自国オーストラリアでは負けなしか。昨年より2連覇を達成したのはクロエ・コベル「SLS Sydney 2024」 女子決勝

2024.10.21
©︎SLS
記事提供:CURRENT

2024年シーズンの「Street League Skateboarding」プロツアー第3戦目となったのが、オーストラリア・シドニーで開催された「SLS Sydney 2024」

女子カテゴリーでは優勝候補だったパリオリンピック金メダリストの吉沢恋と昨年度の世界チャンピオンの織田夢海がノックアウトラウンドで敗退するほどレベルの高い戦いが繰り広げられる中、決勝へはライッサ・レアウ(ブラジル)、クロエ・コベル(オーストラリア)に加えて西矢椛中山楓奈赤間凛音上村葵が進出し、決勝常連勢による顔ぶれの中で優勝の座を争われた。

ライン セクション】

ライン1本目

まずこの1本目はどのライダーもうまくまとめて決勝での流れを掴みたいと考える中で、まずその流れをしっかり掴んだのは日本の赤間凛音
先にライディングした上村中山が惜しくもミスを重ねる中、赤間はいつも通り冷静に自分のペースを乱さずにキンクしたハバセクションでの「バックサイド50-50グラインド」でランを始めると、バンプ to バンプでの「フロントサイドビックスピン」や「フロントサイドフィーブルグラインド」などを綺麗にメイクしてトリックを繋いでいきパーフェクトランを披露し7.3ptの好発進を見せ、後続のライダーにプレッシャーをかける。


赤間に続いた西矢も「フロントサイドビックスピンボードスライド」や「バックサイドクルックドグラインド」を中心に構成したランでフルメイクすると6.8ptをマークし安定的なスコアを残して次に繋げた。

そして今回の優勝候補であり昨年のシドニー大会覇者であるオーストラリアのクロエ・コベルは1本目から強さを見せるランを見せる。バンプ to バンプでの「スイッチキックフリップ」を軽々決めると、その後も複数のセクションで「キックフリップ」をメイクするなど難易度の高いトリックを繋いでいき、ラストトリックは「フロントサイド50−50グラインド to キックフリップアウト」を決めるなど時間をしっかりギリギリまで使うランで7.8ptと暫定首位につけた。

ライン2本目

2本目で1本目のミスをしっかりカバーし、途中でミスがありながらも大幅にスコアを伸ばしたのが昨年のSLSチャンピオンのライッサ・レアウ。レッジで「バックサイドテールスライド to ショービットアウト」決めると、ロングレールで「バックサイドスミスグラインド」、「キックフリップバックサイドリップスライド」をメイク。途中でトリックのミスがあったものの、それを上回る高難度トリックにより7.1ptとスコアを引き上げ暫定3位でシングルトリックセクションへ。

「シングルトリック セクション」

1トライ目

中山と上村がミスする中で滑走した西矢椛が、キンクババセクションで安定感のある「バックサイドクルックドグラインド」をメイクして6.5ptをスコアすると、続くレアウがキンクロングレールで「バックサイドスミスグラインド」を全流しして完璧に決めて8.2ptとハイスコアをマーク。

その後赤間がミスする中で、トライしたコベルはレアウと対照的にキンクハバセクションで「バックサイドスミスグラインド」を決めたがここでは7.2ptとスコア伸びなかったものの、しっかり1本目で決めてその後のシングルトリックセクションの残り4本に向けて弾みを付けた。

2トライ目

中山楓奈のライディング ©︎SLS

1トライ目でスコアをマークできなかったライダーにとってはこの2トライ目がしっかり決めておきたい。なぜならここで失敗してしまうと、優勝争いに食い込むにはその後の3本を確実にメイクする必要があるからだ。そんなプレッシャーの中で見事ハイスコアを残したのは2大会連続でオリンピック出場を果たしている中山楓奈。中山はキンクハバで彼女の代名詞トリックでもある「フロントサイドクルックドグラインド」を決めた。

今回のシドニー大会のステアに用意されたこのハバセクションはは従来のものとは違い、終盤で角度が平坦になるキンクがあるため最後までグラインドトリックをかけるのは難易度が高いため、そこしっかり掛けきった中山のトリックは8.2ptというハイスコアの評価を得た。

その後1本目でミスのあった赤間もこの同じキンクハバセクションで「フロントサイド180スイッチ50-50グラインド」をしっかり決めて7.5ptをマーク。そしてそんな赤間に続いてトライしたコベルがレールでの「フロントサイドノーズグラインド to ノーリーフリップアウト」を決め切ると8.5ptをマークし今回のシングルトリックセクション最高得点をマークした。

3トライ目

赤間のライディング ©︎SLS

戦いも徐々に佳境に近づいてくる中、ここのトライで8点超え台の高難度トリックを決めたのは日本の赤間とブラジルのレアウ。ますレアウがキンクハバでの「キックフリップバックサイド50-50グラインド」を綺麗にメイク。高さのあるハバへキックフリップで入って決めて見せたこのトリックにスコアは8.5ptをマークした。

そして同じくキンクハバセクションで見事なトリックをメイクしてハイスコアを残したのは赤間。彼女が選択したのは「フロントサイド180フェイキーノーズグラインド」で赤間の持ち味でもある180で半回転してからのグラインドトリックに高評価がつけられ8.6ptをマークした。

4トライ目

4本のスコアが採用されるレギュレーションであるため、ここまで2つ以上マークしていないライダーには後がないこのトライ。この時点でシングルトリックでは1つもスコアをマークできていない上村は2本まとめても表彰台争いには食い込めないため苦しい戦いとなった彼女。1本目からトライしているダウンレールでの「フロントサイドブランドスライド to ショービットアウト」を決めきれずラストトライへ向かうこととなったが優勝戦線から離脱。

各ライダーがスコアメイクに苦戦する中で決めてきたのは赤間コベル赤間が「バックサイドスミスグラインド」をレールで決めて5.3ptをマークすると、コベルはレッジで「バックサイドクルックドグラインド to ノーリーフリップアウト」を決めて7.8ptをマークし自身のトップの座を盤石に固めていく。

この時点で暫定トップはコベル、2位に赤間、3位に西矢という順に。ただまだレアウ中山にもスコア次第では表彰台に手が届くことから最後の1本まで分からない熾烈な戦いとなった。

5トライ目

そして迎えた最終トライ。各ライダーがトリックを決められないでいる中で、唯一ここで恐らく大会初となる大技を決めて見せたのが中山楓奈だ。なんとかここでのトリックを決めきって表彰台に手をかけたい彼女はレッジで「ヒールフリップフロントサイドクルックドグラインド」を一発でメイクして見せた。これのは中山自身も大きくガッズポーズを見せるなど普段冷静な彼女が感情的になるほど、ここで決めたいトリックだったことが見受けられた。

もちろんこのトリックは会場中が大盛り上がりで実況も「これはNBD(誰もメイクしたことのないトリック)か?!」と唸るほどで、スコアとしても8.7ptがマークされ女子決勝の最高スコアが付けられた。この結果から暫定3位まで順位をあげた。この後の滑走となった西矢レアウがスコアをマークできなかったことから彼女の3位が決定した。

そしてその後の赤間もトリックを失敗したことから、コベルの優勝と赤間2位が確定。コベルは昨年に引き続き強さを見せて自国オーストラリアで優勝トロフィーを獲得し2連覇を達成した!

最終結果

©︎SLS

優勝 : クロエ・コベル(オーストラリア)31.8pt
2位 : 赤間 凛音(日本)29.1pt
3位 : 中山 楓奈(日本)27.4pt

4位 : ライッサ・レアウ(ブラジル)23.8pt
5位 : 西矢 椛(日本)19.7pt
6位 : 上村 葵(日本)5.8pt

最後に

まず今大会で印象的だったのはクロエ・コベルの圧倒的な強さ。自国ということもあるからか会場の空気を自分のものとした上で、終始どのライダーにも主導権を与えず自分のライディングとトリックだけに集中して勝ちに徹しているようにに思えた。ただ今回では「9 Club」に該当するトリックが出ていないことから、まだ何か隠し持っているのは想像に容易いだろう。この流れのまま来月の東京大会、12月のスーパークラウンでどんな滑りを見せてくれるのかに期待だ。

一方であまり自分のペースに持って行けずに苦労したのはライッサ・レアウではないだろうか。前回のサンディエゴ大会では見事優勝を果たしたが、今回は細かいミスなども多くいつものような余裕も少し無いように思えた。ただこのままでシーズンを終えるはずがないのが彼女。次戦以降に注目だ。

また日本人勢に関しては各ライダーの個性が出た大会のように思えた。まず赤間はいつも通りというべきか常に冷静に自分のライディングを淡々をこなしていく姿が印象的で、コベルと同じような戦い方が出来ている雰囲気だった。一方で西矢はスコアメイクできず試合運びに苦労している印象でありながらも、どこか探り探りで戦っているように思え今後に向けて何かを準備しているような雰囲気にも受け取れた。

そして今回見事なトリックを見せてくれたのは中山。前回大会ではスコアレンジの変化によるものか得意とするクルックドグラインドが評価されず苦戦していたが、今回見事アップデートした大会初メイクトリックを繰り出すなどさらに彼女の成長とその強さに気づかされる大会だった。また上村に関しても今回は惜しくもメイクとはならなかったが、決めていれば十分上位に食い込む大技の数々であった。今後の大会で決めてきた時にどう戦いをかき回してくれるかにも注目したい。

次戦はいよいよ日本勢にとってホームとなる東京大会。今回以上にハイレベルで波乱の大会になることは間違いない。是非当日は会場で観戦して東京大会の優勝者が誰になるか一緒に見届けよう。

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