学生最高峰の激戦がここに。日本一決定戦「Double Dutch Delight Japan 2023」 Report

2023.10.24
text by 山本 大方 / 写真提供: JJRU

2023年 10月22日(日)、ダブルダッチの学生日本一決定戦であり、国際大会の選考会である『Double Dutch Delight Japan 2023』が、神奈川県川崎市・カルッツかわさきで開催された。

Double Dutch Delight (ダブルダッチデライト) は毎年開催される、ダブルダッチの学生大会。
上位チームは12月にアメリカ・ニューヨークで開催される国際大会『National Double Dutch League Holiday Classic』(以下、NDDL)に進出する権利が与えられる。

大学生のOPEN部門、小学生から中学1年生までのNOVICE部門、中学2年生から高校生までのADVANCED部門、社会人混合の一般部門の4つに分かれる。
(※一般部門は国際大会選考非対象)

 

注目ポイント

毎年大盛況となるOPEN部門は、今大会の最注目部門。
例年であれば東西南北の地区予選を勝ち抜いた12チームと、当日決まる“敗者復活チーム”の1チーム、計13チームが出場することになるのだが、出場辞退があったため、急きょ敗者復活が2チームに増枠。

昨年度優勝チーム「Synappse」によるトロフィーの返還 / 写真提供: JJRU

異例の幕開けとなったなかで、Japan大会は前年度 OPEN部門の優勝チームの出場地区で開催されることが慣例となっており、どのチームがトロフィーを掲げ、このJapan大会が来年はどの地区で開催されるのか…?
多くの愛好家が固唾を呑んで見守る、戦いの火蓋が切られた。

 

一般部門

最初に行われた一般部門。
各地区から前線を走るプレイヤーが出場し大いに盛り上がった今回、優勝に輝いたのはWest地区の「NEWJERSEY BOBCATS」(ニュージャージ ボブキャッツ)。

写真提供: JJRU

プロチームに在籍しているメンバーをはじめとした、関西屈指の若手プレイヤーたちが一同に集結。
パフォーマンスのテンションが観客にも伝播するような、スキルフルかつファニーなショーで優勝を掴み取った。

 

NOVICE部門

続くNOVICE部門、優勝はNorth地区・HKR JUMPROPECLUB 所属「ABLAZE」(アブレイズ)。

写真提供: JJRU

バスケットボールを小道具として使用し、ドリブルと並行しながらジャンプするなど、これまでになかった独創的なショーケースで見事NY行きの切符を獲得!
もちろんダブルダッチのスキルも文句なし。最後まで完成度の高いショーケースを披露してくれた。

 

ADVANCED部門

ADVANCED部門の優勝に輝いたのは、West地区・DDFAM 所属「BAN FOOT」(バンフット)。

写真提供: JJRU

ロッキンスタイルをベースにしつつも、オリジナル色を強めたBAN FOOTのパフォーマンスは、技術に加えて表情や仕草など、ショーケースを一つにまとめる鮮やかな表現力が特徴。
大人顔負けの完成度の高さを見せ、優勝に輝いた。

 

OPEN部門

そして最注目となるOPEN部門。どのチームもミスが少なく、完成度の高いパフォーマンスが次々と披露。
勝敗の行方が分からないなか、その結果は審査員に委ねられることに——。

見事激戦を潜り抜け3位に躍り出たのは、East地区・東京大学 D-actの2年生チーム「黄金パンダ艦隊」(おうごんパンダかんたい)。

写真提供: JJRU

チーム名のインパクトに劣らない、耳に残るキャッチーな音源とパフォーマンスの技術力の高さが印象的だった彼ら。
ダイナミックなショーケースで、敗者復活からの躍進劇を果たした。

 

続く2位はEast地区・comrade 所属の「Millennium Collection」(ミレニアム コレクション)。

写真提供: JJRU

こちらも高い技術力とまとめ方で、玄人から初見の人にまで刺さるような渋みのあるショーを披露。
シンプルな技にもチームらしさの光る細かな創意工夫が施されており、最後の1秒まで心奪われるショーケースで準優勝に輝いた。

 

そして栄えある1位に輝いたのは、East地区・東京大学 D-actの3年生チーム「Bølge」(ボルグ)。

写真提供: JJRU

昨年もJapan大会に進出し、準優勝で国際大会進出を決めた彼らがカムバック。
“普通に跳んで普通に回す”というレールから外れた奇想天外な発想でありながらも、1つのミスもなくパフォーマンスを完遂させ、ダブルダッチとして完成されていた彼らのパフォーマンスに、会場からは大歓声!

圧倒的な発想力と見せ方の巧さ、そして昨年を超えるインパクトに、まだ掴みきれていなかった“日本一”のタイトルをもぎ取った!

優勝に輝いたBølge / 写真提供: JJRU

 

また、GUEST SHOWではプロチームの最前線を走る「REG☆STYLE」「FLY DIGGERZ」のコラボショーを披露。
学生たちに夢を与える彼らのパフォーマンスが、大会を最後まで熱く盛り上げてくれた。

GUEST SHOW / 写真提供: JJRU

Delight開催スタート時からMCを務めるKENSAKUも「史上最高のレベルの大会だった」と語るほど、高水準での激戦が繰り広げられたJapan大会。

ただ間違いなく言えるのは、どの選手も、どのチームも本気だった。
そしてあの会場には、本気のプレイヤーにしか生み出せないであろう空気感があり、感動があり、熱狂があった。
全ての選手に心からの感謝を送りたい。本当にありがとう!

なお、全パフォーマンスは後日YouTubeチャンネル「DOUBLE DUTCH TV」に掲載される予定ということで、公開を心待ちにしたい。

 

OPEN部門優勝「Bølge」にインタビュー!

優勝直後のBølgeに独占インタビュー!
2年連続のJapan進出を果たし、念願の優勝に至るまでの経緯を訊いた。

――まずは優勝おめでとうございます! 今の率直なお気持ちを聞かせてください。

ショウゴ
信じられない気持ちです。

グッチ
僕もショウゴと同じです。僕たちは「Japan大会で1位」というタイトルをずっと目指してきていたので、本当に嬉しいです。

コーセイ
チームとしては今まで1位を獲れていなかったので、学生の一番大きい大会でその目標を叶えられたことが嬉しいです。

そして個人としては、高校時代に世界一になったことはあるのですが、その時も“ノーミスで完璧な演技”は出来ていなかったので、それがダブルダッチを続ける原動力になっていました。
どちらも叶えられたということが、めっちゃ嬉しかったです。

――Bølgeのみんなと言えば、昨年もJapan大会に進出し、準優勝に輝いていました。そこからすぐに今シーズンに向けて切り替えられましたか?

ヒカル
割と早かったかなと思います。
それぞれで原動力は色々あったと思うのですが、それこそ昨年は準優勝だったので、残るは「優勝」というタイトルだけだったので、じゃあそこを目指したい!と。

カザネ
「1位になる」ということって難しいですし、なかなか容易に目指せるものでは無かったと思うのですが、Bølgeがそれを現実的な目標にしてくれました。
チームメイトの存在が大きかったです。

――輝かしい戦歴ですが、大変なことも色々とあったことと思います。
Bølgeのみんなを見ていましたが、昨年“追う立場”として出た大会に、今回は“追われる身”として参加したことにプレッシャーもあったのではないかな… と思ったのですが、いかがだったでしょうか。

ヒカル
本当にその通りです(笑)。
Bølgeは“勝って当たり前だよね”ってよく言って頂けるのですが、それが嬉しくもあり、反面「みんなと同じスタートラインなはずだし、おれたちそんなんじゃないけどな…」と思うこともありました。

コーセイ
毎年5月にサークル日本一を決める『Pathos Drive』という別の大会があったのですが、昨年は僕らのサークルである「D-act」が優勝して、その後にBølgeとしてDelightで準優勝と、良い波に乗れていた気がします。
ですが、気づくと自分たちが追われる立場になっていて、今年はPathos Driveで一歩及ばず準優勝。勝ち続けることの難しさを強く感じました。

何よりも気持ちを保ち続けることが本当に難しくて、結果を残せるイメージもそこまで強く湧いていなかったんです。
そこを乗り越えられたことは非常に大きい経験でした。

――なるほど。みんなの思う、乗り越えられた“原動力”って何でしたか?

ハヅキ
私は周囲の応援ですね。応援されるって当たり前でなく、本当に凄いことだと思うんです。
頑張らないとなと何度も鼓舞されました。

ヒカル
応援もそうなんですが、僕的には一言で言うと…「背水の陣」でした(笑)。
Japan大会の前に地区予選があって、そこで5位以内に入らないといけないのですが、僕らは今年も昨年も5位通過。
ギリギリで掴み取って、ここからどう上位チームに追いついて追い越そうか、という感じでした。

ショーゴ
追われるプレッシャーも大変さの一つではありましたが、去年に比べると時間も無かったです。
昨年は2年生だったので、まだダブルダッチに割ける時間も多かったのですが、バランスを取ることが難しかったですね。

コーセイ
地区予選の1位通過は目標ではなかったので、Japan大会に進出できればそれが何位でも良かった… というのが本音です。
ただ割ける時間が昨年に比べて限られていて、パフォーマンスを完全な状態にまで仕上げられずに臨んだ感覚はあったので、不安もありました。
Japan進出が決まってほっとしたと同時に「むしろ追う立場から再スタートだ」とも思いましたね。

――今回Japan大会で披露したパフォーマンスって、地区予選の時から結構変わったなと思ったのですが、どのような背景があったんでしょうか?

コーセイ
先ほどの話の通り、地区予選では不完全な状態だったので、そのままJapan大会に臨むつもりはありませんでした。
ベースはそのままですが、一部作り変えて“Bølgeの強み”を大きくさせたいと。

僕が思っているこのチームの強みの一つは「観客を巻き込めるパッション」だと思っています。
技術力という部分では他のチームとそこまで大きく差は付かないだろうと思っていたので、あとはいかにパッションが活きる見せ方をできるかどうか考えました。

――なるほど。逆に“そのまま臨む”という選択肢は無かった?

ショーゴ
無かったです。だよね?

カザネ
そうだね。
地区予選のレベルも高かったことは感じていて、「このままでまたNYに行けるのか」という不安は強かったです。

――そうだったのですね。では、今回のパフォーマンスのこだわりがあれば聞かせてください。

ヒカル
一つはターナーが意図的に姿勢を崩して披露する3倍のパートと、もう一つは2本のロープを結んで一本にしながら、その中で跳ぶ大縄のパートです。
やっていることの根本は昨年と同じなのですが、Bølgeらしさを残しつつ、レベルアップさせられたかなと思っています。

3倍パートのワンシーン / 写真提供: JJRU

――“同じようなこと”というのは一見すると印象を悪くする可能性もあると思うんだけど、Bølgeのみんなはちゃんと昨年を超えてきたことが、本当にすごいと思っていて。
どのように練習をしていたのでしょうか?

グッチ
僕のパート以外もそうですが、その場で閃いたムーブを見てもらって、チームメイトが湧くかを大切にしていましたね。

ハヅキ
かつ、技術面のことは細かく指摘しあっていました。
ジャンプスキルの面で「こういう風に跳んだら上手くいくよね」とか。

カザネ
例えば私のパートは縄の回転を少し遅くしてもらって、その中を跳ぶというムーブなのですが、ジャンプする時に私が少し足を引いてみたり、ロープと脚の軌道を合わせるとより綺麗に見えるかも、といった細かい指摘や修正をしていました。

コーセイ
昨年もJapanのステージに立った経験があるので、強みと同時に「弱み」も理解していたと思います。
強みを極限まで大きくすることももちろんですが、弱みも適宜補っていったイメージです。

――去年の経験に苦しんだ部分もあるけど、確かに大きなアドバンテージでもあるよね。
そして今回のJapan本番、コーセイが冒頭で言ってくれていたように、見事ミスのないパフォーマンスでした。最中を振り返ってみて、どうでしたか?

ハヅキ
楽しかったです。あっという間でした。

カザネ
でも正直あまり記憶がないです(笑)。

ヒカル
人前やステージでやることは楽しいんです。だから、かえっていつもに比べて逆に力んだり調子に乗ってしまうこともあるので「調子に乗らず練習の時のように…」ということを強く意識していました。
あとは本当に気持ちですね。

写真提供: JJRU

――最後に、Bølgeのみんなのこれからについて伺おうと思うのですが…
まずは12月に再び国際大会「NDDL ホリデークラシック」に臨むことになりますね。意気込みなどがあれば教えてください。

カザネ
「日本一」を目標にしてきたので、正直今はまだ考えられていないですね。
だけどとりあえず、またパフォーマンスは変えることになりそうだよね?(笑)

コーセイ
同じものをより極めてやるか、はたまた少しファニーに振り切ってもいいのかもね。
僕らは正直「Japan大会で1位」を見据えてここまで駆け抜けてきたので、その先のことはあまり考えられていないというのが正直なところです。
国内では評価してもらっていることも、アメリカではそうではない… ということも経験があって、だからこそ「日本で1位になりたい」という目標が明確になったこともあるので。

――ここまで本気になったからこそ、そうだよね。
ただパフォーマンスを変えるかも… という話もあったので、少し休んでまた次の内容も楽しみにしていたいと思います。
国際大会以外で思ったことなどはありますか?

ヒカル
このDelightやPathos Driveなどで、結果の面で「めちゃくちゃ良いものを作り上げたい」という欲望はある程度満たされたと感じているので、次は経験なのか楽しさなのか…
正直、それが何かすらもまだ分かっていないですが、順位とはまた異なることをゴールにしたいなと思っています。

グッチ
Bølgeとしての活動は国際大会で一区切りになってしまいますが、僕はもっと上手くなりたいです。もっともっとダブルダッチをやりたい。本当に良いものに出会えたなと思うんです。
楽しいし、見ている人も楽しいだろうし、実際僕も見ているだけでも楽しい。
まだまだプレーし続けたいですし、そう思わせてくれたBølgeに、本当に感謝しています。

 

大会結果

写真提供: JJRU

OPEN部門
1位 Bølge(東京大学 D-act)
2位 Millennium Colleciton(comrade)
3位 黄金パンダ艦隊(東京大学 D-act)

NOVICE部門
1位 ABLAZE(HKR JUMPROPECLUB)

ADVANCED部門
1位 BAN FOOT(DDFAM)

※以上「National Double Dutch League Holiday Classic」国際大会 出場権獲得

一般部門
1位 NEWJERSEY BOBCATS(関西)

 

大会概要

「Double Dutch Delight Japan 2023」
日時: 2023年 10月22日(日)
会場: 神奈川県川崎市・カルッツかわさき
主催: 一般財団法人 日本ジャンプロープ連合(JJRU)
共催: 川崎市
協賛: コムテック株式会社 / カシオ計算機 株式会社(G-SHOCK)
主管: 日本学生ダブルダッチ連盟(JSDDL)/ OVER THUMPZ

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