました。DJを始めて良かったことは自分の音楽のセンスを共有できる場が持てることです。バトルやパーティーなどのイベントで自分のセンスが光るなら嬉しいです。

――フリースタイラーとしてご自身の弱点を感じることはありますか?
根が内向的なことですね。自分をぐいぐい押し出すタイプではありません。ただ、その静かな性格が、ムーブが始まった時の爆発力とのギャップを生んでいるので、今ではそれが強みだと思っています。内向的であるからこそ自分を客観視できることも強みだと思います。

――伸び悩んでいる若手へのアドバイスがあれば。
練習と思わずに、やりたいことを楽しむ状態を作るといいと思います。言葉にはならない経験を積み重ね、表面的ではない根底から湧く自信を手に入れてほしいです。

――フリースタイルフットボールの魅力は何だと思いますか。
自分の境地を目指せるところだと思います。足も含め身体全身を使ってボールという球体という不安定なものを操るというある意味あり得ないことをやっているはずなので、そんな人体の境地を自分も体験できるし見ている人も感じられるところが魅力かと思います。

今後の展望

――これからの目標を教えてください。
俗に言うプロフェッショナルのフリースタイラーとして、より多くの人前でパフォーマンスを増やしていきたいです。また、MONSTER BALLAZとしては、現在制作中の映像やパフォーマンスを通じて、個々のプライドが詰まったムーブを届けられたらと思います。

――最後に、シーンの中でどのような存在でありたいですか?
僕がフリースタイルを通じてやりたいのは、「周りにポジティブなエネルギーを与えること」です。かつての自分がそうだったように、子供たちが僕を見て「うわー!」と感銘を受け、希望を持てるような、そんな清らかな波動を広げていく存在でありたいです。

最後に

JFFC 10thで頂点に立ったShoheiの強さは、磨き抜かれた技術だけにとどまらない。自らの内面と向き合う精神性、そして陰と陽の二面性を表現する独自のスタイルは、精神世界を旅するようなプロセスを経て、唯一無二の境地へと到達している。

今後は「MONSTER BALLAZ」などの活動を通して、彼自身が放つ波動で周囲に希望を与える存在を目指していく。自分を信じ、表現することを心から楽しみ続ける彼の歩みは、これからもシーンにポジティブなエネルギーを与え続けるだろう。

Shohei プロフィール

Shohei(藤本将平)
1997.01.14岡山県生まれ
MONSTERBALLAZ/AirTechnician所属

ダイナミックな身体操作と独特の感性でスタイルを確立し、数々の大技を創造してきたフリースタイルフットボーラー。国内ショー大会で3連覇した後、ヨーロッパを旅しながらストリートショーで技術を磨く。

2020年世界大会Superball個人ショー部門で優勝。2023年より世界最大のフリースタイルボールクルーMONSTERBALLAZの大黒柱としてショーコンテンツに尽力。2025年、ドイツで開かれた国際大会IFFCで優勝した後、全国大会JFFCでも優勝を果たし、日本一の称号を手に入れた。

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FINEPLAY編集部
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