【Special Interview】「やっぱり俺、ダンスが大好きなんだな」写真家 Hama Showがストリートダンスを撮り続ける理由

2023.09.15
text by 橋田 樹台 / 写真:本人提供

東京を拠点に活動し、日本のストリートダンスシーンを撮り続けている写真家 Hama Show(ハマショウ)は活動10周年を迎え、2023年9月20日(水)~26日(火)渋谷ヒカリエ・Creative Lounge MOV aiiima1にて自身の写真展「OUT LOUD」を開催する。

元々ダンサーとして活動していた経験を活かし、全国規模のダンスイベント・国際大会のコンテスト・バトルイベントのオフィシャルフォトグラファーを担当しているHama Show。さらに会社員として企業に属する傍ら、ダンサーをモデルとした写真作品の製作を続けており、今回の個展では日本各地で撮影された作品も展示される。
FINEPLAY編集部は個展を控えたHama Showへインタビューを実施。個展に懸ける想いや、自身の写真家としての信念、そしてストリートダンス愛についても存分に語ってもらった。

Hama Show 以下:H

フォトグラファーとしてのキャリアをスタートさせたキッカケ

ご自身がフォトグラファーとしてのキャリアをスタートさせたキッカケを教えてください

H:僕は27歳までダンサーとして活動していました。ダンスが凄く好きでしたし、コンテストとかバトルにも自分で言えるぐらい挑戦したと思うんですけど、優勝はおろか予選を通ることすらなくて形として残せたものがほとんどなかったんです。ダンサーとしての実績を何も残せずにいる自分に気付いた時に「あれ、これ今なんでやってるんだっけ。」って思っちゃったんです。今思えばダンスが好きだからという理由だけで十分だったかもしれないんですけど、当時は深く考えてしまって、変に捻くれてしまったんです。

ちょうどその当時「ダンスディライトマガジン」っていうフリーペーパーでダンス専門のフォトグラファーが特集されていたんですよ。その中でRed Bull BC Oneなど、数々の世界大会でフォトグラファーとして活躍しているLittle Shaoっていう人物を知って。その人が写すダンサーの写真がすごくカッコよくて、思わずダンスを始めた時みたいな衝撃が自分に走ったんです。そこで「カメラをやってみたい!」と思ったのがフォトグラファーとしての活動のキッカケです。

実際にその後はどうやってフォトグラファーとしてのキャリアを歩んでいくのですか

H:まずカメラをやってみたいって言いつつ、知識も経験もゼロだったんです。だから完全に独学で「カメラ 選び方」ってGoogleで検索することから始めました。でも最初の頃はダンサーとして活動実績が何もないっていう劣等感みたいなのが自分に張り付いてて、「カメラなんかやっても意味ないじゃん」って自分で思ったんです。自分より先に始めているカメラマンたちに勝てるわけないし、自分で自分の評価を勝手に下げていたっていうところがあったんです。

だけどその好奇心とか情熱って抑えられなくて。そこでふと気づいたのが、「あー俺、やっぱりダンス大好きなんだな」って思ったんです。「もう別に恥かいても下手くそでもいいからダンスの写真撮ろう、ダメだったらその時考える!」って考えていました。

写真:本人提供

そこからどの様にして現場の活動を増やしていくのですか

H:先輩ダンサーのレッスンに顔を出したり、平日深夜でもダンサーがオーガナイズするイベントに何度も通って「イベントを撮らせていただけませんか」と話しかけて撮影の機会を見つけていました。そこで最初に撮らせてもらったのが、「Juste Debout」の日本予選ですね。
あともう1つ、身近なダンサーをモデルにして作品作りをずっと進めていたんです。「よかったら写真を撮らせてもらえませんか」と声をかけて、毎月必ず撮影の機会を作っていました。そういった活動が1番最初のステップでした。

「あなたはこの時こんなに輝いてたんだよ」 Hama Showがストリートダンスを撮り続ける理由

写真:本人提供

Hama Showさんがストリートダンスシーンに身を置き、作品を撮り続ける理由をお伺いしたいです

H:ストリートダンスのカッコよさって個性のことだと思うんです。誰もがやるスタイルじゃなくても、マイノリティーであっても、それを貫き通す強さであったり、こだわり抜いて研究して作った動きとか、結果を気にせずに会話のように踊り合う瞬間を見られるのはストリートダンスならではなんじゃないかなと思っています。僕にとってはかなり個性が見えるカルチャーがストリートダンスなので、このシーンで写真を撮り続けています。

そういった瞬間を写真で撮るときに何か意識してることはありますか

H:特にダンサーには、その人の代名詞とも言われる「シグネチャームーブ」ってあるじゃないですか。その動き必ず抑えるようにします。でもただ撮るだけじゃなくて、目をつぶっていない瞬間とか、躍動感が出るけどブレないようにするとかは意識します。

あとはその「ジャンルやカテゴリー独自の雰囲気」ですね。ジャズダンスだったら感情がよく表現されてるような瞬間であったり、バトル中だったら1人で踊ってるシーンよりもチームとして戦っているような雰囲気、喧嘩っぽい雰囲気だったりとか、そのチームや作品、ジャンルの個性を残せるようにクローズアップするのが、自分の撮り方として意識しているものです。

写真:本人提供

今回の個展で展示するような作品造りの面で意識していることはありますか

H:自分の作品を作るということは誰かの意思が介在しないし、僕とモデルさんと背景だけなんですよ。僕にとって作品とは「依頼が無くても自主的に撮りたい写真」のことです。誰のためでもなく、ただ表現したい…そういう理由で撮る写真のことです。

ご自身の写真を通してなにか表現したいこと、伝えたいことがあればお伺いしたいです

H:僕が自分の作品を通して表現したいことは「あなたはこの時こんなに輝いてたんだよ」ってことを伝えたいんです。
僕がダンスをしていた時に何が嫌だったかって「練習を頑張ったり、予選に出るためにお金を払ったのに、何も結果が残らないと何もやってこなかったように見えてしまう」ことがすごく辛かった記憶があって。だから自分が大会の写真を撮る時は、予選からみんながなるべく映るように全部の参加者を撮るようにサークルをグルグル回っています(笑) そこで僕の写真を通して「あなたはこの時こんなに輝いてたんだよ」ってことを伝えたいんです。

今年7月に開催された「Freestyle Session JAPAN 2023」の予選の写真。炎天下の中、約2時間続いた予選をHama Showはオフィシャルカメラマンとして1人で撮り続けていた。
© YUSF / Hama Show

自身2回目の個展「OUT LOUD」に込めた想い

写真:本人提供

自身の個展を開催しようと思ったキッカケもお伺いしてもよろしいですか

H:僕は基本的にInstagramとかFacebookに写真を載せるという活動が主に行っているところで、展示して直接誰かと話をするっていう機会は、ほとんどなかったんです。そこで実際に人と会える機会を作りたいなと思ったのがきっかけです。

最初の個展は活動を始めて3年目の2015年に、「OUT BREAK」という個展を原宿で開催しましたが、終わった時「まだできるな」って感じたんです。他のジャンルの人ともどんどん繋がれると思ったし、準備期間を設けてお金も貯めて、ちゃんと休みを取ることを考えれば日本各地で作品を撮れるとも思いました。それをどのタイミングでやろうかって考えた時に「活動10周年目」のタイミングでした。3年目で開催した時から7年もあったので、10年目に向けて少しずつ力をためようって思ったのが、1番最初のきっかけですね。だからこの個展の構想は、2015年とか16年ぐらいから練り始めています。

7年分の想いと作品が詰まったのが今回の個展なんですね

H:僕、好きな言葉に「凡事徹底」っていう言葉があって。誰でもできることをちょっとずつ積み重ねるっていうのがすごい好きなんです。本当に1日単位で個展のことを考えていますが、それを心情としているので7年という時間はすごく長いように見えますが、実際に1日ずつやっていたことは誰でもできることなんです。例えばInstagramでロケ地を探したり、作品のテーマを探したり、特別なことをやっていたわけじゃなくて、誰でもできることを繰り返してここまできたっていうのが伝えたいことでもあります。

写真:本人提供

「OUT LOUD」というタイトルに込めた意味もお伺いしたいなと思います

H:2つあります。OUT LOUDは「声に出す」という意味ですが、これには写真という媒体でもダンサーの魅力は失われず、むしろ魅力は増す…という僕の信念が現れています。写真の中のダンサーが声を出して主張しているかのようで、この言葉を冠しました。
もう1つは僕自身についてです。10年前は自分に自信が持てなかったけど、今はダンスのフォトグラファーとして「これが私です」と誇りを持って、声に出して世界に言えるようになったという、自分自身の物語が「OUT LOUD」という言葉に込められています。

今回の個展の中で、見てほしいポイントを改めて教えて下さい

H:ほぼ全ジャンルと言えるストリートダンサーと、日本各地に写真を撮りに行きました。そこでダンサーと背景の組み合わせとか、写真自体のインパクトを感じてほしいなと思います。あとは写真だけでなく、自分自身がフォーカスされているところも個展のポイントだと思っています。外ではサラリーマン、家では父親やりながらも自分の好きなことは形に出せるよっていうことを伝えたかったので、そこも1つのポイントでもあります。

最後にこのインタビューを見ている人にメッセージがあればお願いします!

H:自分の情熱は絶対形になる!ってことをみんなに伝えたいです。情熱を形にするのは、すごく良いエネルギーが回るし、気軽にもっとみんなが物作りをできるような、環境がないかなって僕はいつも思ってるので。なので「情熱は形に出来る!どんどん形にしていきましょう!」っていうことを僕は伝えたいです。

Hama Show プロフィール

Dance Photographer
1985年3月11日生。ダンサーとしての活動を経て、2013年28歳の時にフォトグラファーとしての活動をスタート。 またたく間に関東の名だたるダンスイベントの公式写真を担当するようになり、2016年にはWorld Of Dance日本代表チームの専属カメラマンとしてLAの決勝大会へ同行。近年では日本国内で行われる全国規模・国際大会のダンスイベント・コンテスト・バトルイベントのオフィシャルフォトグラファーを担当し、毎年100人以上のアーティスト写真を撮影している。写真については全くの独学でありながら、自身の経験に裏打ちされた作風はダンスの現場で高い評価を得ている。現在はRed Bullの公式フォトグラファーとして登録されており、日本のストリートダンスシーンを主としつつ、活動は多岐に渡る。

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