SHIROFES.が弘前で紡ぐダンスコミュニティの存在意義|KYOKA×NOBUOスペシャルインタビュー

2026.08.26
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Interview & text by Takako Ito

キッズ時代から頭角を表し、世界を舞台に活躍をし続けるトップダンサーKYOKA。そして、青森県弘前市から世界へとストリートダンスの魅力を発信する複合型ダンスフェス「SHIROFES.」のオーガナイザー、NOBUO。 今回は、今年SHIROFES.に3年ぶりの出演となったKYOKAと、彼女を熱望し続けてきたNOBUOによるスペシャルインタビューを敢行。開催直前に迫るSHIROFES.の魅力や新たな挑戦、そして現在のダンスシーンについて話を訊いた。

唯一無二のダンサー|KYOKAとの出会い

― まず最初に、おふたりが出会ったきっかけについて教えていただけますか?

KYOKA:私の認識ではSHIROFES.が最初やと思ってます。それより前にももしかしたらどこかのイベントで一緒になってたかもしれないんですけど、NOBUOさんっていう存在をちゃんと認識したのはSHIROFES.ですね。そこでちゃんとお話させていただいたかなと思います。

NOBUO:そうですね、僕もはっきり覚えているのは2018年のSHIROFES.です。KYOKAは当時、TAISUKEと一緒に2on2バトルに出てくれたんですよ。当日のノリみたいな感じで2人でバトルに出て、そのまま優勝しちゃったんです(笑)。それを見て「唯一無二の存在感がすごいダンサーだな」と衝撃を受けました。おそらく、2人が組んだバトルはこれが最初で最後では・・というくらい貴重な組み合わせでしたね。そういうのが生まれるのがSHIROFES.の醍醐味です。

KYOKAに関しては、この2年間はダメ元でオファーをかけ続けていたんですけど、どうしても他の海外イベントと被ってしまって。でも、今年こそは絶対に呼びたいと思って、懲りずにオファーをしたら3年ぶりに出演してもらうことが叶いました。

ⒸSHIROFES. 2018

― KYOKAさんはそれ程SHIROFES.にとって欠かせない存在なんですね!

NOBUO:KYOKAはダンスに対する考え方や、実際の現場での姿勢が本当に真摯なんですよね 。シーンのことまで深く考えてくれている。だから、僕も含めてSHIROFES.のスタッフはみんな「KYOKAファン」なんです。彼女の実力や人間力を見れば、世界レベルで戦っている姿も、納得です。SHIROFES.にとって絶対に欠かせないダンサーのうちの一人だと思っています。

KYOKA:嬉しいです!ありがとうございます(照)。でも、私からしてもNOBUOさんって本当に特別な存在で、ダンサーとしてはもちろんオーガナイザーとしてめちゃくちゃリスペクトしているんです。いつ会っても、何が起きても、本当に冷静なんですよ。

SHIROFES.だけじゃなく、Red Bull主催のイベントなどでもご一緒する機会が多いんですけど、普通なら頭がパンパンになってパニックになるような状況でも、NOBUOさんはいつもニコニコ笑顔なんですよね 。その笑顔のまま冷静にスタッフに指示を出して、現場を綺麗に回しちゃう。 日本人だけじゃなくて海外からも多様なダンサーが来ますし、お祭りだからみんなお酒も入っていろいろな問題が起きたりする。それでも常に笑顔で冷静に判断できるのは、NOBUOさんの積み上げてきた経験と準備、そしてあのメンタルがあってこそやなって。ひとりのオーガナイザーとしていつも本当にすごいなと尊敬しています。

ⒸSHIROFES.2025 / Hama Show

弘前の街をダンサーがジャックする|SHIROFES.の魅力

― 国内外の数あるダンスイベントの中でも、特に「唯一無二の空気感がある」と評判のSHIROFES.ですが、KYOKAさんから見て、どんなところに魅力があると思いますか?

KYOKA:一番の魅力は、やっぱり「真面目すぎないところ」やと思います。規模的には日本でもトップに入るくらいめちゃくちゃ大きくて、ダンサーも毎回超豪華。SHIROFES.のタイトルを狙って海外からわざわざ来る人もたくさんいるくらいプロフェッショナルなイベントなのに、どこか肩の力が抜けていて「負けてもいいや、楽しもう!」くらいのテンションで参加できるんです。 東京や大阪で同じ規模のフェスをやっても、絶対にこの空気感は作れないと思うんですよね。

弘前というロケーションもそうですし、NOBUOさんというオーガナイザーがいて、それを支える温かいスタッフや地元の方々がいて自然にできあがっている。カチカチのコンペティションにする必要がないから、その場のノリで「一緒に組んであのバトル出ようや!」ってパートナーを見つけて出ちゃうこともよくあるし、そういうお祭り気分をみんなで共有できるのが本当に楽しいんです。

あと、SHIROFES.期間中は、弘前の街中のどこを歩いてもダンサーに会うんです(笑)。ご飯屋さんに行っても、バーに行っても、みんないて「お疲れ様!」ってハングアウトが始まる。街全体がダンサーにジャックされているみたいで、バトルが終わった後のコミュニケーションこそがメインやと思って楽しみに来ている人も多いと思います。

― こうした「街全体で温かく迎える空気」というのは、どのように作られてきたのでしょうか?

NOBUO:最初こそ、規模も小さいし関わる人たちも少ないので、全然そんなことなかったのですが、弘前で10年続けてきたからこそ、そのような“地域”を意識したイベントに成長したなと感じています。今では、ダンサーが市民や地元の警察の方などに「SHIROFES.の関係者の方ですか? お疲れ様です、ありがとうございます!」って声をかけてくださるほどに。そんな街、あまり聞いたことがないですよね。 地元のテレビ局やCMでも告知を流していただいていて、僕自身、普段の買い物中に市民の方から「今年のSHIROFES.も楽しみにしてます!」って声をかけていただくことも増えて驚いています。

― ダンスコミュニティだけでなく、市民の皆さんにもSHIROFES.が浸透しているのですね 。

NOBUO:昨年なんて「うちのおばあちゃんが楽しみにしていて、初めてSHIROFES.に行って初めてRed Bullを飲んだ」って言う方もいて。お孫さんがバトルに出るから、あるいは見に行きたいからと付き添いでおじいちゃん、おばあちゃんが会場の弘前公園に来て、そのまま特定のダンサーのファンになって帰っていく、みたいなことも起きています。ダンスを全然やったことがない一般の方々が、普通にお気に入りのダンサーをチェックするような、すごく開かれた街になっているのを感じます。

KYOKA:普通のダンスイベントだと観客席に座っているのはダンサーやその関係者ばっかり、ということも多いと思うんですけど、SHIROFES.は公園の敷地内で開催されているから、無料で観れるエリアもある。だから、友達同士や、お祭り目当てでたまたま通りがかったファミリー層が「あ、かっこいいな」って足を止めてそのまま見入ってくれる機会が自然とあるんですよね。このオープンでファミリーライクな雰囲気が、参加者のハードルを下げて、誰もが楽しめる空間を作っているんやと思います。

ⒸSHIROFES.2025 / FEworks

ダンサーファーストの軸はぶらさず|2026年の挑戦

― SHIROFES.の魅力がさらに深まる2026年、「新たな挑戦」は何かありますか?

NOBUO:そうですね、今年はダンスバトルの大きな挑戦として、オールスタイルバトルの予選から決勝にいたるすべての行程を「生バンドの演奏(生音)」で行いたいと思っています。

KYOKA:これは本当に贅沢ですよね。ダンサーからしたら、やっぱり「生音が一番」なんですよ! カテゴリーに関係なく、生バンドの音でバトルができるって聞いたら、どんなジャンルのダンサーでも絶対に出たがると思います。 私たちは音楽があってこその存在。普段、スピーカーから聴いている音楽で踊るのとは全然違って、生音を自分のすぐ近くで、身体の奥深くで直接感じられるのは、見ている人が想像している以上にめちゃくちゃ気持ち良いんです。

その場で初めて流れる生の演奏に、自分の身体がどれだけ一体になれるか、どこまで気持ち良くなれるか。これはダンサーにとってもめちゃくちゃ刺激的なチャレンジだし、贅沢な体験です。今年は絶対にヤバいメンツが集まるし、すごいバトルが生まれると思います。

NOBUO:あとは、今年のゲストショーケースも約30チームと、過去最大の規模になっています。東北にいたら普段は生で見られないような、大阪をはじめとする全国トップクラスの著名なダンサーたちが弘前に集結します。 今年は、開催がこれまでの真夏から9月に変更になったことで、日暮れが早くなるので、夕暮れから夜にかけてのすごく良い雰囲気の中で、ハイクオリティなゲストショーケースを野外でじっくり堪能してもらえると思います。

ⒸSHIROFES.2025 / Hama Show

― その超豪華なステージにも、KYOKAさんは出演されるのでしょうか?

NOBUO:KYOKAには本当にたくさんのことをお願いしていて(笑)。ステージでのショーケースをはじめ、ヒップホップの1on1バトルのジャッジ、それからキッズバトルのジャッジも務めてもらいます。さらにワークショップまでやってもらいます・・!

KYOKA:盛り沢山すぎてバタバタです(笑)。でも、SHIROFES.ってただ大人しく座って見ているよりも、こうやってバタバタと忙しく動き回って参加している方が絶対に楽しいんですよ。合間を縫ってバトルにも出たいなと思っています。忙しい方がありがたいですし、お祭りなのでとにかく目いっぱい楽しみたいと思います!

SHIROFES.の存在意義|繋ぎたいモノ

― SHIROFES.はコミュニティとしての質も高いイベントと感じますが、NOBUOさんはSHIROFES.をどのような場にしていきたいとお考えですか?

NOBUO:ありがたいことに、今年は告知開始当初からワークショップなども含めるとすでに1,000人を超えるエントリーが集まっています。その中で僕が嬉しいと感じるのが、弘前のキッズたちが、東京や大阪の同世代のダンサーたちとチームを組んで出場している姿を見かけるようになったことです。昔の地方のシーンでは、こんなこと絶対に考えられませんでした。

お祭りという開かれた場所だからこそ、地域やジャンルを超えた若い世代の「繋がり」が自然と生まれている。バトルで「負けたからすぐ帰る」とか「自分の出るイベントしか行かない」というのも現代のスタイルではあるし、それ自体を否定するわけではないのですが、せっかくダンスや音楽という素晴らしい共通言語を持っているのだから、イベントをきっかけに「今度一緒にチーム組んでみよう」「別のイベントにも一緒に出よう」って、フィジカルに繋がっていく関係がもっと増えてほしいなと。その場を提供し続けることが、今後のSHIROFES.の大きな展望であり、一番大切にしたい役割だと思っています。

ⒸSHIROFES.2025 / MARCOMONK

― 「リアルな現場で繋がる価値」について、KYOKAさんも現場で感じることはありますか?

KYOKA:はい、とても感じます。今の若い世代、特にキッズたちを取り巻く環境は、私たちが子どもの頃と比べて物凄く便利になっています。YouTubeやInstagramを見れば、自分から必死に調べなくても最先端のダンスや情報が勝手に流れてくる。わざわざ習いたい先生に会うために、高い交通費を払って大阪や九州、海外まで行かなくても、スマホひとつで映像が見られてしまう。 それはもちろん良いことでもあるんですけど、一方で「自分から能動的に求めて行動する好奇心」や、「現場にわざわざ足を運んで、リアルな空間で直接学ぶ熱量」がすごく薄れてしまっている気がするんです。

私たちは、日本のストリートダンスシーンを創り上げてこられたレジェンドの先輩方から、直接ダンスを教わり、その背中を見て歴史を直に学べたギリギリ最後の世代やと思っています。私たちの下の世代になると、その素晴らしいレジェンドの方々に会ったこともないし、生で踊る姿を見たこともないというキッズが本当にたくさんいる。 これってめちゃくちゃもったいないし、個人的には寂しく思います。その歴史があって、今の日本の素晴らしいシーンがあるのに。 だからこそ、私たちの世代がその架け橋となって「先輩方から受け継いだカルチャーや歴史をしっかりと下の世代に伝えていくキーパーソンにならなあかん」という強い使命感を持っています。

ⒸSHIROFES.

― KYOKAさんが世界を舞台に走り続ける姿そのものが、次世代への強いメッセージになっているとも感じますが、ご自身ではどのように感じていますか?

KYOKA:ありがとうございます。そうなると良いなと思いつつ活動をしています。SHIROFES.は、そのレジェンドの方々や海外のトップダンサーたちが、日本の地方である「青森県弘前市」に集結する、本当に特別な場所です。 日本のキッズは実力も高くて本当に素晴らしい。でも、だからこそ「憧れ」だけで終わってほしくないんです。「KYOKAさんかっこいい、憧れです」と言ってくれるのは嬉しいけれど、そこで終わるんじゃなくて、憧れを超えて、今度は自分が世界へ飛び出して戦う存在になってほしい。 NOBUOさんがこの弘前という場所に、世界最先端のリアルな「現場」を創ってくれているのだから、そこから「世界ってこんなに広いんや、もっと外を見てみたい!」と、視野を広げるきっかけを掴んでほしいと願っています。

NOBUO:KYOKAのその言葉、本当に胸に刺さりますし、僕自身の原体験とも深く重なります。 僕がダンスに出会った大学生の頃は、コミュニティも情報も何もなくて、とにかく大阪の先輩たちの家にお世話になりながら、リアルな現場でがむしゃらに学ぶしかありませんでした。今の時代から見たら不便極まりない環境でしたけど、そこで直接レジェンドの先輩方に優しく教えてもらい、シーンの温かさを繋いでもらった。 だから、僕がRUSHBALLのイベントに行った時、かつてお世話になったWILD CHERRYさんたちの姿や歴史が、今世界で戦うRUSHBALLの2人とフラッシュバックして重なり合う瞬間があるんです。脈々と受け継がれてきた「歴史」があるから、今の僕たちのダンスがある。

ⒸSHIROFES.2025 / MARCOMONK

レジェンドから次世代へ|自分たちにできること

― そうした世代を超えたバトンが、リアルを通じて今も受け継がれているのですね。

NOBUO:そうですね。日本のダンスシーンが積み上げてきた不変の歴史を、今の子たちや、これからダンスを知る方々に伝えていきたい。 目の前のバトルの勝ち負けという結果だけに一喜一憂するのではなく、もっと広く、それぞれのジャンルが持つ歴史や背景を学び、知ることの本当の面白さを伝えていきたい。その価値観は、SHIROFES.に参加してくれているすべてのダンサーと共有できているはずだと信じています。

KYOKA:日本のキッズのみんなが海外で活躍できるような世の中に、もっとなってほしいなっていうのは、すごい前からいつも相方のMAiKAと話してて。小さい頃からダンスをやってきてるけど「今、日本を代表するキッズダンサーって誰?」って聞かれた時に、何人名前が上がるかなと。純粋にダンスを習っている人が増えるのも良いことだし、ダンサーが増えるのも大歓迎やけど、その一方で突き抜ける個性あふれる“強いダンサー”が育たない土壌になっちゃっているのかもしれないと思ったりします。

ⒸSHIROFES.2025 / MARCOMONK

NOBUO:KYOKAがいうことは世の中が便利になって簡単に手に入るモノが増えたことによる弊害かもしれないと、現場にいると感じます。それ自体を否定したいわけではなく、それを認識した上で、自ら働きかけないとダンサーとしての成長は難しいかなと思うんですよね。だからこそ、ダンサーにとってSHIROFES.はそういうホンモノに触れたり、気付けたりする「場」であって欲しい。現状維持ということではないですが、変に規模を拡大していくとかそういうことではなく「このまま」を提供し続けられることが存在意義ですし、今後も続けていきたい理由です。

一方で、「楽しめるフェス感」も大切にしていて全く堅苦しくないイベントなので、これまでダンスイベントに行ったことが無い人にも気軽に遊びにきていただきたいと思っています!

KYOKA:私も今からとっても楽しみにしています!会場で、少なくとも1,000人のダンサーがうろうろしているので、気軽に声をかけてもらえたらと思います。というか冷静に考えると、そんな機会はあんまりないと思うので物凄いことですよね(笑)。ダンサーの皆さんも、そうではない方もSHIROFES.で一緒に楽しみましょ〜!!

プロフィール

KYOKA

大阪出身のHIPHOPダンサー。MAIKAとのダンスチーム「RUSHBALL」として幼少期から活躍し、2012年に世界最高峰のストリートダンスバトル「JUSTE DEBOUT」HIPHOP部門で準優勝。2016年には同大会で優勝し、世界一のタイトルを獲得した。圧倒的な音楽性と独自のグルーヴを武器に、現在はRUSHBALL、Red Bull All Starsとして世界各地のバトル、ショー、ワークショップ、ジャッジで活動している。

NOBUO(岩渕 伸雄)

岩手県出身。弘前大学ストリートダンスサークルA.C.T.に所属し、ダンスを始める。大学院修了後、2008年にダンススタジオ「FUNKY STADIUM」をオープン。2012年、弘前市で芸術舞踊に関する活動を発展させるため、「ひろさき芸術舞踊実行委員会」を設立。

2016年、弘前城本丸にて大規模野外フェスティバルSHIROFES.を開催。2021年、国が主催する「スポーツ文化ツーリズムアワード2021」で SHIROFES.が国内最高賞「スポーツ文化ツーリズム賞」を受賞。自身もダンサーとして活動し続け、更には育成などにも力を注いでいる。

ダンススタジオ事業・イベント事業、レッドブルジャパン(株)のダンスコンテンツプロジェクトディレクターも務める。2023年10月より弘前大学大学院博士課程に進学。「カルチャーに対する熱量が及ぼす影響について」をテーマに研究も行っている。

SHIROFES. 2026 開催概要

イベント名:SHIROFES. 2026
開催地:青森県弘前市|弘前公園 市民広場・市民会館
開催日時
2026年9月4日(金)17:00-20:30
2026年9月5日(土) 9:00-20:30
2026年9月6日(日)9:00-20:30
主なコンテンツ:ダンスバトル、ダンスショーケース、ダンスワークショップ
キッズプレイエリア、物販ブース、飲食ブースなど

執筆者について
FINEPLAY編集部
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