優勝はKO-YA & YuI!! DOUBLE DUTCH ONE’S FINAL 2022 Report

2022.06.08
text by 山本 大方

遂にこの日がやってきた――。2人にとっては待ち望んだ景色であり、悲願だった。
2022年 6月5日(日)、横浜赤レンガ倉庫で開催された「YOKOHAMA URBAN SPORTS FESTIVAL」。その中で開催されたダブルダッチの“個人戦”である「DOUBLE DUTCH ONE’S FINAL」にて、KO-YA(MEN’S SECTION)とYuI(WOMEN’S SECTION)が悲願の初優勝を果たした。

 

“ONE’S”とは

3人以上のプレイヤーを要する「ダブルダッチ」だが、縄を回す2名のプレイヤーを固定し、ジャンプするプレイヤー1名の技量のみを比較し競い合うのが、この“ONE’S”(ワンズ)スタイルだ。

今シーズンからトーナメントは2つに分かれ男女別に。戦いは新しい局面を迎え、それぞれのセクションでのチャンピオンを決する。
FINALとなる今回は、各回の予選に出場し、戦績に応じて付与される“ポイント”を稼いだ選手に加え、昨年優勝者のシード権やワイルドカード、更に当日予選の勝者、計18名が結集。

 

WOMEN’S SECTION ——ASUKI vs. YuI

WOMEN’S SECTIONにはプロチーム「FLY DIGGERZ」のAYUKAや、昨年の学生大会の覇者「Alfred」のhinazoなど、等しく優勝の可能性を秘めたプレイヤーたちが揃い踏み。僅差の勝負は勝敗の行方が審査員たちに委ねられたなかで、決勝に登り詰めたのはASUKIYuIの2人。

提供: DOUBLE DUTCH ONE’S

ともに関西出身の2名。関西シーン、そしてWOMEN’Sシーンをけん引し、過去に数々の女性をなぎ倒してきた“Queen” YuI。迎えるASUKIもダブルダッチ活動を本格化させるべく、昨年から上京。どちらも思いが乗ったムーブを炸裂させたバトルは、決勝戦に相応しい空気感を纏っていた。

YuI / © Kazuki Murata, YUSF

勝てばどちらも初優勝。HIPHOPスタイルをベースとする両者の対決は、“勝利”への執念を感じる、気迫のあるバトルだった。どちらも引けを取らないQueenを決める最終決戦は、フラッグ1票差でYuIに軍配が上がった。

YuI / © Kazuki Murata, YUSF

 

MEN’S SECTION ――KO-YA vs. KEITA JUMPROCK

そしてMEN’S SECTION。計12名が出場するハイレベルなトーナメント戦は、残り1枠を決める当日予選でプロチーム「REG☆STYLE」のKENGOが出場を決めるなど、そのレベルの高さは一目瞭然。実力者でも登り詰めることは相当困難なFINALの舞台で、幾多の猛者を撃破し決勝で相対するのは… “まさか”なのか“やっぱり”なのか、この2人だった。

提供: DOUBLE DUTCH ONE’S

KO-YA 対 KEITA JUMPROCK—— 知る人ぞ知る、実はこの2人は昨年もFINALの決勝戦で激突した2人。同じREG☆STYLEのメンバーとして、この2人には因縁があり、ドラマがあった。

しかしこの対決は、“因縁”どころか2人の“絆”を感じさせるようなバトルになった。お互いが死力を尽くしてムーブを披露するなかで、2人が扮するフォロワー13万人のTikToker「K&K」の振り付けが途中に登場するなど、バトルを、ダブルダッチを心から楽しんでいるように見えた。
KO-YAはこの戦いをこのように述懐する。「KEITAとしか出来ないバトルだったと思います。最高の時間でした」

KO-YA / © Kazuki Murata, YUSF

結果はこちらもフラッグ1票差でKO-YAが優勝。昨年の覇者・KEITA JUMPROCKを破り、シーズンチャンピオンに輝いた。

KO-YAは前回・前々回・前々々回と3度“準優勝”。あと一歩のところで逃がしてきた栄冠をついに掴み取った。
そして、その結果を誰よりも近いところで讃えたのは、最強の対戦相手でありチームメイトのKEITAだった。感極まって立ち尽くすKO-YAの腕を取り、KEITAは、その拳を高らかに掲げた――。

© Kazuki Murata, YUSF

 

そして… 感動のエキシビションマッチへ

優勝直後、YuIは涙ながらにこう語った。「9年間、男女混合のONE’Sに出場し続けた。今回女性NO.1になれて嬉しいです。でも欲を言えば、男性にも勝ちたかった。だから最後にKO-YAさんと戦って、完全燃焼させてくれませんか」

9年間、様々な思いを背負ってきたYuIの言葉に応えるように、予定外のエキシビションマッチが始まった——!

YuI / © Kazuki Murata, YUSF
KO-YA / © Kazuki Murata, YUSF

戦ったFINALISTたちも、オーディエンスも、周りを取り囲むようにして始まったエキシビションマッチは、「ダブルダッチ」というカルチャーが培った全てが凝縮された空間だった。

ダブルダッチの“個人戦”の頂上決戦。しかし優勝した両者はどちらも、「1人ではここまで辿り着けなかった」と振り返る。
そもそもこのスポーツは最低3名以上いなければ出来ないため、その要素が取り上げられ、「チームスポーツ」としての特異性が語られることが多い。

しかし、それはダブルダッチに限らず、実は全てにおいてそうなのだと教えてくれた。喜び、慰め、沸き立ち、讃え…。1人で成したように見えることにも、そこには数多くの人間の力が存在する。あの場にいた全ての人々が、ファイナルの名に相応しいステージを創り上げていた。

ONE’Sという、戦いの場が教えてくれたこと。それは1人の「小ささ」と、1人の偉大さだった。

 

Interview YuI ――Queenになった今と、“悔しさ”の過去

YuI / © Kazuki Murata, YUSF

――今回のONE’S FINALにはどのような思いで臨まれていたのでしょうか。

このイベントが出来て9年間、男女混合だった時代からずっと出場し続けていました。
2016年からFINALには出場していたのですが、最高戦績は準優勝。今年から男女別になったということで、それはもう「優勝」を獲らなければと覚悟して臨んでいました。

――YuIさんが女性唯一のFINALISTだった年もあれば、女性内での最高戦績だった年もありましたから、そういった意味で“女性NO.1”と称されていましたが、実際“Queen”になられました。

心の底から嬉しいんですが、それ以上にほっとしています(笑)。(女性NO.1という称号が)自分で間違いなかったことに安心しました。
ただ、そもそもダブルダッチへの愛は誰にも負けていない自信があったので、振り返るとそこが勝因だったんじゃないかなと思います。

でも流石はFINALIST、みんなからも並々ならぬ“愛”を感じたし、強かったですね。みんなで私を倒しにきているなと感じていました(笑)。

――YuIさんは昨年の戦績として“女性最高位”だったということで、今シーズンはシードとしてFINALへの出場を決めていました。“待ち構える側”としてシーズン自体を振り返ってみていかがでしょうか。

シードのお話を頂いた時にすごく悩みました。男女別になったことで私の夢は半分潰えてしまったから、実は出場を辞退する選択肢もありました。
ただ、そんな私がここまでFINALまで気持ちを切らさずに這い上がれたのは、実はシーズンの最初の予選で審査員を務めた際に、他のストリートカルチャーの方が「ダブルダッチってカッコいいよね、男子」って言われていたのを耳にして(笑)。

これは聞き捨てならないなと、女性のダブルダッチだってカッコいいんだぞという事実を見せつけたい一心で今日まで突き進んできました。

――そのような出来事があったんですね…。しかしそんな悔しさを乗り越えて、名実ともにQueenとなったYuIさんですが、今後については何か考えていることはあるのでしょうか。

最近は関西で練習会を開催していることもあるのですが、そこに毎回足を運んでくれている子たちが、ONE’Sの予選や学生の大会などで勝ち上がっているようなんです。とてもやり甲斐を感じていて、これからは後進の育成にも力を入れて活動していきたいなと思っています。

――WOMEN’Sシーンは特に若手の躍進がめざましいですよね。FINALISTも半数は現役大学生だったということで、ここからまたONE’Sが新しいフェーズに突入しそうな感じがします。

そうですね。未来を背負って立つ逸材たちが全国各地にたくさんいますから、WOMEN’Sシーンはますます成長することでしょう。
そして私自身もその盛り上げに貢献するために、次は関西シーンからQueenを輩出させます。私を育ててくれた関西ダブルダッチシーン、女性シーンへの恩返しじゃないですけど、ますます盛り上がっていくと良いなと思います。

 

Interview KO-YA ――「本気の自分」と出会って

KO-YA / © Kazuki Murata, YUSF

――今日一日、FINALを振り返っていかがでしたか。

とても楽しかったですね。本気で懸けてきた人たちの集まりだから、かつてないエネルギーの高さを感じました。最高の一日でした。

――過去3回「準優勝」で悔しかったと口にされていましたが、今回悲願の優勝を果たされました。KO-YAさんは当初シードとしてFINAL出場は内定していたと思うのですが、その権利を辞退して予選から出場されていました。*
今シーズン、相当な思いを懸けて臨んでこられたようですね。

* 当初は昨年のFINAL上位2名がシードとして招集される予定だったが、KO-YAはシードを辞退。各回予選に出場し、実力で再びFINAL進出を決めた。

去年の状態の自分では、シードでFINALに進出しても優勝出来ないことは分かっていましたし、だからこそ1年間の予選を通して自分のレベルを上げていくことが必要だと考えていました。
そもそも優勝していないのにその権利を頂くことにも抵抗があったので、ゼロからチャレンジャーとして臨みました。

――そして予選のポイントランク1位で、今年もFINAL出場を掴み取りました。

予選の1位通過は自分にとっては最低条件だと思っていました。今シーズンは楽しかったという言葉に尽きますが、この1年の中でもスランプや波は大いにあって、正直「出たくねぇー」と思う瞬間は何度もありました(笑)。

それでもライバルたちの頑張る姿に鼓舞されてここまできました。色んな人達の存在があったから、靴を履いて家を飛び出して練習できた。ONE’Sは個人戦だったけど、1人の力では勝てなかったなと感じています。

――チャレンジャーとして“有言実行”を果たしたわけですが… 何の因縁か、決勝戦の相手は昨年同様、腹心のチームメイト・KEITA JUMPROCKさんでした。

誰が決勝に残っていてもおかしくないとは思いつつ、それでもきっとKEITAは勝ち進んでくるだろうとも思っていました。
やっぱりKEITAとは格別ですね。昨年以上に“KEITAとしか出来ないバトル”を出来たなと思っています。最高の時間でした。

――KO-YAさんが思い描く“これから”について少し教えて頂けますでしょうか。

優勝という結果は嬉しかったのですが、何より「本気になれた機会があったこと」が嬉しかったんです。「本気でい続けている自分」が好きだから、今後もその自分でいられるようにしたいです。それこそ、イベントオーガナイズとしては『ITADAKI ダブルダッチ甲子園』が7月に控えていますし。

あとは自分の「好き」を追求したショー作りや制作活動など、プレイヤー、ダブルダッチのプロ活動もまだまだまだまだやりたいことはたくさんあります。たださっきも言いましたが、やっぱり1人では出来ないことが多いですから。みんなと一緒に、業界が盛り上げることが出来たらと思います。 

バトル映像はこちらから!

WOMEN’S 決勝
MEN’S 決勝
エキシビションマッチ
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