思い出の地、松阪で悲願の初優勝というドラマが!「第3回マイナビスケートボード日本OPEN supported by Murasaki Sports」ストリート女子決勝

2025.04.13
記事提供:CURRENT/photograph by ©︎WSJ

2025年4月12日(土)に「第3回マイナビスケートボード日本OPEN supported by Murasaki Sports」ストリート種目が松阪市総合運動公園スケートパークにて開催された。
3年後に開催されるロサンゼルスオリンピックを見据えた新たなシーズンのスタートとなる、2025年シーズン最初の公式開幕戦。

今大会は国際大会派遣選手の選出や2025年強化指定選手の選考に関わる重要な大会ということもあり新世代も含めた実力者が全国からエントリー。
大会当日は翌日の13日に予定されていた決勝のスケジュールが雨天予想されたことから、本来予定されていた準決勝を取り止め、予選の結果から上位8名が決勝に進出、予選同日の12日中に決勝も実施する展開に。

そんな本決勝は全22名の出場者の中、予選を勝ち上がった合計8名で競われ、スタートリストは綿引愛留、中山楓奈、榎並琴音、福田碧、尾関萌衣、大西七海、伊藤美優、松本雪聖の順となった。

ラン1本目

まずは緊張感のあるトップバッターでスタートした綿引愛留がいきなり先制する。
メインのハンドレールを「フロントサイド50-50グラインド」でスタートしていくとギャップ状のバンクトゥバンクで「キックフリップ」、再びハンドレールで「バックサイドフィーブルグラインド」、ダウンレールで「バックサイドスミスグラインド」とテンポよく繋いでいくと、ラストはバンクからのフラットレールで「キックフリップフロントサイドボードスライド」までフルメイクし62.59といきなり60点台をマーク。
13歳とは思えないメンタルの強さを見せ、期待感を持たせると同時に後続へのプレッシャーをかけた。

1本目で頭ひとつ抜けたのが、同じく13歳の松本雪聖だ。
メインのハンドレールを「バックサイドスミスグラインド」を素晴らしいスピード感でスタートしていくと「キックフリップフロントサイド50-50グラインド」、バンクトゥフラットレールでは「キックフリップバックサイドリップスライド」、ギャップ状のバンクトゥバンクではフラットまで届く飛距離の完璧な「キックフリップ」、再びメインのハンドレールでは「フロントサイドフィーブルグラインド」と回しトリックを複数入れ込んだランをフルメイクし67.08となった。
暫定2位の綿引と約4ポイントしか差がつかなかったのは、トリック難易度を考えると疑問に残るが1本目を暫定トップで折り返した。

松本雪聖のライディング@WSJ

ラン2本目

ランセクションが1つマスト採用となるルールなので1本目でフルメイクできなかったライダーは巻き返しを図りたいところ。
2本目でしっかり修正してきたのは尾関大西だ。

尾関はメインのハンドレールを「バックサイドリップスライド」でスタート、ダウンレールをバンクオーバーで「バックサイドフィーブルグラインド」、ステアを「ヒールフリップ」、1本目でミスしたギャップ状になっている幅の広い方のもしっかりカバーし64.59をマーク。

尾関萌衣のライディング@WSJ

大西もメインのハンドレールを「フロントサイドオーバークルックドグラインド」で飛び出すとダウンレールで「フロントサイドブラントスライド」、メインのハンドレールで「バックサイド50-50グラインド」、ギャップ状の広い方のバンクトゥバンクで「キックフリップ」、ラストはスロープレールで「バックサイド50-50キックフリップアウト」までフルメイクし65.65と暫定2位につけた。

大西七海のライディング@WSJ

世界大会経験豊富な中山伊藤だが、中山はフルメイクできず、伊藤もランの構成は非常に高得点に期待できたが要所で精細を欠いてしまい、暫定4位でトリックセクションで巻き返しを狙う。

トリック1本目

綿引、榎並らがメインのハンドレールでしっかりスコアをマークする中、1本目でハイスコアを叩き出したのは尾関松本だ。

首位争いでプレッシャーをかけたい大西はメインのハンドレールで「バックサイド5-0グラインド」を成功させ65.73とランに続きハイスコアをマークした

尾関は得意のバンクから飛び出しトゥ超えでのダウンレールで「バックサイド5-0グラインド」をハイスピードで成功させ今大会初めての70点台となる70.10のハイスコア。

尾関萌衣のライディング@WSJ

トリックセクションで逆転を狙う伊藤はメインレールで「フロントサイドブラントスライドショービットアウト」を狙うがミス。

これらのプレッシャーをものともしなかったのが松本だ。
メインのハンドレールで「キックフリップフロントボードスライド」を寸分のブレもなく完璧に成功させ今大会のハイエストスコアを更新する77.88をマークし暫定首位をキープした。

松本雪聖のライディング@WSJ

トリック2本目

パークスタイルとの2刀流に挑戦している福田がバンクトゥレールをフラット部分からダウン部分まで全流しの「バックサイドクルックドグラインド」で57.38をマーク。

表彰台争いで優位に立っておきたい尾関はメインのハンドレールで「バックサイドフィーブルグラインドフロントサイド180」を狙うもミス。

この隙を逃さなかったのがここまで抜群の安定感を見せている大西だ。
メインのハンドレールで「フロントサイドブラントスライド」を決めると小さくガッツポーズを見せ、スコアも67.31と揃え暫定2位につけた。

大西七海のライディング@WSJ

さらに後続を突き離したい松本は、バンクから飛び出した「キックフリップバックサイドリップスライド」をフラット部分からダウン部分にまで全流しを決め75.76と独走体制に入った。

松本雪聖のライディング@WSJ

トリック3本目

3本目を決めたのはここ最近で成長著しい姿を見せる北陸の新鋭、榎並と表彰台圏内につける尾関だ。

榎並はメインのハンドレールで「フロントサイドブラントスライド」を成功させ66.21をマークしスコアを揃えた。

尾関は2本目でミスしたメインのハンドレールで「バックサイドフィーブルグラインドフロントサイド180アウト」を見事リカバリーし63.42と暫定3位につけた。

尾関萌衣のライディング@WSJ



4本目は全員決められずスコアを出したライダーなしで最終トライへ。
ここまで暫定首位は松本、2位に大西、3位尾関と続いた。

トリック5本目

綿引は2トライ目から果敢にトライしていたバンクトゥのフラットレールで「キックフリップフロントサイドブラントスライド」を最後まで決めきれず6位で今大会を終えた。
福田榎並も最後までスコアアップを狙うも惜しくも決めきれなかったがスコアは揃えられ福田が5位、榎並が4位となった。
世界王者の経験もある優勝候補の伊藤は1本目からトライしていたメインのハンドレールでの「フロントサイドブラントスライドショービットアウト」を最後まで決めきれず7位。
オリンピックメダリストで主要国際大会経験豊富な中山も終始トリックが定まらずトリックセクションでのスコアメイクはなしとなり8位で今大会を終えた。

注目の表彰台のプレイス争い。

暫定3位につける尾関はバンクトゥオーバーのダウンレールで「バックサイドリップスライド」を決め65.34と大西を上回り暫定2位につけた。

尾関萌衣のライディング@WSJ

大西も逆転優勝を狙い、バンクトゥのフラットレールで「フロントサイドブラントスライドキックフリップフェイキーアウト」を狙うも決めきれず3位となった。

ウイニングランとなった松本は3トライ目から挑戦していた「キックフリップフロントサイドノーズグラインド」に挑戦するも決めきれなかったが、ワールドスケートジャパンの大会では初優勝となった。

大会結果

@WSJ

優勝 : 松本雪聖 220.72pt
2位 : 尾関萌衣 200.03pt
3位 : 大西七海 198.69pt
4位 : 榎並琴音 176.18pt
5位 : 福田碧 165.76pt
6位 : 綿引愛留 121.17pt
7位 : 伊藤美優 61.98pt
8位 : 中山楓奈 48.47pt

最後に

今大会、終始強さが光った松本雪聖
初めてワールドスケートジャパンの大会に参戦したのが今回の開催地となった松阪総合運動公園スケートパークで、その地で初優勝というなんともドラマチックな展開となった。
天候によるスケジュールの変更、強風による砂塵と花粉によって気管支炎を発症し、ここ数日は満足に睡眠が取れなかったという決して盤石ではなかった状態でのこの結果は今後も非常に期待感を抱かずにはいられない。
世界王者やオリンピックメダリストのトリックセットと比較しても勝るとも劣らない難易度で、特に回しトリックからのセクショントリックでの安定感は以前にも増して完成度と安定感を感じられた。
さらには予選で2回しかトライできない中、1本目をミスし追い込まれた状況にも関わらず、2本目でしっかりリカバリーし首位通過するあたり、メンタル面の成長も見受けられた。
今後、世界のトップ争いをする上でどのようなスキルアップ、トリックチョイスをしていくのか非常に楽しみだ。

新世代の台頭も目を引いた今大会、3位となった大西七海は安定感という面では今大会の出場全ライダーの中でナンバー1だと感じた。
あとは一発の爆発力を磨けば今後世界のトップ争いに十分に加わることが予想される。
日本の女子ライダーでは唯一と言っても良いハイスピード、ぶっ飛びスタイルで会場を沸かせた尾関萌衣も今後非常に注目だ。
海外ではブラジルのパメラ・ロ-ザ、アメリカのポエ・ピンソンらを彷彿とさせるそのライディングスタイルは世界でも評価されていくことは間違い無いだろう。
あとはトリック精度と、難易度をどこまで上げられるかが世界トップレベルで戦う上で重要になってくるのではと考える。

新世代の活躍とは対照的に精細を欠いた世界トップ常連勢の伊藤美優中山楓奈
フィールドやコンディションがフィットしなかったのか、戦略的にも上手く立ち回れていなかったように感じた。
とはいえ、実力は誰もが知る世界トップレベルということもありすぐに修正してくると予想する。
さらに今回新世代の台頭を象徴したのが、こちらも世界大会経験豊富な上村葵が予選で敗退したことだ。
こちらも目まぐるしく変更されるスケジュールやコンディションに泣いた結果となったがこのままで終わる実力ではないので今後の巻き返しに期待したいところ。

ここに今大会には出場していないが、歴代オリンピック金メダリストの吉沢恋西矢椛、世界最高スコアを保持する織田夢海らがいる日本のロサンゼルスオリンピック出場争いはこれまでにない戦国時代を迎える幕開けとなった。
ついに始まったRoad to ロサンゼルスオリンピック2028、1大会も目が離せなくなりそうだ。

ここでワールドスケートから気になる情報が発表された。
「パリオリンピックが終わり、包括的な競技の結果、2028年以降、ワールドスケートボードツアーに参加する選手の最低年齢を14歳とする」旨の内容だ。
これにより「2014年1月1日から2014年12月31日の間に生まれた選手は2025年1月1日から12月31日の間に開催されるすべてのイベントで11歳とみなされ、この年齢が2028年ロサンゼルスオリンピックの選考大会に関する最低年齢となり、それ以降に生まれた選手は対象外となります」
選考会を実施した後にこの決定発表は非常に混乱、困惑を招きかねる事案と筆者は感じた。
こちらの情報は今後も引き続き注視する必要があると同時に、これらを目指して日々努力しているライダーが落胆することのない結果となることを心より願います。

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