いよいよ残り2戦でパリオリンピック出場が決まる「オリンピック予選シリーズ(OQS)」、フェーズ2の第1戦目となる上海大会のスケートボード・ストリート種目が、中華人民共和国・上海にて開催され、競技最終日の5月19日(日)に女子決勝が行われた。
男子同様に出場権争いが非常に激化している女子カテゴリー。今大会前まで世界ランキング3位の織田夢海がまさかの予選敗退。そして世界ランキング1位で前回五輪王者の西矢椛が準決勝で姿を消す波乱の大会となった。
決勝に勝ち上がったのは、ポエ・ピンソン (アメリカ合衆国)、ウェンフイ・ゼン(中国)、チェンシー・チー(中国)、中山 楓奈(日本)、ライッサ・レアウ(ブラジル)、吉沢 恋(日本)、赤間 凛音(日本)、クロエ・コベル(オーストラリア)の8名だ。今回は中国勢が決勝に2人勝ち残る結果となり、アジアでは日本1強というイメージだがそこへ中国人選手が割って入っていく展開となった。
出場権争いは日本国内が非常に混戦模様となっており、現在日本でのトップ2である西矢と織田が決勝に残れず、この2人を追いかける中山、吉沢が決勝に残り順位を逆転できる可能性が高まった。そして現時点での出場枠圏内につけている赤間が唯一の決勝進出者となり、その地位を確実なものにすべく今大会での大幅なポイント獲得を狙えるのかといった構図だ。
海外勢では中国のチェンシーとウェンフイが世界ランキングを上げるチャンスとなりパリオリンピック出場へ大きく前進しそうだ。いずれにせよ各ライダーの決勝での順位が非常に重要になる。
大会レポート
【ラン1本目】
まず一歩前へ出て幸先良いスタートを切ったのは日本の吉沢恋。ハンドレールで「バックサイドスミスグラインド」からバンクトゥバンクで「トレフリップ」と繋いでいき、ラストの「バックサイドビッグスピンフロントサイドボードスライド」まで完璧に決め切り84.04ptのハイスコアをマーク。
吉沢の作った良い流れに続きたい赤間凛音もきっちりフルメイクし87.41ptと首位に躍り出るが、これに続いたのがオーストラリアのクロエ・コベルだ。
「フロントサイドフィーブルグラインド」で勢いよくスタートしていくと、「バックサイドテールスライド」、ステアでの「スイッチキックフリップ」から「スイッチフロントサイドボードスライド」と繋ぎ、ラストトリックのビッグステアでの「キックフリップ」までパーフェクトラン。87.34ptとこちらもビッグスコアで暫定2位につけた。
【ラン2本目】
2本目ではアメリカのポエ・ピンソンと中山楓奈がそれぞれ80ポイント台としっかりスコアを残す中、1本目のスコアを大幅に上回ったのが日本の赤間とブラジルのライッサ・レアウだ。
ライッサは「キックフリップフロントサイドボードスライド」から「フロントサイドノーズグラインド」、「キックフリップバックサイド50-50」、「バックサイドテールスライドショービットアウト」、ラストはハンドレールで「フロントサイドブラントスライド to ショービットアウト」と異次元のパーフェクトランで92.23ptをマークした。
そんなライッサに続いたのが赤間。「バックサイドスミスグラインド」や「フロントサイド360オーリー」など1本目同様に繋いでいくが、途中の「フロントサイドビッグスピン」を「フロントサイドビッグスピンヒール」にアップデート。ラストの「フロントサイド180スイッチ5-0」まで完璧に決め90.11ptライッサを射程圏内に収めて追走する形に。ランを終えた時点でライッサと赤間が頭一つ抜けた形でトリックセクションへ。
【ベストトリック1本目】
まずベストトリック1本目でハイスコアを出したのが中国の新鋭、チェンシー・チーだ。ビッグステアに設置されたハバレッジで「キックフリップバックサイド50-50」を決め85.51ptをマーク。世界大会2回目の決勝とは思えない堂々としたライディングを見せた。
そんな中でベストトリック1本目のハイエストスコアを出したのが吉沢。「キックフリップフロントサイドボードスライド」を決め88.05ptと、ここでも幸先の良い出だしに。
【ベストトリック2本目】
吉沢は続く2本目でも「フロントサイドハリケーングラインド」をしっかり決め85.64ptとスコアを揃えた。パリオリンピック出場権争いで追いかける立場の中山はモヒカンレッジで「フロントサイドクルックドグラインド」を決め83.84ptをマークし残りのトライに勝負をかける。
ライッサもこの2本目で「キックフリップバックサイドリップスライド」をハンドレールで一発メイクし91.81ptをマーク。1本目に続きフルマークし他のライダーにプレッシャーをかけた。
【ベストトリック3本目】
分岐点となることが多い3本目でスコアを残したのはアメリカのポエと中国のウェンフイだ。ポエは1本目と2本目とミスしていたバンクトゥオーバーの「フロントサイドスミスグラインド」を決め85.77ptとようやくスコアをマークした。
久しぶりの世界大会での決勝となった中国のウェンフイは1本目と2本目で狙っていたトリックを、ハンドレールでの「バックサイドテールスライド」に切り替えて一発で仕留め、86.13ptというハイスコアを収めて上位戦線に踏みとどまった。
【ベストトリック4本目】
4本目にまず流れを動かしたのがチェンシー。ステアに設置されたハバレッジで「キックフリップバックサイド5-0グラインド」にトライ。グラインド中にバランスを崩したかと思えたが見事着地で持ち直す勝負強さを見せた。スコアも85.07ptとこれでフルマークとなった。
ここまでランでハイスコアを出しながらも、ベストトリックでは1本目以降なかなかスコアを出せていなかった赤間がここでビッグスコアを叩き出した。ハンドレールで「フロントサイド270フロントサイドボードスライド」を決め92.55ptに。
暫定首位のライッサに対して1ポイント差以内に収めプレッシャーをかけると、ラストトライを前に暫定首位にライッサ、2位に赤間、3位は序盤でのアドバンテージを守っている吉沢と続いた。
【ベストトリック5本目】
この上海大会からわずか1つの順位の差で大きく獲得ポイントが変わるため、当然1つでも順位を上げておきたいところ。そんなプレッシャーの中でラストトライを決めて順位のジャンプアップを実現させたのがアメリカのポエだ。バンクトゥギャップオーバーのレールで「バックサイド5-0グラインド」をバランスを崩しながらもなんとか成功させ88.11pt、トータルを254.06ptとしチェンシーを抜いて4位に浮上した。
赤間に逆転されるの可能性を残して最終トライを迎えたライッサ。百戦錬磨、勝負所を理解している彼女はここで「ヒールフリップフロントサイドボードスライド」をハンドレールで決めた。スコアは90.85ptと赤間を突き放すことに成功。
最終トライの結果を待つことに。
赤間は逆転優勝には92.24ptが必要な中、持ち技を考えれば十分に可能性がある。彼女が最後に選んだトリックはハンドレールでの「フロントサイドフィーブルグラインド・フロントサイド180アウト」でこれをしっかり決め切ったが、結果はわずか0.54pt及ばず2位でフィニッシュとなった。
大会結果
優勝 : ライッサ・レアウ (ブラジル) / 274.89pt
2位 : 赤間 凛音 (日本) / 274.35pt
3位 : 吉沢 恋 (日本) / 257.73pt
4位 : ポエ・ピンソン (アメリカ) / 254.06pt
5位 : チェンシー・チー (中国) / 247.44pt
6位 : 中山 楓奈 (日本) / 165.86pt
7位 : ウェンフイ・ゼン (中国) / 164.74pt
8位 : クロエ・コベル (オーストラリア) / 87.34pt
最後に
まず今まではライッサ・レアウ、クロエ・コベル、西矢椛が世界のトップ3であると言われていた勢力図だったが、今大会でも強さを見せた赤間凛音や、今回惜しくも予選敗退という結果で一転パリ五輪出場権争いの中で追う立場となった織田夢海、また今大会で3位に入り一気にパリ五輪出場圏内にジャンプアップした吉沢恋が入ったことで勢力図はややフラットと言える状況に。
そんな中、スコアメイクや試合運びを考慮するとライッサが、頭一つ抜けている印象だ。ただ今大会では本調子を出しきれなかったクロエもこのままいくとは思えない。やはりライッサとクロエを相手に日本人勢がどのように頂点争いを繰り広げるのかという図式はパリオリンピックまで続くと考える。
そして注目のパリ五輪出場権争いは今大会を終えて大きく入れ替わる結果となった。ブラジルのライッサが同国4番手のライダーが次戦で優勝してもライッサを上回れないので出場確実という結果になった。
一方で大混戦なのが日本の出場権争いだ。世界ランキングトップ10にフェーズ2に進んだ全員が入るというスケートボード強国ぶりを見せている。
今大会前まで世界ランキング1位だった前回オリンピック王者の西矢椛が5位と日本人では3番手に、そして世界ランキング3位だった織田夢海が7位で日本人5番手とそれぞれランクダウンした。
前回のオリンピック経験者で今大会で出場権獲得圏内まで順位を上げたかった中山楓奈は世界ランキング6位と順位をキープしたが日本人では4番手と圏内には入れなかった。彼らと裏腹に一気にジャンプアップして出場権獲得圏内に入ったのが今大会3位となった吉沢恋だ。世界ランキングも3位と4つ順位をあげ日本人でも2番手に躍り出た。
現在、日本人トップの赤間凛音が386,771ポイントと次戦ブダベスト大会を前に非常に有利なポジションとなった。しかし、ポイント差ではトップの赤間と世界ランキング10位の伊藤美優までが245,754ポイントとなっているが、次戦の優勝ポイントが260,000ポイントとなっているので逆転できる可能性が残っている。
つまりこれは最終戦、ブダベスト大会まで全員がパリオリンピック出場の可能性を残しているということだ。
オリンピック出場権を争っているライダー達は計り知れないプレッシャーと戦いながらこの予選を戦ってきている。自分自身とも戦いながらパフォーマンスを出さなくていけない非常に難しい状況の中、今大会のように何が起こるか最後までわからないオリンピック予選大会。
次戦、パリオリンピック予選最終戦となるブダベスト大会は予選から決勝まで全く目が離せない大会になりそうだ。
各競技で協力してTEAM JAPANのサポートを実施
またオリンピック予選シリーズ (OQS) 上海大会では日本人選手たちが最高のコンディションで試合に臨めるように、味の素株式会社「ビクトリープロジェクト」が帯同・サポートしている。本プロジェクト内容については下記の通りだ。
ビクトリープロジェクトは、2003年から味の素株式会社と日本オリンピック委員会(JOC)が共同で実施している選手のコンディショニングサポートプロジェクト。選手の目指す姿や目標に合わせた栄養サポートを提供し、パフォーマンスの最大化と意識改革に貢献している。
特に大会期間中は、「補食」を通じて選手のコンディショニングをサポート。具体的には、エネルギー補給を目的とした「パワーボール」と、カラダのコンディションを維持するためのアミノ酸サプリメント「アミノバイタル」を提供している。
今回のオリンピック予選シリーズ (OQS) では、スケートボードだけでなく、ブレイキン、BMX、スケートボード、クライミングチームにも「パワーボール」と「アミノバイタル」を提供し、全ての競技で選手が最高のコンディションで試合に臨めるよう支援した。
選手一人一人のコンディションを詳細に把握し、適切な栄養プランを提案することで、長期間にわたり安定したパフォーマンスを維持できるようサポートしている。
SPECIAL EDITION
-
skateFINEPLAY | スケートボード(skateboarding)
-
surfFINEPLAY | サーフィン(surfing)
-
danceFINEPLAY | ダンス(dance)
-
climbFINEPLAY | クライミング(climbing)
-
bmxFINEPLAY | バイシクルモトクロス(bmx)
-
freestyleFINEPLAY | フリースタイル(freestyle)
-
fmxFINEPLAY | フリースタイルモトクロス(fmx)
-
doubledutchFINEPLAY | ダブルダッチ(doubledutch)
-
snowFINEPLAY | スノーボード(snowboarding)
-
cultureFINEPLAY | カルチャー(culture)
-
othersFINEPLAY | アーバンスポーツ(others)
-
inlineFINEPLAY | インラインスケート(inlineskate)
-
parkourFINEPLAY | パルクール(parkour)
-
flatlandFLATLAND
-
parkPARK
-
raceRACE
-
streetSTREET
FINEPLAYはアクションスポーツ・ストリートカルチャーに特化した総合ニュースメディアです。2013年9月より運営を開始し、世界中のサーフィン、ダンス、ウェイクボード、スケートボード、スノーボード、クライミング、パルクール、フリースタイルなどストリート・アクションスポーツを中心としたアスリート・プロダクト・イベント・カルチャー情報を提供しています。
アクションスポーツ・ストリートカルチャーの映像コンテンツやニュースを通して、ストリート・アクションスポーツの魅力を沢山の人へ伝えていきます。
●今日 ○イベント開催日
-
danceAMI、AYUMI、HIRO10がパリへの切符を獲得「オリンピック予選シリーズ ブダペスト大会」ブレイキン男女決勝速報2024.06.24パリオリンピック予選大会最終戦となる「オリンピック予選シリーズ(OQS)」2戦目のブダペスト大会のブレイキン男女決勝が、大会最終日となる6月23日(日)にハンガリー・ブダペストにて開催された。女子は、2大会連続で表彰台を日本勢が独占。AMIが1位、AYUMIが2位、RIKOが3位となり、AMIとAYUMIがパリオリンピックへの出場を決めた。男子は、前回大会3位のHIRO10が準々決勝で敗退し6位でフィニッシュ。ISSINは今大会で4位と大健闘だったが、2大会の合計ポイントが上回ったHIRO10がパリオリンピックの代表枠を手にした。 大会結果 男子優勝: LEE準優勝:AMIR3位:HONGTEN女子優勝: AMI準優勝: AYUMI3位: RIKO
-
skate吉沢恋が世界大会初優勝。男子に続き表彰台を独占した日本人選手たち。日本代表内定選手も決定!「オリンピック予選シリーズ ブダペスト大会」スケートボード・ストリート種目 女子決勝速報パリオリンピック予選大会最終戦となる「オリンピック予選シリーズ(OQS)」2戦目のブダペスト大会のスケートボード・ストリート種目の女子決勝が、大会最終日となる6月23日(日)にハンガリー・ブダペストにて開催された。男子同様に表彰台を日本人選手が独占する形となり、優勝は吉沢恋、2位に織田夢海、3位は中山楓奈となった。 なお大混戦となっている日本人選手のオリンピック代表権争いだが、今大会の最終順位から、日本代表選手として赤間凛音、中山楓奈、そして今回初めて世界大会で優勝を獲得した吉沢恋の3名がパリオリンピックへの出場を決めた。 大会結果 優勝: 吉沢 恋 (日本) / 270.29pt準優勝: 織田 夢海 (日本) / 268.52pt3位: 中山 楓奈 (日本) / 263.62pt
-
skateオーストラリアのキーガン・パルマーが優勝。日本の永原悠路もパリオリンピック代表選手に内定!「オリンピック予選シリーズ ブダペスト大会」スケートボード・パーク種目 男子決勝速報2024.06.23最後のパリオリンピック予選大会となる「オリンピック予選シリーズ(OQS)」の2戦目であるブダペスト大会のスケートボード・パーク種目の男子決勝が、大会最終日となる6月23日(日)にハンガリー・ブダペストにて開催された。 パリオリンピックを目前に控えた今大会で見事優勝を成し遂げたのは東京オリンピック金メダリストであるオーストラリアのキーガン・パルマー。続いて今大会の結果でパリオリンピックの代表権を確かなものにしたアメリカのトム・シャーが2位、そして前回の上海大会の優勝者であるアメリカのテイト・カリューが3位という結果になった。 なお日本の永原悠路は予選敗退となったものの、世界ランキング17位に残ったことで代表選出のトップ20をクリアし、パリオリンピックの出場権を獲得した。 大会結果 優勝: キーガン・パルマー (オーストラリア) / 94.94pt準優勝: トム・シャー (アメリカ合衆国) / 94.60pt3位: テイト・カリュー (アメリカ合衆国) / 92.65pt
-
skate堀米雄斗が見せた大逆転劇。優勝は堀米、2位に小野寺、3位は白井と日本勢が表彰台独占し、代表枠も確保「オリンピック予選シリーズ ブダペスト大会」スケートボード・ストリート種目 男子決勝速報パリオリンピック予選大会最終戦となる「オリンピック予選シリーズ(OQS)」2戦目のブダペスト大会のスケートボード・ストリート種目の男子決勝が、大会最終日となる6月23日(日)にハンガリー・ブダペストにて開催された。表彰台を日本人選手が独占。優勝は堀米雄斗、2位に小野寺吟雲、3位は白井空良となった。 オリンピック代表争いが大混戦となっている日本人選手の今大会の最終順位は小野寺が2位、根附が7位、白井が3位、堀米が1位となったことで、この結果から日本代表選手として小野寺吟雲、白井空良、そして今回大逆転劇を見せた前回オリンピック王者の堀米雄斗がパリオリンピックへの出場を決めた。 大会結果 優勝: 堀米 雄斗(日本) / 283.01pt準優勝: 小野寺 吟雲(日本) / 276.46pt3位: 白井 空良(日本) /270.02 pt
-
skateアリサ・テルーが優勝収めた最終戦。パリオリンピック日本代表選手も確定!「オリンピック予選シリーズ ブダペスト大会」スケートボード・パーク種目 女子決勝速報本当の意味でオリンピック予選大会の最終戦となる「オリンピック予選シリーズ(OQS)」2戦目のブダペスト大会のスケートボード・パーク種目の女子決勝が、大会最終日となる6月23日(日)にハンガリー・ブダペストにて開催された。日本人選手からは開心那、草木ひなの、長谷川瑞穂の3名が決勝進出。優勝を成し遂げたのは圧倒的な強さを見せたオーストラリアのアリサ・テルー。続いてイギリスのスカイ・ブラウンが2位、日本の開心那が3位という結果になった。なお今大会にてパリオリンピック日本代表選手も確定。開心那、草木ひなの、四十住さくらの3名が夏の本戦への切符を獲得した。 大会結果 優勝: アリサ・テルー (オーストラリア) / 93.38pt準優勝: スカイ・ブラウン (イギリス) / 91.93pt3位: 開心那 (日本) / 91.83pt4位: 長谷川瑞穂 (日本) / 91.58pt5位: 草木ひなの (日本) / 89.60pt