ブレイキン初代オリンピック王者を目指す戦い!本番直前 Shigekix、Ami、KatsuOne 特別インタビュー

2024.07.28
Suguru Saito / Red Bull Content Pool

日本代表全4名にメダルの可能性があるオリンピック新種目ブレイキン

7月26日に開会式を迎え、いよいよ本番がスタートしたパリオリンピック。今大会で新種目として採用され、オリンピック初登場となるブレイキンは世界中から注目を浴びている。アーバンスポーツと言われるスケートボード、BMX、サーフィンなどが初めて採用された東京オリンピックでは、これまでの競技スポーツの概念に縛られないカルチャー性が評価され、オリンピックに多くの若者を取り込むきっかけともなった。果たして今回のブレイキン種目は、オリンピックという国際的にも歴史のあるイベントでどのような影響を与えるのか?盛り上がりが非常に楽しみである。

パリオリンピックへの出場権は、男女各16名で各国上限は2枠。世界選手権優勝者1枠、各大陸王者の5枠、開催国フランス1枠、国際オリンピック委員会(IOC)などが割り当てるユニバーサリティ2枠、残る7枠はOQS(オリンピック予選大会)で勝ち抜いた選手に与えられた。日本からは、B-BoyはShigekix(半井重幸)、Hiro10 (大能寛飛)、B-Girlは、Ayumi (福島あゆみ)、Ami (湯浅亜実)の4名がパリオリンピック日本代表として出場する。日本はアメリカ、フランスと並んで出場国のうち最多の代表枠を獲得している。競技は現地時間で女子が8月9日、男子が8月10日に実施予定。※記事の最下部に競技スケジュールや放送スケジュールを記載

本記事では、ブレイキン初代オリンピック王者を決める戦いが数日後に迫る中、Shigekix、Amiの両選手、そしてKatsu One(日本ダンススポーツ連盟ブレイクダンス部の部長)が、日本を発つ前に語ったオリンピックへの想いをお届け。

Suguru Saito / Red Bull Content Pool

Shigekix「ブレイキンは直前でも変化が起きる。だから当日を迎えるその朝まで自分に向き合っていきたい」

Suguru Saito / Red Bull Content Pool

パリオリンピック本番が近付いてきましたがプレッシャーを感じたり、自分の中での変化はありますか?

Shigekix(以下 S):まだ日常的にプレッシャーを感じる感覚はあまりないですね。ただ、これだけの規模の大会なので、確実に直前でとんでもないプレッシャーが押し寄せてくると思っていますし、それを乗り越えた自分だからこそ見える景色があると思っています。

本番まではどのように過ごすつもりですか?

S:ブレイキンは1日、数日、1週間でもめちゃくちゃ変わるんです。僕自身も、昨日できなかったことが今日突然できるようになった経験もありますし、向き合い続けているからこそ、突然生まれるものがあったりします。(日本を発つ直前に開催された)Red Bull BC One Cypher Japanの現場で受けるインスピレーションから、自分のムーブがリニューアルされたり、レベルアップされる可能性もすごくあると思っています。なので、前日、なんなら当日の朝まで最終調整という感じで、「これにて準備終了!」というのは自分の中では無いです。

パリオリンピックの直前に日本ブレイキンシーンの最高峰のバトルでもあるRed Bull BC One Cypher Japanが開催されましたが、どんな影響を受けそうですか?

S:僕がブレイキンを始めた当時から活躍していた方も出場されますし、後輩や同世代など幅広い方々が出場するので、いろんな世代から刺激を貰おうと思っています。Red Bull BC Oneに全てをかけている日本のトップBboy達からしっかりエネルギーを受け取って、僕もオリンピックで全てをかけて立ち向かえるようにしていきたいです。

パリオリンピックでは何を成し遂げたいですか?

S:一番の目標は自分の成果を発揮することです。結果はその成果に伴って必ずついてくると思うので、自分がやってきたことをどれだけ発揮出来るか?の成果にこだわりたいです。結果は後からついてくるというのは綺麗事じゃなくて、本当にそうだとこれまでの経験でも思いますし、まずは自分がやってきたことを100%、120%出せるように最後の最後まで頑張って、その先で最高の景色が見れたらいいなと思っています。

Little Shao / Red Bull Content Pool

Ami「スポーツの世界にブレイキンをレペゼンしにいく気持ち」

Little Shao / Red Bull Content Pool

最終予選でパリオリンピック出場権を獲得し、今は本番に向けてどんな気持ちですか?

Ami(以下 A):ブダペスト大会(オリンピックの最終予選)の前と比べると気持ちもすごい落ち着いていて、これからオリンピック本番を控えているという気持ちはもちろんありますが、最終予選はすごいプレッシャーの中でやっていたんだなと感じました。

ブレイキンがオリンピックの新種目に決まってから、自身が日本代表になるまでどんな想いやストーリーがありましたか?

A:最初はダンススポーツというスポーツの側面でのブレイキンについて、わからないことが多すぎて、どうなっていくのかも想像出来なかったですし、時には「スポーツ」という概念に押し潰されて自分を失いそうになったりすることもありました。でも途中から、ブレイキンをスポーツに寄せていくのではなく、スポーツの世界にブレイキンをレペゼンしに行こう!という大きな心境の変化があって、今はその気持ちで頑張っています。ブレイキンの良いところをスポーツが好きな人たちに知って貰えるようにやってきましたし、結果として良い方向に広がってきていると感じています。

本番まではどのように過ごしていきますか?

A:自分の努力だけでなく周りの支えもあってゲットできたオリンピック行きのチケットです。自分全開で全力で楽しんで行きたいなって思っています。そのためには、ちゃんと練習してそれに備えないといけないと思っているので、自分のベストなコンディションで挑めるように、磨き上げていきます。

Red Bull BC Oneのようなブレイキンシーンの世界最高峰のバトルでも優勝経験があるAmiさんにとって、オリンピックはどのような位置付けですか?

A:オリンピックに出ている人だけが必ずしも世界のトップ16では無いと思っています。もちろん過酷な戦いを勝ち抜いてきたオリンピックに出場する16人もすごいけど、たとえばRed Bull BC Oneに出るようなBboy・Bgirlにも、いろいろなスタイルの人がいて世界トップクラスです。おそらくオリンピックに出る16人と、今年のRed Bull BC One ワールドファイナルに出る16人では、全然違う出場者になると思うので、その二つを見ることでよりブレイキンの面白さが分かると思っています。

パリオリンピックでは何を成し遂げたいですか?

A:自分のことを応援してくれている人たちが望んでくれているのは「自分らしい踊りをして楽しむこと」だと思うし、自分もやりたいことはそれなので、自分の踊りはこういうものだというのを表現したいと思っています。ただ、勝ち進んでいかないとたくさん踊ることは出来ないので、自分の目の前の相手を全力で倒しに行きながら、自分の踊りを表現したいです。

photograph by haru_graphics

KatsuOne「世界に誇れる日本ブレイキンシーンの強みは、ヒップホップツリーがしっかりしていること」

Suguru Saito / Red Bull Content Pool

パリで初めてブレイキンがオリンピックデビューとなり、カルチャーの側面だけでなくスポーツの側面も注目されますが、どのように捉えていますか?

K(以下 K):ブレイキンの種目入りが確定して、一番最初にめちゃめちゃ悩んだところでした。そして、最初知った時は(ブレイキンがオリンピック種目になることは)率直に反対でしたね。ただ、実際にやってみると意外とルールなどにもアジャストできる部分はあって、そこまで変わらないと思い始めました。

ルールの側面としては、やはり競技スポーツはルールの基準が出来るわけで、ブレイキンもジャッジの基準が存在します。でもカルチャーの方は別にそういうのはなくて、ジャッジが主観で判定することになります。ただ、競技スポーツの中でもカルチャー方面の大会で世界トップクラスの実績を持つ人たちも多く活躍していますし、そういう意味でも大きな違いは無いと思っています。

あとは、障害を持った方とかも関係なく同じコミュニティにいるのが、ブレイキンの特徴であり良さだとは思います。例えば、片足のないBboyの友達もいるんですけど、舞台に立って戦う上では他の人と何一つ変わらないですし、めちゃめちゃかっこいい踊りをします。色んな人が同じコミュニティにいることが、ブレイキンの良さの一つではあるので、競技スポーツの側面が強くなって、今後、障がい者と健常者がもしも分けられてしまうのであれば、それはちょっと残念だとは思います。

カルチャーとして生まれたブレイキンにスポーツの要素が加わって、今後はどのように共存していくのでしょうか?

K:スポーツとなると、やっぱり勝ち負けでスポットライトを浴びるかどうかが決まると思います。でも、勝ち負けじゃない大切な部分は、選手たちも含めてブレイキンに関わる人たちはみんな大事にしていると思います。ブレイキンのカルチャーそのものやヒップポップ文化、そういうのが好きだからブレイキンをやっていて、そういった面をアピールするためにも、勝たないと注目を浴びないので、まずは勝ってそういう側面を発信したい選手も多いと思います。ただし、スポーツはスポーツの良さがありますし、今後も勝ち負けの側面とカルチャーの側面と両方あって良いんじゃないかなと思っています。

最後にパリオリンピックで戦う日本代表ですが、日本ブレイキンシーンの強みを教えて下さい

K:日本の強さは世代が幅広いことや、その世代ごとに歴史が受け継がれていることだと思っています。最初にブレイキンが広まった第一世代から現代の世代まで、ちゃんとヒップホップツリーが出来ているというか、上から下に技術だけじゃなくて歴史も伝えられている中で、世界でも活躍する選手が生まれていると思います。

競技スケジュール

◼︎8月9日(金)
フランス時間(日本時間)
16:00(23:00)女子予選
20:00(翌3:00)女子準々決勝 第1試合
20:07(翌3:07)女子準々決勝 第2試合
20:14(翌3:14)女子準々決勝 第3試合
20:21(翌3:21)女子準々決勝 第4試合
20:45(翌3:45)女子準決勝 第1試合
20:52(翌3:52)女子準決勝 第2試合
21:14(翌4:14)女子3位決定戦
21:23(翌4:23)女子決勝戦

◼︎8月10日(土)
フランス時間(日本時間)
16:00(23:00)男子予選
20:00(翌3:00)男子準々決勝 第1試合
20:07(翌3:07)男子準々決勝 第2試合
20:14(翌3:14)男子準々決勝 第3試合
20:21(翌3:21)男子準々決勝 第4試合
20:45(翌3:45)男子準決勝 第1試合
20:52(翌3:52)男子準決勝 第2試合
21:14(翌4:14)男子3位決定戦
21:23(翌4:23)男子決勝戦
※各日時は現地都合により変更になる可能性あり

パリオリンピックでの日本人選手たちの活躍はテレビ放送やTVerで視聴して応援しよう

パリオリンピックの模様は、NHKや各キー局での地上波およびBS放送に加えて、TVerでのオンライン配信が予定されている。随時放送情報は更新されているが現時点での国内放送スケジュールは以下の通り。
※2024年7月23日時点、FINEPLAY編集部調べ

8月9日(金)
ブレイキン予選〜決勝 女子 21:30~29:30【TVer】

8月10日(土)
ブレイキン決勝 女子 23:00~25:30【日本テレビ】
ブレイキン予選 男子 22:50~【NHK BS】

8月11日(日)
ブレイキン決勝 男子 2:00~5:30【フジテレビ、TVer】

なお各競技の最新情報はオリンピックのウェブサイトや公式アプリで気軽にアクセスできるので是非ダウンロードしてみて欲しい。日本人選手たちの大活躍を一緒に応援しよう!

執筆者について
FINEPLAY編集部
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