【ALL STYLE JUMPERS vol.11】盛岡をダブルダッチでアツくするプレイヤーTAICHI

2020.06.18

ダブルダッチプレイヤーの中で少しだけ蔓延している概念がある。「OBになってから活躍するなんて」「地方で挑戦するのは難しい」…。この2つの概念を両方とも覆したプレイヤーがいる。岩手県から東京へ行き、OBプレイヤーとして活躍しながら、岩手県の学生たちのコーチとして世界大会へと導くことに成功したTAICHI。「必死で這い上がった」と彼が語る言葉とは。

岩手で勝てても、全国で勝てない

岩手県立大学のダブルダッチサークル「ROPE A DOPE」でダブルダッチにであったTAICHIさん。5期生として加入した当時は、他地域の交流はなく比較的閉鎖した空間だった。「ちょうど自分が入った時はサークルとして人数が増えた時で、交流よりも自分たちのサークル内で手一杯でした。同期は30人もいましたからね。僕は運良く、1年生のときに一般部門でDOUBLE DUTCH DELIGHT JAPANの舞台に立つことができました。正直言って、そこまで熱がなくて辞めようと思っていたのですが、全国の舞台を見てすごい人達に圧倒されて、ものすごく刺激を受けました。『もっとうまくなりたい!!』とあっという間に火がついちゃいましたね」

その後、順調に3年生・4年生ともにOPEN部門でNORTH代表として「Dual」でDOUBLE DUTCH DELIGHT JAPANへの出場を果たした。それでも、納得行かないことばかりだったという。「正直、先輩から教わることを右ならえでやっていても勝てないことはよく分かっていました。先輩たちも偉大ですが、誰かに教わったわけではなく本とかビデオで体得したものです。苦し紛れに練習して岩手で勝ち抜くことができても、全国の舞台に行ったら成果がでなくて…。悔しかったです。」

3年生・4年生ともにOPEN部門でNORTH代表で出場した

「普通は大学卒業したら辞めちゃうところだと思うんですけど、ダブルダッチを通してもっと外の世界と通じたいし、見てこなかった世界をみたい気持ちが強くなりました。なので、思い切って就職先は東京を選んで飛び込んでみました」

雑草魂で「誘われる人」へ

岩手から東京へと上京したTAICHIさん。最初の1〜2年はなかなか芽が出なかった。「親密な人が最初からいたわけじゃないし、所属の場所もなかったので苦労しました。なので、とにかく飲み会や練習に誘われたら行きまくりました。でも、出来上がったコミュニティーに入るのはしんどいし、自分は現役時代に活躍したわけでもなくて、アピールポイントもないし目立つ技もない。それでも、一人のプレイヤーとして活躍したいという強い気持ちはあったので、先輩後輩関係なく聞きまくったり、飲み会では絶対に周りを笑わせて爪痕を残したり…。あれやこれや、必死で生き抜いていました。まさに、雑草魂でしたね(笑)。」

とにかく色々したそうだ

そして、まずは覚えてもらおうと「キャラで押し通す」ことに腹をくくった。「覚えてもらわなきゃ意味がないので、とにかく人の記憶に残る顔やムーブをしました。どこかのチームに入りたいっていう必死の気持ちでしたね。その後、ずっと繋がり作りをし続けた甲斐があって『OLD BOY SQUAD』を組むことになり、そこで自分のキャラをだいぶ使ってもらいました(笑)このチャンスは逃すまいと頑張りましたね。」

DOUBLE DUTCH CONTEST WORLDへと進出した『OLD BOY SQUAD』

「そこから、だんだんと誘ってもらえるようになりました。デライトや跳龍門で準優勝、DDSで優勝したり、どんどんプレイヤーとしての結果が出るようになってきて嬉しかったですね。ただ、自分としては常に『レペゼン岩手』を意識していました」

着々と実力を身に着けて、目立つプレイヤーへ

東京へ行っても「レペゼン岩手」

TAICHIさんが東京で頑張る理由の背景には、常に出身サークル「ROPE A DOPE」があった。「やっぱり地方の子が頑張っていることに、もっとOBとしてサポートしていきたくて。OBがパイプになることで、崩せる壁がたくさんあると思うんです。東京で活躍していても、ずっと『レペゼン』は岩手でした。『岩手を捨てた』とか言われたことも何度もありましたが、一回も忘れたことはありませんでした。自分は、地元に残っていることが必ずしも『レペゼン』ではないと思うんです。自分の地元をどう背負っていきたいかということを、ずっと考えていました。これからも、岩手をどんどん盛り上げていって、ダブルダッチがどこに行っても面白いスポーツにしたいですね。地域っていう差を無くしたいんです。東京へ行って活躍するプレイヤーになることは、そのための手段でした」

日本全国に、間違いない仲間ができた

「自分がプレイヤーとして頑張っていったら、名前が売れて岩手の株も上がります。さらに、現役生たちも東京のすごいプレイヤーたちと繋いであげて、世界を広げてあげたくて。そのためには『TAICHIが言うなら』と、世話見てもらえるような関係性を築けないといけないなと考え、行動し続けました。東京では自分がコーチとして見ているチームについて尊敬するプレイヤーの人たちに意見を聞いたり、現役生が『この人と話したい』って言ったら電話してあげたり、現役生たちが東京に来ている時は飲み会に呼んであげたり、とにかく関東で自分が吸収したことを現役生たちに還元できるようにありとあらゆることをしました。現役生たちには『俺を使え』と言っていましたね。自分が現役生のとき、情報がなかったり繋がりがなくて悔し涙を流したことを、もう繰り返してほしくなかったんです」

ついに岩手から国際大会優勝へ

TAICHIさんは社会人4年目に、岩手へと舞い戻った。岩手へ帰ってからは、岩手県ダブルダッチ協会を設立して会長に就任するほか、「ROPE A DOPE」のコーチとして活躍し、中でも4回生チームの「刹那」を国際大会「National Double Dutch League Holiday Classic」優勝へと導いた。地方のサークルで、これまでにない快挙だった。

「最初は全然パフォーマンスとして形になっていなかった刹那でしたが、コーチとして関わっていくことで大きな変化を見せてくれました。東京では、いつか岩手に帰った時に教えられるような存在でありたいと思って、多くの人から吸収させてもらいました。彼らの結果でもあるし、僕たちに関わってくれたすべての人達のおかげで叶えられたんだと想います。やっぱり、自分の地域しか知らないと内側だけの戦いばかりに興味がいってしまい、井の中の蛙大海を知らずになりやすいんですよね。だから、どんどん外の世界を見せたり刺激を与えていったことがよかったと思います。自分たちが現役で叶えられなかった夢を、やっと一緒に叶えることができて本当に嬉しかった」

「ダブルダッチは『行動する勇気』と『それに見合う実力をつけること』で、大きく環境は変わります。地方にいて結果がでなくてくすぶっていたら、一緒に這い上がるので連絡をください。どこにいても、自分が主人公になろうと思えばなれると思います。地域の差も、経歴の差も、どんどん飛び越えていく人がもっとでてきたらいいなと思います。僕は、岩手でダブルダッチにアツい人材と素晴らしいパフォーマンスを輩出していけるように頑張ります」

ダブルダッチの岩手シーンを開拓したTAICHIさん。彼が行ったのは、あえて「勇気をもって出ていく」ことだった。簡単ではない決断をしたからこそ、これまでにない結果を岩手にもたらしたのだろう。こうしたプレイヤーが、日本全国のダブルダッチシーンを変えていくに違いない。岩手が、ダブルダッチで熱くなる日も近いだろう。

取材・文 小田切萌

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