渡辺真史×中村 竜。海と街の暮らしを両立する2人の「2拠点生活・幸福論」

2021.09.22

我々は海が好きだ。読者諸兄もそこに異論はないはず。ならば、答えはシンプル。海辺に住めたら最高じゃないか。

では早速移住計画の話を……というのは早計。シーサイドライフのかなえ方は十人十色。理想郷への第一歩として、まずは海と街の2拠点暮らしを実践するセンス良きふたりの対談から。

[左]ベドウィン & ザ  ハート ブレイカーズ ディレクター
渡辺真史さん Age 50
1971年生まれ。東京都出身。10代からモデル活動を始める。大学卒業後の渡英をきっかけに作り手への興味を持ち、帰国後にアパレルブランドの立ち上げに参加。その経験を活かし、2003年には自身のブランドを設立。

[右]プロサーファー、俳優、H.L.N.A代表
中村 竜さん Age 45
1976年生まれ。神奈川県鎌倉市出身。俳優、プロサーファーとして活躍する一方で、2009年に設立したH.L.N.Aの代表取締役社長を務める。自社オリジナルのファッションブランド、「マジックナンバー」のディレクターも兼任。

渡辺:自分は東京で生まれて東京で育っているんだけど、いつも海の近くや山の中といった自然に囲まれた暮らしに憧れがあった。それに加えて親も海の近くに住みたいというのが昔からの夢で、じゃあ葉山に拠点を置きましょうと計画したのが2012年頃。

思い切って移住を選ぶ人もいると思うけど、僕の場合は東京に拠点を置きながら、行ったり来たりする生活を選びました。

週末限定で家族と葉山に来て海や近くの公園で遊んだり、ときにはもっと長く滞在してゆっくり過ごしてみたり。竜くんの場合は逆だよね。鎌倉の人で、自然の中で育った人で……。

中村:そうですね。逆に僕は軸足が鎌倉にある。で、スケジュールを決めるときは風や波を見ながら組み立てていきます。

グッと波が上がるときは海にいるし、フラットなときは切り替えて仕事をする。東京の事務所に行くのは週に1回か2回くらいかな。顔を突き合わせて話をする必要があるときに行く感じですね。

渡辺:それ、最高ですね。ベースが自然とともに生きる人だから、それに合わせたライフスタイルが理にかなっているんだと思う。

中村:波や風といった地球のエネルギーに呼吸を合わせていくと、なぜかいろいろなリズムがうまく合ってくるんですよね。

渡辺:僕はベースが東京だから都会の生活が中心になる。だけど、葉山に来ることで自分の中で何かが動き出したり、マインドがリセットされるという感覚があります。決してここが地元ではないんだけれども、暮らしの拠点として外せない場所。

葉山って上品なイメージで語られることが多いんですが、結構古い街で、趣深いんですよ。高いビルはほとんどなく、人出も落ち着いている。そんなところが自分の思う自然のイメージとマッチングしていて、今は第二の故郷のような存在です。

中村:僕は海がホーム。だけど、東京も好きなんですよ。人がたくさんいるところじゃないと熱く反応しないものってやっぱりある。

田舎には田舎の良さがあるけど、小さな世界だけでは反響し合わない。人のパワーが集まり、熱量が高いところで響き合う感性って大切だと思うので。都会で受ける刺激も、自分の仕事にとって欠かせないものですね。

渡辺:僕らが共通して感じているのは「海と街どちらもいいよね」ということ。海が軸か、街が軸かという違いはあっても、その価値観は同じ。それこそ竜くんなんかは10代の頃から東京に遊びに来ているから、こっちに友達もたくさんいるだろうし……。

中村:昔は都内で遊ぶだけ遊び、太陽が昇るタイミングで鎌倉に帰るっていうのを結構やってました。第三京浜を走りながら見る光や朝焼け。そういう風景が強烈に記憶に焼きついていて、その心象が今回のコレクション(※マジックナンバーとベドウィン & ザ ハート ブレイカーズの共作コレクション)のイメージソースになっているわけですね。

ふたりのバックボーンが交ざり合う瞬間をデザインに反映

[1]8800円、[2]8800円、[3]9900円、[4]2万2000円/すべてベドウィン & ザ  ハート ブレイカーズ×マジック ナンバー(H.L.N.A 03-6459-2431)

両名による今回のコレクションは、夜の街から明け方の鎌倉へ向かうドライブウェイがイメージコンセプト。ふたつのカルチャーが交錯する瞬間を具現化した。

[1]リバーシブルのバケットハット。
[2]ペンライトアートをモチーフにした両ブランドのロゴをプリント。
[3]背中には国道134号線から見える朝焼けと街のネオンを表現したグラフィック入り。
[4]高機能素材を使った水陸両用のショーツ 。両サイドの裾にはジップ付き。開くと総柄パターンが覗く。

渡辺:そう、“移動”というのが今回のコレクションの大事なテーマ。海から見る街のネオンだったり、街から海へ向かうときの車中から見える風景だったり。

僕らが過ごした’90年代のカルチャーや記憶がデザインとして表現されている。コンセプトとしては実に自分たちらしいし、面白いと思いますね。

とにかく’90年代のサーファーって格好良かったんですよ。自然体でコミュニケーション上手だから、人当たりがいい。そんな人たちが東京のクラブにわんさかいて、散々遊んで朝方になると海に帰っていく。で、女の子も何人かいなくなっているみたいな(笑)。

でも、今はそういう人たちが海から離れなくなり、ベースとなる場所に戻ってしまった。都会で彼らを見る機会が少なくなったのは、東京の人間からすると、ちょっと寂しいなと。

中村:確かにそうですね。’90年代はいわゆるミックスカルチャーの全盛期で、サーファーやスケーターとファッションの業界人たちがあらゆる場所で絡み合っていた。そこで新しいカルチャーや流行が生まれ、得も言われぬエネルギーに満ちていました。本当にどうしようもないというか、結構変わった人たちも多かったんですけど、今は少し落ち着いた感がありますね。

渡辺:大袈裟に言うと、ぶっとんだ人ばっかりだったよね。

中村:ですよね。それが逆に面白くて刺激的で。今はサーファーでもスケーターでも、技術はものすごいのに、パーソナリティやスタイルという部分ではやや主張が控えめになっている傾向があります。

もっと“濃い”何かが生まれればいいのになと。粗削りで完成されていなくても、とにかくパワーがあるような。

渡辺:海と街の暮らしがクロスオーバーすることで、ダイナミズムが生まれていたのかもしれないね。少なくとも僕らにとっては、遊びにも、仕事にもいい影響があったのは確かなこと。

これからも2拠点でバランスを取りながらクリエイティブに動くというスタイルは変わらない。やっぱり予定調和ではないほうが人生は豊かになるし、面白いものが生まれるんですよ。

CBK=写真 早渕智之=文

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(この記事はOCEANS :「街角パパラッチ&家 特集」より転載)
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