若手クライマー育成のトレーニングキャンプ「THE 18」が開催。ヘッドコーチ 宮澤克明が見据えるシーンの発展

2022.03.31
text by 橋田 樹台 / photo by Momoko Kaneko

去る 2022 年 3 月 26 日(土)に東京都の B-PUMP OGIKUBO にて、 ”世界で活躍するクライマー育成”に向けた、日本全国のユース世代クライマー・保護者を対象としたトレーニングキャンプ 「 THE 18 Supported by adidas TERREX(ジ・エイティーン サポーテッドバイ アディダステレックス)」が開催された。

「THE 18 Supported by adidas TERREX」とは

Photo by Momoko Kaneko

「THE 18 Supported by adidas TERREX」とは、”世界で活躍するクライマー育成”に向けた、新たなナンバーシリーズとして現日本代表選手の専属コーチを務めるCLIMBING DIRECTOR “宮澤 克明”をヘッドコーチとし「Body Training / Body Care / Brain Training=体と頭、両軸での育成」を図るべく日本全国のユース世代クライマー・保護者を対象としたトレーニングキャンプである。

各セクションでは日本代表コーチから現役の世界王者まで、豪華コーチ陣が名を連ね選手たちがそれぞれの課題に向けて取り組んだ。

Body Control – Upper body –

Photo by Momoko Kaneko

日本人初のボルダリング世界王者 堀 創 が指導したセクションでは、上半身の使い方をメインにトレーニングが行われた。あくまで筋力重視ではなく、背中の使い方を軸に体の使い方や手首の握り方などを重点的にフォーカスしていた。

堀 創 / Photo by Momoko Kaneko

「元々ユースの合宿は日本国内でも多かったんですが、今回の様にセクションが分かれて各コーチがそれぞれ教えるという形式はいままで無かった試みだったので、僕たちも手探りではありました。でもそれが形になって僕らも手ごたえがあって、キャンプが上手くいったことはとても良かったと思っています。」

Body Control -Lower body –

Photo by Momoko Kaneko

このセクションでは現役のボルダリング世界王者 藤井 快がコーチを務め、下半身の使い方をメインにトレーニングが行われた。筋力で登るのではなく、体の使い方の重要性を参加した選手たちに説明した。

藤井 快 / Photo by Momoko Kaneko

「初めてのキャンプで教える側になって教えることの難しさを感じて、僕自身勉強になりました。たくさんの選手がいる中で、各々で考えて解釈をして上手くなっていってくれたらいいなという気持ちを感じました。実際僕はライバルになるかもしれない選手を育ててしまうことになるので、気が気じゃない点は多少ありましたが、実際に始まってしまえば楽しくなって教えたくなってしまいました(笑)」

Wall & Problem – Slab / Coordination –

Photo by Momoko Kaneko

本トレーニングキャンプのヘッドコーチ 宮澤 克明 が指導にあたったセクションでは、スラブ・コーディネーションにフォーカスしてトレーニングとなった。ポジショニングや体重移動のスキルなどを伝え、熱のこもった指導が行われた。

Training – Physical Training –

Photo by Momoko Kaneko

サッカー⽇本代表の⻑友佑都選⼿やスポーツクライミング⽇本代表の野中⽣萌選⼿のトレーナーを務める 竹口 正範 は「ケガをしない体づくり」をテーマに、トレーニングを通して股関節の可動域や柔軟性の重要性を説明した。

竹口正範 / Photo by Momoko Kaneko

「全国からたくさんのクライマーが来て、色んな若手のクライマーを見させてもらいました。多くの改善点も見つかったことで、まだまだ若いクライマーの彼らの伸びしろをたくさん感じ取れたキャンプになりました。」

Body Care – Self care / Rest –

Photo by Momoko Kaneko

スポーツクライミング⽇本代表チームトレーナーを務める 山本 貴英 のセクションではケガの予防や休養、栄養などのコンディショニングの大切さを指導。更に細かい筋肉の意味や用途を、よりロジカルに選手たちに説明した。

山本 貴英 / Photo by Momoko Kaneko

「真剣に取り組んでくれている選手がいる中で、しっかりと持ち帰って自分たちで自分のスタイルに合わせてやって貰えたら嬉しいです。この様な素晴らしい機会になって本当に良かったと思います。」

Training – for Home gyms –

Photo by Momoko Kaneko

このセクションは昨季のワールドカップ ボルダリング年間王者である 緒方 良行 が務めた。競技の特性上、同じ課題・同じ壁の形状が見られないクライミングシーンにおいて、地方出身者である緒方の視点から「キャンプ終了後、ホームジムに戻ってからのトレーニング」をテーマに同じ課題でも動きの制限を加え、異なった体の使い方をすることで練習のバリエーションは広がる、という事が伝えられた。

緒方 良行 / Photo by Momoko Kaneko

「僕がユースだった時代はこういったキャンプは無かったので、凄く選手にとっていい機会になったんじゃないかなと思います。これをゴールにせず、どんどん幅を広げていってもらえたらな良いなと思います。」

保護者向け講義

Photo by Momoko Kaneko

更には日本代表ヘッドコーチの 安井 博志 は保護者向けの講義を開いた。成長期の子供に保護者はどう寄り添ってサポートしていくべきか、実例なども交えながら講義を行った。参加した保護者からは熱心にメモを取り、講義を聞く姿が伺えた。

安井 博志 / Photo by Momoko Kaneko

「私は保護者のための講義をしましたが、保護者の皆さんにとっても選手を支えるパートナーとして新たな指標を示せたと思います。選手のみならず保護者の皆さんも一緒に成長してもらって、クライミング業界を盛り上げていけたらなと思います。」

Photo by Momoko Kaneko

トレーニングキャンプの最後には事務局が選定した優秀選手が発表され、28都道府県、63店舗のクライミングジムが無料で使用可能となるスペシャルパスポート「THE 18 × adidas TERREX SPECIAL PASSPORT」が贈呈された。

優秀選手に選ばれたのは以下の通り。

優秀選手名(50音順)

安楽 宙斗(あんらく そらと)
笹原 蓉翠(ささはら ようすい)
島内 悠吾(しまうち ゆうご)
関口 準太(せきぐち じゅんた)
松岡 玲央(まつおか れお)

久米 乃ノ華(くめ ののは)
齋藤 紗里依(さいとう さりい)
⻑谷川 颯香(はせがわ そうか)

※選出基準:過去の戦績には捉われず、本トレーニングキャンプを通じてのパフォーマンス・積極性を基準に選出

Photo by Momoko Kaneko

「THE 18」ヘッドコーチ 宮澤 克明 コメント

Photo by Momoko Kaneko

宮澤 克明(以下:M)

今回のキャンプを開催するにあたっての経緯を教えて頂けますか。

M:僕が見ててユースの子たちが強くなるために、がむしゃらに練習するという以外の選択肢があまりにも無いし、それに対してのヒントも機会も無いという事を以前から感じていました。何かのチャンスやきっかけで、彼らがもっと変わったり強くなったりすることが必ずあると思うので、そういったチャンスや機会を増やしたいと思ったことがきっかけです。

今回のは現役の世界王者はじめ素晴らしいコーチ陣が集まっていますが、この人選に意図があれば教えてください。

M:人に何かを伝えるために言語化することが出来て、初めて理解できるようになるということは僕自身コーチをしながら常々感じています。出来たことを言葉で喋れない選手は理解の深度が浅いんですよね。

そういう意味で言葉で伝えることは僕は凄く大切にしているので、選手たちも普段は感覚的に行っていることで言語化する事が無くても、今日は人に伝えて、言語化しようとすることで選手たちのプラスにもなると考えたからです。

安井先生の講義では保護者向けの内容もありましたね。

M:保護者に対して伝えるということもとても大事なことだと思っていました。親御さんは選手にとって一番最初のスポンサーであり、サポーターだと思っているので。参加したユースの選手たちだけではなく、コーチ陣や親御さんたちも成長して、クライミングシーンを更にボトムアップしていきたいと考えています。

Photo by Momoko Kaneko

今回のキャンプでコンテンツとしてこだわったポイントはありますか。

M:参加を希望した選手たちに対して「選ばれなければこういう経験はできない」という想いを伝えることにこだわりました。クライミングは個人競技であり、選抜チームやそれに対するセレクションといった文化がありません。

また、普段の練習・大会の時のコンディションを含め皆が平等ではないなかで、今後世界と戦うためには多くの方のサポートが重要になっていくということをふまえると「誰かに自分をアピールしていく」、「チャンスを掴んでいく」ということもすごく重要なことだと思っています。

今回は全国のジムが使える特典(=チャンス)があることに対して、選手側にはプレッシャーを敢えて与え続けていました。もちろんみんなが楽しく終わることが一番ですが、「誰かに勝つ」と選手たちが思うようにすることは凄く意識していました。

今後若い世代のクライマーに今回のキャンプを通じて学んでほしいことがあれば教えて下さい。

M:これから日本代表に選ばれる人は「クライミングが好きな人」全員では無いのでチャンスに対して貪欲であってほしいと思っています。

そしてハードなトレーニングで体の疲労感で満足するのではなく、そのトレーニングでいかに自分のアタマを使って取り組めたかという事に重きを置いて欲しいと思います。「こなすだけでなく、理解した上でトレーニングに取り組む」。そういった脳内のスイッチを押せるチャンスは今日たくさんあったんじゃないかなと思っています。

スペシャルパスポートの特典で60以上のクライミング施設が賛同してくれたことに関してはいかがですか。

M:素直に嬉しいですし、本当に感謝しています。業界の中では競合他社ですが、やっぱり「クライマーを育てよう」という意思が全国で繋がってこのキャンプに賛同いただけた、ということはなかなできる事では無いと思います。そういう意味で本当に良い業界だなと思っていますし、全国のクライミング関係者が持つ「好きなこのカルチャーを育てていきたい」という想いを「ひとつのカタチ」として具現化できたのかなと思いますね。

最後にこのナンバーシリーズの展望を聞かせてください。

M:今回はナンバリングシリーズの数字を年齢を数字で表しましたが、やっぱり数字って世界共通だしとても良いと思っています(笑)

今考えているのは今回行った「育成」が目的のトレーニングキャンプだけでなく普段、ジムでクライミングを続けていらっしゃる方々にも参加いただける「THE 3」で3人組とか「THE 100」で100課題など、コンペ形式でのシリーズですね。 様々な立場の方が参加できる、楽しめる場を提供することでナンバリングシリーズがクライミング業界で共通言語になっていったら良いなと思いますし、それこそ「THE 18 次は絶対出る!」みたいな会話が起きってたら良いなと思います。いいところに目を付けたなって我ながら思いますね。

そしてトップクライマーからするとみんながやっぱり1番になりたいと思うし、また多くの方にトップクライマーの登りを見ていただいて、クライミングが持つ魅力を発信していきたいと考えているので「THE 1」という、ナンバーワンを決めるチャンピオンシップを開催出来たらいいなと思っています。

Photo by Momoko Kaneko

SPECIAL PASSPORT 協力店舗一覧

東北地方

岩手県:ClambonClimbing
宮城県:Climbing Gym B’nuts / Climbing Gym B’nuts / 大崎古川店クライミングジムBOLZ
福島県:クライミングジムNANASHINO / TRAILROCK
山形県:BOULDERINGHOUSE358

関東地方

茨城県:ao_roc.climbing / CLIMBING GYM ZE-RO 水戸店 / ROCKY つくば阿見店
栃木県:CLIMBING GYM ZE-RO宇都宮店 / CLIMBING GYM ZE-RO宇都宮下栗店 / BOULDERING SPACE H
群馬県:CLIMBING GYM ZE-RO伊勢崎店
埼玉県:Climbing Gym Walrus / CLIMBING GYM ZE-ROさいたま店 / PUMP1 川口店
千葉県:ROCKY 印西店 / ROCKY 船橋店
東京都:クライミングジム マッドロック / DOGWOOD 調布店 / Fish and Bird / B-PUMP OGIKUBO / B-PUMP TOKYO / ROCKY 品川店 / ROCKY 新宿曙橋店 / ROCKRANDS
神奈川県:DOGWOOD 高津店 / PUMP2 川崎店 / B-PUMP YOKOHAMA / Bouldering Gym Share / BOULDER BOYS KLUB

中部地方

長野県:Edge and sofa 伊那店 / Edge and sofa 松本店
岐阜県:クライミングジム&コンディショニングAIDPIT
静岡県:Climbing JAM 静岡店 / Climbing JAM 浜松店 / Climbing JAM 焼津店 / SUNNY ROCK 沼津店 / SUNNY ROCK 富士店 / BLUE CANYON
愛知県:ボルダリングジム evolv FACTORY / BoulderingHouseKNOT

関西地方

三重県:addict climbing
滋賀県:Rock Mate 大津店
京都府:Rock Mate松井山手店
大阪府:&WALL / Polding Knot Climbing gym
兵庫県:ハイマートベルク クライミングジム

中国・四国地方

岡山県:rocks CLIMBING GYM / rocks BOULDERING GYM
山口県:Bouldering Spot 9A
香川県:Stance BOULDERING GYM
愛媛県:Climbingwall Ascent Ray

九州地方

福岡県:ATTIC CLIMBING / OD 小倉店 / OD 宗像店 / OD 八幡店 / スタンプ クライミング / Bare Hands Climbing Gym
熊本県:The Ranch
大分県:Bouldering House Sunny Side.
鹿児島県: BOULDER PARK KIRONICO

執筆者について
FINEPLAY編集部
FINEPLAY は世界中のサーフィン、ダンス、BMX、FMX、スケートボード、スノーボード、クライミングなどストリート・アクションスポーツに関する情報を提供するWebマガジン
ピックアップフォト
アクセスランキング
FINEPLAY
アクションスポーツ・ストリートカルチャー総合メディア

FINEPLAYはアクションスポーツ・ストリートカルチャーに特化した総合ニュースメディアです。2013年9月より運営を開始し、世界中のサーフィン、ダンス、ウェイクボード、スケートボード、スノーボード、クライミング、パルクール、フリースタイルなどストリート・アクションスポーツを中心としたアスリート・プロダクト・イベント・カルチャー情報を提供しています。

アクションスポーツ・ストリートカルチャーの映像コンテンツやニュースを通して、ストリート・アクションスポーツの魅力を沢山の人へ伝えていきます。

直近のワークショップ
直近のワークショップはありません
イベントスケジュール
5月 2022
       1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31      
« 4月   6月 »

●今日 ○イベント開催日

ピックアップフォト
編集部おすすめ記事
アクセスランキング
FINEPLAY
アクションスポーツ・ストリートカルチャー総合メディア

FINEPLAYはアクションスポーツ・ストリートカルチャーに特化した総合ニュースメディアです。2013年9月より運営を開始し、世界中のサーフィン、ダンス、ウェイクボード、スケートボード、スノーボード、クライミング、パルクール、フリースタイルなどストリート・アクションスポーツを中心としたアスリート・プロダクト・イベント・カルチャー情報を提供しています。

アクションスポーツ・ストリートカルチャーの映像コンテンツやニュースを通して、ストリート・アクションスポーツの魅力を沢山の人へ伝えていきます。

配信先メディア一覧