日本からは小野寺吟雲が準優勝「オリンピック予選シリーズ(OQS)」上海大会 男子スケートボードストリート種目

2024.05.22
Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC

いよいよ残り2戦でパリオリンピック出場が決まる「オリンピック予選シリーズ(OQS)」、フェーズ2の第1戦目となる上海大会のスケートボード・ストリート種目が、中華人民共和国・上海にて開催され、競技最終日の5月19日(日)に男子決勝が行われた。

世界ランキングによる各国の出場権争いはもちろんだが、日本国内の出場権獲得争いが激化している。逆転での出場権獲得に是が非でも表彰台に登りたかった前回オリンピック王者の堀米雄斗がまさかの予選敗退。さらにフェーズ1を終えた時点で世界ランキング1位であり、今大会でも優勝候補大本命だった白井空良が準決勝で姿を消した。

波乱の様相を呈した今大会の決勝に名を連ねたのは、根附海龍佐々木音憧ジオバンニ・ヴィアンナ (ブラジル)、小野寺吟雲クリス・ジョスリン (アメリカ合衆国)、ナイジャ・ヒューストン (アメリカ合衆国)、グスタボ・リベイロ (ポルトガル)、ジャガー・イートン (アメリカ合衆国)となった。

決勝進出者たち 
Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC

今大会では日本の出場権争いが非常に注目で、根附小野寺は後続を突き放すことは出来るのか。また、日本人5番手で追う立場の佐々木がどこまでランキングポイントを獲得できるか。

一方でアメリカも熾烈な代表争いを繰り広げており、ナイジャ・ヒューストンが頭一つ抜き出て、今大会も決勝に残り大幅なポイント獲得が確定しているが、残り2枠を現在「パーク」との二刀流でのパリオリンピックを目指しているジャガー・イートンをはじめ、アレックス・ミドラークリス・ジョスリンブレイデン・ホーバンが団子状態で追いかけている。
今大会ではジャガークリスが決勝に残り出場権争いにて1歩リードしたと言えるが、日本とアメリカの国内での出場権争いにそれぞれこの決勝での順位が非常に重要になってくる。

大会レポート

【ラン1本目】

流れを掴む上で非常に重要な一本目は佐々木が「ビガースピンフリップボードスライド」で勢いよくスタートしていくと、高さのある「ノーリーヒールフリップ」、「ノーリーノーズブラント」まで完璧にフルメイク、本人も納得の笑顔で88.78ptをマークした。

佐々木音憧
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グスタボもテンポよくトリックを繋いでいき、ラストのモヒカンレッジでの「バックサイドクルックドグラインド・ノーリーキックフリップアウト」ではバランスを崩すも持ち堪え89.21ptに。

ジャガーは得意のアールトリックで繋ぎ「スイッチバックサイドスミスグラインド」、「ノーリーハーフキャブスイッチ50-50グラインド」、ラストの「ブラントストールフロントサイド180アウト」まで完璧に決めて91.16ptと唯一の90点台でトップに躍り出た。

ジャガー・イートン
Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC

【ラン2本目】

1本目のミスを取り戻したい根附はアールでの「フルキャブヒールフリップ」、「バックサイド180レイトショービット」、「ヒールフリップバックサイドリップスライド」、「インワードヒールリアバート」まで完璧に1本目のミスをリカバリーし82.63ptをマーク。

そしてジオバンニは「ハーフキャブノーズグラインド」をはじめ、その後は1本目と同様に繋いでいきラストトリックを「ハーフキャブフロントノーズスライド270アウト」にアップデートするも84点台とスコアを伸ばせなかった。

一方で2本目でビッグスコアを出したのが日本の小野寺。「ダブルフロントサイドキックフリップ」、「バックサイド360キックフリップ」、ギャップオーバーの「フロントサイドブラントスライドショービットアウト」、「ビックスピンキックフリップショービットアウト」を完璧にリカバリーしフルメイク92.81と暫定トップに。

小野寺吟雲
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クリスはギャップオーバーのバックサイドリップスライド、ステアのバックサイドビッグスピン、ノーリーヒールフリップをステアでこちらも完璧にリカバリーしフルメイクし87.87ptに。

グスタボも途中で「キックフリップバックサイドノーズスライド・ビッグスピンアウト」にトリックをアップデートすると、1本目のラストトリックで少しスケッチーだった「バックサイドクルックドグラインド」を丁寧に決め、91.96ptにスコアを伸ばした。

2本目でさらにスコアを伸ばしたのがジャガーだ。1本目のラストトリックを「スイッチバックサイドノーズグラインド」にアップデートして92.55ptと暫定2位で小野寺をしっかりとマークした。一方でナイジャのみがランセクションではフルメイクできず珍しい展開となった。

【ベストトリック1本目】

ランでのスコアを活かしたい佐々木は、最初のトライで「ノーリーハーフキャブスイッチ5-0グラインドリバート」をハンドレールで一発メイクしビッグスコアである91.64ptを獲得。

ブラジルでの五輪出場権争いが激しくなっているジオバンニは「キャバレリアルフロントサイドブラントスライド」をハンドレールで決めると90.92ptをマーク。

クリス・ジョスリン(左)とジオバンニ・ヴィアンナ(右)
Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC

【ベストトリック2本目】

ここでスコアをフルメイクし後続にプレッシャーをかけておきたい佐々木は「キャバレリアルノーズブラント」をミス。一方で同じくスコアを揃えておきたい小野寺は「フロントサイドブラントスライド・ビッグスピンフリップアウト」をハンドレールで決め93.07ptのビッグスコアを獲得し、この日最初のフルマークライダーに。

トリックを決め喜ぶ小野寺吟雲
Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC

そしてここでも暫定首位の小野寺をしっかりマークしたジャガー
「スイッチバックサイドノーズブラントスライド」を2本目でしっかり修正しモヒカンレッジで決め、93.13ptとここまでのハイエストスコアをマーク。

ジャガー・イートン
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【ベストトリック3本目】

順位、スコアが大きく動いた3本目。根附は「ノーリーインワードフリップフロントサイドボードスライド」を着地がギリギリながらもなんとか耐え、3回目で決めこのセクション初めてスコアをマーク、92.14ptとした。
日本のオリンピック出場権争いにおいてこの大会でなんとしても上位に入りたい佐々木は「キャバレリアルバックサイドノーズブラントスライド」を2回目で見事リカバリーし91.04ptとここでスコアをフルマークとした。

2本目でジャガーに追い越された小野寺は好調を感じさせるトライ後、この3本目でも「ギャップオーバートランスファー・フロントサイドブラントスライド・キックフリップアウト」を決め91.46ptと暫定首位の座を再び奪い返した。

ここまで思うように流れをつかめていなかったナイジャも「キャバレリアルバックサイドノーズブラントスライドフェイキー」の大技をモヒカンレッジでこちらも3回目のトライでリカバリーし93.65pt。この日のハイエストスコアを更新してみせた。

グスタボもこの流れに乗り、「フロントサイドオーバークルックドグラインドノーリーキックフリップアウト」さらにこちらも3回目でリカバリーして90.04をマークした。

小野寺に再び首位の座を奪われたジャガーがさらにここで魅せた。
「バックサイドキックフリップバックサイドノーズピックグラインド」をハンドレールにて一発で仕留め92.60ptと再度小野寺の前に出た。

再度首位に上がったジャガー・イートン
Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC

【ベストトリック4本目】

首位ジャガーと2位小野寺の差が僅か0.94ptと僅差のまま後半戦へ。本決勝3度目の逆転首位を狙う小野寺は「バックサイドテールスライドキックフリップアウト」を中央のモヒカンレッジで狙うもミス。

勝負の4本目で唯一スコアをマークしたのがアメリカ国内での出場権争いを繰り広げているクリス。彼の代名詞であるビッグトリック、バンクトゥレールオーバーの「ビッグトランスファーバックサイド180キックフリップ」を最初のトライで決め92.86ptをマークしてラストトリックに望みを繋いだ。

【ベストトリック5本目】

なんとかフルマークしたい前回のドバイ大会王者、日本の根附は「ヒールフリップバックサイドノーズブラントスライド」をハンドレールで挑むもミス、スコアを揃えられず悔しい8位フィニッシュとなった。 
暫定3位と表彰台圏内の佐々木もさらにスコアを伸ばすべくバンクトゥフルオーバーの「バックサイド360キックフリップ」をミス。
ジオバンニもなんとかフルマークし、順位を少しでも上げておきたいところだったが「キャバレリアルバックサイドノーズピックグラインド」をミスしスコアを揃えられず7位で今大会を終えた。

逆転優勝には92.40ptが必要な小野寺は4トライ目と同じく「バックサイドテールスライドキックフリップアウト」をモヒカンレッジで狙うも惜しくも決めきれず今大会を終えた。

最終トライで魅せたのがアメリカ勢だ。まずはクリス・ジョスリン。
4本目の勢いそのまま「ノーリーインワードヒールフリップリバート」をステア決め94.61ptとこの日のハイエストスコアを最後で更新、順位も日本の佐々木を抜き3位表彰台を獲得した。

最高得点を叩き出したクリス・ジョスリン
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なかなか本調子が出せていたいナイジャも流石のスキルをみせた。
ハンドレールでノーリーヒールフリップバックサイドボードスライドを見事リカバーし最終トライで89.13スコアを揃え5位浮上し今大会を終えた。

グスタボも「バックサイドクルックドグラインド・ノーリーバリアルヒールアウト」をモヒカンレッジで挑んだがミスしスコアを揃えられず6位でフィニッシュ。この瞬間ジャガー・イートンの優勝が決まった。

優勝を決めたジャガー・イートン
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大会結果

優勝 : ジャガー・イートン (アメリカ合衆国) / 278.28pt 
2位 : 小野寺 吟雲 (日本)  / 277.34pt
3位 : クリス・ジョスリン (アメリカ合衆国) / 275.34pt

4位 : 佐々木 音憧(日本) 271.46pt
5位 : ナイジャ・ヒューストン (アメリカ合衆国) / 239.07pt
6位 : グスタボ・リベイロ (ポルトガル) / 182.00pt
7位 : ジオバンニ・ヴィアンナ (ブラジル) /  177.39pt
8位 : 根附 海龍 (日本) /  174.77pt

左から小野寺、イートン、ジョスリンの順
Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC

最後に

今大会非常に印象的だったのが終始メイク率、トリックのクオリティも高かった日本の小野寺だ。ラン、トリック、両セクション非常に高い評価を得られ、1度のミスでも大崩れしないメンタルの強化もうかがえた。

もう一人は佐々木の名前も挙げておきたい。ドバイ大会では悔しい結果だったが、今大会は全体を通して非常に良いパフォーマンスだった。持ち技も十分に表彰台圏内を狙えるレンジのスコアトリックであり次のブタベスト大会に非常に期待が持てる。一方で前大会王者の根附はスコアメイクに苦しんでいたように感じた。

OQS上海大会で最も注目だったのはアメリカ勢。ランでスコアが伸ばせないながらもしっかりと5位でフィニッシュしたのがナイジャ・ヒューストン
そして、冒頭でも挙げた熾烈なパリオリンピック出場権争いを繰り広げている中、今大会で一気にジャンプアップした3位のクリス・ジョスリンだ。これにより一気に世界ランキングも8位まであげ、アメリカ内でも3番手となり出場権獲得圏内まで上げてきた。

上海大会で旋風を巻き起こしているのがパークスタイルでもファイナリストに残っているジャガー・イートンだ。何度もお伝えしている通り、二刀流でのパリオリンピック出場を目指しておりここまで世界ランキング12位と出場圏内ではあったがそのポイント差は非常に僅差だった。
今大会でもパークとの両立から非常に過酷なスケジュールを予選からこなし、決勝まで勝ち上がった。さらにはその強靭なフィジカルでパフォーマンスも落とすことなく、今大会でも見事ストリートで世界チャンピオンとなった。
その過酷さと思いからか表彰式では涙を見せたが、その姿が筆者には非常に印象的だった。これにより世界ランキングも一気にナイジャを抜いて2位に浮上、ストリート、パークの二刀流でのパリオリンピック出場に大きく前進した。

そして日本勢のパリオリンピック出場権争いも非常に混戦となった。
今大会2位となった小野寺が世界ランキング1位に浮上し非常に優位なポジションに。続いたのが世界ランキングを5位をキープもポイント差で日本人2番手に上がった根附、まさかの準決勝敗退でポイントを伸ばせなかった白井が6位の3番手、今大会で決勝に残り大幅にポイントを獲得した佐々木が7位に上がった。

根附白井が9986ポイント差、白井佐々木が600ポイント差、根附佐々木の差が10,586ポイントと、このフェーズ2では1つの順位でひっくり返る可能性のあるポイント差となっている。日本人トップの小野寺と2番手根附の差が98,850ポイントと小野寺が最終戦を前に非常に有利なポジションだ。

前回のオリンピック王者で今大会まさかの予選落ちとなった堀米雄斗は130,110ポイントと出場権内の白井まで95,017ポイント、青木が97,716ポイントで白井まで127,411ポイント差と非常に難しいポイント差ではあるが逆転の可能性を残し最終戦であるブダベスト大会へ進む。

このままでは終われないオリンピックディフェンディングチャンピオンの堀米がどこまで最終戦に修正を加えてくるか。今大会で逆転を許した白井もこのまま黙って終わるとは思えない。非常に有利な位置につけた小野寺はこのままキープできるか。はたまた好調な根附佐々木の巻き返しなるか。

アメリカをはじめ、日本以外の各国の出場権争いからも目が離せない展開。
混戦のまま迎える最終ブダベスト大会は言うまでもないが、要注目だ。

各競技で協力してTEAM JAPANのサポートを実施

またオリンピック予選シリーズ (OQS) 上海大会では日本人選手たちが最高のコンディションで試合に臨めるように、味の素株式会社「ビクトリープロジェクト」が帯同・サポートしている。本プロジェクト内容については下記の通りだ。

ビクトリープロジェクトは、2003年から味の素株式会社と日本オリンピック委員会(JOC)が共同で実施している選手のコンディショニングサポートプロジェクト。選手の目指す姿や目標に合わせた栄養サポートを提供し、パフォーマンスの最大化と意識改革に貢献している。

特に大会期間中は、「補食」を通じて選手のコンディショニングをサポート。具体的には、エネルギー補給を目的とした「パワーボール」と、カラダのコンディションを維持するためのアミノ酸サプリメント「アミノバイタル」を提供している。

今回のオリンピック予選シリーズ(OQS)では、スケートボードだけでなく、BMX、ブレイキン、クライミングチームにも「パワーボール」と「アミノバイタル」を提供し、全ての競技で選手が最高のコンディションで試合に臨めるよう支援した。
選手一人一人のコンディションを詳細に把握し、適切な栄養プランを提案することで、長期間にわたり安定したパフォーマンスを維持できるようサポートしている。

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