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峰竜太×西慶司郎、波と水上を制した二人が明かす「プロとして生きる」本音とキャリアの選択

2026.09.18
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千葉県・東浪見海岸。日本有数のサーフポイントとして知られるこの海岸に、異色の組み合わせが実現した。ボートレース界のトップスター・峰竜太と、JPSAグランドチャンピオンを2度制した波乗りの申し子・西慶司郎
セッションは、二人がともに海へ入り、波を追うことから始まった。 水上のトッププロが挑む、もうひとつの「水の世界」。波の上で交錯した二人の視線は、その後の対談で単なる競技論を超え、人間の本質へと深く踏み込んでいった。

初対面、それでも「同じ匂い」がした

サーフィンを終えた峰竜太の第一声は、意外なほど率直だった。

峰竜太 :「28歳だった頃の自分を見ているようでした。純粋にサーフィンが好きで、波に乗るのが楽しくて、でも同時に大きな挑戦への野心もある。当時の我武者羅な感覚を思い出して、すごく刺激を受けましたね。」

一方の西慶司郎もまた、峰の佇まいにあるものを感じ取っていた。

西慶司郎:「一目見た瞬間、『サーファー以上にサーファーだな』と。峰さんはまさにザ・サーファーというか、サーフィンそのもののルーツを感じさせるスタイルで。」

初対面とは思えないほど、すんなりと馴染む空気感。競技の垣根を越え、「頂点を追求してきた者同士」にしか分からない、共通の温度感がそこには流れていた。

「緊張は成長痛だ」——メンタルの達人が語る、勝者の思考法

話が核心に向かったのは、「メンタルをどう鍛えるか」という問いからだった。

西慶司郎:「正直、メンタルは経験でしかないと思ってます。自分はめちゃくちゃ緊張しいなんですけど、この緊張感ならこのパフォーマンス量、っていうのは大体狙って出せるようにはなって来ました。」

photo by @deltaforcesurf

場数を踏むことで緊張を無くそうとするのではなく、パフォーマンスを調整する手段としてコントロールする。 この言葉に、峰は深くうなずきながら、自分独自の「緊張論」を展開した。

峰竜太:「緊張の大きさは、その出来事の規模ではなく自分が今から乗り越える壁の高さに比例する。
緊張は『成長痛』だと聞いて、すごく腑に落ちたことがあったんですよ。今から成長する機会をもらえたんだなって。緊張して臨むレースとそうでないレースなら、成長するのは絶対に前者。」

さらに峰は、若手時代に実践していた「じゃがいも作戦」についても明かした。

峰竜太:「当時は自分より強い相手ばかりだったので、出走表に並ぶライバルを全員じゃがいもだと思い込んでレースに挑むようにしていました。」

場を和ませるエピソードだが、その本質は深い。格上の相手を「脅威」ではなく「越えるべき壁」と捉え直す視点こそが、パフォーマンスを根本から変えるのだ。

2時間、泣いた。その1週間後、優勝した

誰もが「今度こそ」と信じていた。最強と呼ばれ始めた峰竜太は、SGというボートレース最高峰の舞台で人生最大の屈辱を味わう。

峰竜太:「初めてSGで一号艇に乗った時、『これを負けたら一生スターになれない』って自分を追い込みすぎちゃって。本番ではグローブが入らないほど手がオーバーヒートしていました。」

緊張でターンをミスし、抜かれ、抜き返しても、また緊張してミスを繰り返した。結果は、完敗。レース後、峰は2時間泣き続けた。

峰竜太:「一週間くらい『なぜ一番強いはずの自分が負けるのか』って徹底的に考え抜いて。反省したことは、SGというタイトルを特別視しすぎていたこと。『自分なら余裕っしょ』と捉え方を変えて挑んだ瞬間、すぐにSG初優勝を掴み取れた。それからは、本当の弱い峰竜太はもう隠し込んでる。向き合わない。絶対。スーパースター峰竜太を作り上げてる。」

弱い自分を克服するのではなく、「なかったこと」にして強い自分だけを脳内に残す。この逆転の発想こそが、スーパースター峰竜太を形作った哲学の核心だ。

峰竜太:「弱い自分から一瞬で考え方を変えられたこと。これってすごく難しいことですけど、それこそが自分の才能なんじゃないかと思いますね。」

「その波は、もう二度と来ない」——西慶司郎のターニングポイント

峰の話に静かに耳を傾けながら、西も自身の「あの日」を語り始めた。

西慶司郎:「一回目の日本チャンピオンを取った後、海外の試合に出るチケットをかけた試合で、あと一つ勝てばゲットできるところで負けてしまったんです。『あー終わった』って。まだ始まってもいないのにその年のシーズンが終わったと感じました。」

その敗北が西に教えたのは、「緊張した時のパフォーマンスも、今の自分の実力だ」という現実だった。 波と同じように、チャンスは必ず訪れるが、準備していない者には乗れない。
この苦い経験を通して彼が胸に刻んだのは、「目の前の一本と同じ波には、二度と巡り会えない」という教訓だ。

西慶司郎:「その一本ってもう二度と巡り会わない一本だからこそ、後悔から学んだ経験はすごく大きかったですね。」

photo by @deltaforcesurf

この言葉には、一度きりの波に迷いや後悔を残さず挑む。という西の覚悟が込められている。峰は、西が敗北から得たこの教訓に、ボートレースの本質を重ねた。
サーフィンでは、波に乗るかどうかの判断は「一瞬」。迷った瞬間に波はすでに過ぎ去っている。その感覚は、ボートレースのターン判断と本質的に同じだ。と峰は言う。どちらも「今やるかどうか」を極限の状態で問われる競技だ。

峰竜太:「これ一本できたら成長するとわかってるのに、やめちゃう人が多い。逃げちゃダメ。知ってるんだから。」

「お金がないから、才能が消える」——業界の課題と、夢の話

対談の後半、峰は核心を突く問いを西に投げかけた。

峰竜太:「正直に聞きたいんですけど、サーフィンってお金の面できついですよね。」

西は即答した。「業界の課題だと思ってます」と。
アクションスポーツ選手が直面する経済的現実。才能があってもツアーに出る資金がなければ、その才能は埋もれてしまう。峰はその問題に対し、自身の経験から一つの答えを示した。

峰竜太:「需要と供給なんですよ、絶対。たった一人のスターが時代を作る。大谷翔平さんがそう。強けりゃいいってわけじゃないのよね。人柄とかメディアでの発言も含めた人間性が、実力以上に価値を持つ。そんな時代になってきてる。」

そして峰は、ボートレースという世界が自分に教えてくれたことを、こう表現した。

峰竜太:「夢って叶うんだよ。誰でも。ボートレースから教えてもらった。諦めなけりゃ叶うって。」

ボートレースでは、成績がそのまま賞金という明確な形で評価される。実力と結果がすべて数値化され、誰もがフェアに夢を追いながらプロとして生活できる環境がここには整っている。
アクションスポーツで磨き上げてきたアスリートとしての資質——瞬時の判断力、極限下での集中力、そして研ぎ澄まされた身体感覚——は、水上の格闘技と呼ばれるボートレースにおいても、間違いなく強烈な武器になる。

「奪い合う世界と、分かち合う世界」——サーフィンが峰竜太を変えた

最後に話題は、二人にとってのサーフィンという存在へと移った。西は9歳からの約20年をサーフィンとともに生きてきた。「自分の人生そのもの」と言い切る。

峰の答えは、対談で最も印象的な言葉のひとつだった。

峰竜太:「ボートレースは賞金の奪い合い。相手が失敗すれば自分の勝利に繋がるので、それを喜んでしまう自分もいる。でもサーフィンは、波をシェアして、いい波に乗ったらアロハって讃え合う。競技じゃなかったら悔しいことなんて一個もない世界。
俺は、あらゆるスポーツの中で一番人間性を整えてくれるのがサーフィンだと思っています。」

勝負の世界で生きてきた男が、波の上に「人間性の原点」を見た。その言葉が持つ重みは、サーファーの西にも、深く響いたに違いない。

「挑むこと」こそが、好奇心だ

対談の締めくくり、二人は未来のアスリートへ、メッセージを残した。

西慶司郎:「サーフィンは『楽しい』という気持ちから入るスポーツだと思うので、その子供心を忘れずに、波の上で表現してほしい。」

峰竜太:「好奇心って、楽しそうだからやる、ってことじゃない。難しそうな壁に『挑みに行く』ことこそが好奇心。壁を課題と捉えるか、挑む対象と捉えるか。若い子たちはまだ失敗できるから、挑み続けてほしい。」

その言葉どおり、この対談の後、峰は自ら「挑むこと」を結果で示した。
2026年8月30日、ボートレース桐生で開催されたSG第72回ボートレースメモリアルで優勝。ボートレース最高峰のSG競走のうち、歴史ある5競走からなる「GRANDE5」をすべて制し、史上初のグランドスラマーに輝いた。

最初の達成者に贈られる3億円相当の金のインゴット以上に、峰の胸を占めていたのは、背負ってきた責任を果たした安堵だった。張り詰めていた重圧から解放され、レース後には大粒の涙を流した。

対談で語った「挑みに行く」という姿勢を、峰は自らの走りで証明した。史上初の称号を手にしても、その挑戦は終わらない。峰は今も、ボートレース界の先頭を走りながら、次なる壁へ挑み続けている。
キャリアの選択に迷う者への、静かだが力強いエール。
どの競技で生きるか、どのフィールドで勝負するか——その答えは、「難しそうだから面白い」と思えるかどうかにかかっている。
峰竜太はボートレースで、西慶司郎はサーフィンで、今もそれぞれの壁に挑み続けている。あなたの「次のフィールド」は、どこにある?

プロフィール

峰竜太

1985年3月30日生まれ、佐賀県出身(95期)。2004年にボートレースからつでデビュー。
2026年8月30日、ボートレース桐生で開催された「ボートレースメモリアル」を制し、通算8度目のSG優勝を飾る。
この戴冠により主要SG5大会をすべて制覇し、史上初となる「グランドスラム」の偉業を成し遂げた。
全国24場すべてで優勝を果たしているほか、2度の年間賞金王にも輝くなど圧倒的な実績を誇る。
過去最高年間獲得賞金は2億5,000万円を超え、生涯獲得賞金は20億円を突破(2026年9月8日時点)。
GI優勝20回、SG優勝8回を数え、名実ともにボートレース界のトップに君臨する最高峰のレーサーである。

西 慶司郎

1998年9月3日生まれ、大阪府出身。現在は千葉県を拠点に、国内外の大会で活躍している。
2025年には、世界のトップサーファーが集うWSL CS「Banco do Brasil Saquarema Pro」で5位入賞。さらに、2024年のWSL QS5000「台湾オープン」、2025年のWSL QS2000「Ballito Open」でともに準優勝を果たすなど、国際大会でも着実に実績を重ねている。
国内では、2021年と2023年にJPSAグランドチャンピオンを獲得し、2022年は年間ランキング2位。さらに、S.LEAGUE 25-26「さわかみ北海道プロ」で優勝するなど、日本のトップシーンでも確かな存在感を示している。
世界の舞台を見据え、さらなる高みを目指して挑戦を続けている。

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