「悔しいけど、嬉しい」山本純子とその背中を見て育った若手の成長と課題「Red Bull Ice Cross World Championship Yokohama 2020」

2020.02.19
FINEPLAY編集部
山本純子 / photo by Shuji Izumo

2018年12月、横浜で「Red Bull Crashed Ice World Championship Yokohama 2018」(以下、「RBCI Yokohama 2018」)として日本初上陸を果たした「アイスクロスダウンヒル」。日本で2回目の開催となる今年は2月15日に横浜市・臨港パークにおいて「Red Bull Ice Cross World Championship Yokohama 2020」と名称を新たにし、ATSX (All Terrain Skate Cross)連盟が主催するトップカテゴリの世界選手権として開催された。

「アイスクロスダウンヒル」はアイススケートのプロテクター、スケートシューズ を身につけ、障害物や高低差が設けられた全長最大約700メートルの氷で作られた特設コースを滑り降りる競技だ。選手の最高時速は時速約80キロメートルに達するといい、転倒やクラッシュも起こる迫力満点のレース。選手たちは鍛え上げた己の肉体と培ったテクニックで氷上最速を目指す。

日本に上陸して間もない、新しいスポーツである「アイスクロスダウンヒル」だが、日本に先駆者がいることをご存知だろうか。彼女の名は、山本純子。アイスホッケー選手としてプレーしながら、2010年に「Red Bull Crashed Ice World Championship」初出場。山本は念願の国内初開催となった「RBCI Yokohama 2018」で見事6位入賞を飾り、競技と自身の名を日本中に知らしめた存在だ。

マクシー・プランテ / photo by HAMASHOW

山本の涙、その2つの意味

「母国で優勝する」と意気込み今大会へ臨んだ山本は、前日に行われた予選を経て敗者復活で決勝へ進出。しかしQuarter Finalsでは、今大会で優勝を飾っているマクシー・プランテミリアム・トレパニエと同じヒートとなる。山本は「練習では滑れていたし、その中でもレースのランが一番いいランだった」と話すように好調な滑りをキープ、しかしカナダの強豪選手2名を追い越すことができず3位でのゴール、敗退を喫した。

レースを終えた彼女の第一声は、「こんなに悔しいレースは久しぶり」。眼には涙をため、絞り出すような声であった。
「母国で沢山の人が見に来てくれていることが本当に嬉しくて。走り出したら周りの声がすごく聞こえてきて、それがあったから足を動かし続けることができた。だからなおさら勝てなくて悔しい。嬉しさと悔しさで感極まってしまった」のだという。

パイオニアとして世界各地で転戦し、母国での優勝を夢見て走り続けてきた山本が、今大会にかける思いは非常に強いものであったに違いない。
山本は悔しさをにじませつつも、「ベストを出しても追いつけなかったのはそれだけ2人のレベルが高かったから。力を出し切って勝てなかった悔しさはあるが、練習から今回のランまでの間で着実にレベルアップを実感できている」と話す。結果を冷静に分析し、次へ向かう山本のこの姿勢を選手たちは追い続けてきたのだ。

「年齢を重ねてはいるが、衰えは感じていない。これだけたくさんの人が興味を持って足を運んでくれる人がいる以上は自分が選手として現役でいながら、日本のシーンを盛り上げていくことを考えていきたい」。
そう話す「アイスクロス」の開拓者・山本の眼には、競技に対する情熱のともしびが静かに燃えている。

彼女はこれからも、観客の期待と日本のシーンを背負って滑走を続けていく。

山本純子 / photo by HAMASHOW

2名のルーキーが決勝へ進出、若手の今後の成長に期待

山本が日本に蒔いた種は、少しずつ成長を続けている。
今大会では山本の背中を追い、着実に成績を上げている若手2人が決勝へ進出した。
それは山内斗真吉田安里沙の2人だ。

山内は大学でアイスホッケーの選手として活動を行いながら、前回の「Red Bull Crashed Ice World Championship Yokohama 2019」に出場、決勝へ残った。2019年のボストン大会ではジュニアカテゴリー3位となり、注目を浴びている。
今大会では敗者復活で決勝へ進み、「決勝へ進んだ日本人は自分一人なので、あとはやり切るしかない」と真剣な眼差しで意気込みヒートへ臨んだ。

Round of 64、山内はスタート直後のヘアピンカーブで接触、転倒してしまうが、諦めずに前方の選手たちを追走。ゴール手前で2位の選手に追いつき、あわや逆転かと見えるほどのガッツのあるスライディングを決めている。結果は3位で敗退となったが、その闘志あふれる姿は詰め掛けた観客の目にしっかりと焼きつけられた。

「ベストな滑りはできたが、現実は甘くない。転んだら意味がない。もっと上に行くために、今回のランを振り返り、修正していきたい」とヘアピンカーブで接触した際に切ってしまったという、指を止血するための血が滲んた包帯の痛々しさとは対照的な、前向きな明るい表情で山内は語る。

「Round of 64のクランクアップを目指して夢中で走った。ゴール手前の足を伸ばしたスライディングも、追いつこうという思いが強かったから」なのだという。
「熱い応援の中走ることができて、頑張れた」ときらめく笑顔で話す山内のランを後押ししたのは、ほかでもない横浜臨港パークに詰め掛けた観客の応援なのだ。

「社会人となる次のシーズンからは、学生時代と練習に使える時間が少なくなるため、練習の効率を考えなおしていく」のだという。
「これからもアイスクロスを続けていく」という山内が日本の「アイスクロスダウンヒル」にどのような影響をもたらしてくれるのだろうか。今後の活躍が期待されている。

山内斗真 / photo by Shuji Izumo

吉田はインラインスケーターとしてキャリアをスタートし、師匠である安床ブラザーズの誘いで「Red Bull Crashed Ice World Championship Yokohama 2019」に参戦している。

吉田は山内と同じく敗者復活を勝ち上がり、決勝へ進出。しかし、Quarter Finalsではスタート直後のドロップで転落、最後まで滑り切ったものの4位で敗退となった。
「楽しもうと思えば思うほど、前に行かなければと思い、気づいたら頭から落ちていた」という吉田。
「ついていかなきゃ」。そんな思いで最後まで走り切ったのだという。「トップ選手たちの迫力は圧倒的」なものだったそうだ。「本番で練習の力を発揮できないことが自分の弱点」だといい、「昨日までがいいレースだっただけに悔しい」、「来年こそは決勝でリベンジ」したいと話す吉田にとって今大会は課題の残る結果となった。

吉田の次のヒートを走った山本は「決勝では残念だったが、安里沙は見違えるくらい昨年と比べて安定感も出てきた。横浜で成長を実感できたのでは」と吉田について語る。

山本の背中を見て育った彼女が、今後どのような形で開花するか楽しみだ。

吉田安里沙 / photo by HAMASHOW

「日本人選手も若い世代が活躍をしてくれている。年々競技としての注目の高まりを感じている」と山本はいう。
山本が蒔いた種が、芽吹く時は近い。成長中の若手の台頭が今後、期待されている。
パイオニアとして走りつづける山本、そしてその背中を追うように成長を続ける山内と吉田。新世代の成長によって、日本における「アイスクロスダウンヒル」の第2章が今、幕を開けようとしている。

Red Bull Ice Cross World Championship Yokohama 2020 開催概要

名称: ATSX 1000 / Red Bull Ice Cross World Championship Yokohama 2020
略称:レッドブル・アイスクロス横浜
会場: 臨港パーク特設会場(神奈川県横浜市西区みなとみらい1丁目1-1) 日時: 2020年2月15日(土) OPEN 15:00 START 18:00
※雨天決行・荒天中止
※予告なく変更になる場合があります
内容: アイスクロス世界選手権(Red Bull Ice Cross World Championship)のATSX1000クラスの大会。
主催: レッドブル・ジャパン株式会社
後援: 横浜市
協賛: BFGoodrich、SUBARU、FAVRE-LEUBA

取材・文:金子修平
写真:Shuji Izumo / HAMASHOW

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