いよいよ残り2戦でパリオリンピック出場が決まる「オリンピック予選シリーズ(OQS)」、フェーズ2の第1戦目となる上海大会のスケートボード・ストリート種目が、中華人民共和国・上海にて開催され、競技最終日の5月19日(日)に女子決勝が行われた。
男子同様に出場権争いが非常に激化している女子カテゴリー。今大会前まで世界ランキング3位の織田夢海がまさかの予選敗退。そして世界ランキング1位で前回五輪王者の西矢椛が準決勝で姿を消す波乱の大会となった。
決勝に勝ち上がったのは、ポエ・ピンソン (アメリカ合衆国)、ウェンフイ・ゼン(中国)、チェンシー・チー(中国)、中山 楓奈(日本)、ライッサ・レアウ(ブラジル)、吉沢 恋(日本)、赤間 凛音(日本)、クロエ・コベル(オーストラリア)の8名だ。今回は中国勢が決勝に2人勝ち残る結果となり、アジアでは日本1強というイメージだがそこへ中国人選手が割って入っていく展開となった。
出場権争いは日本国内が非常に混戦模様となっており、現在日本でのトップ2である西矢と織田が決勝に残れず、この2人を追いかける中山、吉沢が決勝に残り順位を逆転できる可能性が高まった。そして現時点での出場枠圏内につけている赤間が唯一の決勝進出者となり、その地位を確実なものにすべく今大会での大幅なポイント獲得を狙えるのかといった構図だ。
海外勢では中国のチェンシーとウェンフイが世界ランキングを上げるチャンスとなりパリオリンピック出場へ大きく前進しそうだ。いずれにせよ各ライダーの決勝での順位が非常に重要になる。
大会レポート
【ラン1本目】
まず一歩前へ出て幸先良いスタートを切ったのは日本の吉沢恋。ハンドレールで「バックサイドスミスグラインド」からバンクトゥバンクで「トレフリップ」と繋いでいき、ラストの「バックサイドビッグスピンフロントサイドボードスライド」まで完璧に決め切り84.04ptのハイスコアをマーク。
吉沢の作った良い流れに続きたい赤間凛音もきっちりフルメイクし87.41ptと首位に躍り出るが、これに続いたのがオーストラリアのクロエ・コベルだ。
「フロントサイドフィーブルグラインド」で勢いよくスタートしていくと、「バックサイドテールスライド」、ステアでの「スイッチキックフリップ」から「スイッチフロントサイドボードスライド」と繋ぎ、ラストトリックのビッグステアでの「キックフリップ」までパーフェクトラン。87.34ptとこちらもビッグスコアで暫定2位につけた。
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Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC
【ラン2本目】
2本目ではアメリカのポエ・ピンソンと中山楓奈がそれぞれ80ポイント台としっかりスコアを残す中、1本目のスコアを大幅に上回ったのが日本の赤間とブラジルのライッサ・レアウだ。
ライッサは「キックフリップフロントサイドボードスライド」から「フロントサイドノーズグラインド」、「キックフリップバックサイド50-50」、「バックサイドテールスライドショービットアウト」、ラストはハンドレールで「フロントサイドブラントスライド to ショービットアウト」と異次元のパーフェクトランで92.23ptをマークした。
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そんなライッサに続いたのが赤間。「バックサイドスミスグラインド」や「フロントサイド360オーリー」など1本目同様に繋いでいくが、途中の「フロントサイドビッグスピン」を「フロントサイドビッグスピンヒール」にアップデート。ラストの「フロントサイド180スイッチ5-0」まで完璧に決め90.11ptライッサを射程圏内に収めて追走する形に。ランを終えた時点でライッサと赤間が頭一つ抜けた形でトリックセクションへ。
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【ベストトリック1本目】
まずベストトリック1本目でハイスコアを出したのが中国の新鋭、チェンシー・チーだ。ビッグステアに設置されたハバレッジで「キックフリップバックサイド50-50」を決め85.51ptをマーク。世界大会2回目の決勝とは思えない堂々としたライディングを見せた。
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そんな中でベストトリック1本目のハイエストスコアを出したのが吉沢。「キックフリップフロントサイドボードスライド」を決め88.05ptと、ここでも幸先の良い出だしに。
【ベストトリック2本目】
吉沢は続く2本目でも「フロントサイドハリケーングラインド」をしっかり決め85.64ptとスコアを揃えた。パリオリンピック出場権争いで追いかける立場の中山はモヒカンレッジで「フロントサイドクルックドグラインド」を決め83.84ptをマークし残りのトライに勝負をかける。
ライッサもこの2本目で「キックフリップバックサイドリップスライド」をハンドレールで一発メイクし91.81ptをマーク。1本目に続きフルマークし他のライダーにプレッシャーをかけた。
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【ベストトリック3本目】
分岐点となることが多い3本目でスコアを残したのはアメリカのポエと中国のウェンフイだ。ポエは1本目と2本目とミスしていたバンクトゥオーバーの「フロントサイドスミスグラインド」を決め85.77ptとようやくスコアをマークした。
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久しぶりの世界大会での決勝となった中国のウェンフイは1本目と2本目で狙っていたトリックを、ハンドレールでの「バックサイドテールスライド」に切り替えて一発で仕留め、86.13ptというハイスコアを収めて上位戦線に踏みとどまった。
【ベストトリック4本目】
4本目にまず流れを動かしたのがチェンシー。ステアに設置されたハバレッジで「キックフリップバックサイド5-0グラインド」にトライ。グラインド中にバランスを崩したかと思えたが見事着地で持ち直す勝負強さを見せた。スコアも85.07ptとこれでフルマークとなった。
ここまでランでハイスコアを出しながらも、ベストトリックでは1本目以降なかなかスコアを出せていなかった赤間がここでビッグスコアを叩き出した。ハンドレールで「フロントサイド270フロントサイドボードスライド」を決め92.55ptに。
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暫定首位のライッサに対して1ポイント差以内に収めプレッシャーをかけると、ラストトライを前に暫定首位にライッサ、2位に赤間、3位は序盤でのアドバンテージを守っている吉沢と続いた。
【ベストトリック5本目】
この上海大会からわずか1つの順位の差で大きく獲得ポイントが変わるため、当然1つでも順位を上げておきたいところ。そんなプレッシャーの中でラストトライを決めて順位のジャンプアップを実現させたのがアメリカのポエだ。バンクトゥギャップオーバーのレールで「バックサイド5-0グラインド」をバランスを崩しながらもなんとか成功させ88.11pt、トータルを254.06ptとしチェンシーを抜いて4位に浮上した。
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赤間に逆転されるの可能性を残して最終トライを迎えたライッサ。百戦錬磨、勝負所を理解している彼女はここで「ヒールフリップフロントサイドボードスライド」をハンドレールで決めた。スコアは90.85ptと赤間を突き放すことに成功。
最終トライの結果を待つことに。
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赤間は逆転優勝には92.24ptが必要な中、持ち技を考えれば十分に可能性がある。彼女が最後に選んだトリックはハンドレールでの「フロントサイドフィーブルグラインド・フロントサイド180アウト」でこれをしっかり決め切ったが、結果はわずか0.54pt及ばず2位でフィニッシュとなった。
大会結果
優勝 : ライッサ・レアウ (ブラジル) / 274.89pt
2位 : 赤間 凛音 (日本) / 274.35pt
3位 : 吉沢 恋 (日本) / 257.73pt
4位 : ポエ・ピンソン (アメリカ) / 254.06pt
5位 : チェンシー・チー (中国) / 247.44pt
6位 : 中山 楓奈 (日本) / 165.86pt
7位 : ウェンフイ・ゼン (中国) / 164.74pt
8位 : クロエ・コベル (オーストラリア) / 87.34pt
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最後に
まず今まではライッサ・レアウ、クロエ・コベル、西矢椛が世界のトップ3であると言われていた勢力図だったが、今大会でも強さを見せた赤間凛音や、今回惜しくも予選敗退という結果で一転パリ五輪出場権争いの中で追う立場となった織田夢海、また今大会で3位に入り一気にパリ五輪出場圏内にジャンプアップした吉沢恋が入ったことで勢力図はややフラットと言える状況に。
そんな中、スコアメイクや試合運びを考慮するとライッサが、頭一つ抜けている印象だ。ただ今大会では本調子を出しきれなかったクロエもこのままいくとは思えない。やはりライッサとクロエを相手に日本人勢がどのように頂点争いを繰り広げるのかという図式はパリオリンピックまで続くと考える。
そして注目のパリ五輪出場権争いは今大会を終えて大きく入れ替わる結果となった。ブラジルのライッサが同国4番手のライダーが次戦で優勝してもライッサを上回れないので出場確実という結果になった。
一方で大混戦なのが日本の出場権争いだ。世界ランキングトップ10にフェーズ2に進んだ全員が入るというスケートボード強国ぶりを見せている。
今大会前まで世界ランキング1位だった前回オリンピック王者の西矢椛が5位と日本人では3番手に、そして世界ランキング3位だった織田夢海が7位で日本人5番手とそれぞれランクダウンした。
前回のオリンピック経験者で今大会で出場権獲得圏内まで順位を上げたかった中山楓奈は世界ランキング6位と順位をキープしたが日本人では4番手と圏内には入れなかった。彼らと裏腹に一気にジャンプアップして出場権獲得圏内に入ったのが今大会3位となった吉沢恋だ。世界ランキングも3位と4つ順位をあげ日本人でも2番手に躍り出た。
現在、日本人トップの赤間凛音が386,771ポイントと次戦ブダベスト大会を前に非常に有利なポジションとなった。しかし、ポイント差ではトップの赤間と世界ランキング10位の伊藤美優までが245,754ポイントとなっているが、次戦の優勝ポイントが260,000ポイントとなっているので逆転できる可能性が残っている。
つまりこれは最終戦、ブダベスト大会まで全員がパリオリンピック出場の可能性を残しているということだ。
オリンピック出場権を争っているライダー達は計り知れないプレッシャーと戦いながらこの予選を戦ってきている。自分自身とも戦いながらパフォーマンスを出さなくていけない非常に難しい状況の中、今大会のように何が起こるか最後までわからないオリンピック予選大会。
次戦、パリオリンピック予選最終戦となるブダベスト大会は予選から決勝まで全く目が離せない大会になりそうだ。
各競技で協力してTEAM JAPANのサポートを実施
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またオリンピック予選シリーズ (OQS) 上海大会では日本人選手たちが最高のコンディションで試合に臨めるように、味の素株式会社「ビクトリープロジェクト」が帯同・サポートしている。本プロジェクト内容については下記の通りだ。
ビクトリープロジェクトは、2003年から味の素株式会社と日本オリンピック委員会(JOC)が共同で実施している選手のコンディショニングサポートプロジェクト。選手の目指す姿や目標に合わせた栄養サポートを提供し、パフォーマンスの最大化と意識改革に貢献している。
特に大会期間中は、「補食」を通じて選手のコンディショニングをサポート。具体的には、エネルギー補給を目的とした「パワーボール」と、カラダのコンディションを維持するためのアミノ酸サプリメント「アミノバイタル」を提供している。
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今回のオリンピック予選シリーズ (OQS) では、スケートボードだけでなく、ブレイキン、BMX、スケートボード、クライミングチームにも「パワーボール」と「アミノバイタル」を提供し、全ての競技で選手が最高のコンディションで試合に臨めるよう支援した。
選手一人一人のコンディションを詳細に把握し、適切な栄養プランを提案することで、長期間にわたり安定したパフォーマンスを維持できるようサポートしている。
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skate最後の最後まで目が離せない出場権争い「オリンピック予選シリーズ ブダペスト大会」スケートボード・ストリート種目の見どころ2024.06.15泣いても笑っても、ついにパリオリンピック出場選手が決まる最後のオリンピック予選大会である「オリンピック予選シリーズ(以下:OQS)」のブダペスト大会が、ハンガリー・ブダペストにて2024年6月20日(木)~6月23日(日)の4日間にわたり開催される。 先月、フェーズ2の1戦目として中国の上海で開催されたOQS上海大会を終えて、いよいよオリンピック予選大会も大詰めとなる中、今回のブダペスト大会の結果が最終的にフェーズ1のポイントと上海大会を加算されパリオリンピック代表選手が決まる。 またフェーズ2に該当する今大会は前回の上海大会同様に、フェーズ1終了時の世界ランキングポイントに基づいて選出された男女各44名の選手に出場可能となる。なお本シリーズは2戦でオリンピック予選大会の全体のポイント配当の7割近くを占め、大会ごとに最大25万ポイントすなわちオリンピック予選大会の全体のポイント配当の3割近くを獲得できることから、1大会でパリオリンピック出場枠争いにおいて大逆転が起こりうる大会である。 既に上海大会では数名の優勝候補が決勝進出を逃したことで世界ランキングも大きく変動するなど波乱の展開となった。本記事では男女の現在の世界ランキング(2024年6月12日現在)を元に、今大会の見どころを解説する。 女子ストリート ライッサ・レアウ Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC オリンピック代表選考基準としては世界ランキング20位以上、各国からは上位3名までが出場権を獲得する形。そのため20位以内に同国から3名以上いる場合は、繰り下げで20名になるように出場権が割り与えられ、更に開催国枠や大陸枠などが考慮されたのち、22名がパリオリンピック出場選手として選ばれる。その点を踏まえた上で女子カテゴリーの現在の世界ランキングは以下の通りである。 なおOQSの上海大会を終えた時点でトップ20に3名以上がランクインしている国は日本、ブラジル、アメリカの3ヶ国であり、フェーズ1を終えて日本から最大人数の計6名、続いてブラジルとアメリカが3名ずつという状況になっている。 そして上海大会を終えて波乱の展開を迎えているのは日本人選手の出場権争いだ。なぜなら全員が世界ランキングトップ10に入っているものの、世界ランキング1位を保持していた西矢椛が上海大会で準決勝敗退の9位となったことで世界5位まで、そして元々3位だった織田夢海が全体18位の予選敗退で世界ランキングを7位まで落とした。 一方で、同大会で2位入賞した赤間凛音が世界2位まで、そして3位となった吉沢恋が世界3位までジャンプアップ。同大会で決勝6位となった中山楓奈が世界6位、全体10位で準決勝敗退となった伊藤美優が世界10位というランキングになっている。 ただ現在の得点差としては今回のブダペスト大会で十分に逆転できる状態。上海大会で好成績を残した赤間と吉沢はこのまま優位性をキープしたい中で、悔しい思いをバネに再度トップに躍り出たい西矢や織田、そして代表枠を手中に収めるべく最終戦に向かう中山と伊藤。それぞれ状況は違うがパリオリンピック出場権を獲得するために全力で挑む事は変わらない。果たして誰がパリオリンピックの切符を掴むのか。 そんな日本とは対照的な状況になっているのはブラジル。女子ストリート種目のアイコン的な存在になっているライッサ・レアウは上海大会で優勝を果たすと世界ランキング1位に。さらに現時点で45万点以上保持している彼女は、現在13位のパメラ・ローザ、16位にはガビー・マゼットとトップ20にランクインしている同国の選手たちだけではなく、他国の選手からも代表権を失うほど上回れることはないため、事実上出場確定が決まった。今大会ではローザとマゼットはもちろんのこと、現在35位のケミリー・スイアラと36位のイザベリー・アヴィラの誰が残る最大2枠の出場権を獲得するのかにも注目だ。 合わせてフェーズ2に入り頭角を表し始めたのはアメリカ。唯一トップ10にランクインしていたペイジ・ハインが決勝進出を逃したことで11位にランクを落とす中、上海大会で4位に入ったポエ・ピンソンが世界ランキングで15人抜きの9位に。今大会ではピンソンが順位をキープし続けることができるのか、そしてハインがどこまで復調してくるか、そして当落線上にいるマライア・デュランが出場枠を確保できるかそれぞれの戦い方に目が離せない。 またアメリカの台頭によりトップ20へ2名を残す形となったのはオーストラリア。しかし日本人選手たちの最大のライバルであるクロエ・コベルが上海大会を8位で終えるも現在世界ランキング4位を保持。フェーズ1では絶好調だった彼女がこのままパリオリンピックを迎えるはずがないためで今大会では優勝争いはもちろんのこと上位へ食い込んでくるはずだ。 そしてやはり勝ち上がってきたのは、中国のチェンシー・チー。母国開催のホームの熱を上手く力に変えた上海大会では決勝5位で終えると世界ランキング8位まで順位を伸ばした。勢いそのままにパリオリンピックまで突き進むことはできるのか。 男子ストリート ジャガー・イートン Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 一方で男子カテゴリーは上海大会にて優勝候補とされる選手たちが望まぬ結果に終わったことから順位が大きくシャッフルされた中、依然世界ランキングトップ20にはアメリカから4名と日本から6名の2カ国が半分を占めている状況は変わらない。しかし一方で国内での代表枠争いは熾烈を極めることとなった。 今大会で壮絶な代表枠争いとなることが不可避なのは日本だ。東京五輪金メダリストの堀米雄斗が上海大会で予選敗退し世界ランキングを11位まで落としたことを皮切りに、現世界チャンピオンの白井空良も準決勝敗退で1位から6位までランクを落とす。彼らとは裏腹に同大会で2位となった弱冠14歳の小野寺吟雲が世界ランキング1位に、同じく4位となった佐々木音憧が7位まで浮上した。一方で決勝8位といまいち結果に繋げることができなかった根附海龍が5位に停滞。全体14位で準決勝敗退となった青木勇貴斗が15位という順だ。 今大会でパリオリンピック代表選手が決まることから、順調に結果を残している小野寺はこのまま勢いのまま好成績を残す必要がある中、それ以外の選手に関しては、本調子でまとめきれていない堀米と青木の4名がここでしっかり好成績でまとめて世界ランキング上位に返り咲き代表枠を獲得することが必須となる中、現在暫定的に代表枠を保持している白井と根附も佐々木に追随され油断を許さない状態。最後にしっかり最高のパフォーマンスを残して代表枠を獲得する3名は誰だ。 その一方で、上海大会を経て代表枠争いが大きく動き出したのはアメリカ。絶対王者のナイジャ・ヒューストンが決勝5位で世界ランキング3位に落とした中、彼を上回って2位までジャンプアップしたのはジャガー・イートン。同大会では多くの選手が独特なプレッシャーから大苦戦を強いられた中、見事なパフォーマンスを見せて優勝。世界ランキングにて10人抜きを果たして2位に躍り出た。その2人を追うのが同大会で見事なベストトリックをメイクして3位入賞を果たしたクリス・ジョスリン。彼もランキングで10人抜きを果たして8位まで順位を上げた。そこに続くのが13位のブライデン・ホーバン、21位のアレックス・ミドラーとなっている。 上海大会の結果の良し悪しで極端に世界ランキングへ影響があった中、イートンとヒューストンが30万ポイント超えとオリンピック出場権に大手をかけている状況で残りの1枠を懸けてジョスリン、ホーバン、ミドラーの3名がどんな争いを繰り広げていくのかが注目だ。もちろんノリに乗っているジョスリンが最有力ではあるが、ホーバンとミドラーもひっくり返す実力は十分にある。一発逆転なるか。 また当落線上にいるため出場枠争いで厳しい戦いを強いられているのはカナダとブラジル。カナダは現在ライアン・ディセンゾ、コルダノ・ラッセル、マット・バージャーが17位から19位に固まっており、予断を許さない状況。一方でストリート最強国の一角であるブラジルもジオバンニ・ヴィアンナが上海大会で7位に入ったことで世界ランキング10位までジャンプアップしたが、ケルビン・ホフラーが16位、フェリペ・グスタボが22位と実力者が出場枠を他国選手と争う形だ。彼らの今大会のパフォーマンスにも目が離せない。 そして今回も注目したいのがフランスのオーレリアン・ジロー。現在フランスは開催国枠として既に1枠を獲得していることから、現ランキング上では彼が該当している。それもあってかまだOQSでは姿を見せていないが、自国開催で一番メダルを期待されている彼がパリオリンピック前の最終戦でどんなパフォーマンスを見せるのかに期待したい。 大会スケジュール(日本時間で記載) スケートボード・ストリート種目 -6月20日(木) 23:20~ スケートボード男子ストリート 予選-6月21日(金)23:20~ スケートボード女子ストリート 予選-6月22日(土) 18:15~ スケートボード男子ストリート 準決勝24:05~ スケートボード女子ストリート 準決勝-6月23日(日) 19:00~ スケートボード男子ストリート 決勝24:00~ スケートボード女子ストリート 決勝 最後に これまで約2年間続いてきたパリオリンピック予選大会もいよいよ今大会で終わり全てが決まる。各国の出場権争いも熾烈だが、やはり気になるのは日本人選手同士の戦いだろう。現在男子カテゴリーでいうと東京オリンピック金メダリストの堀米雄斗が出場枠圏外、現世界チャンピオンの白井空良が当落線上ギリギリという非常に厳しい戦いになっている。また女子カテゴリーにおいても男子と同様に東京オリンピック金メダリストの西矢椛がギリギリの3番手、そして現世界チャンピオンの織田夢海が出場枠圏外に。パリオリンピックの出場を決める戦いはもう一番狂わせがあり最後の最後まで目が離せない戦いになることだろう。 なおオリンピック予選シリーズ (OQS) ブダペスト大会の戦いの模様はOlympics.comのオリンピックチャンネルで配信予定。また最新情報も同ウェブサイトからチェックできる。またパリオリンピック公式アプリをダウンロードすると随時最新情報を気軽にアクセス可能になるため是非ダウンロードして欲しい。
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climb最後の出場枠を懸けた争い。「オリンピック予選シリーズ ブダペスト大会」スポーツクライミング2024.06.147月26日から8月11日にかけて開催されるパリオリンピック2024で、金メダルを含む複数メダルの獲得を目標に掲げているスポーツクライミング日本代表チーム。 今回160人以上のクライマーが、「オリンピック予選シリーズ(OQS)」でパリオリンピック出場に向け競い合っており、国際スポーツクライミング連盟(IFSC)によると、ボルダー&リードの複合種目で男女各10名、スピード種目で男女各5名が出場枠を獲得できる。 現時点ではボルダー&リード種目では日本人から3名、女子の森秋彩と男子の楢崎智亜、安楽宙斗が内定。すでに女子1枠、男子2枠が埋まっているため、残り女子最大1枠の獲得を目指し争われる。一方、スピード種目では日本人の出場枠が決まっていないため、男女ともに最大2枠を懸けて戦いに挑む。 残された出場枠獲得を目指し、先日行われた上海大会(5月16日~19日)およびブダペスト大会(6月20日~23日)のそれぞれの成績に応じたポイントで競い、パリ五輪出場を懸けて争われる。 ボルダー&リード種目 注目選手 女子ボルダー&リード種目では、東京2020銀メダルを獲得しスポーツクライミングを日本に広めた立役者である野中生萌と、念願のオリンピック出場へ向け意欲を見せる伊藤ふたばが残り1枠となったオリンピック出場枠を巡る戦いの中にある。 OQS上海大会終了時点で野中生萌が38ポイントを獲得し総合4位、伊藤ふたばが36ポイントを獲得し総合5位となっており、ブダペスト大会でその差は簡単にひっくり返る可能性がある。 野中生萌 野中生萌選手:Photo:OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC OQS上海大会の終了時点で総合4位となり、OQSにおいて世界から注目を集める野中生萌は、東京オリンピック2020で新競技となったスポーツクライミングの女子複合決勝で総合2位となり、銀メダルを獲得した。前回大会のメダリストとして今大会でもメダル獲得を目指す。 2023年、ワールドカップで5年ぶりの優勝を含む2つのメダル獲得。課題として取り組んでいたリードでは世界選手権で決勝進出も果たし、複合種目で挑むパリへ向けて仕上げてきた。東京大会の後は2種目に集中し、トライ&エラーを繰り返しながら持久力を中心にを鍛えてきた。 伊藤ふたば 伊藤ふたば選手 photo:haru_graphics OQS上海大会終了時点で総合5位となった伊藤ふたばも念願のオリンピック出場へ向け、野中生萌との1枠を懸けた争いに向け意欲を見せる。14歳の時に史上最年少でボルダリングジャパンカップを制した後、ユースでは全日本、アジア、世界タイトルを獲得してきた伊藤は、2019年12月の東京2020コンバインド(複合)予選会で優勝しながらも、母国開催のオリンピック出場を逃す。今回のOQSではリベンジを果たす思いで挑む。 スピード種目 注目選手 一方で残り5枠、各国最大男女2枠ずつという狭き門をくぐり抜けなければならないスピード種目では、日本勢は男女ともに苦戦を強いられている。日本人の最高位は上海大会男子スピード種目で27ポイントを獲得し14位となった大政涼だ。苦境に立つ大政は、ブダペストでの表彰台を目指すことでオリンピック出場への光が見えるかもしれない。 大政涼 大政涼選手 Photo:OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 男子スピード種目で、5秒の壁を打ち破りパリの切符獲得を目指す、21歳の現日本記録保持者の大政涼。OQS上海大会では14位と苦境に立つが、スピード種目で日本人最有力オリンピック出場候補として、ブタペスト大会での追い上げを目指す。 大会スケジュール(日本時間で記載) 6月20日(木)19:00 スポーツクライミング男子・女子ボルダー&リード 予選・ボルダー6月21日(金)17:00 スポーツクライミング男子・女子ボルダー&リード 予選・リード24:00 スポーツクライミング女子スピード 予選24:50 スポーツクライミング男子スピード 予選6月22日(土)17:00 スポーツクライミング男子・女子ボルダー&リード 準決勝・ボルダー21:00 スポーツクライミング男子・女子ボルダー&リード準決勝・リード翌1:15 スポーツクライミング女子スピード 1回戦〜決勝翌1:30 スポーツクライミング男子スピード 1回戦〜決勝6月23日(日)17:00 スポーツクライミング女子ボルダー&リード 決勝・ボルダー19:05 スポーツクライミング女子ボルダー&リード 決勝・リード22:30 スポーツクライミング男子ボルダー&リード 決勝・ボルダー24:35 スポーツクライミング男子ボルダー&リード 決勝・リード 大会の模様はオリンピックチャンネルで視聴可能 オリンピック予選シリーズ (OQS) ブダペスト大会の戦いの模様はOlympics.comのオリンピックチャンネルで配信が予定されている。また最新情報も同ウェブサイトからチェック可能。なおパリオリンピック公式アプリをダウンロードすると随時最新情報を気軽にチェックできるためオススメだ。 オリンピック予選シリーズ女子ボルダー&リード種目において、最後の1枠を懸け、白熱した出場枠争いを見せる野中生萌と伊藤ふたば。苦戦を強いられているも、男子スピード日本人最高位で逆転劇を試みる大政涼。パリオリンピック出場を決める、運命のOQSブタペスト大会にぜひご注目いただきたい。
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skate本当の意味で最後のオリンピック予選大会「オリンピック予選シリーズ ブダペスト大会」スケートボード・パーク種目の見どころ2024.06.13パリオリンピック出場権を決定づける、本当の意味で最後となる「オリンピック予選シリーズ(以下:OQS)」の二戦目であるブダペスト大会が、ハンガリー・ブダペストにて2024年6月20日(木)~6月23日(日)の4日間にわたり開催される。 先月、フェーズ2の1戦目として中国の上海で開催されたOQS上海大会を終えて、いよいよオリンピック予選も大詰めとなる中、今回のブダペスト大会の結果が最終的にフェーズ1のポイントと上海大会を加算されてついにパリオリンピック代表選手が決まる。 またフェーズ2に該当する今大会は前回の上海大会同様に、フェーズ1終了時の世界ランキングポイントに基づいて選出された男女各44名の選手に出場可能となる。なお本シリーズは2戦でオリンピック予選大会の全体のポイント配当の7割近くを占める中、既に上海大会では各選手がそのプレッシャーから苦戦する様子も見られ波乱の展開となった。 そして前回大会の結果によりランキングも大きく入れ替わり、非常に興味深いオリンピック出場権争いが繰り広げられている。一方で今大会の結果次第に現在出場権圏外の選手たちも大いに逆転できるチャンスが残されている。 本記事では男女の現在の世界ランキング(2024年6月11日現在)を元に、今大会の見どころを解説する。 女子パーク Photo: OIS/Kieran Cleeves. Handout image supplied by OIS/IOC 改めて説明するが、パリオリンピックには男女共に世界ランキング上位20位、各国からは上位3名までが最大で出場権を獲得できる。そのため20位以内に同国から3名以上いる場合は、繰り下げで20名になるように出場権が割り与えられる。 現在の勢力図はフェーズ1と前回の上海大会を終えた時点で、トップ20位以内に3名以上がランクインしている国は変わらず日本、アメリカ、ブラジルの3カ国。その中で選手が一番多いのはアメリカで合計5名、そこに続きブラジルと日本が4名という状況だ。そのため引き続き今回でも気になるのは、既に3名以上がランクインしている日本、アメリカ、ブラジルの国内での出場枠争いだろう。 まず日本人選手の争いだが、上海大会で2位入賞を果たした開心那が世界ランキング1位を保持して2位と8万ポイント近い差を付けている中、怪我から復調した様子を同大会にて3位入賞で示した東京五輪金メダリストの四十住さくらが世界ランキング3位へジャンプアップ。続いて4位には同大会で決勝進出を逃して9位となった草木ひなのがランクイン、そして同大会で見事なパフォーマンスで5位となり世界ランキングを17位から9位まで順位を引き上げたのが長谷川瑞穂。トップ3に迫る彼女に今大会も注目だ。 そして下馬評としては現在トップ10にランクインしている彼女たちの中で出場権が争われている可能性が高いという声もあるが、このOQSは1試合で最大21万ポイントが獲得できる前代未聞の高得点配当の予選大会。アジア選手権で健闘した世界ランキング22位の菅原芽依、世界ランキング25位で日本人スケーターの先駆者でもあるベテランの中村貴咲が大逆転を目指して大健闘する姿にも期待したい。 上海大会の結果によりさらに熾烈な代表枠争いになっているのがアメリカ。現在トップ20には5名の選手がランクインをしている。同大会で決勝進出を逃したミナ・ステスを世界ランキング6位から12位へ順位を落とす一方で、同大会を7位で終えたブライス・ウェットスタインが5位にジャンプアップ。続いて14位にはルビー・リリー、15位にグレイス・マーホーファー、17位にジョーディン・バラットとなり、惜しくも20位以下にランクダウンしたリリアン・エリックソンが24位にいる状況だ。 現在国内別トップのウェットスタインは12位のステスに対して3万8000ポイント近くの差をつけているが、今大会への影響はあまり無いと思われる。それよりも14位のリリー、15位のマーホーファー、17位のバラットの3名による出場枠争いの方が注目だろう。ただ現在の得点差では今回の結果次第で順位がガラッと入れ替わる事は十分考えられる。ついに今大会で決まるパリオリンピック代表枠は果たして誰が獲得するのだろうか。 そしてアメリカ以上に代表枠争いが拮抗しているのがブラジル。ライカ・ベンチュラが上海大会で決勝進出を逃したことで世界ランキング7位に停滞する中、彼女に続くイサドラ・パチェコが同大会4位で世界ランキング8位、そしてドーラ・ヴァレーラが同大会6位で世界ランキング10位と大きくジャンプアップした。そして少し遅れをとっているインディアラ・アスプが18位にいる状態であるが、大逆転が起きうるのが本シリーズ。果たしてこのトップ3をアスプが引きずり下ろすことができるのか? さらに今大会で個人的に注目したいのは現在世界ランキング11位のスカイ・ブラウン(イギリス)、13位のナイア・ラソ(スペイン)、そして2位のアリサ・テルー(オーストラリア)の3名。 出場大会では確実に優勝を勝ち取るブラウンは、膝関節の内側側副靭帯の損傷という怪我の影響もあり、今年はまだスケートボードの国際大会に姿を見せていない。しかしパリオリンピックへの出場を確かなものにするには今回出場し結果を残す必要があると思われるがどんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。 さらにもう一人忘れてはいけないのはスペインのラソ。フェーズ2を迎えた時点で世界ランキング4位だった彼女は惜しくも上海大会の直前練習中に転倒し、鎖骨を骨折したことから大会へ出場はしたものの予選1本目でプールセクション外を軽く流すだけで終える形となってしまった。どこまで回復しているかにまだ不安が残るが今大会での結果が必要なのはブラウンと同様だ。 そして一方で前回の上海大会で素晴らしい成績を残したのはテルー。各選手がフェーズ2独特のプレッシャーから苦戦を強いられる中、自分のパフォーマンスを出し切って優勝できる彼女の強さを感じた。その一方で、今大会では前回決められなかった「スイッチ540」に再度トライしてくることだろう。パリオリンピックに向けて絶好調で調整している彼女にも注目だ。 男子パーク Photo: OIS/Bob Martin. Handout image supplied by OIS/IOC OQS上海大会を終えた時点で、やはり超高得点配当であることからトップ10の間だけでも順位にかなり変更があった男子カテゴリー。ただまだまだ今大会においても選手たちは安心できず、それどころか今まで以上にポイント間は近く拮抗した状態であり、一切油断できない戦いになると想定される。特にそれは10位以下も同様で各選手の間もわずか数千ポイントだったりとまだまだオリンピック出場権争いには波乱がありそうだ。 まず世界ランキングから国別で注目が集まっているのは、トップ20までに5名がランクインしており、トップ3の座を抑えているアメリカ。世界最高峰の才能が群雄割拠するこの国の中から、上海大会を終えて大きくランクをジャンプアップさせたのはテイト・カリュー。同大会で見事優勝を収めて世界ランキング4位から1位へと躍り出た。 続いて世界ランキング2位はジャガー・イートン。この上海大会での3位入賞がその座をキープする決め手となった。なおイートンは同大会にてストリート種目の方で優勝を果たし世界ランキング2位となるなど、パリオリンピックにて二刀流を実現させる可能性が濃厚となっている。そして現世界チャンピオンのギャビン・ボドガーが同大会で6位で終えて世界ランキング3位になっており、現時点ではこの3名がパリオリンピックへの出場権を持っている状態だ。 そんな彼らを追う形になっているのが9位のトム・シャーと18位のリアム・ペイス。このトップ3の牙城を崩すために今大会での高得点獲得が必須となる。しかし現時点でトップのカリューを9位のシャーが越えるには優勝以外の結果では不可能であるため、カリューがおそらくほぼオリンピック出場権を獲得したと言っても過言ではないだろう。またペイスも上海大会では怪我の影響から思うようなパフォーマンスができなかったのため今回どこまで戻してきているかも注目だ。最終戦となる今大会はどんな展開になるだろうか? そのアメリカと同様に厳しい戦いを強いられると想定されているのはブラジルだ。上海大会では国別ランキングトップ3が決勝進出を果たしたもののベストパフォーマンスを残せなかったことから、現在は5位のアウグスト・アキオをはじめ、6位にペドロ・バロス、そして8位にルイジ・チニという順となっている。その後に続くのは15位のペドロ・キンタス、19位のペドロ・カバーリョ、24位のムリーロ・ペレスだ。なお15位のキンタスと8位のチニとは7万8千ポイント以上の差がある。上海大会では出し切れなかったブラジルのトップ3が今大会で雪辱を果たし良い成績を残して逃げ切れるか、それともキンタスや後続の選手たちが大逆転してオリンピック出場権を獲得するのか目が離せない。 そしてフェーズ2に入り堅実な強さを見せているのがオーストラリアだ。上海大会で準優勝した東京五輪金メダリストでキーガン・パーマーが世界ランキング4位、同大会で4位となったキーラン・ウーリーが7位、キーファー・ウィルソンが11位と確実にランクアップしている。彼らの存在は間違いなくアメリカやブラジルをはじめとする様々な選手の代表枠争いに大きな影響を与えることだろう。 またアメリカ、ブラジル、オーストラリアが9割を占める世界ランキングトップ10の中に唯一他国の選手として残っているのは「WST Dubai」の王者であるスペインのダニー・レオン。今回は惜しくも14位で決勝進出とはならなかったが今大会のパフォーマンスによってはパリオリンピック本戦でのメダル争いにも十分狙える選手だ。 そしてそんな世界の強豪勢を相手に出場権獲得を狙う唯一の日本代表選手が、現在世界ランキング14位の永原悠路。上海大会では惜しくも15位で準決勝敗退となったが、現時点のランキングではパリオリンピック出場権圏内。今大会では良い成績を残して弾みをつけ、唯一の日本人男子選手としてパリオリンピックでの活躍に期待したい。 大会スケジュール(日本時間で記載) スケートボード・パーク種目 -6月20日(木) 18:40~ スケートボード女子パーク 予選-6月21日(金) 18:40~ スケートボード男子パーク 予選-6月22日(土) 16:30~ スケートボード女子パーク 準決勝22:30~ スケートボード男子パーク 準決勝 -6月23日(日) 17:30~ スケートボード女子パーク 決勝22:00~ スケートボード男子パーク 決勝 最後に 今大会はパリオリンピック予選大会で最もポイント配分の多いOQSの2戦目であり、本当の意味でのオリンピック予選大会最終戦。今回でパリオリンピック出場が完全に決することから、今まで一番緊張感のある大会になることだろう。各選手はここでしっかり強さを見せて出場権を獲得し、パリオリンピックへ駒を進めたいところだ。是非パリオリンピック代表選手が決まる瞬間をリアルタイムで目撃しよう。 なおオリンピック予選シリーズ (OQS) ブダペスト大会の戦いの模様はOlympics.comのオリンピックチャンネルで配信され、また最新情報も同ウェブサイトからチェックできる。またパリオリンピック公式アプリをダウンロードすると随時最新情報を気軽にチェックできるので是非。
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surf「自分の120%を発揮しないと勝ち残れない戦い」浜瀬海が挑むのは世界最高峰の舞台WLT。2024.06.06東京オリンピックでショートボード競技が正式種目として採用され日本人選手たちの活躍が顕著だった「サーフィン」。今夏に開催されるパリオリンピックでも採用されており、サーフィンに対して世の中の機運が高まっている一方で、次回2028年ロスオリンピックでの採用が現実的になり、注目が集まっているのが「サーフィン・ロングボード競技」だ。そんな現在競技人口も競技レベルも世界的に向上しているロングボード競技にて、今シーズンに世界最高峰の舞台とされるWLT(ワールドロングボードツアー)へ挑戦するプロサーファーがいる。 それが現在2年連続でJPSAグランドチャンピオンとなっており国内外で好成績を残している浜瀬海(はませ・かい) 選手だ。日本が世界に誇るトップロングボーダーの一人である彼は、昨シーズンではアジアリージョンにて3番手となり、惜しくもあと一歩のところでWLTへの出場資格を逃した。その悔しさから今シーズンはWLTに向けて照準の合わせ、数々のアジアリージョンのQS大会にて表彰台を獲得。見事WLTの出場資格を手に入れたのだ。 今回は、世界最高峰の舞台に満を持して挑戦する浜瀬選手にインタビュー。悔しい経験を乗り越えて挑む今シーズンのWLTにかける思いや彼の強さの秘訣、そしていつも彼の背中を支えてくれた人たちの存在、さらに今回のWLTでの目標やサーファーとして目指しているところなど、今の彼の内に込められた率直な思いを聞いた。 ※浜瀬海(はませ・かい) 以下: K 昨年経験した悔しい思いの末に、やっと手にしたWLTへの切符 この度はWLTクオリファイおめでとうございます!代表選手に選ばれた時の気持ちを聞かせてください。 K:今回出場した「Baler International Pro LQS」の最中に、WLTへのクオリファイが決まったのですが、正直その瞬間はまだ信じられていなかったです。試合後の最終的なトータルスコアを確認した時に、自分が本当にWLT選手として選ばれたという実感が湧いてめちゃくちゃ嬉しくなりました。また元々、WLT自体には過去に何度か出場していたのですが、コロナ禍に入った頃にアジアリージョンのQSが新設されてからは、そのQS内の大会でポイントを稼がないと出場できない形になりました。それからはWLTに出られておらず去年は3番手であと一歩のところで出場資格を逃し、とても悔しい思いをしたので今年は絶対クオリファイするという強い思いで挑んできました。 WLTクオリファイを決めたBaler International Pro LQSを振り返るとどんな大会でしたか? K:自分のライバルであるフィリピンで1番のJR(ロジェリオ・エスキベル)という選手と、もう1人の日本人選手の井上鷹は、昨年WLTに出てトップ10以内に残ったこともあり既にクオリファイしていたので、彼らがアジアリージョンツアーにいない中でポイントを稼ぐという点では比較的有利だったので自信はありました。実際この大会はめちゃくちゃ調子が良かったです。ただJRも出ていて決勝でも戦いましたが、彼のライディングを見ると自分はまだまだだなと感じた部分もありました。彼は現在のWLTのトップ8で大きい波から小さい波まで上手く乗りこなす選手なんですが、WLTでは彼のような選手たちと対峙することになるので、そういう意味でも自分を見つめ直す良い機会にもなりました。 ご自身の今シーズンのパフォーマンスはいかがでしょうか? K:クオリファイを決めたこの大会から帰ってきてから、ボードやギアもしっかり調整できていますし、トレーニングもしっかりできていてフィジカルも完璧な状態で、サーフィン自体も調子が良いのでこのまま怪我なく調整していければ勝てる自信はあります。 限られた環境だからこそ、自分に必要なことへ全力で取り組んできた努力の結晶が生んだ彼の強さ 他の選手と比べて自分の強みだと思う点を聞かせてください。 K:一番は体幹の強さだと思います。海外の選手はみんなもちろん強いのですが、僕も日頃トレーニングの中で特に注力して鍛えているので自信はあります。あとは普段スクールを開いていたり、活動拠点の湘南自体があまり波がないということもあって、自分のサーフィンを自由にできる時間が十分に持てない中で、試合の時が心置きなくフリーでサーフィンできる時間だったりもするのですが、そういう限られた時間の中で自分のサーフィンをしっかり発揮できる爆発力も強みだと思っています。それが実現できている要素としては自分が実際にサーフィンしている時も、それ以外も常にイメージトレーニングをしていることだと思っていて、自分のパフォーマンスに大きく活かされていると感じています。 ロングボードだけではなくショートボードも乗りこなす二刀流はどう競技に活かされてますか? K:ショートボードに乗っているとロングボードでは見られない波の使い方もあれば、見たり選んだりする波も違いますし、ターン一つにしても動き方が違うのでロングボードに活かせる部分は多いです。普段から色んなサイズや形のボードを乗っていることでサーフィンのレベルが上がっている感覚はあります。 ここぞという時に勝ち切れるメンタリティの整え方を教えてください。 K:どんな大会であっても「絶対に勝つ」という気持ちは常に持っていますし、今回の「Baler International Pro LQS」の時には「ここでWLTにクオリファイできなければもう先はない」と自分に言い聞かせていました。いつもそういう形で自分を奮い立たせて自信を付けるように意識しています。あとは大会のレベルに関係なく、とにかく自分の目先の1試合1試合をしっかり勝っていくことは意識していますし、サーフィンをする時はとにかく楽しくやるようにしています。 今まで数々の大会で結果を残してこれたのは何が秘訣でしょうか? K:他の選手も見えない努力をしてきていると思いますし、僕自身も隠しているわけではないのですが、週3回はジムに通ってトレーニングをしていて、サーフィンもその合間で練習しています。このような形で日々の努力の積み重ねから生まれた自信が結果に繋がっている秘訣だと思っています。また僕の場合、サーフィンに関してはやはり時間が取れなかったり、湘南自体潮回りがあまり良くないこともあっていつも好きな時に乗れる環境ではないので、レッスン中や自分が練習できる時間で乗れる1本1本を大切にして集中して乗るように意識しています。環境が整っていないからこそ、その時の自分に何が必要なのかをしっかり明確して一つ一つに注力しながら練習して自信を付けるようにしています。 浜瀬が思う世界最高峰の大会「WLT」が他の大会と一線を画す理由とは WLTとはどのような大会でしょうか? K:ロングボードの世界一大きいコンテストのツアー戦で世界最高峰の大会です。出場資格を得られる選手は22人から23人ほどで、世界中から強豪選手が集まって試合をするのですが世界最高峰ということもありとてもハイレベルなので自分にとっても刺激しかない大会になっています。またこのツアーはシーズンで大体4~5戦あるのですが、今年は4戦で7月~10月の間で毎月1試合ずつくらいある形になります。ただ10月にエルサルバドルで行われる最終戦にはシーズンのトップ8の選手しか出場できないので、まずはそこへ出場するためにしっかりトップ8に残るのが最初の目標です。 国内外で結果を残してきた浜瀬選手にとってWLTはどんな大会でしょうか? K:世界最高峰の大会ということもあって自分の中で一番重きを置いている大会ですし、普段出場するJPSAの大会では日本人選手としかマッチアップしない一方で、WLTでは自分よりはるかに上手い外国人選手たちと戦うことになるので、試合が始まる前から心が折れないように自分を常にそのレベルに持っていくような臨み方が必要となる他の大会とは一線を画している大会です。さらに自分の120%を出さないと勝てない大会で、少しのミスが敗因になってしまうほどレベルの高い大会なのでしっかり準備して挑みたいと思っています。また自分の現在地を把握できたり、毎回成長を感じさせてもらえる大会でもあるので、僕にとってはサーファーとして今後も挑戦し続けていく大会です。 WLTにむけて新たに準備していることはありますか? K:僕の普段の練習環境である湘南の海は波が短い一方で、WLTが開催される海は波が長く海底もリーフなので、そういった大会と同じような環境での練習時間を増やす必要があると思い、先日もインドネシアのバリへ行ってデカい波や海底がリーフになっている長い波で練習しました。実際の大会に近い環境で練習する中でデカい波にも乗れるようにボードも調整したり、今までやって来なかったことも今年は取り組んでいますし、WLTはこれまでの大会とは次元が違って、いつも通りの練習方法やボード設定では敵わないレベルになるので完璧な状態で挑めるように準備しているところです。 応援してくれている人たちと世界へ挑戦したい 家族、コーチ、スポンサー、ファンなど応援してくれる存在について聞かせてください。 K:一番は自分のパワーの源になっていますし、こういった方々の存在のおかげで自分ももっと頑張ろうという思いになれています。また友達やスポンサーのプッシュがなくて、自分一人だったら世界を回ろうとはならなかったと思いますし、今も僕が世界を舞台に挑戦できているのは皆さんのサポートがあってこそなので本当にありがたく思っています。 今回クラウドファンディングに挑戦されるということですが、内容に詳しく聞かせていただけますか? K:WLTの一戦一戦にとてもお金がかかってしまうことから、僕の挑戦をサポートしていただける方に資金面の支援をお願いしたいと思い、今回クラウドファンディングを行います。資金の用途としては自分が完璧な状態で試合に挑めるように前もって現地入りし、大会会場と同じスポットで練習して調整するための遠征費用として活用させていただきます。目標設定金額は300万円で考えていて、リターンとしては普段行っているレッスンや、自分が今年から始めたオリジナルフィンブランドのプロダクト、あとはビラボンと一緒に作るオリジナルTシャツやキャップなどを準備しています。クラウドファンディングの詳細はおってご報告させていただきます! どうして今回クラウドファンディングをしようと思ったのでしょうか?経緯と想いを聞かせてください。 K:正直最初はやろうとは思っていなかったんですが、同じロングボードの選手が去年やっていたり、友人が親身になって考えてくれた上で勧めてくれたりと、応援してくれている人たちが背中を押してくれたのでクラウドファンディングをすることを決めました。もちろん僕の活躍を期待してサポートしてくださる方がこのクラウドファンディングに賛同してくれると思うので、皆さまがサポートしてくれた分しっかりトップ8に残って結果でお返ししたいと思っています。 日本のロングボード界を牽引する彼が目指す今後の目標と夢 今シーズンのWLTシリーズで目指していることは何でしょうか? K:まず今シーズンでしっかりトップ8に残り、翌年のWLT出場資格を確保することが目標ですが、最終的にはワールドチャンピオンも獲りたいと思っています。実際に今まで日本人の最高位はトップ10でWLTの最終戦に出場した日本人選手もまだいないので、最終戦に出場するのも今シーズンの目標です。 サーファーとして今後の目標と夢を聞かせてください。 K:選手としての最終的な目標の一つとしては、もし4年後のロス五輪にロングボードが正式種目に採用された時に日本代表として出場することなのでそこまではまず頑張りたいと思っています。そういう意味でもまだ自分が若いうちにできることは挑戦していきたいと思っていますし、今が自分のサーフィン人生で一番調子が良いと思っているので、まずは今シーズンしっかりWLTでトップ8に残ってロス五輪へ向けて道筋を作っていきたいと思っています。1人のサーファーとしては自分のライディングを見た人たちにかっこいいと思ってもらえて、次世代のキッズサーファーとかロングボーダーが増えていくような流れになったら良いなと思っていますし、またロングボードの若手が競技を続けたくなるような環境作りに貢献して、「あの人の人生かっこいいな!」って思ってもらえる将来にできたら嬉しいです。あとは個人的には趣味でやっているスノーボードだったりサーフィン以外にやりたいこともあるので、今まで選手として活動しているからこそできなかったことにも活動の幅を広げて挑戦していきたいと思っています。もちろんサーファーであることは競技人生後も変わりませんが、そこだけにとどまらずセカンドキャリアとしてやっていきたいことも今の活動を頑張れる原動力になっているので、サーフィンもそれ以外もパッションを持って取り組んでいきたいです。 今回のクラウドファンディングの活動を通して伝えたいことがあれば聞かせてください。 K:僕も含めて日本には世界で活躍できるくらいロングボードで上手い選手もいるのですが、金銭面はもちろんのこと海外に挑戦できる機会がなくて一歩踏み出せていない人がたくさんいます。業界としてそういう選手たちが海外へ挑戦できるきっかけを作る必要があると思いますし、世界に対しても日本にこれだけすごいサーファーたちがいるということを認知してもらいたいという思いもあります。今回の僕のクラウドファンディングを通して一般の方々にもそういった現状を知ってもらえたら良いなと思っています。 いつも応援してくれている方々へ一言お願いします。 K:ようやくWLTという世界最高峰の大会のスタート地点に立つことができたので、トップ8に入ることを目標にして世界を相手に全力で頑張りたいと思っています。これからも引き続き応援のほどどうぞよろしくお願いいたします。 浜瀬海プロフィール 1997年5月28日生まれ。神奈川県平塚市出身のプロサーファー。5歳からサーフィンをはじめ、2009年に出場した「THE SURFSKATERS」で最年少チャンピオンとなる。2012年、14歳にしてショートボードでプロデビュー。国内外のツアー(JPSA / WQS / ISA)に出場を続け、2017年にプロロングボーダーに転向。初年度でJPSAグランドチャンピオン、そしてルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。2022年〜2023年と2年連続でJPSAグランドチャンピオンとなり、迎えた2024年ではLQSで好成績を残しWLTへの出場資格を獲得した。スポンサーはBillabong、Kanaloajapan、rockdance、sidecanyon、YNSF、vonzipper、destination、freestretching、haircalifornia、futures、haircalifornia、greengravityground、Skim One、S.S.T-C 株式会社 【競技実績】2017年「JPSAロングボード部門グランドチャンピオン」 「JPSAロングボード部門ルーキー・オブ・ザ・イヤー」2018年「JPSAロングボード部門グランドチャンピオン」 「WSL Men’s Longboard Tour LT #2 Volte Wetsuits Men’s Pro」5位 「WSL Rincon 50 Surf Fest」3位2019年「2019 ASIAN SURFING CHAMPIONSHIPS」2位 「2019 BIARRITZ FRANCE ISA WORLD LONGBOARD CHAMPIONSHIP」17位2020年「Noosa Festival of Surfing」Mens Open,Mens Logger Proともに3位2022年「JPSAロングボード部門グランドチャンピオン」2023年「JPSAロングボード部門グランドチャンピオン」 「Siheung Korea Open LQS」優勝2024年「La Union International Pro LQS」2位 「Baler International Pro LQS」2位
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surf52歳のレジェンド ケリースレーターの活躍を振り返る2024.06.05皆さん、こんにちは。プロサーファーの水野亜彩子です。今回はサーフィン業界の生きる伝説「ケリー・スレーター」について、お話しをしたいと思います。 コンテストシーンの一時代を築き上げてきたケリー・スレーターが先日西オーストラリア マーガレットリバーで行われたWorld Surf Leauge Champion Tour Western Australia Margaret River Proで*ツアーミッドシーズンインカットのランキング22位を下回ったことによりChampion Tourから脱落することが確定しました。 数々の偉業を残し、ギネスブックにも名を残しているケリー・スレーター。今回はケリー・スレーターが残してきた軌跡をいきたいと思います。 *World Surf Leauge Champion Tour 全10戦の内、前半5戦終了時点のランキングでメンズは36名から22名、ウィメンズは18名から10名にカットされるシステムのこと。 波の無い地域で生まれ育った ケリー・スレーターは、1972年にアメリカ合衆国フロリダ州ココアビーチで3人兄弟の次男として産まれました。ココアビーチは比較的穏やかな波のことが多い地域。 サーフィンといえば西海岸のイメージがある方も多いと思いますが、フロリダでもWorld Surf Leauge Qualify Seriesが行われたこともあります。とは言ったものの、やはり西海岸の方がサーファーの人口も多く試合数も多くなります。なので東海岸で育ったサーファーが注目してもらう為には、まずは試合で成績を残す、ということが必要な要素になることも。 ケリー・スレーターの他にも2023年World Surf Leaugeワールドチャンピオンを獲得したキャロライン・マークスもフロリダ州出身の選手で、若い頃からコンペティターとして試合を転戦し注目されていました。そういった意味でもフロリダ州出身で活躍している選手は強いハングリー精神をもっているのかもしれません。 10代からコンテストの道へ WSL/Aaron Hughes 10代ですでに無敵のアマチュア選手として注目を集めており、4年連続で全米チャンピオンのタイトルを獲得。18歳でクイックシルバーと契約を交わします。 その後、19歳でChampion Tourにクウォリファイし、翌年20歳という若さ(最年少)で、世界チャンピオンを獲得します。この記録は歴代最年少記録となり、現在も塗り替えられています。まだ塗り替えられていません。(のちに、ブラジル出身のガブリエル・メディーナ選手も同じ20歳で世界チャンピオンに輝いています。) また、映画「モーメンタム」や「ブラックアンドホワイト」に出演するなど、サーフィン以外の場でも活躍し、世界中の憧れの存在となりました。 偉業の数々 WSL/Aaron Hughes 史上最年少の20歳で世界チャンピオンを獲得してからもケリー・スレーターの活躍は止まることを知りません。1993年から5年連続世界チャンピオンを獲得。合計11回の世界チャンピオンに輝き、56回のChampion Tour優勝という素晴らしい功績がギネスブックの世界記録に登録されています。 56回のChampion Tour優勝は11カ国6大陸で獲得しており、最も多く優勝をおさめた国はオーストラリアで、そのうちゴールドコーストが13回、ベルズが4回で共に最多優勝記録となっています。 そしてケリー・スレーターがGreatest Of All Time通称、G.O.A.Tと言われる理由はまだあります。それは20歳で最年少世界チャンピオンの功績を保持すると同時に39歳で世界チャンピオンとなり、最年長の世界チャンピオン記録も獲得しているのです。 同じ選手が同時にこの2つの記録を持つことは他のスポーツをみても珍しいことだと思います。 ケリー・スレーターがどれだけトップに君臨しているのかお分かりいただけたかと思います。しかし、彼にはまだ素晴らしい活躍があるのです。 50歳でパイプラインマスターズ優勝 WSL/Aaron Hughes オアフ島、ノースショアのパイプラインというサーフポイントを舞台にした長い歴史を持つパイプラインマスターズ。ケリー・スレーターが最初に優勝したのが1992年。その後、8度も優勝しパイプラインマスターズでの最多優勝記録を保持していますが、この8度目の優勝はなんと2022年。 最初に優勝してから30年の月日が流れているなか、50歳を目前にしたところで優勝。私もライブ配信でこの試合を観ていましたが、ケリー・スレーターが涙するシーンに本当に感動し、この日のSNSはお祭り騒ぎだったのを覚えています。 サーフィンというスポーツは現役選手の入れ替わりが早く、トップに君臨し続けることが困難です。また、採点競技なのでその時の流行りのサーフィンや、得点に繋がるサーフィンは年々異なります。 その中で勝ち続けるには、自身のトレーニングはもちろん、サーフボードなどの調整も必要になります。様々な要素を常に完璧な状態で結果を出し、トップに君臨し続けることは並大抵のことではありません。 最後に WSL/Aaron Hughes 現在ケリー・スレーターはコンペティター以外に、サーフブランドやアパレルブランドを手がけたり、World Surf League Champion Tourも行われた世界最高のウェーブプール「サーフランチ」の開発を手がけたりとビジネス面でも様々なことを行っております。 コンペティターとしてのケリー・スレーターが見れなくなるのでは!?と不安になる方もご安心ください。2024年5月31日までパリオリンピック会場となるフランス領ポリネシア タヒチで行われているWorld Surf League Champion Tour SHISEIDO Tahiti Proにも出場しており、素晴らしいライディングで勝ち上がっています。 そして2024年8月20日から8月29日までフィジー共和国で行われるWorld Surf League Champion Tour Corona Fiji Proもワイルドカードで出場予定なので、52歳現役で挑戦し続けるケリー・スレーターの素晴らしいライディングをお見逃しなく! 水野 亜彩子/ Asako Mizuno 幼少期からサーフィンを初め、当時女子最年少15歳でプロサーファーへ。国内外のツアーに参戦。日本代表として世界大会には4度出場。高校生の時にJPSA初優勝。21歳でJPSAツアーランキング2位に輝いた。現在はサーフィンの大会の解説者、選手時代にコンディショニングとして行っていたピラティスのインストラクターの資格を取得してもインストラクターとしても活動。サーフィンの魅力を発信し続けている。